キャプテン・シネマの奮闘記

映画についてを独断と偏見で語る超自己満足ブログです

第115回:映画『ベルファスト』感想と考察

今回は現在公開中の映画『ベルファスト』を語っていこうと思います。毎度のことながら、ややネタバレ注意です。

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イントロダクション

トロント国際映画祭で観客賞を受賞し、今年の米国アカデミー賞では作品賞、監督賞ほか計7部門にノミネートされたヒューマンドラマ。

舞台は北アイルランドベルファスト。そこで育った主人公の少年 バディ(ジュード・ヒル)は家族や友人と共に穏やかな日々を過ごしてした。しかし1960年代の後半から始まった少数派カトリック系住民の排斥運動による地域紛争 北アイルランド問題によって一転。暴力と隣合わせの環境下、バディとその家族は故郷を離れるか否かを迫られる事になる。

本作は監督・脚本を務めるケネス・ブラナーの幼少期に基づく自伝的作品となっています。っていうか現在ギリギリ公開中かと思われる『ナイル殺人事件』の監督も務めているので、『ベルファスト』&『ナイル殺人事件』でケネス・ブラナー特集を組んで映画館はしごする猛者が居るんじゃないか?w

キャストも良いメンツが揃ってます。お父さん役はジェイミー・ドーナン。「フィフティ~」シリーズが有名だと思いますが、個人的には2016年公開『ルイの9番目の人生』が結構好きなんだよな。お母さん役はカトリーナ・バルフ。名前だけだとピンと来なかったのですが調べたところ大傑作『フォードvsフェラーリ』でクリスチャン・ベール演じるケン・マイルズの奥さんを演じていた方でした。あぁもう映画館で観てガチ泣きして2年になるのか、懐かしい。そして、おばあちゃんはジュディ・デンチが演じています。エンドクレジット見るまで分からんかった。数多の作品に出ているレジェンドですが、ブラナー監督作で言えば2017年公開『オリエント急行殺人事件』に出てましたね。

奇しくも重なるウクライナ侵攻

本作の大きな軸となるのが「北アイルランド問題」と呼ばれる民族紛争。北アイルランドに存在していたプロテスタントカトリックの長きにわたる分断が1969年に武力闘争へと変貌。イギリス軍をも巻き込んだ争いとなり、1998年の和平合意に至るまでの間に3000人以上が死亡したとされています。私自身、本作を観るまでは名前を聞いた事があるぐらいだったので、まさかここまでの年月と死者数を出した悲劇だとは思ってもみませんでした。

これを幼い頃に経験したのがブラナー監督。冒頭の下町情緒溢れる平穏な日常が一変する様には息を吞みます。しかしそんな激動の中でも変わらないのが、家族を思う気持ちであったり故郷での思い出だったりするわけで、分断や暴力よりも家族愛やノスタルジーにフォーカスの当たった作品だと思いました。それなので見終わった後は決して暗い気持ちにはならなず、寧ろ希望を感じられる作品だったと思います。

しかしバディとその家族は故郷を離れるか否かを迫られる様子は、連日報道されている難民とならざるを得ない人々の境遇と重なってしまいます。現在ウクライナ国内の子供たち750万人中430万人が国外への避難を余儀なくされているようです。主人公のように友達をはじめ親しい人たちとの別れを拒んだり、悲しんだりした子供たちが多くいるはずだと思うと心苦しい限りです。一刻も早く平和な日常が訪れる事を願ってやみませんし、悲しみで花が咲くものかってことをあの人に分かって欲しいものです。

まとめ

以上が私の見解です。

最後の“悲しみで花が咲くものか”はサンボマスターの「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」に登場するフレーズです。あの歌、愛と平和を高らかに歌ってますから。

イムリーなテーマとなってしまった作品ですが、上記のように悲しいだけではないので多くの人が感動出来る作品かと思います。

あっそういえば主人公が「マイティ・ソー」のコミックを読んでいるシーンがありましたね。なるほど、分かる人には分かるネタです。

ということでこの辺でお開きです。ありがとうございました。

 

参考:

北アイルランド紛争とは - コトバンク

ウクライナ危機 紛争激化から1カ月が経過 子どもの難民は430万人に