キャプテン・シネマの奮闘記

映画についてを独断と偏見で語る超自己満足ブログです

第58回:映画『ノマドランド』感想と考察

今回は現在公開中の『ノマドランド』について語ろうと思います。毎度のことながら、ややネタバレ注意です。

 

 

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イントロダクション

タイトルにある「ノマド」とは「遊牧民」を意味する言葉で、各地を彷徨いながら短期の仕事を点々と行って食つなぐ高齢労働者を描いたロードムービー。各映画祭を賑わしている今年大注目の作品でしょう。

監督は『ザ・ライダー』(2017年公開)のクロエ・ジャオ。MCUの新作『エターナルズ』を手掛けることが決まっている監督さんです。でもどうなんでしょう?こうしたインディーズ系を撮っている監督がエンタメ色の強い、しかも天下のマーベル作品に挑むとどうなるか。面白い化学反応を期待してます。

そして主演はフランシス・マクド―マンド。『スリー・ビルボード』(2017年公開)で主演女優賞を獲得したのは記憶に新しいですが、私的にはなぜか、勘違いに勘違いが重なるスリラー『ブラッド・シンプル』(日本公開は1987年)のイメージが強い。そんなに細かくは覚えてないんだけどなぁーw。

 

典型的なロードムービーではない

まず初めに言っておくと私「ロードムービー」というジャンルにはとっても弱い。雄大な自然を彷徨いながら人生を見つめ直す過程は否応なしに心洗われます。私にこのような弱点を作り出した映画が、2008年公開の『イントゥ・ザ・ワイルド』でした。

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 一人の青年が自身の豊かな環境を捨て去り、アラスカを目指して旅をする作品。まぁ詳しくはその時が来たら語るとして、今作『ノマドランド』も同じような雰囲気を醸したロードムービーであったので、私の中では良作確定。ただ典型的なロードムービーとは決定的に異なる点が2つありました。

1つ目は、旅に出た理由が半強制的であること。『イントゥ・ザ・ワイルド』含めロードムービーの多くは、自ら決断をし旅立つことが多いです。しかし本作の主人公は違います。貧しい高齢女性である主人公は旦那を亡くしており、住んでいた街の閉鎖により家どころか街から追い出されてしまいます。もし車を持っていなかったら「ハウスレス」じゃなくてホントに「ホームレス」になっているところです。なので、いたたまれなさがあるんですよね。きっとこんな人生望んでなかっただろうと。

2つ目がリアリティーが色濃い点。史実を基にしているので当たり前ちゃ当たり前なんですけど、とある場所を通して様々な人々の人生が交錯していく様は、私の好きなNHKのドキュメンタリー番組『ドキュメント72時間』っぽく見えました(途中、頭の中でテーマソング流れ出したしw)。そう思ったのも納得で、エンドクレジットを見ているとご本人出演の方が何人かおり、実際にノマドとして生活をしている人が登場していたことが分かります。つまりドキュメンタリー寄りのフィクション映画という作風になっているのです。まぁそうなるともう少し映画的カタルシスがあっても良かったのかなぁと個人的には思いました。

よって、『イントゥ・ザ・ワイルド』に軍配。まぁ私自身が『イントゥ・ザ・ワイルド』の主人公と年齢と近く「共感」という情が湧くこともあるので、もう少し年を取って人生経験が豊かになると本作の方が好きにかもしれません。

 

家は心の中にある

 今作は名言の宝庫ではあるんですが、作品そのものを一番表している言葉はこの「家は心の中にある」だと思いました。割と序盤で出てくる言葉なんですよね。心の中にある家とは、言い方を変えればその人を形成する信念というか一本の軸だと思います。本作の主人公は、半強制的に始まったノマドとしての生活だけれども、様々な人の生き様に触れることで、リアルな形ではない「家」を手に入れたんだと感じました(ラストの行動もこれが理由なんじゃないかな)。どんなことがあってもブレない軸を持った人間というのは強い。静かだけど力強い生命力が宿った作品でした。

そんなことを感じたからでしょう。観終わった後ファストフード店で昼飯を食べていると、正面に座っていた人たちに目が留まりました。スーツに身を固めた女子大生が高そうな靴を履き自信に満ち溢れた若い男に投資のレクチャーを受けているご様子。ふと彼らが本作を観たら何を思うんだろうかと考えていました。人の人生なんて勝手だし、投資で儲けた金を元手に何か夢に挑戦しようとしている立派な人かもしれない。でもお金、お金と果てのない欲望を追いかけている事がものすごくちっぽけに見えてくるのではないかと思いました。心の中の家はお金で買えませんから。そんなことを考えながらポテトを黙々と頬張るボク。ふっw完全に酔ってるなぁー。

 

まとめ

以上が私の見解です。

うーん他にも書いたい気持ちが溜まっているのですが言葉で表現しにくいというか、色々と感じることが多くキャパオーバーしてる状態です。様々な俗っぽいものを超越した何とも言えない感情を沸き起こることでしょうし、これは観てもらうにつきるな。

一つ簡単に触れるとすると、食事をしているシーンが多く見られました。ファストフード店タロイモ?の出荷場で仕事をする場面もあります。これらは「生きる」を表現してるのだと思いました。「死にたくなきゃ食うしかない。食うんだったら美味い方が良い。」という『おくりびと』(2008年公開)に登場する名言通り、食べる行為は生きることに直接繋がっています。食べ物のシーンって生命を感じさせる重要なアイテムなんだと改めて思いました。

あとパンフレット売ってないのどうにかしてー。欲しかったんですけど。パンフが売られていない理由が製作会社の都合上みたいに書かれていたので、ディ〇ニーの買収関連ですかね。やっぱり障害になったよ。勘弁してくれ~。

はい、ということでこの辺でお開きです。ありがとうございました。

 

第57回:映画『ミナリ』感想と考察

今回は、現在公開中の『ミナリ』を語っていこうと思います。毎度のことなが少々ネタバレ注意です。

 

 

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イントロダクション

 A24とプランB という強力タッグで送るヒューマンドラマ。アメリカに渡り農業で成功を修めようと奮闘する韓国人家族が描かれます。今年の米国アカデミー賞でも注目を集めている作品の一つですね。

主演はTVドラマシリーズ『ウォーキング・デッド』のグレンで有名なスティーブン・ユァン。TWDねぇ…。めちゃめちゃドハマりしてたんですけど、シーズン8か9の途中だったかでリタイアしちゃいました。理由はこのグレンってキャラクターも含め好きなキャラクターが居なくなっていくことで、どんどん気持ちが覚めていったからでした。決定打は、“その人退場させたらダメじゃね?”って人物の退場だったんですけど。ゾンビ的要素もだいぶ薄まりつつあったし(そういや日テレでやってたゾンビドラマもゾンビ要素最初だけだったなぁー)、新たに加わるキャラクターにもあまり魅了されなかったし。

ってそこまで関係のないぼやきを言ってても仕方ないですね。いやーでも、あのグレンが今やオスカーノミネート俳優ですから何だか感慨深いです。

 

おばーちゃーん!

この作品、一番の魅力と言ったらおばあちゃん(ユン・ヨジョン)でしょう。映画開始しばらくは、アメリカに来たは良いけどトレーラーハウス暮らしの先行き不透明な状況から少しぎすぎすした家族が描かれていきます。雰囲気も何となく暗いので、気持ちが乗り切れずに観ていました。しかし韓国から呼び寄せたおばあちゃんの登場によりガラッと作品の色が変わります。

口は悪く、がさつで子供っぽいところのある花札大好きおばあちゃん。こんな性格なもんだから長男には「おばあちゃんらしくない」と言われ敬遠される始末。でもこの長男とのやり取りが至極。飾らない性格で接してくれるおばあちゃんへ次第に心を開いていく過程を見ていると温かい気持ちに包まれますし、ラストこの長男が夜闇で「おばーちゃーん!」と叫びながら取る行動にはノックアウトです。

エンドクレジットで「全てのおばあちゃんに捧ぐ」というのも納得の魅力あるキャラクターでした。

 

成功が全てなのか?

そんなおばあちゃん絡みのコミカルなシーンとは裏腹に物語を追うごとに様々な障壁が家族の前に立ちふさがります。それも結構容赦なく悪化を辿る一方で、正直に言ってしまうとハッピーエンドを迎えることなく映画は終了します。序盤の方で感じた何となく暗い雰囲気は、おばあちゃんの登場で誤魔化させれいただけだったのです(逆に言うとおばあちゃんのフィールド支配力が凄すぎるんだよw)。

しかし不思議なことに重い作品を観た後のしんみりした気持ちには成らず、どこか清々しい気持ちで映画館を後にすることが出来ました。それはなぜか?アメリカンドリームを夢見て移住したけど「成功」ではない他に大事な物を手に入れたように感じられたからでした。そりゃ仕事が上手くいって、富と地位を手に入れ贅沢な暮らしが出来るに越したことないですけど、現実はそう簡単に上手くいかないことの方が多いです。だからと言って必ず不幸になるとも限らないのが人生。それは「成功」以外にも幸せになる為のツールがあるからだと思います。

あんな結末だとしてもあの家族なら大丈夫です。きっと乗り越えていけるはずです。

 

まとめ

以上が私の見解です。

観る前は「移民」をテーマにした社会派ドラマだと思ってましたが、いやいや全然違いました。登場人物たち其々に魅力のある王道ヒューマンドラマ。この王道をハリウッド作品として白人種が中心ではないキャスティングで行ったことが諸々の賞を賑わせている理由かもしれませんね。

ちなみにタイトルの「ミナリ」は「セリ」を意味する言葉だそうです。どうでしょう。日本では春の七草ぐらいの印象しかないのか、都内のスーパーではあまりお見かけしませんね。ただ東北の方ではよく食べるっぽくて、東北に縁のある私はちょくちょく食べます。天ぷら、お浸し等どんなスタイルでも美味いですが、特に仙台市が名物のセリ鍋はいいっすよ。根の部分がクセになります。でもよく考えてみたら子供の頃はそんなに好きではなかったです。こうしたセリとか春菊みたいなちょっと独特な野菜の美味さに気付くと大人になった感じがします。

それではこの辺でお開きです。ありがとうございました。

 

※追伸

あっ映画の内容以外に珍しいことがあったので書いておきますか。

私が観に行った回はほぼ満員。そのせいでしょう。私の座っていた席が、老夫婦に挟まれるというオセロだったらひっくり返るしかない状況に陥ってしまったのです。最初は別々で入って来たので気付かなかったのですが、なぜ夫婦だと分かったのか?それは左に座っていた女性のアツい視線でした。最初は私の事を見て訝しがっているのだと思いましたよ。白髪頭が目立つ中、なんでこんなひょろい若造が居るんだと。でも違ってました。私の右に座る男性が何か行動するたびに、こちらを見てくるので“なるほど夫婦か…”と察しました。自分に向けられた視線じゃないことは一安心。しかし決して落ち着きはしませんでした。恐らく駆け込みで来て丁度私の両サイドが空いていたから席を取ったという経緯でしょう。

こんなシチュエーション初めてでした。夫婦仲が良いのはよろしい事ですけど、上映中は勘弁して。視線邪魔!ただ予告が流れてる段階で席を代わることを打診するなり配慮をすべきだったと少し後悔しました。こんなシチュエーションには金輪際巡り合いたくないですが、仮にあったら絶対代ってやろ。

 

第56回:映画『ラーヤと龍の王国』感想と考察

今回は現在公開中の映画『ラーヤと龍の王国』について語りたいと思います。毎度のことながら、ネタバレ注意です。

 

 

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イントロダクション

今やエンターテインメント界の帝王といっても過言ではないディズニーの最新作。

舞台は龍に守られた王国。龍は邪悪な悪魔を戦った末に姿を消した状態であり、悪魔を封じる力が宿る龍の石が残るのみ。しかし石の能力を履き違えた人々の奪い合いの末、邪悪な悪魔が復活。崩壊した世界で、石の守護者一族の娘である主人公ラーヤは王国の平和を取り戻すため、姿を消した龍を探し旅に出る。

監督は『ベイマックス』(2014年公開)のドン・ホールと『ブラインドスポッティング』(2018年公開)のカルロス・ロペス・エストラーダ

っていうか上映館数が少ないですね。公開と同時にDisney+でも配信があるからでしょうか。上映館数が少ないせいかディズニー映画の割にはあまり世間で話題になっていないような気がします。私が観に行った回はそれなりに人が入ってましたが、ディズニー映画を観に行くと定番とも言える子供の姿がありませんでした。やっぱり映画館で大々的に宣伝して公開した方が話題になるんじゃないかと思います。

 

レベルの高い映像表現

私、ディズニー作品を観るのは結構久々。去年のピクサー作品『2分の1の魔法』を劇場で観て以来です。そのせいもあるんでしょうけど、映像美のクオリティーに唸ってしまいました。雨や川の水、砂や泥、草花、ドラゴンの毛並み。手で触れた感触が伝わってきそうなリアリティーです。特に時々登場するエスニックな感じのスープが凄い。油の輪っかといえば良いですかね。あの照り具合は観ていて腹が減りますよ。アニメを料理観て腹減るのは、あまりしない経験でした。

また、アクションシーンも驚くほどしっかりしていました。格闘シーンはリアリティーがありアクション映画好きでも満足出来るレベルだと思います。主人公のライバルとして登場するショートカットの王妃のファイティングポーズは、どしっりとした佇まいでなかなかイカしてました。

 

あの映画との共通点?

 本作観ながら頭によぎった映画がありました。それが2015年公開『マッド・マックス/怒りのデスロード』。

 

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はい、また出ましたw。本ブログで度々登場する映画史に燦然と輝く傑作。私にとってのオールタイムベスト映画です。作風だけ見ると全くベクトルの違う作品ですが、案外共通項はあったように思えたのです。

まず、裏切りや暴力の蔓延がトリガーとなって崩壊した社会という舞台設定が同じです。勿論ディズニー作品なのでファンタジックかつマイルドになっていますが、どの世代にも充分に伝わるようになっていると思います。

また主人公が、そんな世界に絶望し堅く閉ざした心を仲間との危険な旅を通して次第に開くというストーリーのフォーマットも同じに感じました。まぁ吊橋効果じゃないですが、誰かと試練を共にすることは閉ざした心にとって良いカンフル剤になるのかもしれません。

さらに、閉ざした心を開くキーワードが「他人を信じる」という点も同じな気がします。今作『ラーヤ~』において最重要課題である信じる心。“騙されたり攻撃されたりするリスクはあれど、まず相手を信じてみない限り何も始まらない。信じた先に希望がある。”そんなメッセージを感じることが出来る作品でした。

 

まとめ

以上が私の考察です。

あっ本編始まる前に流れた短編作品『あの頃をもう一度』についても触れておきましょう。始まった瞬間は“うわっ前座とかいらないわー”という気持ちだったのですが、おいふざけんな。不覚にも泣いちゃったじゃねーか!

セリフの一切のない作品で、ある老夫婦がミュージカル調で描かれています。『雨に唄えば』や『ララランド』へのオマージュが感じられる流れるような映像の先には“年を取るのも大事な人とだったら良いな”と思えるラストが待っていました。前菜として味わうには勿体無い上質な作品でした。

本編前から涙腺に訴えてくる禁じ手を行使するディズニー。配信優先(上映館数マジで少ないですね。ディズニー作品にしちゃ世間で話題になっていないのも納得です)やちょっとでも時代と錯誤するコンテンツは排除する体制は到底許せませんが、コンスタントに良作を生み出す点は認めます。ちくしょー!

それではこの辺でお開きです。ありがとうございました。

 

第55回:映画『ガンズ・アキンボ』感想と考察

今回は、現在公開中の映画『ガンズ・アキンボ』について語りたいと思います。毎度のことながら、ネタバレ注意です。

 

 

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イントロダクション

 両手に拳銃を括り付けられ強制的に殺人ゲームに参加することになった男の頑張りを描いたガンアクション。

主演は丸眼鏡界の大スター ハリーポッターで有名なダニエル・ラドクリフ。最近じゃ『スイスアーミーナイフ』(2016年公開)では死体役でしたし、ジャングルで遭難したり(調べたら2017年公開『ジャングル/ギンズバーグ19日間の軌跡』という映画でした)踏んだり蹴ったりなクセの強い役ばかりこなしてます。いやーやっぱり名前を言っちゃいけない超ヤバい奴とガキの頃から死闘を繰り広げただけあります。ガッツが違います。そんな彼が杖じゃなくて銃という物理攻撃の道具を握ってるはちょっと新鮮です。ちなみに握っている拳銃はM1911系統の銃ですね。主流のグロックやベレッタ辺りではない比較的クラシカルなチョイス、いいっすよ。

 

バカっぽいストーリーだけどアツい

 ではまずストーリーをもう少し深く見ていきたいと思います。ラドクリフ演じる主人公はゲーム会社に勤めるサラリーマン。仕事に納得してないご様子だし彼女さんとも別れたばっかり。そんな鬱憤を晴らす為の彼の趣味がいわゆるクソリプ。酒を煽りながら手当たり次第に暴言限りを尽くす姿はイマドキのクソ野郎です。そんな彼がクソリプで喧嘩を売ったのが、ネット上で生中継される殺人ゲーム「スキズム」。“こんなゲーム見て喜んでのクソじゃね”的な書き込みをしていると案の定住所を特性され、マッドマックスに出できそうな連中に襲われてしまいます。そんなヤバそうなものに喧嘩売るのがバカじゃんって話ですが、目を覚ますと両手に拳銃を固定された状態に。銃を撃つ以外なんも出来ねーよと絶望していると、対戦相手である女がマシンガン片手にカチ込んでくるのです。

ここまでのストーリーだけで、脳ミソのネジがぶっ飛んだバカっぽい作品であることが分かるかと思います。まぁそこが良いとこなんですが、ただのバカじゃ終わらないのもポイントです。私にはネット上でイキってたポンコツ野郎が真の漢になる物語に見えました。強制的に戦うことになった男が生き残るため、そして正義ために一度も撃ったことのない銃を両手にならず者たちに挑む。負け犬だったと思ってた奴が血反吐を吐きながら立ち上がる系統の映画って個人的には問答無用で胸アツです。

 

ニックス最高

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で、主人公の対戦相手となるニックス(サマラ・ウィーヴィング)というガチ勢ヒロインがマジで最高です。この手のタイプのキャラが好きな人とっては、今年の主演女優賞有力候補いったところでしょう。

まずルックスが抜群にイカす。随所のタトゥーや不適な笑みを浮かべた時にチラッと見える銀の犬歯など、クレイジーなビジュアルが冴えわたっています。とくに革ジャン&グラサンで爆笑しながらガトリングをブッ放す姿は、もはや神々しく見えました。

そしてアクションシーンも素晴らしい。ガトリングガンを始めヴェクターのサブマシンガンドラムマガジンのマイクロウジなどの銃を乱射。キレのある格闘スキルも披露してくれます。格闘+射撃の戦闘スタイルやメインで使用する銃がグロック34であるあたり『ジョン・ウィック』、それも2作目へのオマージュなのかなと思いました。一つ心残りなのが、LEGOブロックで作ったお手製ナックル。センスが良いだけあって、登場が序盤だけじゃ勿体ないでしょ。もうちょっと見たかった。

ついでに、ちょっぴりほろっとさせるバックグランドをお持ちなのも良き。あまり言及はしませんが、殺人ゲームに参加せざるおえない悲しい事情とそれに関連したトラウマを持っています。また時々見せる表情から、実は純粋な心を持った人物であることが伺い知れるキャラに仕上がってると思えました。

 

まとめ

以上が私の見解です。

今作を観ていて思ったのが、ゲーム好きは間違いなく楽しめるだろうなという事です。特にFPSですよね。私自身はほとんどゲームをやらないので何となくのイメージですが、クルクル回るカメラワークだったり、主人公が射撃するたびに残弾がデカデカと表示されたりとゲーム要素を感じさせる演出が観られます。ハリポタミーツFPSはスカッとするには丁度良い作品だと思います。

それではこの辺でお開きです。ありがとうございました。

 

第54回:映画『地獄の警備員』感想と考察 ※『孤独のグルメ』についても

今回は、現在公開中(公開って言っても新宿のケイズシネマだけ?)の『地獄の警備員』について語りたいと思います。毎度のことながら、ネタバレ注意です。

 

 

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↑この影の演出が良い。不気味です。

 

イントロダクション

 去年『スパイの妻』でベネツィア国際映画祭で銀獅子賞を獲得したことで話題となった黒沢清監督の初期の頃のホラー作品。初公開が1992年なので29年ぶりの復活ということですね。

バブル期の勢いに乗る総合商社。そこに絵画の取引担当として勤務することになった主人公の女性(久野真季子)。初出勤と同じ日に元力士の男 (松重豊)も警備員としてやって来る。この男、実は殺人を犯しているものの精神鑑定の結果、ムショを免れた殺人マシンだった。

今作を私が観たかった理由として黒沢監督の作品という理由もあったのですが、松重豊が殺人鬼を演じているのが気になったからでした。私、松重豊主演ドラマ『孤独のグルメ』が大好き。Netfilxで定期的観てしまう作品です。殺人鬼なんてあの一人飯を楽しむ穏やかなキャラとは全く異なりますし、しかもデビュー作だとかそんな話も耳にしていたのでこれは観ないとなと思ったのです。

 

※ちょっと脱線して

せっかくなので『孤独のグルメ』の魅力をちょっくら語らせてもらいます。ざっくりあらすじを言うと、海外雑貨を扱う個人経営の男が仕事で訪れる先々でご飯を食べる。それだけなのにハマる理由が大きく3つあると思います。

 

1.30分というお手軽さ

まずはその短さ。スペシャル版を除けば、どの回もだいたい30分程度。この短さが丁度良いのです。私の場合、仕事で夜遅くなった時や地上波のTVドラマを観終わった後などに何か観たいと思う気持ちにフィット。サクッと観てサクッと満足感を得られるわけです。ただ夜中に観るとお腹がすくリスクがあるので、ダイエット中や健康に気を遣っている人にはおススメしません。

 

2.敷居の低さを感じるグルメ番組

これは私の勝手なイメージかもしれませんが。私、グルメ番組はあまり好きではありません。ミシュランで星取ったとか、得体の知れない高級食材とか…。まぁそれは良いんですけど、こういった物をさも“私は舌が肥えているので”みたいな上から目線なコメントをするグルメぶった人たちの調子に乗った言動がいけ好かないです。「コイツら何様だ、そんなんで視聴者が喜ぶと思ってんのかよ。」ってなります(言い過ぎかw)。

しかしこの番組は違います。訪れる店もそうですが、飾り気のない素人丸出しなコメントはリアリティーを感じますし、心底美味い物を喰ってるんだろうなという料理の良さを感じられます。この敷居の低い雰囲気が心をホッとさせてくれるのです。

 

3.今こそお手本にしたい喰いっぷり

 ここ最近、食事中の会話を避けてもらうためか「黙食」なんてワードを見かけるようになりました。このワードを初めて目にした時、私が真っ先に頭に浮かだのがこのドラマでした。一人でふらっと飲食店に入り、メニューと睨めっこ。頼んだ後は店員や客を観察し店の雰囲気を楽しむ。そして目の前においでなさったメシを黙々と口に運び「食」と対話する。「黙食」のテンプレじゃないですか。

勿論、誰かと食事をして美味いもマズいも含めて感動を共有することは楽しいことです。でも時には、いや特に今の時期は一人で黙々と「食」とコミュニケーションをするのも悪くないと思います。

 

今の社会にも通ずる「企業モノ」として

 あーだいぶ脱線しましたね。いかんいかん。本筋の『地獄の警備員』の話に戻りましょう。まずは、ホラー要素とは別の観点で興味深く感じた部分から触れていきます。

つい最近、オリンピック組織委員会元会長森喜朗氏の「女性が居ると会議が長くなる」発言で、かなり物議を醸した女性蔑視の問題。そもそも会議が長くなるのは、男女関係なく話すのが下手な人や何度も同じ質問をしたりする理解力が乏しい人が居るからなので、ジェンダーの問題として大きく取り沙汰すにはちょいとズレが生じてしまうように感じた私の違和感はどうでも良くて、今作の主人公はこの発言の比じゃないレベルで酷い仕打ちを受けてます。

まず序盤からおやっ?と思う描写がありました。それは主人公が配属部署の場所を警備員に確認する描写。本人確認を取る際の警備員が、何とも言い難い嫌な感じがしました。まるで品定めをするようなその目線の動かし方は、若い女性が相手だったからじゃないかと私には感じられました。警戒という意味合いがあるにしてもわざとらしいく、恐らく相手が男性だったらやらないんじゃかと思います。

さらに大杉漣が演じる上司が強烈。パワハラとセクハラのダブルコンボをかましてきます。かなり倒錯した感情をお持ちのキャラクターで別の意味でホラーなので、こんなには酷くないにしても、こうした人は当時珍しくなかったのかもしれません。あっ今もか…?

こうしたブラックな環境にもめげずに仕事をこなす主人公。それでいてサイコ野郎に命を狙われるわけですから可哀想に。泣きっ面に蜂もいいとこです。

 

「怖い映画」とは?

 では、核の部分であるホラー要素について思ったことを述べましょう。先に結論を言うと今作は、昨今ではあまりお目にかかれないタイプの気味悪いホラー作品でした。

昨今のホラー映画では「ジャンプスケア」と呼ばれる手法が主流です。突然のバカデカい音や急に現れる幸の薄い顔した連中…。あの手この手で驚かしてくるこのテクニックから得られる感情は、厳密に言うと「びっくり」であって「怖い」ではないと思ってます。こうやって書いてるってことは、お察しのとおり「ジャンプスケア」にはあまり良い印象を持っていません。はっきり言って苦手です。私、お化け屋敷とか嫌いですもんw。急に変な格好した人が目の前に来るとか、単に心臓に悪いだけで気分が悪くなります。まぁ映画の場合見慣れてしまったせいか、ある程度タイミングが読めるのでライトな気持ちで鑑賞出来るんですけどね。

だから「お化け屋敷や肝試しは苦手だけど、ホラー映画は普通に観られる」といった話をすると不思議がられることもあるんですけど、私の好むホラー映画は今作のような作品なのです。例えば度々登場する警備室の窓口。小さな小窓の周りを埋め尽くす貼り紙。脇に置かれた消火器。壁のシミ。文章にして書くと何とも思わないありがちな光景ですが、これがかなり不気味。地下階ということもあり全体的に暗く、息の詰まりそうな重苦しい雰囲気が漂っています。こうした何も起きていないのに不気味な映像が随所で観ることが出来ます。

また殺人鬼の動機が不明で謎が多い人物像なのも良いです。『ダークナイト』や『ヒッチャー』を取り上げた時にも触れたかもしれませんが、「分からない」や「理解出来ない」って怖いんですよね。ホラー映画で言えば『悪魔のいけにえ』(1974年公開)が代表的ですかね。今作とも共通している点ですが、理由も分からず次々と殺されていくなんて最悪過ぎる(褒めてます)。『シャイニング』(1980年公開)なんかも、ジャック・ニコルソン演じる主人公の狂っていく理由が明確に提示されないからこそ怖かったように思います。

驚かすという安易な手法ではなく、画面全体から滲み出てくる気持ち悪さや不安を煽る演出でアプローチをしてくる。これぞ「怖い映画」だと改めて感じた映画体験でした。

 

まとめ

以上が私の感想と考察です。

あっ暴力描写に触れてなかった。直接グロくて過激な感じではないのですが、非常に衝撃的。特にロッカー使い方には悶絶。人をボキボキに折りたたんで収納してしまったり、ロッカーにぶち込んでロッカーごと押し潰してみたり。ナイスアイディアです。

今作が上映している場所は限られていますけど、ニューマスター版の円盤が出るのかな?円盤で観るのも一見の価値ありだと思います。

それではこの辺でお開きです。ありがとうございました。

 

第53回:実は…観てない映画たちについて

今週のお題「告白します」

というお題を発見してたので、ちょっとそれに便乗して実は観た事がない映画につてをテーマに思うことをつらつら書いてみようと思います。

 

 

私の「観ていない映画」事情

どうでしょう。10年近くは「趣味:映画鑑賞」で生きていると思います。大学生の頃は年間200本以上は鑑賞してましたね。しかし、それでもまだまだ観ていない作品は沢山。その中にも人気作や名作と位置付けられている作品も含まれていたりします。私は、それらで思い当たる作品を手帳に何本かピックアップして書き出しているのです。(これも「告白します」の内に入りそうだな)

具体的にはこの辺の作品。

 

グーニーズ

『ゴースト/ニューヨークの幻

サウンド・オブ・ミュージック

風の谷のナウシカ

天空の城ラピュタ

 

他にも色々ありますが、多くの人が目にしているであろう作品で言えばこんなとこでしょうか。観たら斜線を入れて消すようにしていますが、ほとんど放置状態。一体何の為に書き出してるんだか…。

「観ていない映画」は時としてコミュニケーションの場に登場し、私の心をモヤモヤさせます。特にジブリ関連の作品。観てない作品があると口にすると、マジかよという反応をされることは結構あります。

また最近では私が映画好きだと知っている職場の先輩とこんな感じ会話をしました。

 

先輩:「最近もコロナに負けず映画館行ってる?」

ボク:「毎週末行っちゃってますね。」

先輩:「やっぱり流石だね。あっじゃ『鬼滅の刃』はもちろん。」

ボク:「それは観てないです。」

先輩:「そうなの⁉面白いのにぃー。何で映画好きなのに行かないの?」

ボク:「えっ、まぁ…それは…」

 

どう返したら良かったのか。映画が好きな人間は、人気の作品=必ず観ているという方程式が世の中に蔓延でもしてるのかもしれません。

「何で観てないの?」と聞かれたら「タイミングに恵まれなかった」とか「あまり興味がなくて」としか言いようがないんですがね。

 

なぜ「観ていない」が言いずらいのか?

以前に書店をぶらついていたら「いまさら観ないとは言えない映画」とサブタイトルの入った雑誌を見かけたこともあります。どういう趣旨の特集が組まれていたのかは内容を読んでいないので分かりませんが、何だかこういうノリというか風潮みたいのがあります。映画鑑賞においては他の媒体(書籍やアニメなど)以上に特出しているようにも感じてしまいます。どうしてでしょう?通ぶって鼻にかける人が多いのか、風潮を生み出すからくりが働いているのか。考えても答えは見つけようがないですが、確かな事が一つだけあります。それは「観ていない」ということは「まだその感動に出会っていない」ということです。

映画の感動は、初めて観た時の気持ちに勝るものはないと思っています。記憶を真っ新にすることなんて出来ないわけですから、一度しか味わうことの出来ない感覚。例えそれが“よく分からなかった”や“つまらない”という感覚であったとしても一回限りです。そんなプレミアムな時間をまだ使用していないということなのです。

なので私は「えっ?それぐらい観てないのかよ」という軽蔑ではなく「まだ観てないってことは、あの感動をこれから知る機会があるということかぁー」という羨望の気持ちを抱いてしまいます。

まぁもちろん最低ラインと言うか、観ていないにしても常識として知ってるレベルはあるとは思います。でないとコミュニケーションが成り立ちませんからね。

ということで、まだ観ぬ作品にすばらしき感動や出会いがあると信じて、これからも映画の海原を突き進んでいこうと気持ちを新たにしたところでお開きにします。これを読まれた方に良い映画との出会いがありますように!

ありがとうございました。

 

第52回:映画『すばらしき世界』感想と考察

今回は、現在公開中の『すばらしき世界』について語っていこうと思います。毎度のことながらネタバレ注意です。

 

 

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イントロダクション

実在した人物を基に描かれた小説『身分帳』を原案に『永い言い訳』(2016年公開)や『ディア・ドクター』(2009年公開)の西川美和監督が手掛けたヒューマンドラマ。

殺人罪による13年の刑期を終えて出所してきた主人公の三上(役所広司)。幼い頃から児童養護施設で育ち刑務所を出たり入ったり繰り返しており、今度こそ塀の中へ戻らないと心に決めていた。しかしそんな彼の前に社会の息苦しさが容赦なく牙を向く。

主演の役所広司。この方の出演作ってホント良い作品ばっかりです。私の好きな作品『十三人の刺客』(2010年公開)や『三度目の殺人』(2017年公開)にも出てますし、『孤狼の血』(2018年公開)や『CUER/キュア』(1997年公開)も名作。TVドラマだと『陸王』とかありましたよね。なので私の中では“役所広司”という名前自体がブランド銘柄になってます。あれです、ポスターに「トム・クルーズ」って書いてあるだけで映画の売上が良くなるって話と似てるような。そんな感じです。

 

三上の目から見た世界はすばらしいのか

本作鑑賞前、主人公の事は相当な極悪人だと思ってました。人生のかなりの期間を刑務所で過ごしているわけですし、シリアルキラーとかそんな奴なのかと。しかし蓋を開けてみれば真逆の人物でした。心優しく真っ直な性格。時々見せる子供っぽい表情が魅力的です。ただ真っ直ぐ過ぎるせいで汚れた事や道理に反する事に目をつぶることが出来ないので、時として暴力的になり罪を犯してしまうのです。決して悪い人ではないけれど、社会のシステムに迎合出来ないから爪弾きにされてしまっている人物だったのです。

そんな彼にとっては現代社会は地獄といっても過言ではないのかもしれません。前科者に対する世間の風当たりは強く社会復帰が難しいのは去ることながら、制度やモラルばかりで自由や融通の利かない風潮やそれによって形成される社会のレールから脱線しないように息を潜めるしかない人々。これら全てを集約したような発言を物語の後半、主人公の身元引受人となってくれている弁護士夫婦がします。全ての事に関わっていると人は持たない。だから自分を守るために聞こえないふりをすることも大切だと。この辺りのシーンの会話は、胸を締め付けられるような思いがしましたね。“それで良いのか?でも、自分も無意識のうちにやってるよなぁ…”と。

ここまでの考察だと徹底的に胸糞悪い映画になっちゃってますが、しっかり希望も描かれていました。この希望が見える瞬間こそが「すばらしき世界」なんだと思います。三上を取り巻く人々の温かな絆(個人的には六角精児が演じるスーパーの店長とのやり取りが好きだった)もそうですし。また、ぐつぐつ煮えるすき焼きや養護施設の子供たちの笑顔。元奥さんから電話が来た時に見た空。障害を持つ職場の同僚が摘んだコスモスの花。三上の見た世界には、美しい光景が溢れていました。このようなちょっとした感動は私たちの日常にもありますよね。そんな刹那的感動に出会う為に、私たちは息の詰まりそうで窮屈な世の中を生きているのかもしれません。

きっと三上の目から見た世界は、すばらしい部分もあったのだと思います。

 

まとめ

以上が考察になります。いやータイトルにこんな感動する映画は、なかなか巡り合えないですよ。ホント脱帽。今年指折りの傑作としてカウントすること間違いなしです。

また、面白いことに現在公開中の『ヤクザと家族 The Family』も前科者の社会復帰という似たようなアプローチを取っていました。偶然だとは思いますが、今ホットなテーマであると捉えることも出来そうです。本作と、はしごして観たら相当メンタルやられそうですね。まぁ両作品とも、はしごで観るには勿体無い作品な気もしますし実践しないことをお勧めします。

ということで、ここら辺でお開きです。ありがとうございました。