キャプテン・シネマの奮闘記

映画についてを独断と偏見で語る超自己満足ブログです

第179回:映画『ソフト/クワイエット』感想と考察

今回は現在公開中の映画『ソフト/クワイエット』を語っていこうと思います。毎度のことながら、ややネタバレ注意です。

f:id:captaincinema:20230525232939j:image

↑顔こぇー

イントロダクション

白人女性たちが持つ憎悪をワンカットで炙り出すスリラー作品。

幼稚園の教師であるエミリー(ステファニー・エステス)は、アーリア人団結を謳う白人至上主義グループを発起。教会の談話室で開かれた初会合には、多文化主義や多様性に不満を抱えた女性たちが集まっていた。日頃の不平不満や過激な思想に花を咲かせた彼女たちは2次会のためにエミリーの家へ向かうが、その途中に立ち寄った食料品店でアジア系の姉妹と鉢合わせる。

監督はベス・デ・アラウージョ。本作が長編デビュー作なんだそう。今後、監督さんの名を耳にする事が増えるでしょうか?ちなみに製作はブラムハウス。「パージ」シリーズや『ゲット・アウト』(2017年公開)等、社会問題にブラックユーモアを交えて描いた作品を多数世に送り出していますが、今回は割とユーモアやエンタメを取り除いたヘビーな作品で、意外と新機軸だったかもしれませんね。

憎悪の暴走

冒頭 清掃員を見る主人公の目から嫌~な予感が漂ってきますが、初っ端早々ハーケンクロイツが刻まれたパイが登場…っておい!ヤバいだろ。調子に乗ってナチ式の敬礼までしてるし。こんな人が幼稚園の教師をやってるってのがもう恐ろしいですよね。

そんなアウトな女子会で口にされるのは、不妊治療が上手くいかないだとか出会いがない、昇進できない、金がない等々。それを人種差別に帰結すんじゃねぇよって話なんです。そりゃ今の社会が生きづらいのは社会環境そのものに責任の一端はあるでしょう。しかし特定の人種に責任がある訳ないです。こんな世界になったのはきっと人のせいばっかにして自分を顧みない怠慢な人がいるからですよ、バーカバーカw

と正論カマしましたけど、正直に言うと彼女たちが昨今の世の風潮にうんざりしている気持ちも分かります。多様性とか受容なんて百も承知で聞き飽きましたよ。そもそも憲法14条だかに「法の下の平等」ってのがあるのでどんな人間も認められるべき存在のはずなのに、いちいち声高にやれ人種だマイノリティだのを切り出して主張をしたり物事を考えてる時点で辟易してしまいます。過敏に反応し過ぎる“意識高いですよ”の人たちにも虫唾が走るし…。

だから観ていて“あっ自分にも汚い憎悪があるかもなぁ” なんて一抹の不安も過りますが、彼女たちの憎悪はそんなもんでは終わりません。既に女子会内でマウンティングみたいになっているのも気持ち悪いですが、次第にエスカレートし意思疎通の取れないモンスターへと変貌していく様には肝が冷えます。特にムショ上がりの「みんなに貢献したいで〜す」な陰謀論とかにすぐ騙されそうなメンバー最年少が徐々に迫力を増していく感じは凄まじい。完全に主役を喰っちゃってましたね。

まとめ

以上が私の見解です。

嫌な気持ちになる意欲作。一見の価値はありますが一度で充分。

ただワンカットにする意図はあまり汲み取れませんでした。臨場感を演出ってのはあるんだろうけど、この手のテーマに必要な要素か?普通に劇映画した方が尻切れトンボ感のある結末にはならなかったと思います。あっ差別主義の当事者意識を体験させる的な?だとすれば効果は多少ありそう。でもイチ日本人からするとやっぱ被害者意識で観ちゃうよねぇ。

という事でこの辺でお開きです。ありがとうございました。