キャプテン・シネマの奮闘記

映画についてを独断と偏見で語る超自己満足ブログです

第87回:映画『殺人鬼から逃げる夜』感想と考察

今回は現在公開中の『殺人鬼から逃げる夜』を語っていこうと思います。毎度のことながら、ややネタバレ注意です。

 

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イントロダクション

ずばりタイトル通り殺人鬼から逃げる壮絶な一夜を描いた韓国産スリラー。

主人公は聴覚障害を持つOLさん。ある日の仕事帰り、血を流して助けを求める女性と遭遇する。助けを呼ぼうとするもそこに現れたのが連続殺人犯であり、彼の仕業であった。何とかその場から逃げる事が出来たものの、それは長い夜の追走劇の始まりであった。

私、韓国の役者に関しては明るくないのですが殺人鬼を演じているウィ・ハジュンは、韓国で有名な禁足地 コンジアム精神病院跡を舞台にしたホラー映画『コンジアム』(2018年公開)に出ていた方なんですね。友人に勧められてつい最近観たばかり。グッドタイミング。バズりたがりな心霊YouTuberのリーダーだった人ですね、たぶん。それに最近ちょくちょく名を聞くNetfilxオリジナルドラマ『イカゲーム』にも出ているんだとか。活躍の場が広がる注目株といったところでしょう。

 

とにかく走る

本作、聴覚障害による音が聞こえない事や上手く話せない事によるスリルもありましたが、近年稀にみる持久走映画であることが一番の面白みでした。

主人公はとにかく走りまくる。しかも意外と速いし、近所という地の利を活かした細い路地を駆使するすばしっこさで殺人犯をイライラさせます。これは陸上経験者説を唱えたくなるレベル。恐るべき走力、そして持久力です。

映画において「走る」行為自体が既に見応えのあるアクションになると改めて感じました。人間の基本的な動きにおける最もスピードを感じられる動きなので、追う/追いかけるという要素を付ければそこにスリルが生まれるのです。まぁトム・クルーズが良い例だと思いますけど。あの独特なフォームはこの仕組みを分かったうえであえてやっているんじゃないかと思います。

っていうか個人的に『マッドマックス』なんかが好きだったり、今年観た『ジャッリカットゥ 牛の怒り』刺さりまくったのは追走劇自体が個人的にツボなんだと気付かされました。

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「声」を聞いてくれない世の中

もう一つ感じた事としてあるのが、「声」を聞いてくれない世の中についてです。聴覚障害がある事で上手く話せないというアドバンテージはあまり関係ありません。

どんなに強く主張しても聞いてくれない理由として、まず「女性」という時点で発言を軽んじられる男性社会という側面。まぁここ最近よく見るアイロニーなので“そろそろ世の中変われよ”と感じましたが、それ以上に「妹」というポジションにどこか不公平さを感じるような場面が多々ありました。韓国はそういうお国柄なんでしょうか。家族間における年功序列や家父長制によって発生する不公平の名残があるのは日本でも同じなのかもしれません。そりゃ社会的地位や年齢が上であれば知識量や経験値も当然豊富になりますが、だからといって不公平が許されるとは思いません。「家族」という最小単位であろうコロニーで平等が成立しないようじゃ社会に渦巻く格差や差別が改善するわけないでしょうね。

ちょいと小難しい方向に脱線しちゃいましたけど、殺人鬼のみならずこうした「声」の届かない世の中に対しても果敢に立ち向かう事になる主人公のガッツにはグッと来るものがありました。

 

まとめ

以上が私の見解です。

少し公開している劇場が少ないよな。まぁ今の時期怒涛の如く注目作が封切られてますからね。致し方ないかぁ。

人殺してる割には人相の良い好青年な殺人鬼さん。動機や生い立ち不明の設定は良かったけど、ちょいと物足りんかった。男性に対しては少々弱気な印象を受けたからかもしれませんし、もっとゴリゴリのサイコパス感出しても良かったのかなと。

あと終盤の方で『シャイニング』からの『悪魔のいけにえ』なオマージュ連打シーンがありましたけど、ホラー好きならヨダレが垂れるんじゃないかな。ああいうの気付くと嬉しくなっちゃいますよね。

ということでこの辺でお開きです。ありがとうございました。