キャプテン・シネマの奮闘記

映画についてを独断と偏見で語る超自己満足ブログです

第88回:映画『MINAMATA-ミナマタ』感想と考察

今回は現在公開中の映画『MINAMATA-ミナマタ』を語っていこうと思います。毎度のことながらややネタバレ注意です。

 

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イントロダクション

フォトジャーナリストのユージン・スミスとその妻アイリーン・美緒子・スミスの写真集「MINAMATA」をベースにした伝記映画。私、学生の時フォト・ジャーナリズムについて少々学んだ事があったので、ロバート・キャパと並ぶ有名なフォトジャーナリストであるという浅知恵程度はありましたが、日本の方と結婚された事は知らなかったですね。

舞台は70年代。アメリアを代表する写真家として称されたのは過去の栄光となり、酒に溺れ自堕落な生活を送る主人公 ユージン・スミス(ジョニー・デップ)。そこに日本から来たアイリーンと名乗る女性(美波)が訪ねる。彼女は熊本県水俣市チッソ工場から流れ出る有害物質によって苦しむ人々を撮影して欲しいという話を持ち掛けに来たのだった。最初は乗り気ではなかったユージンだったが、惨状を目の当たりにし再びカメラを手に立ち上がる事を決意する。

パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズやティム・バートン監督作品でのキャッチ―なキャラが日本でも大人気のジョニー・デップ。主演作品はかなりお久しぶりな気がします。去年、一昨年あたりあったけか?ここ最近はスキャンダル等でプライベートがお忙しかったからかもしれませんが、相変わらず色気はダダ洩れです。

そして水俣病がテーマとだけあってか日本人キャストも実力派揃え。真田広之浅野忠信國村隼という海外での活躍が目覚ましい3人が揃った時点でなかなかのキャスティングです。

 

こういうジョニデが見たいの

まずこれが言いたかった。個人的にはポップなキャラクターよりも硬派な出演作品の方が役者としての芸達者ぶりしっかり感じらる気がして好きなんです。

私、ジョニー・デップ出演作品は何が好きかと言われると2009年公開『パブリック・エネミーズ』と答えたい人間なんです。大恐慌時代に暗躍したギャング ジョン・デリンジャーを演じた作品。作品全体としてはまぁまぁだった印象ですが、デップ自体のカリスマ的格好良さが遺憾なく発揮させられていると感じました。まぁトレンチコートにトンプソンという出で立ちの時点で勝ち確定ではありますがw。

で、本作ではアルコール依存症沖縄戦の経験等で心身共にボロボロの状態のなか力を振り絞ってシャッターを切る姿を体現しています。まさに入魂といったその演技。演技力の凄みを味わう事が出来ました。

 

気になった点

個人的かもしれませんが首を傾げてしまう部分がありました。

それは、本作において日本の報道機関がどのようなアクションを取っていたのかについてが全く描かれていない事でした。これでは、あたかも日本の報道機関は機能しておらず、一人のアメリカ人という言ってしまえば外部の人間によって水俣病の真相が暴かれた見方が出来てしまうと思ったのです。それはどうよ?

ということで、実際にどうだったのかをちょっと調べてみましたところあながち間違いではなさそう。つまり、日本の報道各社はこの水俣病に関してだいぶ後手に回っていたという事です。

ユージン・スミスのよる「MINAMATA」の写真集が発表されたのが1975年で、実際に取材をしていたのが1971~1974年。しかし被害自体は50年代から確認されています。

初めて報道として取り上げられたとさせるのが1954年。地方紙である『熊本日日新聞』で「ネコ100余匹が次々と狂い死にした」と報道されました。そこからの60年代における水俣病関連の報道は『熊本日日新聞』では度々取り上げられていたようですが、全国紙等で大々的に取り上げられる事は無かったようなのです(朝日新聞に限った話で他の新聞ではどうだったかは分かりませんでしたが)。

当時、ネットメディアは当然なければテレビの普及も過渡期(テレビの普及率が90%になったのは丁度70年代頃ですから)であることを鑑みると、水俣病の被害が全国的に認知されていたかどうか疑問が残ります。ましてや世界規模での認知を考えるとユージン・スミスの写真集は大きな意義があったように思えます。

社会の不正を暴くのがジャーナリズムの役割だど思うので、もう少し早くから対応をし世論としてもムーブメントが起きていれば、被害者の数も減らせたのではと思います。

 

まとめ

以上が私の見解です。

何だか感想というより少しアカデミックなお話(おかげで書くのに時間掛かりましたわ)になってしまいました。まぁ学びが得られるのは映画の一つの側面だと思うので、脚色あれど公害や報道に関して考える良い機会となる作品かなと思います。

また、エンドロールの最後に肥薩おれんじ鉄道が協賛としてデカデカと表示されるのにちょっと感動。乗ったことないんですけどねw。そもそも熊本県は修学旅行でさらっと行ったぐらいなので、ちゃんと行きたいなと思ったところでお開きです。ありがとうございました。

 

参考:

ユージン・スミス - Wikipedia

水俣病 - Wikipedia

水俣病報道の責任 1956~69 年のマスメディアの怠慢

https://www3.kumagaku.ac.jp/minamata/wp-content/uploads/2014/09/7221bd643bcee087c8a3a89168a47cfc.pdf