キャプテン・シネマの奮闘記

映画についてを独断と偏見で語る超自己満足ブログです

第86回:映画『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』感想と考察

ついにこの時を待っていた!今回は1年半の公開延期を経てとうとうお披露目となった映画『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』を語っていこうと思います。毎度のことながら、ややネタバレ注意です。

 

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イントロダクション

英国が誇るスーパースター ジェームズ・ボンドの活躍を描いた「007」シリーズの25作目。『007/カジノロワイヤル』(2006年公開)から5作品を演じてきたダニエル・クレイグ最後の作品になります。

一線を退きジャマイカで暮らしていたボンド(ダニエル・クレイグ)のもとに旧友(ジェフリー・ライト)が仕事の依頼をしてくる。任務の内容は誘拐されたロシア人科学者を救出すること。彼は最新鋭の生物兵器の研究に携わっている人物であり、彼と共に生物兵器も持ちだされていた。英米国が探り合いをする中ミッションに挑むボンド。次第に世界に脅威をもたらす黒幕にたどり着くことになる。

ダニエル・クレイグを始め前作『007 スペクター』(2015年公開)から引き続きレア・セドゥ、ベン・ウィショーレイフ・ファインズらが出演。レイフ・ファインズは『キングスマン』の新作公開も控えてますからね。鼻なし魔法使いから「英国スパイ」が板についてきてます。また、今作の悪役を演じるのはラミ・マレック。『ボヘミアン・ラプソディー』の印象が強烈に残っているせいか、ちょいちょいフレディ・マーキュリー味を感じるのでダークサイドなライブエイドが堪能できます。

監督は『ビースト・オブ・ノー・ネーション』(2015年公開)のキャリー・ジョージ・フクナガ。日系アメリカ人という事もあってか、かなり日本を感じさせる要素が散りばめられています。


絵作りをこだわり抜いたダニエル・クレイグ

ダニエル・クレイグ版007の最たる特徴だと思うのが洗練された絵作りです。なんせ『スカイフォール』&『スペクター』はサム・メンデスが監督で『スカイフォール』時はロジャー・ディーキンス。『スペクター』の際はホイテ・ヴァン・ホイテマが撮影監督を務めてましたからね。人選からも絵作りへのこだわりが伺えますが、今回もそのシャープでエレガントな雰囲気が徹底されています。『ビースト・オブ・ノー・ネーション』も非常にシックな雰囲気に仕上がってましたから、当初監督が予定されていたダニー・ボイルよりもキャリー・フクナガで正解だったように思えます。

特に今回はカーチェイスの格好良さが冴えてました。序盤のイタリアのシーンでは、バイクで疾走(予告でも使われていたバイクで階段を駆け上がってジャンプするシーン、マジ最高)からの定番のアストンマーティンによるチェイスシーンが展開。

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↑日比谷で展示されてました。かっけー。

スカイフォール』の時と同じくフロント部分に隠された(今回はヘッドライトから飛び出してました)ガジェットが炸裂。しかもチェーンガンにアップグレードされてる!ああいうの厨二心くすぐるしょーもないアイテムって良いですね。中盤のカーチェイスは打って変わってリアリティのあるものになってました。泥や水しぶきを立てて突進してくるゴツいランドローバーを相手にトヨタランドクルーザーが頑張ってました。あの荒野の感じも上質感がありました。

それと終盤の階段での戦闘シーンはカットを切らずに随分と長いロングショットになっていたのもナイスでした。『アトミックブロンド』(2017年公開)やNetflixドラマ『デアデビル』(2015~2018年)でも長回しの階段ファイトシーンがありましたが、流行りなんすかね。


時代が色濃く反映

本作、ダニエル・クレイグ版の集大成であると同時に次の時代の007像も見据えた時代を色濃く反映させた作品になっていたと思います。

まず「ジェームズ・ボンド」という存在が、ラストも含めいかにも現代的な英雄像になっていた印象を受けました。ライトで単純な格好良さを持ったヒーローではなく、愛する人の為に体を張り、過去の因縁にはきっちり落とし前を付ける重みあるヒーローが求められている時代なんだと思います。

またこれも昨今の流れでしょう。過去作と比べて女性キャラクターの描き込みが深く、それぞれがちゃんと魅力的に見えたのもポイントでした。哀しさと強さを兼ね備え前作以上の存在感を放っていたボンドの恋人マドレーヌさん。“先輩には負けないっす”オーラ満々でMP7の構えが堂に入ってる次世代の00(ダブオー)ノーミさん。登場シーンは短いながらしっかり爪痕を残すポテンシャルが高過ぎるキューバのスパイ パロマさん。この3人の活躍なくして今回のジェームズ・ボンドは語れないレベルだったと思います。いや私、007シリーズは全部観たわけではありませんが、ボンドとの絡みのシーンが一番の見せ場っぽく描かれる事が多くて意外ところっとお亡くなりになったり登場シーンが少ない存在で終わるのが多かったと思います。それと比べると、女性キャラクターが物語の推進力を担っていたのは変化のポイントだったように思えます。

 

まとめ

以上が私の見解です。

全体的に満足ではありましたが、約2時間半と長い割には“もっと観たいのそこじゃなくて…”なこそばゆい感じが残った気はします。キューバのスパイ パロマさんの活躍や能面姿の悪役 サフィンさん。それとボンドとキッズの掛け合いをもっと観たかった。殺しのライセンスを持ったヤバめな人間が子供と対峙ですよ。掘り下げれば絶対面白いのに。まぁまぁな料理しか振る舞えなかったんだから挽回シーンが欲しかったよ。

あと恒例の武器について。ジェームズ・ボンドといえばワルサーPPKですが、今作ではSIGのピストルをメインで使用していた印象。ただし肝心なとこで活躍がするのがワルサーPPK。デカくてゴツいだけが銃じゃない!持つべきものは携行性の高い銃なんですw。

はい、ということでこの辺でお開きです。ありがとうございました。

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↑私がもっと観たかった能面。無機質な感じが気味悪くて好みなんですが、出番が少ないのよ。