キャプテン・シネマの奮闘記

映画についてを独断と偏見で語る超自己満足ブログです

第165回:映画『フェイブルマンズ』感想と考察

今回は現在公開中の映画『フェイブルマンズ』を語っていこうと思います。毎度のことながら、ややネタバレ注意です。

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イントロダクション

10人の一般人に「映画監督といえば?」と質問をすれば恐らく8人ぐらいはこの名を口にするのではないかという生ける伝説 スティーブン・スピルバーグ監督が自身の原体験を基にした自伝的映画。

初めて映画館に行って以来、映画の虜になってしまったサミー(青年期:ガブリエル・ラベル)は、ピアニストで芸術家肌の母(ミシェル・ウィリアムズ)からプレゼントされた8㎜カメラで映画を撮り続け、いつしか映画監督になる事を夢見るようになる。しかし天才科学者の父(ポール・ダノ)からはその夢を趣味だと見なされていた。

ジョーズ』(1975年公開)『ジュラシック・パーク』(1993年公開)『プライベート・ライアン』(1998年公開)と時代を変えてきたレジェンド監督に説明は不要でしょう。しかしこんな自伝的な作品を撮るなんて、そろそろ終活準備でも考えているのか?

キャストはミシェル・ウィリアムズ(2016年公開『マンチェスター・バイ・ザ・シー』)にポール・ダノ(2007年公開『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』)と良作確定布陣。それ以上に驚きだったのが『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019年公開)のジュリア・バターズですよ。もうあんなに大きくなったんですね。でもいわれてみれば「ワンス~」はもう4年前、時が経つのは早いぞ。

↓監督の前作『ウエスト・サイド・ストーリー』(2022年)についてはこちら

captaincinema.hatenablog.com

 

天才だって苦労はあるさ

スピルバーグの自伝」なんて売り文句を見たらまぁ期待せずにはいられません。あの作品の裏側は?どうやって生み出されたのか?そんな事を妄想せずにはいられませんが、いざ蓋を開けてみるともっとパーソナルな話で映画作りの根源ともいえる部分を辿る物語でした。映画大好きサミー少年ことスピルバーグ少年は、家庭崩壊とユダヤ人差別に苛まれていました。今や名実共に認められる人物にだって人知れぬ苦労があり、その苦労が数々の作品に通じていたのです。とくに家庭崩壊のきっかけとなったある事に気付いてしまった瞬間の中盤のシーンは『ミッドナイト・クロス』(1981年公開)っぽかったですね。意図せず記録してしまった事で知る事実みたいな感じ。喜びも悲しみも全部を記録してしまう映像は時に残酷だと感じます。

こんな感じで“夢を叶えるには痛みや悲しみも伴うよ”というメッセージが込められています。しかしそれ以上に芸術的センスを母から授かり、論理的/数学的思考を父から授かった男はやはり天才であるとしか言いようがありません。だってフィルムに穴を空けて銃のマズルフラッシュを表現するなんて中学生ぐらいの年で思い付きます?戦争映画を撮った時だって、あんなラストショット普通素人が撮れますか?そもそもあれだけの人や物を集めて映画撮る事が出来るその行動力や統率力もお見事ですよ。だから「夢を追いかける人へ」ってのは逆に辛辣に思えました。格の違いをまざまざと見せつけるというか。まぁ私自身夢追い人ではないので良いんですけど、やっぱり才能ありきと穿った見方をしてしまいました。

まとめ

以上が私の見解です。

見せ方も流石のクオリティでした。正直ストーリー自体はありきたりな気もしましたが、まったく飽きのこない2時間半を作り出す妙。高校のシーン、特にプロムのシーンにおける計算された人流運びは2022年『ウエスト・サイド・ストーリー』に通ずるものがありました。ってかあの高校の時の彼女さん、モテない男子理想の彼女って感じであそこだけメルヘンな気がしましたがマジな話なのかなぁ。

という事でこの辺でお見事です。ありがとうございました。