キャプテン・シネマの奮闘記

映画についてを独断と偏見で語る超自己満足ブログです

第178回:映画『TAR ター』感想と考察

今回は現在公開中の映画『TAR ター』を語っていこうと思います。毎度のことながら、いや今回は核心触れる事になりそうなので、これからご覧になられる予定の方はご注意あれ。

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イントロダクション

オーケストラの女性指揮者の狂気を描いたサスペンス。いやホラーか。

その天才的な音楽センスとプロデュース力で世界最高峰のオーケストラの一つ ベルリン・フィルで女性初の主席指揮者となり、キャリアの絶頂を迎えたリディア・ター(ケイト・ブランシェット)。順風満帆にみえた彼女のキャリアだったが、ある事がきっかけで不協和音と共に亀裂が生じ始める。

監督はトッド・フィールド。監督として手掛けた『イン・ザ・ベッドルーム』(2001年公開)や『リトル・チルドレン』(2006年公開)はどちらも米国アカデミー賞の脚色賞にノミネートされたそうです。俳優としては『アイズ・ワイド。シャット』(1999年公開)にも出演しています。

主演はケイト・ブランシェット。数々の作品に出演していますが個人的に印象深いのは『キャロル』(2015年公開)かなぁ~。『ナイトメア・アリ―』(2021年公開)も強烈なインパクトだったけど。ちなみに私が観に行った5月14日がお誕生日だったようです。おめでとうございます、だから混んでたのかな?関係ないか。

告発とキャルセルカルチャー

本作はガキにも容赦しない高圧的で自信家のターさんが、イエスマン(イエスウーマンか)でお友達内閣を組んで踏ん反り返るという”権力者って気に食わんぞ”がメインの映画だと思ったので、小見出しで挙げた「告発」と「キャンセルカルチャー」は物語を構成する要素でしかありません。しかし昨今の日本においてはあまりにもタイムリーなテーマなので話題にせざるを得ないのかなと思います。

まず、ターさんのザ・権力者な人生に綻びが生じる原因がとある人物からの告発。注目ポイントは告発されたそれ自体より、告発のあった後に引退をした身である恩師との会話のシーンだと思いました。その恩師、引退した身だから関係ないを前置きに、現役当時はいつ暴露や告発されても大丈夫なように対策や身辺整理をしていたんだと言うのです。うぇ…なーんかさぁ、ジャーニーズグループの性被害問題と重なりますよね。あれの場合は引退ではなく逝去しているからという形での有耶無耶という事ですが。ここ最近ついに新聞やTVでも扱うようになり、社長の謝罪動画にまで事が進展しました。明らかに遅いと思いますが、1999年頃から週刊誌では取り沙汰していた日本芸能界のパンドラの箱が開いたわけです。結局問題が発覚したタイミングで大きく取り上げず、芸能界の与太話程度になっていたのが大きな問題だったのでしょう。まぁこんな事言っても仕方ないし別にファンでもないんですど、何だかモヤモヤ。

はい、話を戻しますと不祥事の告発をされて業界を追われた人物の携わった作品は今後どんな扱いを受けるのか?そこで昨今よく耳にするようになったキャンセルカルチャーです。

序盤のターさんが音楽大学で教鞭を取っているシーン。長回しで展開されるシーンで作中最も面白いシーンだと思いますが、そこに「G線上のアリア」で有名な J.Sバッハが女性差別的な人間だったので聴く気にならない、そもそも白人男性が作曲の時点で嫌悪感を抱くという学生が登場します。キャンセルカルチャーを行っている学生さんvsそれじゃ今後指揮者として活動していくのは難があるぞと諭すターさんの対峙です。

私個人としてはここばかりはターさんの言い分に賛同でした。キャルセルカルチャーに関してはプライベートの範囲内、個人の判断で行えば良いと思います。ただ仕事として向き合わなくてはいけない立場の人、或いは業界がする行為ではないと思います。アーティストも一種の「送り手」なので、受け入れるか否かは「受け手」に委ねるべきです。また、どちらかに肩入れをするのは偏向報道プロパガンダ、間違った歴史修正にも繋がる危うさがあると思います。要は仕事とプライベートは分けろって話ですね。

そんなこんな語ってきましたが、他にも様々な要素がターさんを構築しており一辺倒で語る事の出来ない複雑な人物となっています。そんな難役をケイト・ブランシェットが熱演。キャリア最高の演技なんて呼び声が聞こえてくるもの頷ける気がします。

まとめ

以上が私の見解です。

議論を呼ぶであろう深みある作品だと思いますが、映画の面白さとしてはイマイチ刺さりませんでした。音楽用語がふんだんに盛り込まれた会話はリアリティがあります。しかしド素人からすると追うのが大変。“意味不明だけど懸命に咀嚼しなくては(汗)”となり疲弊します。専門用語まみれでも面白いのは面白いんですよ、『フォードvsフェラーリ』(2019年公開)や『シカゴ7裁判』(2020年公開)みたく。それが感じられませんでした。あっでも「Bunkamura」にはちょっと感動、世界的に有名なんだ。

それに間延びしてるというか回りくどいというか。もっとタイトに見せた方が狂気的に見えたんじゃないかなとも思いました。うーん、合わなかっTAR。トーカッTAR!(すみません、書きたかっただけです)

という事でこの辺でお開きです。ありがとうございました。