キャプテン・シネマの奮闘記

映画についてを独断と偏見で語る超自己満足ブログです

第132回:映画『女神の継承』感想と考察

今回は現在公開中の映画『女神の継承』を語っていこうと思います。毎度のことながら、ややネタバレ注意です。

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↑ポスター画像で好きなやつを2つ載せましたが、他のも洗練されててカッコいいです。

イントロダクション

タイ・韓国合作のアジアンホラー。7月は『哭悲/THE SADNESS』やNetflixでの『呪詛』の公開によりアジア系ホラーがアツい事態になりました。私もこんなに振り回されるとは思わなかったです。

舞台はタイ北部のとある村。物語はそこに暮らす祈禱師一族の密着ドキュメンタリーとして始まったが、その一族の血を継ぐ一人の娘 ミン(ナリルヤ・グルモンコルペチ)に異変が起き始める。体調不良や別人かのような奇行を見兼ねたミンの母親(シラニ・ヤンキッティカン)は、祈禱師である妹(サワニ―・ウトーンマ)に助けを求めるが思いもよらぬ展開へと突き進んでゆく。

今作、原案・脚本に携わっているナ・ホンジン監督の『哭声/コクソン』(2016年公開)に登場した祈祷師をソースに制作されているそうです。私『哭声/コクソン』はまだ観てないんですよね。國村隼が物凄いらしいという噂は耳にしているので、ちょっとTSUTAYAに行かないといけませんな。

監督はパンジョン・ピサンタナクーン。ちょっと声に出したくなる名前。この方の監督した『心霊写真』(2004年公開)は『シャッター』(2008年公開)としてアメリカでリメイクされているらしいんですね。うわ~気になるな。どっかで一夜限りの上映をやってたらしいんですけどね、観に行くべきだったかぁ。

恐怖より絶望を

まずこの映画、伊達じゃないです。ジェットコースター、いや急流滑りが如く真っ逆さまに絶望へと向かう鬼畜仕様となっています。

序盤は“なるほど、なるほど”と落ち着いて観ていられるわけですが、徐々に忍びよる不穏な空気。中盤は不可解な現象に翻弄される娘さんの描写が中心となりますが、これが不憫の極みで思わず目を背けたくなってきます。そしてクライマックスにかけては急にギアチェンジ。スピード感のあるモキュメンタリーテイストが相まって、あっという間に「邪悪」が襲撃。もうパニック状態です。そして持ち受けるラストのある発言。なんだよぉ…そりゃないぜ、マスクの中で空いた口が塞がりませんでした。

去年の私的ベスト映画にも選出した『ダーク・アンド・ウィケッド』(2020年公開)や当ブログで度々登場する『悪魔のいけにえ』(1974年公開)同様、この救いようのなさに悶絶するタイプのホラー映画が私は大好物です。恐怖よりも絶望を感じられる作品こそ真のホラー映画だと勝手ながらに思ってます。

でもシンプルな感想で言うなら「怖かった」や「絶望した」よりも先行して「面白かった」が湧いてくるかもしれません。単に恐怖を演出するのではなく、“どんな世界へ連れていかれるの?”や “一体どうなるんだ?” という興味や好奇心が終始持続するような仕組みになっていたと思います。だから恐ろしいけど観てしまうという感情に陥るわけです。料理で例えるなら激辛グルメじゃないですか。人気ある店の激辛グルメって一辺倒な辛みだけじゃなく、その奥にある旨味こそが辛いけど食べてしまうの秘訣なんじゃないですかねぇ。まぁ辛い食べ物は得意じゃないのでよく分からないんですけどw。

まとめ

以上が私の見解です。

邦画で言えば意外にも『犬鳴村』(2020年公開)との共通点が多い気がしました。犬を食う云々の話や血族というテーマ性、それに○垂れ流しのシーンもありましたし。ただ本作の方が500倍凶悪。ちょっと次元が違うレベルですし、今年はこれを超えるホラー映画はないと思われる大傑作です。もう一回観に行っとくか。
ともあれ、あの村には『来る』(2018年公開)みたいに全国各地から祈祷師や僧侶を呼びまくって“呪術廻戦”しないとヤバいっしょw。『デモニック』(2021年公開)に出てきた銃器で武装したプリーチャーや『コンスタンティン』(2005年公開)のキアヌも必要だわ。

と勝手な妄想が広がってきたところでお開きです。ありがとうございました。

第131回:映画『グレイマン』感想と考察

今回は現在劇場公開&Netflixで配信中の映画『グレイマン』を語っていこうと思います。毎度のことながら、ややネタバレ注意です。

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イントロダクション

アベンジャーズ/エンドゲーム』のアンソニージョー・ルッソ兄弟監督が手掛けるアクション超大作。Netflix作品ではありますが一部の映画館で公開がされています。ちょくちょくあるよね、Netflixの劇場公開作品。

その界隈では「グレイマン」と呼ばれるCAIの超凄腕の殺し屋(ライアン・ゴズリング)。ある任務の際に得たCAIの機密情報のせいで組織から命を狙われるはめになる。彼を追うのは冷酷なCAIの工作員 ロイド・ハンセン(クリス・エヴァンス)。ロイドと彼が声をかけた殺し屋たちと世界各地で死闘を繰り広げることとなる。

監督のアンソニージョー・ルッソ兄弟。兄弟監督といえばジョエル&イーサン・コーエンですが、今じゃこっちの方が知名度高めでしょうか?プロデューサーとして関わっている『タイラー・レイク/命の奪還』(2020年公開)の続編が早く観たいし、こっちも劇場公開してくんねぇかな。

主演は『ドライヴ』(2011年公開)や『ラ・ラ・ランド』(2016年公開)のライアン・ゴズリング。この方の出てる作品って割と外れない気がしてます。つまり好きな役者の一人なんですが。『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』(2012年公開)とか『ブレードランナー 2049』(2017年公開)とか。『オンリー・ゴッド』(2013年公開)も好きだな。来年公開バービー人形をモチーフにした作品も楽しみです。

そして脇を固めるのがクリス・エヴァンス(2014年公開『キャプテン・アメリカ/ウィンターソルジャー』)とアナ・デ・アルマス(2015年公開『ノック・ノック』)。もうこの3人が出てる時点で洋画好きにはぶっ刺さりまくると思いますが、2019年公開『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019年公開)でディカプリオ相手に見事に立ち回ったジュリア・バターズが出てるあたりもニクいですね。

ガンアクション好きとして

本作は格闘、カーチェイス(というか路面電車チェイス)、爆破とあらゆるアクションがまんべんなく堪能出来るバラエティパックな作品ですが、特出していたのは銃撃戦だったかなと思います。むしろ格闘戦はやや観ずらいシーンが多かったですし、カー&路面電車チェイスシーンもアイディアは良いんだけどもうちょい何とかなった気がします。度々登場するドローンショットも『アンビュランス』(2022年公開)の方が勝ちでしたし。

でこっからがガンアクション好きのキモいお話になるわけですが、基本的に中盤のプラハが戦場と化すシーンと終盤の宮殿だか城をぶっ壊しまくるシーンにガンアクションがふんだんに盛り込まれていましたが FN2000、G36C、スコーピオンEvo3、タボール21、ACP9、M32グレネードランチャーRPG-7であろう銃器を確認しました。ハンドガンは基本グロック系統だったかな?とにかく銃器類もバラエティ豊富な印象で華々しいこと。それにルッソ兄弟の作品って『キャプテン・アメリカ/ウィンターソルジャー』(2014年公開)しかり割とパッと見で分かる特徴的なフォルムの銃をチョイスしてくると思いました。次のアクション映画ではAA12とかベクター登場させて欲しいわい。

まぁつまりガンアクションが面白かったという事が伝われば充分ですが、主要キャスト3者3様のキャラの面白さもあります。

ポーカーフェイスで戦い続けるゴズリング。殴られたり刺されても“うっ!”や“あぁ!”と声を出すだけで表情変わらず。サイボーグかよw 何処となくジェームズ・ボンドと『ドライヴ』(2011年公開)を足して2で割ったようなキャラは面白いですが、ギャグ発言がギャグっぽく聞こえないのが残念に感じました。

対する“アメリカのケツ”こと(今回はケツに麻酔銃打たれてましたね)クリス・エヴァンスは、ソシオパスって言うより『ナイブス・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(2019年公開)の時のようなウザさが際立っていました。ラストのタイマンファイトの立ち回りもいちいちうぜぇーって思いました。

そしてアナ・デ・アルマスは『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』(2021年公開)同様、いやそれ以上にイカしてます。冒頭の変な柄のスーツ(それを着こなしてるのがプロよね)で殴り合うシーンやロケランぶっ放しながら駆け回るシーンは素晴らしい。もう彼女主演のアクション映画を制作すべきでしょう。というか「ジョン・ウィック」のスピンオフ作品だかがそれだったような。

まとめ

以上が私の見解です。

ストーリーはだいぶ大味だし、ツッコみたくなる部分もありました。ただ爆風と銃弾でねじ伏せてくるスタイルは嫌いじゃないです。そしてこの手の火力高めアクションは映画館で観るのがベストです。私、配信がスタートするよりお先に映画館で(しかもシネマート新宿のブースト上映なるもの)観たからこそ楽しめたと思います。逆に初見が家だったら弱冠評価が変わったかも。まぁあくまで映画館至上主義者の戯言でございますが。

ということでこの辺でお開きです。ありがとうございました。

第130回:映画『X エックス』感想と考察

今回は現在公開中の映画『X エックス』を語っていこうと思います。毎度のことながら、ややネタバレ注意です。

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イントロダクション

イット・カムズ・アット・ナイト』(2017年公開)や『ミッドサマー』(2019年公開)のA24が贈るスプラッターホラー。私、未だに『ミッドサマー』が日本でヒットしたのがよう分からんのよ。それなら本作も含めてもっと多くのホラー映画が世間を湧かしていそうなのに。

舞台は1979年のテキサス。自主ポルノ映画で一山当てようと集まった男女6人3組のカップルは撮影の為に借りた田舎の農地を訪れる。6人を迎え入れたのはヨボヨボな老夫婦。撮影を開始するも何かがおかしい…。この老夫婦、実はタダものではない殺人老夫婦であった。

監督はタイ・ウェスト。『サクラメント/死の楽園』(2013年公開)や『V/H/S シンドローム』(2012年公開)とホラー作品を手掛けています。どっちも観てないなぁと思ったら、なんと動物マスク軍団VSサバイバル女子の『サプライズ』(2011年公開)に出演していたみたいです。あれなかなか面白いですよね、ミキサーの使い方とかラストとか。

主演は『ニンフォマニアック』(2014年公開)や『サスペリア』(2018年公開)のミア・ゴス。ただ者ではない圧倒的なオーラを放っていましたが、それに負けじと爪痕を残していたのが録音担当を演じるジェナ・オルテガ。この方の出てる「スクリーム」のリメイク観たいんだよな。

「最近の若者は」の根幹?

昨今の日本では「最近の若者は~」みたいな若者に対するマイナスなニュアンスを耳にしますよね。例えば、目上の人を敬まわない!とかマナーが悪い!などなど。また「若者○○離れ」なんかもありますし。20代の私自身はどちらかと言えばアナログかつ変な思考の人間なので、あまり一緒くたにされるのも腑に落ちませんがとはいえ中高年世代と物の捉え方や価値感に温度差を感じたりするのは否めません。

と急になんの話をしてるんだといった感じで始めちゃいましたが、本作ではその若者に対するマイナスなニュアンスの根源ともいえるテーマが扱われていたと思いました。

勿論「最近の若者は」思想を生み出すのは育った時代、特に思春期がどんな時代だったのかといったものが大きいと思います。しかしもっと根源的な「肉体の老化」も影響しているのではないでしょうか。肉体は老化しているのに諸々の欲求、とりわけ性欲は若い時のままだったら?心と体の如何する事も出来ないそのギャップから肉体が衰えていない若者を僻んだりやっかんだりする。今作に登場する殺人老夫婦の動機はこうしたロジカルが働いているように見えました。誰だっていつかは年を取るわけですから、なかなか生々しい。直接的な暴力描写なんかよりよっぽど怖いテーマだと思いました。

また「老い」関しては、最近の公開作品だけでもM・ナイト・シャマラン監督の『オールド』(2021年公開)やアンソニー・ホプキンス主演の『ファーザー』(2020年公開)も同じようなテーマとなっており、どれも老い=絶望として描いているのがトレンドな気がします。日本のみならず世界的に高齢化が進んでいて、その事に対する不安が渦巻いているとかあるのかなぁ。もっとディズニーの短編映画『あの頃をもう一度』(2021年公開)みたいなのが増えれば良いのに。

まとめ

以上が私の見解です。

本作、とにかく『悪魔のいけにえ』(1974年公開)の要素をめちゃくちゃ強く感じました。オマージュというか下地に物語の構想したでしょレベルで髄所随所が“ソーヤー家”。丁度同じ時期に公開となった『ブラック・フォン』にもタイトル名がセリフで登場してましたし、いかに偉大なるホラー映画かという事が分かります。ということで未見の方(とくに最近の若者は観てないのかぁ?w)今こそ『悪魔のいけにえ』を観ましょう!きっと貴方の「ホラー映画」の概念が変わりますよ。ってか本ブログのバナーの部分が『悪魔のいけにえ』でしたわ。

ということでこの辺でお開きです。ありがとうございました。

第129回:注目作品が多いんじゃ!7月上旬に観た映画をまとめてさっくり語る

2022年7月。通常なら中旬ぐらいまでは天気がグズグズしそうなところ梅雨明けがあっという間だったせいでとにかく熱い月となってます(とは言っても今週は雨か)。電力不足だってのに環境というものは残酷ですね。そしてアツいのは気温だけじゃありません。上映されている映画もアツい、アツすぎる!たまたま私が観たいと思っていた作品が被っただけなんでしょうが、毎週末どれを優先して行こうかと頭をもたげる映画ファンは多いはずです。というわけで今回は7月上旬に私が観た合計5作品をピックアップして適度にさっくり語っていこうと思います。毎度のことながら、ややネタバレ注意です。

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↑今年は見ごろが短かった紫陽花でも貼っときます

 

モガディシュ/脱出までの14日間』

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まず1発目はソマリア内戦に巻き込まれた韓国と北朝鮮の大使館員たちの首都モガディシュからの脱出を描いた実話ベースのアクションドラマ。ソマリア内戦と言えば『ブラックホーク・ダウン』(2001年公開)が有名かと思いますが、時系列的にはそれより少し前のお話といったところです。

国連加盟の為のロビー活動に勤しむ南北の大使館員の計略の張り巡らし合いが展開する序盤は去ることながら、終盤のカーチェイスシーンがド級の面白さ。本やら取り外した扉なんかをテープで括り付けたお手製防弾車(あんまり防弾になってないけど)で内戦下の街を爆走。「マッド・マックス」シリーズをも彷彿とさせるエクストリーム具合は韓国映画のパワーを感じさせます。

また戦争映画として観点で観てもなかなかレベルが高いと思いました。特に少年兵が登場するシーンは肝が冷えます。純粋に「暴力」というものを楽しんでいるかのような屈託のない笑い声をあげるんですよね。戦争が如何に人々を麻痺させるかが伝わってきます。

リコリス・ピザ』

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ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』(2007年公開)や『マグノリア』(1999年公開)の天才ポール・トーマス・アンダーソン(PTA)監督の最新作は、1970年代のアメリカを舞台にした年の差カップルの青春映画。

恋も仕事も将来もどん詰まりだったりするけどそれでも走る、走る、走る…人生は走り続けるしかありません。このカップル、きっと上手くいかないでしょうけど、好き同士で居られるそのひと時に全力疾走なんです。という訳で“走ってる映画”大好き人間としてはもう最高なシーンが多かったです。また70年代の様相を呈していながら、現代にも通ずる社会風刺が散りばめられているのもポイント。なるほど、やっぱり時代は外っつらしか変わってねーわけだ。

出来事としてそれなりの事件が起きているのに、緊迫感がなくどこかのっぺりした感じがあるのは監督らしさ。長回しも多めだったりとこのクセの強さに合う合わないがあるのは間違いない思います。でも私は好きです。個人的にPTAの作品は『ザ・マスター』(2012年公開)が一番な気がしていましたが、本作は超えてきたかも。あと無性に『パンチドランク・ラブ』(2002年公開)も観直したくなってきましたね。

そしてブラッドリー・クーパーとエンドクレジットもナイス。エンドクレジットは今年公開の『トップガン マーベリック』と同じ手法。全映画、あの終わり方で良くないですか?w

『ブラック・フォン』

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ゲット・アウト』(2017年公開)や「パージ」シリーズのブラムハウスの新作は、『ドクター・ストレンジ』(2017年公開)のスコット・デリクソン監督が手掛けるスティーヴン・キングの息子、ジョー・ヒルの短編ホラー小説「黒電話」を原作にした作品。

結論を言うとやや冗長で決して怖くはないサイコスリーラーといった印象でした。ただつまらないわけではありません。幽霊の使い方もなるほどって思いましたし、幽霊と主人公のシャドーボクシングがシンクロするシーンはグッときました。ラストの伏線回収しつつの逆襲シーンも良き。

イーサン・ホークが演じる連続児童誘拐犯のシリアルキラーはジョン・ゲイシーがモデルでしょうか。もうちょいバックボーンが欲しかったですね。逆に言えばバックボーンが必要ないほどの狂気的なカリスマ性は感じられなかったので。

そして『悪魔のいけにえ』(1974年公開)はやっぱ最高だよな、激しく同意です。


バズ・ライトイヤー

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いやー待ってました、ピクサー作品が映画館で観られる日を。一体何年ぶりか分からない映画館で上映されるピクサー作品の新作は、泣けるおもちゃ映画の傑作「トイ・ストーリー」シリーズの人気キャラクター バズ・ライトイヤーを主人公したもの。「トイ・ストーリー」とは直接関係しておらず、バズ・ライトイヤーのおもちゃとしての設定が描かれます。

全体的に「スターウォーズ」色が強かったり、自動操縦のロボは『2001年宇宙の旅』(1968年公開)のHALっぽく、バズたちの母腺は『E.T』(1982年公開)っぽさが感じられたりと様々なSF映画のオマージュをやってる印象の本作は、失敗してもそこから始まる物語もあると現代人が忘れかけているものを教えてくれる作品になっており、やはりどちらかと言うと大人をターゲットにしているように思えました。

でもよバズ、だいぶ独りよがりじゃないかい?まぁ最後は仲間みたいなノリになったけどそれは成り行きだし、新人に対する「貴方たちは不要」みたいな態度はどうなんでしょう。自分がアンディだったらこのおもちゃ欲しいかな?と考えてしまいました。

本作は日本語吹き替えで観たのですが、今回のバズの声は鈴木亮平だったんですね、いやわかんねー。バズのサイドキック的なキャラが今田美桜だってのも分からなったです。明らかに役者として出ている時の声色とは違う気がしたのでこれはディズニーに相当仕込まれてますねw。

『ソー:ラブ&サンダー』

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最後は皆大好きMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)の最新作。スーパーヒーロー集団 アベンジャーズの雷神 ソーを主人公にしたスペースオペラ映画。単独とては3作目、ソーを演じるクリス・ヘムズワースはこれが最後なのかそうじゃないのかよく分かりませんが、一旦は区切りとなりそうです。

本作で興味深く感じたのはクリスチャン・ベール演じるゴアというキャラクター。信仰していた神に見捨てられた事で神々を全滅させる事を誓った今作のヴィランです。この「神々」を「国家」に置き換えて観てみると現代にも通ずるテーマになってきます。国家に見捨てられた事で全てを失った者が最後に講じる手段が「暴力」。一種のテロリズムをこのゴアというキャラクターは表していると思いました。そして映画は“そんな暴力を行使するなんてダメだろ!必要なのは力じゃなくて愛だ!”と同じくタイカ・ワイティティ監督が手掛けた『ジョジョ・ラビット』(2019年公開)のようなラブ&ピースな結末を迎えます。

冒頭のアクションでなぜか“ヴァンダボー!”してたりジョディ・フォスターネタや「アルガルド劇団」による寸劇シーンが無駄に豪華キャストなど遊び心があったのは良かったのですが、何だか最後までストーリーにノリきれなかったせいかラストは感動出来ませんでした。寧ろなぜそうなる?という疑問が残り消化不良ぎみ。それにあのクセ強いヤギは何だったのか?音としも物語的にもノイズだと思ってしまいました。

あっちなみ私が一番テンション上がったのはクリヘムのマッチョなボディがお披露目になるシーンです。なんて綺麗な逆三角形なんだ!パンパンに張った腕周りはもはや神秘的。ありがとう!ラッセル・クロウ

 

まとめ

以上、5作品の感想と考察でした。

なんかすみませんね、おおむねケチ付けちゃって。まぁしゃーないですわ、今月は完全にホラー映画で脳がバグっているので。先日単独で感想を挙げた『哭悲/THE SADNESS』やNetfilxで配信が始まった『呪詛』、そして現在感想をまとめている『X エックス』が私の脳味噌を喰い荒らしています。今月は『女神の継承』の公開もあるので、ずっとこんな調子だろうなぁ。ということでこの辺でお開きです。ありがとうございました。

↓ちなみにこちらが『哭悲/THE SADNESS』。良い子の皆さんには閲覧注意。

captaincinema.hatenablog.com

 

第128回:映画『哭悲/THE SADNESS』感想と考察

今回は現在公開中(と言っても上映規模が局所的だけど)の映画『哭悲/THE SADNESS』を語っていこうと思います。毎度のことながらややネタバレ注意、それと今回は過激かつ淫らな表現が含まれるので、気分を害する方はお引き取りを。

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↑表紙の時点でなかなかエッジが効いてるパンフレット、つい買っちまった。絵コンテが載ってるのが嬉しいポイント。

イントロダクション

人間を狂暴化させる未知のウイルスが蔓延した台湾を舞台にしたパニックホラー。強烈なゴア描写がてんこ盛りという売り文句が影響しているのかその界隈では結構話題のご様子。私新宿武蔵野館で鑑賞しましたが、武蔵野館のスクリーン1が満席だなんて初めての体験。っていうか座席の予約もなかなか争奪戦だったし。上映館数を増やしても充分集客が見込めそうですが、R18だから無理か。

舞台は謎のウイルスが流行している台湾。“アルヴィン”と呼ばれるそのウイルスは、軽微な風邪の症状しか発症させないため人々の警戒心を薄めていた。しかしある時ウイルスは突然変異、脳に作用し人々を狂暴化させる。感染者たちは暴力への激しい欲望に抗えず街には殺戮や拷問、性的暴行が蔓延。そんな中で生き別れとなった男女が再会を果たすべく地獄と化した街を駆け抜ける。

監督はロス・ジャバズ。カナダ出身で台湾在住の方で本作が長編映画デビュー作品とのこと。マジか、これが長編デビュー作って凄まじいな。今後ホラー映画界隈で重宝されそうな鬼才っぷり。A24とかブラムハウスあたりが声掛けそうだなぁ~。

ようこそ、元気で明るい地獄へ

イントロダクションを見て頂ければお分かりかと思いますが、本作はウイルスによって混乱する世の中が舞台。これはまさに弱冠落ち着きつつもまだ気の抜けない新型コロナウイルスによる混乱 いわゆる「コロナ禍」が反映された作品です。台湾といえば比較的パンデミックを抑え込んだ国の代表格として名が挙げられますよね。保健大臣だかの存在が大きかったとか。映画に近々のテーマを反映させるとなると、どうしても社会派っぽくなりそうなところを本作はバイオレンスホラーへと昇華しています。

で、このバイオレンス描写が兎にも角にも超絶凄惨。殴る蹴る刃物を振り翳すには飽き足らず、ゾンビよろしく噛みつき肉を食い千切ったり、アレが勃ってしまったからには と言わんばかりに男女構わず無差別レイプを始めたりとやってる事がガチで人でなし。でも感染者の皆さん、ニッコニコなんです。個人的には「良い事思い付いちゃった~❤️」とはしゃぐクソガキたちが印象深い。あんな純粋な表情見せられたらもう訳わかんねぇよ。逆に明るく元気いっぱいな印象を受けてしまいます。

このように道徳の「ど」の字もないような鬼畜の所業を上映時間のほぼ全てを使って見せつけてるという力技が展開。『キングスマン』(2014年公開)の教会のシーンを100倍にしたかのようなエクストリーム具合は、あまり声を大して言うのも憚られますが楽しかったです。“二度と見たくない傑作”なる売り文句もありましたが、おかわり普通にアリだと思うなぁ。

まとめ

以上が私の見解です。

感染者同士で殺し合いをしない理由が分からなかったり、タイトルにもなっている罪悪感から涙を流す感染者も居るみたいな設定がそこまで感じ取れなかったりと納得出来ない部分は多々ありました。しかしこんな血糊の滝行みたいな作品を映画館で観るのは貴重な体験です。

健康で文化的な方にはまったくオススメはしません。でもちょっと頭のネジが変になってる映画オタクが観ると良い感じに清涼感&疲労感が得られるかと。特にホラー映画狂いなら『死霊のえじき』(1985年公開)や『スキャナーズ』(1981年公開)のオマージュだろうなってシーンもあったので必修案件だと思います。

ということでこの辺でお開きです。ありがとうございました。

※ちなみに

私、こういう映画観た後って食欲減退するかと思いきや意外とお腹空いちゃうんですよね。さながらスポーツかのよう。それだけカロリー使ってる事なんですかね。ここで暴食をせずに我慢をすればホラー映画はダイエット効果が見込めそうです。

第127回:映画『神は見返りを求める』感想と考察

今回は現在公開中の映画『神は見返りを求める』を語っていこうと思います。毎度のことながら、ややネタバレ注意です。

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イントロダクション

小学生のなりたい職業ランキングでも登場するようになったYouTuberを題材にしたヒューマンドラマ、いや歪なラブストーリー。ちなみに私、いわゆるYouTuberの方々が作成された動画はほとんど見た事のない人間。YouTubeといったらほぼ音楽を聞くのにしか使ってないですし。そんな無知なせいもあってか炎上だの暴露だのあまり良い印象は持っていないのですが。

イベント会社に勤める主人公の田母神(ムロツヨシ)は、合コンで売れないYouTuber ゆりちゃん(岸井ゆきの)と出会う。再生回数の少なさや心ないコメントに頭を悩ます姿を見過ごす事が出来ない田母神は彼女の動画作成を無償で手伝い始める。人気が出ないながらも二人の関係は良好になっていた矢先、ある事がきっかけでその関係に亀裂が生じる。

監督は𠮷田佳輔。去年公開の『空白』や『ヒメアノ~ル』(2016年公開)など、エグいヒューマンドラマを撮ったらここ最近の映画監督では抜きん出ている方だと思います。毎回ほんとHP削られますよ。去年は泥臭さが胸を打つボクシング映画『BLUE/ブルー』もありました。あっそういえば主演のムロツヨシは『ヒメアノ~ル』に出てましたね。清掃会社のちょっとヤバい先輩でしたが、もっとヤバい奴にキンのボールを吹き飛ばされる不憫な役どころでした。

承認欲求の成れの果て

本作の主人公はとにかく純粋で良い奴。良い奴過ぎるせいで徐々にダークサイドへ堕ちていく姿を観ていると、真面目な奴ほどバカをみるってのは正しいのかもと思わざる負えなくなってきます。そんな彼を陥れる原因が「承認欲求」。彼の周りには承認欲求に取り憑かれた人々が蔓延ります。恩を仇で返す勘違い女、面白ければ何をやっても良いと思っている売れっ子YouTuber、お高くとまったアートディレクター、モラルの欠片もないYouTuberキッズ。特に悪質なのが若葉竜也演じる八方美人に人の悪口を流布する会社の後輩。罪の意識は毛頭なく、自分は人を見る力があるとか言い出す始末。こわっ、こういう人居るんだろうなぁ。

勿論誰かに認められたいと思う気持ち自体が悪い訳ではないですし、どんな人にもある程度存在する感情の一つです。しかしそれがあまりにも肥大化しているのが現代だと思います。その導火線はSNSYouTubeといった誰もが自分からコンテンツを発信出来るツールが発達したからでしょう。本作中盤の印象深いファイトシーンに登場する自撮り棒なんてのもまさにその象徴的存在です。

まぁただ主人公も関係に亀裂が生じた際にあれだけジェラシーを爆破させていたのを観ると、恋心は去ることながら心のどっかに支配欲みたいのがあったのかもしれません。それに見返りを求めないってのも建前だった感はあるし。あぁ清廉潔白な人間は何処に居ませんね。卑怯で汚くてバカバカしい、ある意味それが人間らしさでもあるような気がします。

まとめ

以上が私の見解です。

本作を実際のYouTuberの方々が観たらどう思うのか気になりました。描き方としてはかなり批判的。一部肯定的とも取れる台詞も登場しますが、やはりモラルの在り方を呈するような騒動が相次いで取り沙汰される状況が反映されている印象です。真面目に取り組んでいる人も居るでしょうし、企画から撮影、編集まで手掛けるなんて相当大変だろうとは思います。ただ社会的にみると不信感が拭い切れていないのが実状といったところなのでしょうか…。

ということでこの辺でお開きです。ありがとうございました。

第126回:映画『ストーリー・オブ・フィルム 111の映画旅行』感想と考察

はい、久方ぶりとなりましたが、今回は現在公開中の(と言っても都内は新宿シネマカリテぐらい?)映画『ストーリー・オブ・フィルム 111の映画旅行』を語っていこうと思います。毎度のことながら、ややネタバレ注意。いやそんなにネタバレらいしネタバレはないかも。

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イントロダクション

2011年にイギリスで放送されたTVシリーズ「The Story of Film」がきっかけで制作されたフィルムドキュメンタリー。日本でも話題となった『アナと雪の女王』(2013年公開)や『パラサイト/半地下の家族』(2019年公開)、『ミッドサマー』(2019年公開)など2010年~2021年の11年間に公開された世界各国の作品をメインに様々な角度から「映画」についてが紐解かれていく。

監督はマーク・カンザス。本作のナレーションも務めています。この方、今までに観てきた映画は何と16000本を超えるらしい映画オタクの権現です。某不倫で干されたコメンテーターみたいに2画面同時視聴とかはしてないだろうと思いますが、1万タイトルも超えればもはや映画の生き字引、歩く辞書でしょう。でも言われてみれば私自身、今までの鑑賞タイトル数はトータル何本になるんでしょうか。2~3千タイトルは超えてると思うけどなぁ。

映画=睡眠

本ドキュメンタリー、映画とは眠りにつくことであるという定義を軸に様々な映画が紹介されていきます。映画紹介とはあまり関係のない人が目を閉じる動作が度々シーンとして織り込まれているのもその象徴と言えます。

確かにこの例えは私も理解出来ます。私自身、映画とは「現実逃避の夢」だと考えていますので。自分の人生ではきっと経験しない事象や味わわない感情を目の当たりにする事で、自己を消失させる夢が映画。この夢には良い/悪いもありますし、時に「共感」や「懐古」を味わう事もあります。それも全部ひっくるめて鑑賞前の自分とは異なる“何か”になった時間を過ごすことが出来ると思うのです。

また「寝たら嫌なことが忘れられる」や「寝て気持ちをリセットする」とか言うのと同じ感覚になれるのも類似点だと思います。長時間暗い中で物語に浸る事で一時的にでも諸々の環境や状況から離れることが出来るそんな現実逃避が人間には必要なんです。でなきゃね、やってけないっすよ。

「邦画はつまらない」と思っている人たちへ

あまり本編そのものとは関係がありませんが、少し前にSNS上でよく見かけた「邦画はつまらない」という話題を引き合いにちょっと思ったことを語ってみます。

残念ながら本ドキュメンタリーで紹介される日本の映画は『万引き家族』(2018年公開)とその関連として出される『麦秋』(1951年公開)のみ。勿論ここで挙げられる映画が全てではありませんが、フランスやアメリカと映画の歴史年数がそう変わらないはずの日本がこの有様。パンプレットに載っている監督のインタビューで挙がる日本映画のタイトルに10年代や20年代に公開された作品はありません。つまりこの2010年~2021年の11年の間にどの国の人が観ても面白いと思える日本映画があまり生まれていないのかもしれません。

しかしこれが国内の「邦画はつまらない」風潮とリンクしているのかと考えてみるとちょっと腑に落ちません。国外で注目されてなくたって充分面白い映画はあったと思っているので。今年だけでも例えば『さがす』や『ちょっと思い出しただけ』、『流浪の月』なんかはなかなか良かったと思います。特に個人的に『さがす』は大傑作だと思いましたよ。まぁ作品の好き嫌いはあくまで個人的な嗜好になりますが、果たしてこれらの面白い作品がどれだけ世間的に知られているかによるんじゃないかと思います。面白い作品が認知されておらず、逆にそうでもない作品が目立っている可能性が大いにある気がしてなりません。

ぶっちゃけ私も以前はつまらなさそうな作品が邦画には多いなと思ってました。しかしコロナ禍で洋画の公開が減ったタイミングでミニシアター系列で公開されている邦画を中心に観に行く機会が増えた(結局映画館が好きなので)ことで、今まで自分のテリトリーではないと思っていたジャンルに面白い作品が転がってるもんだと気づかされました。ちょっと視野を広げて観る作品変えてみると意外な「面白い」に出会えるのが映画なんですよね。まぁ未だにシネコンで見かける邦画にはほとんど心を動かさせることがないんですがw。予告の作り方にも問題はある気がするんだよなぁ…。

まとめ

以上が私の見解です。

正直、本気で映画が好きな人じゃないと苦行かもしれないドキュメンタリーです。なんせ淡々と映画か紹介されていくのが3時間近く続きますからね。知らない映画やあまり興味のないジャンルはウトウトしながら観るのが正解かもしれません。だって映画は睡眠ですから。私自身も所々“ぽかーん”でしたし。

ただ学びがあるのは間違いないですし、観終わった後はとりあえず映画が観たくなるはずです。個人的には「肉体」を観点として観るのは発見でした。まさか『ムーンライト』(2016年公開)や『ゼロ・グラビティ』(2013年公開)にその観点があるなんて気付かなかった。それと『マッド・マックス怒りのデスロード』(2015年公開)が如何に素晴らしいアクション映画であるかの再認識が出来たのも嬉しいポイント。つい先日、日本公開から7年(2015年6月20日だからね)経ちましたが、やっぱりあれは歴史が動いた瞬間だったんだろう。

まぁともあれ映画オタクを自負する、あるいは志す同胞の方々は挑戦してみてはいかがでしょうか。ということでこの辺でお開きです。ありがとうございました。