キャプテン・シネマの奮闘記

映画についてを独断と偏見で語る超自己満足ブログです

第39回:映画『テネット』の感想と考察 ニールのあるセリフから見えてくること

さぁーついに全世界お待ちかねの『テネット』が公開しました。ホントに待ってました。クリストファー・ノーラン監督の新作ということはもちろん、久々のハリウッド大作ですからね。こちらの気持ち入りようも一段と強くなります。

そんな今作は、なんとも難解。難解っていうか意味不明。むしろ「分からない」に溺れていたほうが気持ちが良いという変な印象。今回は、そんな激ムズ迷路のような作品を2回鑑賞した時点で何とか辿り着いた独自解釈を披露していきます。

 

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↓過去に扱ったノーラン作品はこちら。

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イントロダクション

 

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最後の「時は来た」っていいですね。気合い充分です。

メメント』(2000年公開)や『インターステラー』(2014年公開)などで自由自在に「時間」を操ってきたクリストファー・ノーラン監督の最新作は、またまた時間をテーマにした作品でした。今回の時間が逆行します。

キエフのオペラ劇場で発生したテロの作戦時、敵に捕まった主人公の男(ジョン・デイビット・ワシントン)は自ら服毒をし自決を図ります。しかし毒は偽物で、ある組織の入団テストであったことが判明。この謎の組織「テネット」から与えられたミッションは、時間を逆行させることによって第3次世界大戦以上に恐ろしい世界滅亡を企む連中を阻止することだったのです。

ノーラン作品といえば豪華な出演メンバーが見どころ。今回はベテランやノーランのいつものメンツというより、今後活躍の場をより一層広めていきそうな中堅・若手クラスが多く出演していたような気がしてます。

主人公を演じるのは、ジョン・デイビット・ワシントン。名優デンゼル・ワシントンを父に持ち、俳優として活動する前はアメフト選手として活躍していたという異色の経歴を持つ方。去年日本で公開された『ブラック・クランズマン』では、アフロヘアの潜入捜査官を演じて注目を浴びた俳優としも記憶に新しいです。

主人公の相棒ニールを演じるのは『トワイライト』シリーズや『グッド・タイム』(2017年公開)のロバート・パティンソン。次のバットマン(2021年公開予定)を演じる今大注目の方。ちょっと前には新型コロナに罹ったことでも話題に。既に回復されてますが後遺症とか大丈夫なのかなぁ。

そして個人的に一番嬉しかったのは、アーロン・テイラー=ジョンソンが出ていたこと。主人公たちの仲間でゴリゴリ軍人として登場。『キック・アス』(2010年公開)のひょろいオタクヒーローはどこ吹く風か。『ノクターナル・アニマルズ』(2016年公開)の時点でひげもじゃのイカつい奴だったけど、より仕上げてきた感じ。軍服がお似合いです。

その他『コードネームU.N.C.L.E』(2015年公開)のエリザベス・デビッキ(この女優さん、とにかく長い!)や『イエスタデイ』(2019年公開)のヒメーシュ・パテル(髭がスゴイ)が出演。いつものメンバーはケネス・ブラナーマイケル・ケインぐらいなので、フレッシュさのあるライナップといったところでしょう。

 

監督の「やりたい!」が炸裂?

1回目に鑑賞した率直な感想として思い浮かんだのは、“あぁーこういう映像が撮りたかったんだなぁー”ということでした。まぁストーリーの理解が追い付いていなかったからかもしれませんが。

まず私が想像するに、ノーランさんはきっと最初にこんなことを思ったんでしょう。

逆再生でアクション撮ったらめっちゃイカすんじゃね!

こんなに口は悪くないでしょうけど、視覚的に新しいものが撮れるという自信はあったと察します。このアイディアをいかにして現実的な映画の目玉にするのかを考えたうえで、エントロピーやら放射能がどうとかお得の物理学を用いて肉付けしたんだと思います。結果として、格闘・カーチェイス・銃撃といったアクション映画の見せ場の逆再生バージョンを網羅。また時間の逆行を使ったわけではありませんが、逆バンジーなるアクションまでやっちゃってます。そんなてんこモリモリな状態なので、アクション映画好きにとっては楽しいシーンのオンパレードです。

あっちょっと話は逸れますが、今作を観ていて子供の頃にビデオやDVDを1.5倍速ぐらいで早送りしたり巻き戻したりするとセリフや人の動作が変に見えて、それがちょっと面白かったことを思い出しましたね。ノーランの少年時代も同じだったりして~w。

そしてもう一つやりたかったのは、バディームービーではないでしょうか。時空超えた家族や恋人の絆に関しては『インターステラー』で描いていたので、今回は時空や空間を超越したバディの絆を描きたかったんだと思いました。このバディに関しては、ニール君の視点がかなり重要だと考えているので、次の章でネタバレ込みで話していきます。

 

ニールの立場から見えてくるもの

ではまず、主人公たちが防ごうとしている第3次世界大戦以上に恐ろしい世界滅亡計画を具体的に説明します。

未来で作られたという変な形のブロック「アルゴリズム」がありまして、これを核爆発によって破壊すると地球上の時間が逆行し、世界がぶっ壊れるんだそうです。それを余命わずかなロシア系武器商人セイタ―(ケネス・ブラナー)が、“俺の命が終わるんだから一緒に世界も終われ!”みたいなスーパー自己中な理由で、シベリアのある場所で爆破しようとしていたのです。クソ迷惑な話ですが、実はこの爆発は冒頭のキエフで起きたテロと同じ14日に起きたことが中盤あたりで判明しているのです。つまりキエフのテロをきっかけに物語がスタートしているので、アルゴリズムの爆破自体は防いでいることを意味しています。メビウスの輪のようにループをしてるんですね。「俺たちが生きてるってことは、滅亡の回避が出来たんだよね?」と主人公がニールに語り掛けるシーンもありますし、なんじゃそれって感じです。しかしここで大事になってくるのがニールのセリフです。ちょうど滅亡の回避出来てんじゃねぇ説を主人公が問いかけていた辺りのシーンでニールは、

「すべては決まっているけど、何もしないわけにはいかない。」

こんなことを言うんですよ。まるで全てを最初から知っていたかのような言い分です。思えば主人公との初対面シーンでは、主人公が任務中はお酒を飲まずにダイエットコーラを飲むことを知っていたし、時間の逆行という摩訶不思議な現象を目の当たりにしても、全く臆することなく冷静に対処していました。この事から考えるに、彼がどういう時の流れを踏んでいるのかはいまいち把握が出来ないのですが、全容を把握しているのは確かです。となるとラスト、主人公を救うべく身代わりになって射殺されることも知っていることになります。死ぬことが分かっていながら相棒と共に任務を果たす。時間を超越したバディーの絆がそこにあると見て取れます。

また、あのセリフ自体が結構重みあるものだったと感じています。例え未来に起こることを知っていたとしてもそこに向かって行動していく強い意志と同時に、「未来」よりも「今」を大事にする思いも滲み出ているように感じられました。

これは、私が『インセプション』でした解釈にリンクするテーマだと思います。『インセプション』の場合は、「起きているか」か「眠ったまま」かは置いといて、目の前にしている「現実」と向き合おうとすること。そして今回の『テネット』では、「未来」や「過去」で起きることは置いといて、目の前の「現実」に対処していくこと。これは、ノーランさんの現実主義的な発想が現れている“らしさ”全開の作品だったというのが私の結論です。

 

まとめ

さて、色々言ってきましたが私の考察はかなりこじ付けというか、無理矢理咀嚼した感じが自分でもしてます。結局こういう映画は、なにふり構わず感じるままに楽しむのが正解だと思います。

そして何と言っても新型コロナの影響でどの作品(作品というより映画会社)も保身に走り、公開延期を繰り返したり、自社で運営する配信サービスに逃げたりする一方、強気の劇場公開をしてくれた健闘を称えなくてはいけません。

感染拡大防止のためならまだ分かります。しかし既に多くの都市で経済活動は再開しています。(ロックダウンの噂のある都市もあるようですが)主要都市の映画館が空いてないことを理由にしているなら、正直弱腰としか受け止められません。ファンは待ってます。公開されれば必ず劇場へ足を運ぶはず。映画ファンの力を信じて欲しいものです。今作の製作陣は、そんな観客たちを信じくれたんだと思います。まさに「テネット」が意味する「信条」です。信じてくれてありがとう!

それでは、この辺でお開きです。ありがとうございました。

 

参考:

・テネット公式パンプレット 2020年9月18日発行