キャプテン・シネマの奮闘記

映画についてを独断と偏見で語る超自己満足ブログです

第73回:映画『プロミシング・ヤング・ウーマン』感想と考察

今回は、現在公開中の『プロミシング・ヤング・ウーマン』について語っていこうと思います。毎度のことながらややネタバレ注意です。いや、この作品に関しては前情報なしの方が絶対良いので、未鑑賞者はイントロダクションだけ読んでお引き取りを!

 

 

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イントロダクション

今年の米国アカデミー賞で5部門にノミネートをされ、見事脚本賞に輝いた復讐ドラマ。

とある夜、バーのソファーに酔いつぶれたOL風女性が一人。まくれ上がるスカートもお構いなしの泥酔っぷり。そんな姿にムラついたサラリーマンは、自宅へ送るのを口実に「お持ち帰り」を働いて事に及ぼうとする。しかし彼女はシラフだった…。一体彼女の目的は?そして彼女をそうさせる過去とは?

主演はキャリー・マリガン。友人に好きな人居たな。『わたしを離さないで』(2010年公開を)観て好きなったって言ってましたね。私としては『ドライヴ』(2011年公開)の印象が強いんですけど。

また傑作『エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ』(2018年公開)の監督をしたボー・バーナムも出演してます。この方YouTuberで頭角を現したんですよね。コメディアンであり映画監督であり俳優、作曲家や詩人としても活躍してるんだとか。こういう人を「天才」と呼ぶべきです。

さらに『キック・アス』シリーズでお馴染みのクリストファー・ミンツ=プラッセがチョイ役で出演しているのは、個人的にお得でした。

 

脚本上手過ぎ

イントロダクションで「復讐ドラマ」と書いたのは訳がありまして。それは一般的なジャンルにカテゴライズするのが難しい作品だからです。

映画開始からオーニングクレジットまでの流れだけを観た時点では、ヤリ○ンどもを粛清する痛快コメディーだ!と思ったのです。オーニングクレジット中の主人公に対して“朝帰りのクソビ〇チ”とヤジを飛ばす男どもをメンチ切って退散させるシーンとか最高に笑えましたし。しかしその第一印象は徐々に裏切られていく事になります。

ある時はサスペンス的だったり、ある時はラブロマンス的であったりと様々なジャンルの顔を見せつつ女性を軽んじる「男性」とそれを黙認する「女性」、そうして生み出される屈折した「社会」へと主人公の怒れる矛先が向けられていきます。ついでにSNSにくだらない事をアップして面白がる、俗に言うバカッターをする連中までも暗喩的に吊し上げちゃってますから予想だにしない展開でした。

種明かしの仕方も無駄がないですし、終盤にはかなり感情を振り回されました。おかげさまでエンドクレジット中は悶絶状態。上映終了後、座席から立ち上がるのに少々時間が必要でした。こりゃ米国アカデミー賞脚本賞も納得です。お見事!


印象に残ったある言い訳

主人公のターゲットにされ成敗されていく人々のうち、ある2人の人物が医大生の時に起こした過ち(これが主人公の復讐のトリガーになっているわけですが)に対して共通の言い訳をします。私、これには嫌な気持ちが湧きました。それが「あの時はガキだったから」という言い訳。

え~?大学生って「ガキ」なんですかぁ?違いますよね。高校生ですら場合によって立派な大人として扱うべきだと私は思ってます。日本で言えばアルバイトでお金が稼げる年齢ですし、18歳から運転免許も取れますからね。しかし現状、学生のうちは許されるとでも思っているのか度々学生が起こした事件がニュースとなります。一体「責任感」というものはいつ頃芽生えるのでしょうか。「ガキ」というワードで何でも片付けられるほど世の中甘くないと私は信じてます。まったくふざけた言い草だよ。

また拡大解釈にはなりますが“昔はやんちゃしたなぁ~”とか“どっちかと言ったらいじめる側だったなぁ~”などとしょーもないノスタルジックに浸る「ガキ」から抜け出せない大人も見ていて恥ずかしいです。武勇伝でも何でもない過去の過ちをなぜ?最近の話題で言えば、オリンピックの音楽を手がける予定だった小山田なんちゃらがいい例です。あんな卑劣ないじめをメディアでいけしゃあしゃあと語れるなんて恐ろしい。掲載当時に騒がれなかった社会風潮に対しても不信感しかないのですが。

 

まとめ

以上が私の見解です。すみません。何だか相当辛辣になってしまいました…。

映画そのものはこうした重いテーマを扱っていますが、ポップな音楽が使われていることもあって決してシリアスなトーンにはなっていません。

また辛辣になってしまった私自身も決して「自分は正しい」と思わせないのが本作です。気付かないうちにジェンダーバイアスが働いていないか?いつの間にか見て見ぬふりをする傍観者になっていないか?記憶にないだけで自分の過去はどうだったのかを顧みると段々怖くなってきます。

あと最後に「酒は飲んでも飲まれるな」です。飲む側も勧める側も程々にしないとけませんね。まぁ私自身は酔う=時間の無駄だと思っているのであんまり関係ないんですけどw。まぁその話はどっかで追々。

ということでこの辺でお開きです。ありがとうございました。