昨日、発表された日本アカデミー賞。今回は、これについて語ります。
はじめに
まずは、今回の方向性について触れたおきます。何を隠そう私が去年見た邦画の本数は僅か4本。55本の作品を映画館で鑑賞しているはずなのにです。更に言えば、今回の授賞式の関連作品で見ていたのは、長編アニメ部門の『天気の子』。それと、つい最近テレビで放送していた『翔んで埼玉』だけというお粗末なもの。本当は、『新聞記者』と『蜜蜂と遠雷』は見に行きたかったのですが、タイミングを逃してしまいました。よって作品そのものに関しては全く語る資格がない、っていうか語れないのが現状です。それでも、マクロな視点で授賞式を見ると、様々思うことがあったので今回書くことにしました。
存在意義について
公式サイトを見て驚きましたが、米国アカデミー賞から直々にお墨付きを貰っているものなのですね。しかもこのお墨付きをもらっているのは、日本以外だとイギリスだけ(イギリスは英国アカデミー賞ってやつで、米国アカデミー賞の前哨戦の一つです)。なんて名誉あることだと思うと同時に、なぜ日本という英語圏ではない国にお墨付きを与えたのだろうという疑問もあります。そんな日本アカデミー賞はこんなことを目的としているようです。
当協会は、わが国の映画芸術、技術、科学の向上発展のために日本アカデミー賞を設け、その年度の該当者に栄誉を与えるとともに、本会の行う諸行事を通じて、会員相互の親睦ならびに海外映画人との交流を計り、もってわが国映画界の振興を寄与することを目的とする。
この目的の「海外映画人との交流」という点が、どうも引っ掛かります。なぜなら、作優秀賞に選ばれた作品を見れば一目瞭然です。『翔んで埼玉』は埼玉県という国際的に見れば、物凄くローカルなテーマを扱っています。これが、最多優秀賞作品ですよ。また、『キングダム』も『翔んで埼玉』と同じく、大人気漫画の実写化。勿論、海外にだって漫画を原作にした作品はたくさんありますが、一体どれだけ国際的に認知されているのでしょうか。こうした国内でのヒットを狙って製作された作品がひしめく今回の受賞式が、他国の映画好きが話題として扱っているかは甚だ疑問です。
新人俳優賞とは?
先に結論を言うと、わざわざ新人枠を作る必要があるのかというのが私の考えです。公式サイトを見てみるとこんなことが書いてありました。
新人俳優賞は、劇映画に出演し、主演・助演クラスの役を演じ、印象を与えた(原則として、映画初出演ではなくともこれまで日本アカデミー賞において受賞歴がない)俳優を対象とします。男女3~5名ずつを決定します。
なるほど。男優の方はともかく女優の方は、岸井ゆきの・黒島結菜・吉岡里帆の3人。えっ、新人なの?テレビドラマで見たことがあるせいかフレッシュさはあまり感じられない印象でした。「日本アカデミー賞において受賞歴がない」の文言を見れば納得はいきますが、一般人からしてみるとぼやっとした印象を持つのではないでしょうか。
それに、新人だろうとなかろうと才能のある人や素晴らしい演技を見せてくれる俳優は正当に評価されるべきです。ベテランをも凌ぐ新人の名演技なんて最高じゃないですか。だからこそ、隔たりなく争わせたほうがよっぽど盛り上がると思うのです。
去年の授賞式で是枝裕和監督が話していたこと
地上波放送では、撮影賞や作曲賞など技術的な分野の発表がほぼカットされていました。最優秀監督賞ですら物凄く扱いが短かったです。俳優陣に薄っぺらなインタビューをしている部分を放送するぐらいなら、技術分野の受賞スピーチをやって欲しかったです。コロナウイルスの影響で一般観覧を中止にしたこともあって、より一層感じてしまいます。
そんな状況を見ていて、ふと『万引き家族』で最優秀監督賞を受賞した是枝裕和監督が言っていたことを思い出しました。それは、「美術や衣装関係の部門を作るべきだ」ということ。
そんな是枝監督の思いも届かずといったことろでしょうか。映画には、俳優達の演技が重要です。しかし、それだけでは名作は生まれないと思っています。視覚的、物語的、音楽的なアプローチなど全ての要素が揃わなければ生まれることはありません。それもあって私は、美術関係以外だと視覚効果の部門を設けても良いのではないかと思っています。まぁそう簡単に新しい部門を設けることはなかなか難しいとは思うので、せめて現状ある各部門を丁寧に扱うべきだと思いました。
でも、良かったと思う事もあった
ここまでひたすら否定的なことを浴びせてきましたが、良かったと思う点もありました。それは、最優秀主演女優賞。『新聞記者』のシム・ウンギョンという韓国出身の女優が取っています。これは私の勘違いなら申し訳ないですが、恐らく日本出身ではない方が取るのは初ではないのでしょうか。
韓国と聞くと何かと政治的なことで揉めてしまう国であり、あまり良い印象を抱かない人も少なくはないでしょう。しかし今回の受賞は、政治と文化は全く別物であり、いがみ合うつもりはないことを証明したように思えてなりません。しかも、政治色の強い作品の出演者というのも、また興味深い点でした。米国アカデミー賞を獲得した『パラサイト/半地下の家族』の大ヒットもありますし、何だかいい兆候な気がします。
まとめ
今回はつい熱くなってしまい、クソ真面目に語りました。まぁそれだけ映画が好きな変態ということです。そして、『新聞記者』は見ないといけませんね。時間があったら、DVDでも借りて見てみます。
それでは、ここら辺でおひらきです。ありがとうございました。