久方ぶりとなりました。というのもGWの最終日、数年ぶりに風邪でダウン。微熱&関節痛でしっかり寝込む有様。それが終わるとえげつない喉の痛みがしばらく続いた事で色々やる気を削がれておりました。
そんなコンディションの中、ちまちま読んでいたのが大高宏雄の『アメリカ映画に明日はあるか』。つい先日も洋画を観に行く人は“シリアスな映画ファン”なんてよく分からない呼称をSNS上でされているのを見かけましたが、確かに洋画 とくにハリウッド映画を観に行っている人口が減っているのは事実感じる所はあります。だって観に行った回が満席の洋画っていつ経験した?今年だと『オッペンハイマー』しかないし、去年だって『ミッション:インポッシブル デッドレコニング』と『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー Vol.3』ぐらいなもんですよ。最近だとあれだけ”ゴジラ”が騒がれたのに『ゴジラ×コング 新たなる帝国』が意外と空いてて驚きしましたし。何故なのかは自身でも粗方予想はついていましたが、新たな発見もあるかと思い手に取ってみました。
という事で今回は本書を読んで思ったこと/考えたことを語っていこうと思います。
人気低迷はいつから?
まず洋画が低迷傾向となったのはいつなのか?という話。本書は2000年から2023年のアメリカ映画に関する出来事や著者の思いを年ごとに振り替える形となっており、その時その時のアメリカ映画の世相や時代感を知る事が出来ます。私自身が映画館に本格的に通い出したのが2014年頃だったので、それ以前に関しては体感としてあまりないのですが、どうやら低迷し出したのは2006~2008年。2006年に「洋画離れ」というワードが聞こえるようになり、21年ぶりにシェア率が洋画と邦画で逆転した年(2006年以降は洋画の方が売れてたのかぁ)。2007年に人気シリーズの影響で少し吹き返すも2008年に一気に低迷傾向に入っています。
原因として言及されているのがCG技術の発達。CGやVFXといった技術の進歩により様々な表現が可能になった一方、“CGだから何でもで出来るんでしょ?”というマインドが一般大衆の間に定着。衝撃や感動を覚えなくなり関心が失われたと。またCG技術がマンネリ化をもたらし、新しいジャンルの開拓が出来ていないとの指摘もありました。
確かに大衆が感動しなくなったというのは分かる気がします。今じゃ逆にCGを使わずに、実際にスタントをこなして撮影した事や大規模なセットを組んだという事が持ち上げられがちです。私自身、爆発とかはCGより実際にやってる映像の方が好きですが。
しかし、ここで気になってくるのが”観客はCGか実写かを本当に見分ける事が出来ているのか?”という事です。何気ない風景や登場人物が会話/アクションをしている背景が実はCGでしたなんてシーンは昨今じゃ当たり前だと思うのです。だから一概に洋画不振がCGのせいだとは思えませんし、実写で撮った映像ばかりをよいしょする風潮も違うと思うのです。大事なのは実写とCGの組み合わせによる斬新さ。まぁこれが上手く出来てる作品が少ないのかもしれません。
洋画はオタクしか観ないのか
では、洋画そのものはもう観られていないのか?本書の2016年度に「洋画を観る人、オタクの時代なのか」という章があります。一部の大学生の間で洋画の観る人はオタク扱いをされているとのことや『ジェイソン・ボーン』の客入りが悪いといった話で所謂”若者の洋画離れ”を嘆いた文面となっています。
しかし私はそうでもないと思っています。意外と過去の有名作品を配信で観てる率が高いというのが実感です。例えば『レオン』や『スタント・バイ・ミー』。比較的最近の作品だと『インターステラー』とか『セッション』のあたりは割とどのレイヤーの人と会話しても観たことあると言う人が多い印象です。これらは恐らく動画配信サービスの浸透故だと思います。
ほら、昔はオタクしか観てなかったアニメを今は誰もが観ているのもそうですよ。アニメに関しては今やスポーツと並ぶメインカルチャーといって良いでしょうね。
やはり大きいのは…
つまり今の日本は「洋画を観てる人は居るけど映画館で洋画を観に行く人が少ない」の状況だと考えているのですが、やはりこの大きな原因となっているのがスターの不在だと思います。
本書でも度々登場するレオナルド・ディカプリオ。それこそ『タイタニック』かその後の『ザ・ビーチ』の時は凄かったらしいじゃないですか。空港の出待ちでごった返しの映像とかTVで見たことあります。しかし『ギャング・オブ・ニューヨーク』や『アビエイター』とマーティン・スコセッシ監督と組むようになってからは作家性の強い作品への出演が増えており、娯楽大作からは少し距離をおいた印象に。この系統で言えばブラッド・ピットも該当者。今は出演作よりプロデューサー業に精力的です。現状、娯楽大作で活躍する往年のスターはトム・クルーズとキアヌ・リーヴスぐらいでしょうか。
娯楽大作から離れたスター以外では『マスク』のジム・キャリーや『プラダを着た悪魔』のアン・ハサウェイ と今なお現役ですが、正直に言ってひと昔程の勢いは感じられない方々も居ますよね。ウィル・スミスは色々あったし、キャメロン・ディアスは引退してるし…(いや復帰した?)。そんな彼らを観られるのが過去の作品というわけで、配信で旧作は観るも映画館への足は遠のいてると思いました。昨今リバイバル上映が多いのは人気のスターが出ているからという理由もありそうな気がしてきます。
そして彼らに代わる次世代のスターが男女共に不足しているのは間違いないと思います。その原因はどこにあるんでしょうね。ハリウッドスターにおける“推し”の登場/定着こそがアメリカ映画の明日への活路ではないかとつくづく思います。
まとめ
以上が私の見解です。
真面目な話になりましたねぇ。でもまぁ昔と比べて売り上げが落ちるのは仕方ないですよ。娯楽が多様化した事で皆が憧れて髪型や服装のマネをするアイドルや視聴率が40%超えるTVドラマなんてものはもう生まれない時代ですから。だからさ、業界の方々は大衆に媚びるような企画じゃなくもっとニッチな部分で金脈を探して、私のような人間にアホみたく金を出させれば良いんですよ!
と自滅的な感じになってきたのでこの辺でお開きです。ありがとうございました。