キャプテン・シネマの奮闘記

映画についてを独断と偏見で語る超自己満足ブログです

第48回:映画『Swallow/スワロウ』の感想と考察 人って複雑で面倒くさいな

今回は現在公開中の『Swallow/スワロウ』について扱いたいと思います。ややネタバレ注意です。

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イントロダクション

湖(あれは川か?)のほとりの立派な邸宅に住む主人公の妊婦さん(ヘイリー・ベネット)。一見幸せそうに見えるも、彼女を取り巻く人間関係は孤独そのものだった。そんなある日、ビー玉に心奪われて、飲み込みたい衝動に駆られる…。といった異食症を扱ったスリラー。

正直に言って私が今作を観に行った最たる理由は、主演のヘイリー・ベネット目当てです。『マグニフィセント・セブン』(2016年公開)や『ハード・コア』(2015年公開)。最近だと『ヒルビリー・エレジー/郷愁の哀歌』(2020年公開)などに出てましたが、私が今まで観てきた作品では脇役ばかりで、主演をはっている作品は観た事なかったです。“おっ、ついに主演じゃん!”という割と軽いテンションで観に行きました。

 

異食症になった理由は?

ビー玉に始まり画鋲や安全ピンなど小さな小物を次々と飲み込む姿は、正直見ていて結構キツイ。視覚よりも口に異物を入れた時の「カラッ」という音から「ゴクッ」という飲み込む音までしっかり耳に主張してくるので、私も喉や食道に違和感を感じました(とか言って昼飯は余裕で食ったけど)。これを聞くと敬遠する人もいるかもしれませんが、それじゃ勿体無い。なぜなら多くの人が抱える可能性のある問題が描かれているからです。私個人としては2つのことを考えました。

 

1.冷え切った人間関係

まず1つ目としては人間関係。これは、冒頭から明らかに夫婦間の絆が冷え切っていることが伺いしれます。

旦那さん、決して悪い人ではないんでしょうけどお父さん・お母さんへの愛情が強過ぎて奥さんは二の次な印象です。ペアレンツコンプレックスとでも言えばいいのでしょうか?きっと英才教育のもと大事に育てられたのでしょう。乱用する「愛してる」発言は薄っぺらです。それと姑さんも悪気はないんでしょうけど、何処か冷たさを感じます。特に中盤ぐらいの勝手に家に上がり込んで来て自己啓発本だけ渡して帰るとか、俺だったら嫌だなぁー。ポジティブにいきましょ~みたいなインチキ臭い本だったしw。

嫁ぎ先ではこんな状況なのに、実の両親とも訳あって疎遠だし、友人や相談できる人もいません。つまり、主人公は周りに人はいるのに孤独という状況に陥っているのです。変なもの飲み込んだら心配して構ってくれるという心理が多少あったのかもしれません。

 

2.「何も出来ない」不安と「自分は特別な存在」という思いの混同

2つ目に挙げる感情の混同が厄介だと思いますね。

旦那方の家族は、いわゆるエリート層。お金も仕事も充実しているせいか、貧しい家の出身である主人公に対しどこか舐めた態度を取っているわけです。直接的ではなく、ニュアンスとして感じてしまう形で「どうせ何も出来ないでしょ、私たちが面倒みてやるから感謝しろよ」みたいな。で、それを主人公はモロ食らって「はぁー私はダメな人間だ」となってしまう。

今作ではそんな周りからのプレッシャーによって抱いてしまうように描かれていましたが「自分は何も出来ないかも」や「自分はダメな人間だ」といったマイナスな感情を抱いてしまうことは、誰もが一度は経験したことありますよね。私もね、勉強もスポーツも苦手な不器用な人間ですから、学生の頃はよくこんな気持ちになってました。

しかし、厄介なことに自身の心の奥底には「いや、そんなわけない。自分は特別だ」という思いもあったりするわけです。自己愛とはちょっと違う、何ていうか自分の全てを自分で否定したくないといった感じです。これについては終盤に登場するある人物が語っていますし、そう言えば2018年公開の『ブレードランナー2049』ではテーマとしてガッツリ語れていることだったと思い出しました。

これら2つの相対する感情がせめぎ合うことで、人はおかしなことになっていくと感じました。

 

まとめ

以上が感想と考察です。

結末とあのエンドクレジットを見ても、心に異物は残り続けますが、印象に残る作品だと思います。結論、人って複雑で面倒くさい。でもそれが映画を面白くする材料になるのですね。

ということで、この辺でお開きです。ありがとうございました。