キャプテン・シネマの奮闘記

映画についてを独断と偏見で語る超自己満足ブログです

第70回:映画『Arc アーク』感想と考察

今回は、現在公開中の『Arc アーク』について語っていこうと思います。毎度のことながら、ややネタバレ注意です。

 

 

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イントロダクション

 ケン・リュウの短編小説『円弧(アーク)』を原作としたSF作品。

舞台は近未来。プラスティネーションの技術を応用して遺体を生きていた姿のまま保存する「ボディーワースク」と呼ばれる仕事をすることになった主人公(芳根京子)。やがてこの「ボディーワースク」の技術を発展させて編み出された不老不死の施術を受け、人類で初めての永遠の命を手にすることになる。

ちなみにプラスティネーションの技術は実際に存在するようです。原作者のケン・リュウはドイツの展示会を見たことが小説を書くきっかけになったとか。画像検索してみるとちょっと背筋がゾッとします。

監督は『蜜蜂と遠雷』(2019年公開)の石川慶。『蜜蜂と遠雷』は綺麗な映像と音楽が融合した作品だった印象。私はDVDで観たのですが、映画館で観れば良かったかなぁと少し後悔ましたね。

 

「不老」は出来ても「不死」は無理?

本作、恐らく賛否がかなり分かれるでしょうし、観た人それぞれで解釈が異なってくるタイプの作品だと思います。そんな作品で私が個人的に考えたのは「不老」が出来ても「不死」は不可能ではないかという事です。

もしかしたら将来、科学の進歩によって老化による絶対的な死を免れる事が出来るかもしれません。iPS細胞のような再生医療の研究も進んでいることですし。しかし事故や災害、今のご時世で言うなら未知のウイルスがもたらす偶発的な死はどうでしょう?これに関してはなかなか防ぐのは厳しい。

作品内でもそんな偶発的に訪れる死を感じさせる事象がありました。例えば中盤、老化を防止する薬が遺伝子的に合わない人が一定数いますよという話が持ち上がってきます。これこそ予期せぬ事故ってやつです。また終盤、ある人物を探し回るシーンでは「もしものことがあったら…」といった台詞が出てきますが、これも事故や事件に巻き込まれていないかどうかの不安から来る言葉ですよね。最悪死を伴った…。つまりどんなにSF的な技術進歩で不老が実現できても、不死は無理なんです。そう考えると「不老」って生命の一連の流れに対する言わば悪あがきなんじゃないかと感じました。

では、人間は虚しく老いることしか出来ないのか?いや、そうではないと思います。現在Disney+で配信されている短編『あの頃をもう一度』とも精通したテーマ性だと思いますが、結局誰とどんな風に老いるかの「老い方」次第。若さに固執している暇があるのなら、一瞬一瞬を大事に過ごしていく方が賢明な選択でしょう。
まぁこんなこと言えるのは今のうちだと馬鹿にされそうな気がしている24歳の僕ですw。

 

まとめ

以上が私の見解です。

ところどころ間延びしてるように感じましたが、邦画でこうした硬派なSF映画が観られた喜びは超絶デカいです。何より映像がドストライク。正に「近未来」という言葉が相応しい未来過ぎないシックな雰囲気は『her/世界でひとつの彼女』(2013年公開)を想起させました。それとラストの芳根京子には混乱しましたね。思わず「おまえ、誰?」と突っ込んでしまう変容っぷりでした。

ということでこの辺でお開きです。ありがとうございました。