キャプテン・シネマの奮闘記

映画についてを独断と偏見で語る超自己満足ブログです

第107回:映画『さがす』感想と考察

今回は現在公開中の映画『さがす』を語っていこうと思います。毎度のことながら、ややネタバ…いや、今回は少し核心を付いた話をする事になりそうですし、前情報がない方が明らかに良い作品なので、ご覧になる予定の方はイントロダクションだけ読んでどうぞお引き取りを。

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イントロダクション

姿を消した父とその父を探す娘を描いたサスペンス。サスペンスと書きましたが、家族ドラマでもありサイコスリラーでもあります。

大阪の下町に暮らす原田智(佐藤二郎)は中学生の娘 楓(伊藤蒼)に「指名手配中の連続殺人犯を見かけた。捕まえたら懸賞金300万だ」と話した後、忽然と姿を消す。警察にはまともに取り合ってもらえず、自力で探し出そうとする楓。そんな中、日雇い現場の作業員に同姓同名を発見する。しかしその人物は父の姿とはまるで違い、父が話していた連続殺人犯と似た男(清水尋也)だった。

監督は片山慎三。2018年公開の『岬の兄妹』で注目を浴びた監督。ポン・ジュノ作品の助監督を務めた経歴もあるので、筋金入りの鬼才といったところでしょう。

主演の佐藤二朗ですけど、私には縁のないコメディ作品や「クイズ99人の壁!」と言ってるイメージが強かったので、シリアスな作品にも出てんだなと思いました。そういえば昔、街でお見かけしたことあるなぁ。いやあれは単に似てる人だったのか…。著名人って見かけもロケとかじゃない限り確信が持てないんですよ。

それと清水尋也ってあれですよね。KingGnuの「The hole」のミュージックビデオに出てる方ですよね!いや~あのMV、KingGnuのMVの中でも珍しいストーリー仕立ての泣けるやつです。

 

社会の闇はすぐ側に

本作は2017年に座間市で起きた連続殺人事件がベースになっているのは間違いなさそうですが、個人的には2019年に起きた医師による嘱託殺人の事件も思い出しました(ASLが関連してましたし)。どちらの事件も共に死を望んだ人を殺害したことが共通項であり、発生当時は世間で物議を醸したことを覚えている人も多いと思います。

そう、これだけ個人や自由意志を尊重しようとする風潮の社会であっても「死」を自由なタイミングで選択することはタブー視されているのが実状といったところ。そんな正解を導き出すのが困難なテーマが徹底したドライな視点で描かれていました。様々な理由から死にたいと思う人と快楽的欲望や金銭目的を持つ人とで利益が一致してしまう社会の闇はすぐ側にあるかもしれないと思うと心底ゾッとさせられます。

社会派な片鱗を覗かせつつつシリアスなエンタメとして昇華する。これって韓国ノワール作品で観るやつですね。ゆえに本作は韓国風サスペンス邦画でしょうか。勝手に変なジャンル定義しちゃいましたが、これは日本映画においては結構新しいアプローチの仕方なんじゃないかと思いました。

 

まとめ

以上が私の見解です。

時系列を巧みにばらして語られる先の読めないストーリー、暗くざらついた質感の映像、役者さんたち各々の見事なパフォーマンスと見どころは盛りだくさん。予想を遥かに超えた心えぐられる衝撃的傑作でした。

それと序盤の走ってるシーン。足で逃げる青年VSチャリで追いかける女子中学生の構図は新鮮でしたね。大阪に残る下町、というか都市開発に乗り遅れたようなしみったれた裏路地を爆走する様はマジで興奮。あぁ「走ってるシーン」に関してはもはや私の性癖だなw

あっシーンで言えば、卓球のラリーシーンも驚きでした。経験者同士じゃなきゃあんなに長いことラリーは続かないですよね。私なら3周目辺りでダメにしそう。相当練習したんだろうなぁ。

ということでこの辺でお開きです。ありがとうございました。