キャプテン・シネマの奮闘記

映画についてを独断と偏見で語る超自己満足ブログです

第51回:映画『ヤクザと家族 The Family』の感想と考察 

今回は現在公開中の『ヤクザと家族』についてを語っていこうと思います。毎度のことながら、ややネタバレ注意です。

 

 

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イントロダクション

ヤクザに拾われ、その道で生きることになった男(綾野剛)を、昭和・平成・令和と変わりゆく3時代を通して描いた作品。

監督は2019年公開の『新聞記者』のヒットによって一躍有名となった藤井道人。私『新聞記者』はまだ観てないんですよ。ただ同年公開の『デイアンドナイト』がかなり好だったので、ちょっと注目をしていた監督さん。本作の予告を観た時は『デイアンドナイト』と同じシックなノワール調の雰囲気を感じたこともあり、前々から楽しみにしていました。

また、主演の綾野剛と言えば去年放送していた刑事モノのドラマが記憶に新しいですね。足の速い警官役として、めちゃめちゃガンダしてました。

 

ヤクザ映画というより「愛への渇望」

ストレートなタイトル通りヤクザ映画である本作。序盤から中盤ぐらいは暴力描写の景気良しで"らしさ"満載。夜の歓楽街を肩で風切りオラつく様子も描かれます。しかし暴対法や暴排条例で徐々に衰退。令和になった頃には、いい年こいたおっさんばっかりでシノギもギリギリで厳しい状況になっています。「えー今月のシノギは1300万円です。組長の入院費があるので…」みたいな話をしている始末。こんなしょぼくれたヤクザを観られるのは案外珍しい気がしました。

ただ、本作がテーマとして最も重きを置いているのは一人の男が「愛」を知り「愛」を求める姿だと思いました。主人公の父親はクスリの金が払えず自殺をし、母親はどうもいないご様子です。いつもつるんでいるであろうヤンキー仲間は居れど心は孤独な状態なのです。そんな中で知り合ったヤクザの組長さん(舘ひろし)。この人が優しいんですね。「頑張ったな」なんて言って頭ポンポンしてくるのです。血は繋がっていなくても自分を優しく受け入れてくれるヤクザという家族の形を通して「愛」を知ることになるのです。その後業界でメキメキと腕を挙げていく主人公。そこで愛する女性であったり、息子のような存在のよく行く店の男の子なんかと出会うことになります。

つまり、本作はヤクザ映画の体を成した「愛」がテーマのヒューマンドラマなのですね。このスタイルだからこそ重厚かつエモーショナルな作品に仕上がっていたのだと感じました。

 

思い出した『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命

私、本作観終わった後ちゃんぽん啜りながら「この後味、他でも覚えがあるなぁー」と考えていました。あっちゃんぽんの味じゃないですよw作品の後味。そこでようやく思い出したのが2012年公開の『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』でした。

 

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家族を養う為に銀行強盗を犯すバイクレーサ―(ライアン・ゴズリング)とそれを追う警官(ブラッドリー・クーパー)の因縁が、それぞれの子供たちへと引き継がれていく様を描いた作品。ストーリー自体は何ら共通点はないので、どう言ったらいいのか。上手く説明が出来ませんが、構成が3パートで成り立っていることや時代や世代を超えて受け継がれる運命・宿命を扱った作品だと感じた点、どんな手を使ってでも家族の為に命を懸ける姿が描かれている点も思い出したきっかけだったと思います。あぁ『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ』を改めて観直したくてムズムズしてきたー。

 

まとめ

以上が私の考察と感想です。

私の観に行った上映回は観客はおじさんが多く、恐らくヤクザ映画が隆盛極めし時代を懐古したい気持ちで観に来たのかもしれません。しかしギラついた特濃暴力映画の様相は終盤になるにつれ無くなっていくので、果たして満足出来たのか。少し反応が気になりました。

また、見方によってはヤクザ産業に同情を見せているような捉え方も出来るような気がします。それではマズい。観た人が"ヤクザ可哀想"という単純な思考に陥らなければ良いのですが。このように引っ掛かる部分はあれど余韻抜群の超良作。侮るとカウンターパンチくらいます。

また今作の主題歌である millennium paradeの『FAMILIA』のミュージックビデオを映画鑑賞後に観ると感動の強度が100倍増します。どんなラストかを知ってるからこそ、思わず泣きそうになるMV。YouTubeで視聴可能なので、映画の一部として是非観てほしいと思いました。

ということで、この辺でお開きです。ありがとうございました。