今回はこの時期の記事として恒例化しつつある日比谷・有楽町を中心に開催されていた東京国際映画祭(TIFF)に行ってきましたのでそのレポートをしようと思います。ちょっと時間が空いてしまいましたがね。というのも現在大流行中のインフルエンザに10年以上ぶりに罹ってしまいダウンしていました。いやインフルってこんな感じだったのか。関節&筋肉痛で体全身ボロボロで横になっているのも一時は辛かったですね。そんなこんなで今後一般上映される可能性もあると思いますので、鑑賞作品の内容については極力触れないようにはしますが、いつも通りややネタバレには注意です。

今年のチケット争奪戦
今年のチケット発売日は10月18日でしたが、なんとこの日は私下関に滞在中。一人旅なら都合は付きますがよりによって珍しく友人と来ているためそうは問屋が卸さない状況。これは壇ノ浦で散った平家の如く敗北せざるを得ないのか…。しかしそう簡単に諦めきれないのがオタクの品格。タイムスケジュールを見ると一番の目当てとしているコンペディション部門の販売は16時から。これならホテルのチェックインから夜ご飯を食べに外へ出るまでの少々の間に攻勢に出れるのでは?16時きっかりにアクセス出来なくても巌流島の決闘に遅刻した宮本武蔵は勝利したじゃないか!そうと決まれば短期決戦。部屋に入るなり、友人に「少し集中させてくれ」と声をかけ早速アクセス。繋がりづらいという事はなく狙いを付けていた『アトロピア』へ。おぉ!空いてんじゃん!夜遅い時間帯だからというのもあるとは思いますが、これは幸先良いのでは?お次は『死のキッチン』。ぬぐっ…もう見づらそうな席しか空いてない。販売開始から30~40分程度でこれです。やはり浅野忠信出演というネームバリューがデカいのか。見づら席でも取るべきか迷っている暇はないのでここは潔く撤退。あとは時間の都合が付く作品を2つ確保。まぁ旅行先で3作品確保出来たのは御の字でしょう。こうして予約戦争という名の関門海峡を流されつつも突破したのでした。
DAY1

1日目は10月27日。映画祭自体も初日でレッドカーペットが行われていたようです。まぁレッドカーペットは目的としていない、というより仕事終わりに駆け込んで来ているわけですから。そんな仕事着で観たのが
『マタドール』
1986年公開のペトロ・アルモドバル監督による初期の頃の作品。実は私、アルモドバル作品を観るのは初めて。ただ本映画祭での紹介文には「殺人にエクスタシーを感じる男女の運命的な出会い」と書いてあったのでこれは気になります。
怪我で引退を余儀なくされた闘牛士の基で学ぶ少年 アンヘル。彼は男らしさを誇示する理由で女性への性的暴行未遂を起こし警察へ出頭。そこで見知った一連の殺人事件は自分がやったものだと嘘をつくが、本当の犯人というのが殺人にエクスタシーを感じる男女だったというスリラー作品。
とても変な映画でした。クローネンバーグの『クラッシュ』(1996年公開)のような作品だなと観ていて思いましたが『クラッシュ』程のクールな雰囲気はなく割とコメディに近い印象を受けました。だってアンヘル君、意味わかんないもん。最初は単にマチズモに憑りつかれた青年かと思っていたら、マチズモとは関係のない罪を被ろうとするし終盤には急に透視能力を覚醒させるという謎展開もあります。ほんと何がしたいんだよw このアンヘル君を演じているのが、若かりし頃のアントニオ・バンデラス。『デスペラード』(1995年公開)や『マスク・オブ・ゾロ』(1998年公開)のイメージが強かったので、こんな作家性の強い作品にも出演してるんですね。
またジャッロの影響も感じられました。ジャッロ映画を観ているシーンから始まるので明白だとは思いますが、あの映像は多分『モデル殺人事件!』(1964年公開)です。
ちなみに会場はシネスイッチ銀座。2階席が残る数少ないミニシアターでしょう。今回は残念ながら1回席でしか取れなかったのですが、2階席の最前列真ん中の席が好きなんだよね。スクリーンを独占している感じがあって。
DAY2
2日目は11月1日。映画サービスデイという事もあり昼間に『V/H/S 99』を観てから現地入り。すっかり暗くなった日比谷で観たのが
『アトロピア』
です。イラク戦争への派兵を想定し中東の街並みを再現した軍事演習場「アトロピア」。そこで働くイラク系の女性が奔走する戦争コメディ作品です。映画において思い出される軍事訓練といえば『フルメタル・ジャケット』(1987年公開)や『ハクソー・リッジ』(2016年公開)で描かれるような人権無視のスパルタ教育。しかし本作では架空の都市の住人を演じる役者たちにフォーカスがあたっている事もあってかコメディやロマンス描写が中心で"こんな訓練で大丈夫なのか?"と心配になるほどオフビート。戦争映画というよりもお仕事系映画の印象が強かったですが、これは女性監督ならではの視点かもと思えて新鮮でした。
そしてラストのクレジットにびっくり、えっアトロピアってマジであるの?まぁあそこまでダウナーな感じではないでしょうが何だか頓珍漢な事をやってんだなぁ…。上映後ヘイリー・ゲイツ監督によると、当初はドキュメンタリー映画として撮りたかったとの事。しかし軍からの取材許可が下りなかったため、働いた経験のある方からの取材を基にフィクション映画を撮ったのだそうです。なるほど、確かにこれはドキュメンタリーで観たいかも。
こうした興味深い視点が共感を呼んだのかカラム・ターナーやクロエ・セヴィニーといったキャストが参戦しており、まさかのビッグな特別出演もありました。あの人はああいったアホなキャラを演じるとめちゃ輝くよねw 会場全体のウケも良い感じだったので、今後全国上映もありえるんじゃないでしょうか?いや洋画氷河期の日本では厳しいか(悲しみ)

↑あー遠い。しかしダブルピースしてくれている事が分かります。その後も全力で手を振ったりスキップして会場を後にされたりとチャーミングな監督さんでした。
DAY3

3日目は11月3日。ぶん…いやゴジラの日です。去年は日比谷でゴジラフェスがやってましたが、今年はやってませんでした。新宿でやってたのかな?そんな中で観たのが
『パレスチナ36』
”36”とはパレスチナ独立戦争が開始となった1936年を指した数字。この戦争は39年まで続きましが、これは一つの区切りに過ぎず今なおパレスチナ自治区では激しい戦闘や虐殺が繰り返されています。
1936年にはまだイスラエルは建国されておらず、英国統治下に置かれていたパレスチナ。ナチスの弾圧から逃れてきたユダヤ人たちが入植をし始めるとシオニストたちによる謀略により徐々に土地を侵蝕されていく様に胸が重くなります。勘違いをしてはいけないのがユダヤ人が入植をしたのが悪ではなく、シオニズムを掲げて排外的な事を行うのが悪だという事ですね。ここでポイントだと思ったのが製作にイギリスが携わっている事。つまり軍による不当な取り締まりやシオニストに傾倒した政策を行ったという事を認めているわけです。加害の歴史に向き合い反省をすると共に同じ事を繰り返さないための警鐘を鳴らす姿勢は評価されるべきです。
また、終盤の村がイギリス軍によって制圧されるシーンは『炎628』(1985年公開)が頭を過ぎりました。その指導者として登場するのがオード・ウィンゲート。終始ムカつく奴だったな、私がやってるスマホゲームだと雑魚キャラくせによぉ!
本作鑑賞前に観た『爆弾』では「破壊する事は簡単でやろうと思えば誰にだって出来る。しかし壊さずに守ろうとする事の方が難しくやりがいがあるんだ」といった台詞がありましたが、まさにこのパレスチナ問題にも当てはまると思いました。攻撃をして排除するのではなく、どうすればお互いの権利/主張を保護し合えるのかを考えるべきです。そっちに頭の使えない人間が政治家になるとろくな事にならないのです。
ちなみに本作が今年のグランプリを獲得した作品になりました。そりゃご時世柄そうなるでしょう。
まとめ
以上、今年の映画祭でした。
今年は全体的に世の勤め人には厳しいスケジュールな気はしました。今年一番の注目作品だったであろう『MISHIMA』が平日の昼間一回ってそりゃないぜぇ~(涙目)。『MISHIMA』に関しては追加上映が決まったらしいですが、この厳しいスケジュール感覚は恐らく丸の内TOEIが無くなったのが影響しているように思えます。キャパのある会場を一つ失った状態ですからね。やはり映画館が閉館するというのは非常に世知辛いものがあります。
という事この辺でお開きです。ありがとうございました。