キャプテン・シネマの奮闘記

映画についてを独断と偏見で語る超自己満足ブログです

第110回:映画『ウエスト・サイド・ストーリー』感想と考察

今回は現在公開中の『ウエスト・サイド・ストーリー』を語っていこうと思います。毎度のことながら、ややネタバレ注意です。

 

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↑しゃれたポスターね

イントロダクション

1961年にも映画化されたブロードウェイミュージカル「ウエストサイド物語」をスティーブン・スピルバーグ監督がリメイクした作品。

舞台は1950年代のニューヨーク。街の再開発が進むウエストサイドには貧困層の移民が取り残された状態。移民系の若者たちは同胞同士で徒党を組んでいがみ合っており、ポーランド系の「ジェッツ」とプエルトリコ系の「シャークス」は暴力をも辞さない抗争ぶりだった。そんな中、「ジェッツ」の元リーダーであるトニー(アンセル・エルゴート)と「シャークス」のリーダーの妹マリア(レイチェル・ゼクラー)が恋に落ちる。その恋は対立する2つのグループの運命をも狂わせる事になっていく。

トニーを演じるアンセル・エルゴート。一昨年あたりに性的暴行の告発を受けており、未だ疑惑が晴れていない状況の俳優さんです。本作の出演者の多くが中立的なコメントを発表しており、早々にクリアにしないといけない問題かと思います。そうじゃないと『ベイビー・ドライバー』(2017年公開)の続編が動かないっすよ。続編を待ってる身としては、どうなることやらって感じです。

マリアを演じるレイチェル・ゼクラーは3万人のオーディションから選ばれたらしい新星。映画出演は初らしくYouTubeの歌唱動画で有名だったみたいです。なんだかイマドキですね。今後ちょいちょいお見かけする事になるでしょう。

 

さすがのスピルバーグ

さすが映画史に名を馳せる巨匠が手掛けただけはある完成度の高さです。

まずダンスシーンがどれも面白い。カメラワークや人の動かし方、今風に言うと「人流」のコントロールの上手さに感服です。とくに体育館でのダンスパーティーシーンは圧巻。軍隊かよってレベルの流麗なフォーメーション。ポーランド系は寒色、プエルトリコ系は暖色の衣装を着ている点も興味深かったです。

また暴力は暴力として描いた点も好感を持てました。例えば終盤の決闘シーンの場合、61年版はダンスシーンで表現をされていました。しかし今作においては、鉄パイプや鎖を拳に巻いたりなんてした装備でガチの殴り合い。短いながらも本格的なナイフファイトまで登場します。スピルバーグ監督って「暴力」を生々しく描くのが得意な人だと思ってまして(その力が最大限発揮されたのが1998年公開『プライベート・ライアン』でしょう)、暴力を決して美化しないという点は一つのブラッシュアップポイントだったのかなと思います。

 

やっぱり咀嚼出来ないストーリー

このように様々な点で「ブラッシュアップ」が試みられてる意欲作になっています。特に、リメイクした意義が様々なメディアで取り上げられ社会派路線のニュアンスを呈している通り、キャスティングのブラッシュアップには相当注力したようです。(だからこそアンセル・エルゴートの件が看過できない状況なんですよね)

しかし一点“あれっ?ここはブラッシュアップしてないの?”と思った点が個人的にありました。それがストーリー。ここだけはそのまま忠実に再現をしているように見えました。このストーリー、私からすると「皆さん、ちょっと冷静になれよ」と言いたくなります。“一目惚れでそんなに愛し合えるか?”とか“血の繋がった家族をあんなにした相手とその行為はいくら何でもないでしょ?”など常に頭の中が疑問符で充満するので、現代の価値観での咀嚼が苦しい気がします。その為こう言っちゃなんですが、素晴らしい歌とダンスで誤魔化しているだけで、人間ドラマの複雑味はほぼ皆無に感じました。あっ俺の心が腐ってるから理解出来ないのか?wだとしても、スピルバーグには61年版を観た時も感じたこの歯痒い気持ちを晴らして欲しかったなぁ~。

 

まとめ

以上が私の見解です。

ちょいと否定的な事を書いちゃいましたが、視覚的には楽しいので映画館で観る価値は充満にあると思います。

あっちなみにミュージカル映画でまさかの銃の話が登場するんですよ。中盤ぐらいに「ジェッツ」のお頭が銃を入手するシーン。“コルトは使ったことあるぞ”とか口径がどうのとか。で、手に入れるのはS&WのM10というね。いや~ニヤニヤが止まらんかった。こんな気持ち悪い見方をしていたのは、あの場内できっと私だけだったしょうね。

ということでこの辺でお開きです。ありがとうございました。

※余談

本作の予告だったかに「スピルバーグ史上最高傑作!」なんて売り文句を見かけたんですけど、ちょっと待ちなさい!スピルバーグ監督の傑作については議論の余地があります。とにかく世界のカルチャーに影響を与えた作品が多くある監督なので、少なくとも本作ではないんじゃないかと思いますね。

そんな私が思うに最高傑作は『ジョーズ』(1975年公開)か『ジュラシック・パーク』(1993年公開)ではないでしょうか?『ジョーズ』はA級からB級まで量産され続けるサメ映画の元祖みたいな存在と同時にある種のディザスタームービーのフォーマット的作品だとも思います。また『ジュラシック・パーク』は今尚続く人気シリーズですし、詳しい事は忘れましたがCGの技術をワンランク上へ持っていった作品であるって話も聞きた事があります。この2つは越えられない気がするな。まぁ広告の売り文句なんかにガチになるのもバカバカしいかw。