キャプテン・シネマの奮闘記

映画についてを独断と偏見で語る超自己満足ブログです

第5回:映画『1917 命の伝令』感想 これは、戦争版"マッドマックス 怒りのデスロード"だろ!(少々ネタバレあり)

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 今回は、現在公開中の『1917 命の伝令』ついて語ろうと思います。今作を見たのは結構前になってしまいますが、私の愛してやまない2015年公開の『マッド・マックス/怒りのデスロード』とリンクする部分があったような気がしたので、その共通点を挙げていこうと思います。『マッド・マックス/怒りのデスロード』が、いかに素晴らしい作品かは、近いうちにお話します。

 

はじめに

1917-movie.jp

まずは、簡単なあらすじを。

1917年。サラエボ事件をきっかに始まった世界初の国際戦争、第1次世界大戦から3年が経過していた。イギリス・フランス連合軍は、敵であるドイツ軍がおとり作戦を仕掛けていることに気づく。ドイツ軍の作戦にはまることを阻止するべく、イギリス軍に従軍する2人の青年が攻撃中止命令の伝言を届けに向かう。

今年のアカデミー賞では、撮影賞・編集賞・視覚効果賞の3部門を受賞。当初は作品賞も!なんて言われてましたが、『パラサイト/半地下の家族』の快進撃の前に破れたことも記憶に新しい作品ですね。正直私も、まさか他国が製作した作品に最高賞である作品賞を与えるとは思っていなかったので、この結果には驚きました。

共通点1:とにかく走り続ける

あらすじをもっと簡略かするとズバリ「目的のためにとにかく走り続ける」です。これは、『マッド・マックス/怒りのデスロード』(以下『怒デス』と省略)も同じようなシチュエーションです。『怒デス』の場合は、新天地を目指してひたすら砂漠を駆け抜けるといったストーリーであり、どちらも目的地に向かうことをゴールとしたシンプルなストーリー構造なのです。そんな目的地への道中に様々な障害が待ち受けているのがポイントです。死体で腐乱した大地やトラップ爆弾、スナイパー、川の激流などが主人公の進路を阻みます。『怒デス』での障害といえば基本的にはイカれた敵ですが、泥でぬかるんだ道は両作品にも登場する障害物でした。次にどんな敵や環境が襲ってくるかが予測出来ない緊張感に包まれているもの共通点なのです。ただ『怒デス』のようなハイテンションな雰囲気でストーリー展開はしていません。どっしり構えた厳かな雰囲気でストーリーが展開していくので、戦争映画らしさが出ていると思います。

共通点2:「リアルさ」への飽くなき探求心

全編ワンカットをキャッチコピーとして売り出されている作品ですが、個人的にはワンカットよりも注目したいのがその「リアルさ」です。

例えば、序盤で登場する塹壕。公式パンプレットによると美術と建設部門のスタッフによって実際作られた塹壕で、長さが610mに及んだそうです。また、終盤にも序盤とは異なるタイプに塹壕が登場しますが、こちらも本物。長さは約762mに及んだそうです。こんな芸当、日本じゃマネ出来ないと思います。そもそも実際の塹壕を今作の為につくるという発想が本気過ぎます。今の時代CGで出来そうなものをあえて忠実に再現ししたのです。塹壕以外にも、軍服やヘルメットも徹底的なリサーチに基づいて作られたものなんだそうです。

この徹底的に「リアル」を追求するのも『怒デス』と同じです。

www.youtube.com

こちらの動画を見て頂ければ、どれだけガチでアクションを撮っていたがか分かります。130台に及ぶ改造車を100人以上のスタントマンを動員して砂漠でぶっ壊す。もはや異常です。でも、この異常さが映画を面白くするのです。

異常なまでのリアルさの追求。両作品の共通点であると同時に映画作りの大事な部分の一つだと思います。

共通点3:生きる希望の再生

主人公の心情の変化もある種の共通項があったようにみえました。

スコフィールド上等兵(伝言を届けに向かった兵士のうち面長な顔立ちの方)は激戦となったティプヴァルの戦いを経験しており、その戦いでの貰った勲章をフランス軍兵士とワインに交換したという話を相棒のブレイク上等兵に話すシーンがあります。ブレイクさん、これに対し「なんでだよ?母国に戻ったら家族に自慢出来たのに」と言います。しかしスコフィールドは「そんな銀の欠片、持って帰ったってしょうがない。それに母国に帰るつもりもない。」といった内容を返したのです。恐らく自分が生きて帰れる保証なんてないと絶望しているからこその発言だったと思われます。

しかし、ラストはこんなシーンで終わります。木に寄りかかって座るスコフィールドさん。胸ポケットから缶の箱を取り出します。その中には自分の家族の写真があり、それをしっかりと握りしめ目を閉じるのです。このシーンから私が感じたのは、「生きて帰ろう」という強い思いでした。彼は今回の命がけの伝令をきっかけに生きることへの希望をを取り戻したのです。

『怒デス』の主人公、マックスも同じように荒廃した世界で多くの命が失われていくことに絶望しています。「希望は持たない方が良い。希望を失ったら後に残るのは狂気だけだ。」なんて発言もしてましたし。それでも最後は、一途の希望を賭けて戦いに臨んでいくことになります。重傷を負った仲間への呼びかけとして自分の名前を初めて告げる行動からも、生きる希望のようなものを感じました。

両作品から感じられた「死」の絶望から「生」の希望へと変化していく心情の過程。見ている私自身にも希望が湧き起こってきたのです。

おわりに

今作はIMAXレーザーで見ましたが、めちゃめちゃ大迫力でした。映画館で見ないと良さが半減してしまう気もするので、なるべく大きなスクリーンで見ることをオススメします。

ということで今回は、この辺でおひらきです。ありがとうございました。