キャプテン・シネマの奮闘記

映画についてを独断と偏見で語る超自己満足ブログです

第158回:映画『ノースマン 導かれし復讐者』感想と考察

今回は現在公開中の映画『ノースマン 導かれし復讐者』を語っていこうと思います。毎度のことながら、ややネタバレ注意です。

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イントロダクション

北欧を舞台に描かれる王の血を継ぐ男の壮大な復讐劇。

9世紀のとある島国。叔父のフィヨルニル(クレス・バンク)によって父であるオーヴァンディル王(イーサン・ホーク)を殺され、母(ニコール・キッドマン)を奪われ1人祖国を脱出した主人公のアムレート(アレクサンダー・スカルスガルド)。父の復讐と母の救出を誓いながらもアムレートはバイキングの一員となって戦闘に明け暮れていた。そんな中、預言者との出会いによって誓いを思い出した彼は叔父が国を追われ農場を営んでいることを知り、奴隷に扮してアイスランドへ向かう。

監督はロバート・エガース。『ウィッチ』(2015年公開)と『ライトハウス』(2019年公開)に続く長編3作目。前2作とも閉塞感漂うシチュエーションを扱っていましたが、本作から急に視界が開けたかのような北欧の大自然が舞台です。噂によると次回作は兼ねてより製作を希望している『吸血鬼ノスフェラトゥ』(1922年公開)のリメイクらしいですね。主演は今作の主役であるアレクサンダー・スカルスガルドの弟 ビル・スカルスガルドが出演するとか。

そうなると似たようなメンツをキャスティングするのがエガース監督作品の特徴に見えてきます。本作には『ウィッチ』に出演したアニャ・テイラー=ジョイとラフル・アイネソン。そして『ライトハウス』に出演したウィレム・デフォーが出ています。これもうエガース組じゃんか。

愛より敵討ちを

実は私、本作を去年開催された東京国際映画祭のガラ・セレクションで鑑賞していました。ただあの時は荒々しくも神秘的な世界観に圧倒され、やや思考停止をしてしまったので改めての鑑賞という事にしました。

改めて観てみると過去の時代に舞台にしつつも扱っているテーマは、ここ最近の作品のトレンド「男らしさ」がもたらす弊害といったところだと感じました。まぁ思えばエガース監督作品の『ウィッチ』にも『ライトハウス』にもその要素はあったかなと思いますが今回はより顕著です。主人公は小さい頃からお父ちゃんから“男ってのは戦いで死ぬ事が誉だ!愛より敵討ちじゃ!”ってマッスル英才教育を叩き込まれてます。領土を取り合う戦争の絶えない時代はどの国でもそうなりがちなんでしょうが(現に太平洋戦争時の日本がそうでしたし)、名誉の死である戦死を遂げた魂は英雄の神殿(ヴァルハラ)に送られるというのは2015年公開『マッド・マックス怒りのデス・ロード』の人を使い捨ての資源としか見なしていない悪党、イモ―タン・ジョーと言ってる事が同じでした。

それに主人公が奴隷として使い走りにされてる場面も意外と現代的というか。なかなか渋い条件で働かされ、ちょっと目に止まる事をすると少しだけ条件が良くなる。しかし支配階級から逃げる事は出来ずな状態。何だか今の企業体制となんら変わらないように見えてきます。

ちなみにエガース監督は人間が動物へ抱くスピリチュアルさを描く事に興味があるのでしょうね。『ウィッチ』ではヤギ、『ライトハウス』ではカモメ、そして本作ではカラス&雌狐が物語を進展させる一つのキーポイントになっていました。

東京国際映画祭についてはこちら。

captaincinema.hatenablog.com

まとめ

以上が私の見解です。

少々話運びがスケールが大きいわりに鈍重な気もしましたが、映画らしい贅沢なシーンが多い作品。なるべくデカいスクリーンで観たい一品です。特に私が一番好きなシーンは、バイキングの皆さんによるムキムキキャンプファイヤーのシーン。だって炎を囲んで野性マッチョたちが雄叫びあげながら踊ってるんですよ。破壊力抜群の画力。最高以外に言うことないでしょw

ということでこの辺でお開きです。ありがとうございました。

第157回:映画『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』感想と考察

今回は現在公開中の映画『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』を語っていこうと思います。毎度のことながらややネタバレ注意です。

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イントロダクション

2017年にNYタイム紙が報じた映画プロデューサーのハーベイ・ワインスタインによるセクハラ/性的暴行事件。これを期に世界中に#MeToo運動が広まりましたが、もう6年も経つのですね、早いな。本作は記事を執筆した2人の女性記者の回顧録に基づいた作品です。

ニューヨーク・タイムズ紙の調査報道記者として勤めるミーガン・トゥーイー(キャリー・マリガン)とジョディ・カンター(ゾーイ・カザン)は、大物映画プロデューサー ハーベイ・ワインスタインの数十年に及ぶ権力を笠とした性的暴行の噂を聞き、調査に乗り出す。しかし取材を進めるうちに過去にもみ消されている事や被害者の多くが証言すれば訴えられる恐怖やトラウマから声を挙げられない状況が立ち塞がる。

主演のキャリー・マリガンといえば一昨年の個人的ベストとして挙げた度肝抜かれる傑作『プロミシング・ヤング・ウーマン』ですね。社会情勢を取り込んだパワフルな作品への連続出演、良い仕事してますね。そしてゾーイ・カザン出演作だと『ビック・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』(2017年公開)が気になっていたのですがまだ未見。出演作で観た事あるのは摩訶不思議なラブコメルビー・スパークス』(2012年公開)ぐらいかな。

なお、製作にはブラッド・ピット率いるプランBが携わっています。当時ピットは交際をしていたグウィネス・パルトローからセクハラの被害を打ち明けられており、ワインスタインに対し「彼女に二度とあんなことをすんな!」と啖呵を切ったそう。本作にも製作総指揮の一人として名を連ねてるわけですから非常に気骨のある方です。

“淡々と”は強さ

近年『スポットラスト 世紀のスクープ』(2015年公開)や『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』(2017年公開)とジャーナリズムを扱う社会派映画が定期的に作られているハリウッド。良い土壌が整っていると思いますが、中でも本作は特出した出来栄えだと思いました。

物語は電話やメールでアポイントを取り、実際に会ってオンレコかオフレコかの確認をしていざ取材。他に取材出来そうな関係者も洗い出し再びアポ取り…とその繰り返し。その都度障壁に見舞われますが、説得力と毅然とした態度で相手から発言を引き出すミーガンと取材のためならロンドンにも出向く所轄の警官ばりのフットワークのジョディによる連携プレーで徐々に打破していきます。

決して映画的な盛り上がりがあるわけでもありませんし、鑑賞者の情感を煽るような演出もほとんどなく淡々と物語が進んでいきます。通常の映画ではあれば「淡々と」はあまり面白く見えませんが、本作においては逆。寧ろ取るべきしてとったスタイルでしょう。

報道やジャーナリズムにおいて最も重要な事は客観性です。加害者や被疑者を卑下する事、あるいは被害者へ同情を示すようなニュアンスは見せず、あくまで起きた事実を世間に伝えるというのが最たる目的となります。逆に扇情的に伝えるニュースはイエロージャーナリズムと呼ばれるもので、今で言うゴシップやワイドショーといったニュースをエンタメ消費するジャンルに分類されます。つまり本作はジャーナリズムの体を成した映画となっています。決してエンタメ消費をさせず、鑑賞者に問題を提示します。センシティブかつ現在進行形の問題だからこその描き方だったと思います。

日本では…

日本の映画界における暴力の告発や疑惑は去年報じられました。アメリカよりも5年のブランクがあったことよりも一報を伝えたのが週刊誌であった事が問題だと感じます。週刊誌もいわゆるイエロージャーナリズムに属するメディアの一つ(といっても昨今は微妙な位置付けにあると思いますが)。本来であれば新聞やTV局で大きく報じるべきはず。週刊誌からの報道後も各メディアが追随するような動きは見られず、有耶無耶な状態となっている印象に感じます。

はぁ…日本よ、これでいいんですか?だからジェンダーギャップ指数のランキング(146か国中116位)報道の自由度ランキング(180か国中71位)が低いんです。どちらのランキングも民主主義を取る先進国に位置付けられる中では最下位レベル。これじゃ後進国ですよ。SDGsとか言ってるなら、こうした点でレベルが低い状態である事を自覚すべきかと。そして人を、とりわけ女性を喰い物とする“ケダモノ”を生み出さないための法整備や社会全体の構造作りが必須である事は私のようなパンピーごときにも分かる局面を迎えていると思います。

まとめ

以上が私の見解です。

あぁ…すみません。なんだか偉そうな説教臭い展開になりましたが、ジャーナリズムの在り方を考えさせられる作品。こういう力作は猛プッシュしていきたいですね。

ちなみに本作に登場するNYタイムズの編集長、ザ・一流企業の上司って感じで良かったです。部下たちとの良い距離間に見えましたし、大事なところで適格なアドバイスや部下のカバーをする頼もしさ。理想だなぁ~。

ということでこの辺お開きです。ありがとうございました。

参考:

ヤバすぎる!ハーヴェイ・ワインスタイン事件の意味するところ。敏腕製作者のセクハラは“当たり前”なのか!? - SCREEN ONLINE(スクリーンオンライン)

ジェンダー・ギャップ指数(GGI)2022年 | 内閣府男女共同参画局

【2022年最新】報道の自由度ランキング 日本の順位と世界の状況 | ELEMINIST(エレミニスト)

第156回:映画『非常宣言』感想と考察

今回は現在公開中の映画『非常宣言』を語っていこうと思います。毎度のことながら、ややネタバレ注意です。いや、今回は結構核心にも触れているのでご覧になる予定の方はお引き取りを。

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イントロダクション

バイオテロが発生した航空機内を描く韓国産パニック映画。「非常宣言」とは 航空機が災害や事故等に直面し正常な運航が不可能な状態の際に出されるもので、他の航空機よりも優先的に着陸が許可される航空用語だそうです。

ある事がきっかけで飛行機恐怖症となったパク(イ・ビョンホン)は娘とともにハワイ行きの航空機に搭乗する。しかし離陸後まもなく謎の死を遂げる乗客が現れ、機内はパニックに。一方、国内ではネット上にアップされた航空機を標的にウイルステロを行うとした犯行予告動画の捜査をベテラン刑事(ソン・ガンホ)が行っていた。

主演は韓国内のみならずグローバルに活躍をするソン・ガンホイ・ビョンホンソン・ガンホは去年『ベイビー・ブローカー』でカンヌ国際映画祭の主演男優賞を獲得してました。何だか結構ビックタイトルのハリウッド作品への出演も決まった的なニュースを最近見た気がするんだけど気のせいか。そしてイ・ビョンホンといえば、随分昔にTBSだかのゴールデン帯に『IRIS/アイリス』って韓流ドラマやってましたよね?あれのイメージがめちゃくちゃ強いんですよね。謎に秋田が出てくるスパイアクションのドラマ、好きで観てたなぁ。ってかなぜあの時ゴールデンの時間帯に韓国のドラマがやってたんでしょう。TV局が製作に関わってたのかな?

犯人の動機は…

まず本作は航空機内という閉塞された環境下で繰り広げられるスリルとドラマが見もの。『新感染/ファイナル・エクスプレス』(2016年公開)でもそうでしたけど、この手のジャンル、韓国映画は得意なのでしょうかね。またウイルステロという事もあり、今なお続くパンデミックによる分断も要素として盛り込まれていました。

しかし、それ以上にとうとう「拡大自殺」を明確に扱う作品が登場するようになったのかと個人的には思いました。ウイルスを機内でばら撒いた主犯の男に動機を問うシーン。身代金か勤めていた企業への腹いせかそれとも国家への挑戦か。しかし男は機内の全員が死ねばそれで良いとの趣旨だけをします。そして作中内には2017年にラスベガスで発生した銃乱射事件や2015年のパリ同時多発テロが実際に起きた事として扱われておりニュース映像が挿し込まれます。

日本でも度々起きている明確な目的はなくただ暴力に駆られ自滅と共に凶行に及ぶこの事象。原因には無論加害者本人の倒錯した思想や価値観等の責任もあるのでしょうが、孤立や絶望を生み出しやすい現代の社会環境にも非があると思います。夢や楽しみ、支えてくれる人が存在しなければ人は狂気に取り憑かれるばかり。世の中には不器用にしか生きれない人だって居るのですから(私もそうです)、そんな人たちを見捨てない社会であって欲しいと切に願います。っと少し脱線しましたが、拡大自殺は国際的な問題であることを感じました。

まとめ

以上が私の見解です。

本作には韓国(ソウル)からアメリカ(ハワイ)というルートなので、当然日本も通過地点として登場するわけですが、ほんと頼むよアメリカ&日本って気持ちになります。まぁこのコロナ禍に入るタイミングで似たような事がありましたね。ダイヤモンドプリンセス号とか飛行機で帰国した感染者をどう隔離するのかといった話が。だからまぁ当然の処置といった内容の描写なんですが、有事の際に保身よりも共有/協力の姿勢を取る事が平和な国際社会を培っていくんじゃないかと平凡な一市民は思うわけですが…ムズいのかなぁ。

という事でこの辺でお開きです。ありがとうございました。

※ちなみに

本作において機内にお医者は1人という設定でしたが、それを観ていて思い出したことがありました。

少し前に私が新幹線に乗っていた時のこと。斜め前方の席で急病人が出たんですよ。で、車内に医師や看護師、医療従事者が居るかどうかのアナウンスが流れました。まぁ1~2人ぐらいは来るのかなと様子を伺っているとびっくらこいた。老若男女問わずなんと10人近くの方が駆けつけ通路はごった返しに。実際に手当てにあたったのは2〜3人で急病者の方もそこまで重篤ではなかった様でしたが、ちょっと感動しました。“あっこんなに乗ってるものなんだ”って。だから飛行機の場合でもきっと3〜4人は乗ってるんでしょうし0人のケースは確率として低いんだと思いました。なんか頼もしいですね。

第155回:『映画を早送りで観る人たち』という新書を読んでみた件

さて年が明けて2週間近くが過ぎてからの2023年1発目。言いたい放題、エンジン全開いきます。

去年の年の瀬、年内に使わなくては期限が切れてしまう紀伊国屋書店のポイントを何に使おうかと書店内を彷徨っていると目に留まった新書が。それが稲田豊史の『映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレ ーコンテンツ消費の現在形』。昨今よく耳にする倍速視聴やファスト映画、スキップ再生という私のような映画を溺愛する変態には無縁の行為を扱った内容。そういえば以前に似た内容の記事をネット読んだ気がと思ったら、著者はその記事のライターと同じ方。これを読んだら悪しきと思っている習慣が少しは理解出来るだろうかと思い手に取りました。

という事で今回は本書を読んでみて思ったこと/考えたことを語っていきます。辛辣かつ人を貶す表現が予想されます。普段から“イマドキ視聴方法”(倍速視聴やファスト映画、スキップ再生等を私個人が総称した呼び方です)をされる方はどうぞお引き取りを。ってかそんな連中、こんななげぇ文章読めないか?w 

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タイパだけじゃないらしい

本書、映画やドラマのみならず昨今のアニメやライトノベル、ゲーム、YouTube等の動画、評論に至るまで様々な角度から事の真相に迫っており、今現在のコンテンツ事情をまるっと抑えることが出来ます。正直イマドキ視聴方法は、いわゆるタイムパフォーマンスを重視するせっかちな人たちが行う視聴行為だとばかり思っていましたが、それ以外にも様々な要因が考えられるようです。

特に驚きだったのが、金、時間、心に余裕がない事が起因いているのではないかという話。リーマンショックやコロナショックを経て「空白の30年」なんていわれる停滞した経済やスペシャリスト/個性を重視し過ぎる教育体制、すぐ隣に博識がいて不用意な発言は即座に叩かれるネットメディアとマウントと虚勢を張り合うSNS社会が作品を楽しむ余裕を奪っているのだとか。

今、80年代や90年代の音楽やファッションが若者の間でまことしやかにブームになっているのも現代日本の余裕のなさが影響しているのではないかというのを聞いた事がありますが、全てに余裕がないからコストパフォーマンスとタイムパフォーマンスという現代人らしい考え方が趣味の領域にも侵攻しているのです。もうこうなって来ると可哀想な世代と言わざるおえないZ世代。まぁ私も20代なのでこの哀しき世代なわけですがw。

また「わからない」=「つまらない」とだけしか解釈が出来ずに作品を貶す稚拙な人たち(分からないは恥ずかしい事じゃないしチンプンカンプンだから面白い作品もあるのに)やハッピーエンド以外受け付けなかったり見ていて辛いシーンはカットするという「気持ちが良い」の感情だけを作品に求める快楽主義な人たち(それならアダルトビデオで充分じゃん)といったように世の中におバ〇が増えたことも影響しているというため息の出る論も。

こんな人達が蔓延ると作り手側も無視する事が出来ず、フォローが出来るように説明台詞マシマシのしょぼい作品が増えます。結果倍速やスキップ視聴をしても理解出来作りとなり、イマドキ視聴方法が常習化。自身で考察する時間が無くなりおバ○な方が増えるという悪循環です。やっぱりさ、学校教育の一環で美術なり国語の時間を使ってある程度各メディアコンテンツとの向き合い方を教えるべきでは?

「オタク」になるということは

もう一つ興味深かったのは「若者がオタクに憧れている」という記載が見られたこと。

ひと昔、といっても90年~2000年代頃のオタクへの印象はなかなか悪いものでした。本書でも触れられていましたが88~89年に発生した埼玉連続幼女誘拐殺人事件で逮捕された宮崎勤の趣味嗜好がマスコミで取り上げられた事で「オタク=反社会的でヤバイ奴」という印象が根付きました。今なおオタクに対して悪いイメージを持たれている方々はこの事件や「萌え」を流行語にしたTVドラマ『電車男』のイメージが強いのかもしれません(あのドラマ観直したいな)。

しかし若者たちにとっては昔の話。好きな事に夢中になっているのは楽しそうや個性的など肯定的な意見が多く、憧れる人も居るんだとか。しかしオタクになるにしても時間は掛けたくないし作品選びで失敗もしたくない。さてどうするか?そこで登場、有名どころをざっくり抑える情報収集としてのイマドキ視聴というわけです。

どうやら「オタク」を一種のステータスやファッションとして得たいご様子。オタクが増えるのは寧ろウェルカムですが、果たしてオタクと呼べる存在なのでしょうか?

私の思う「オタク」なったといえる定義は、知らない間に周りの人と話が合わなくなることだと考えます。映画を例にすると、映画オタクの方って単に映画を観る以外にもやっている事があるのではないでしょうか。それこそ理解が出来なかったり、自分の知らない事件やテーマを扱った作品と遭遇した場合、関連する書籍やネット・新聞の記事を読んだりコメンテーターや評論家という有識者の意見をチェックしたりするはず。その積み重ねで作品を起点に芋づる式に知識が蓄積されていきます。監督や役者についてのみならず、歴史や社会問題をも。すると何が常識的に認知されているのか世間一般との距離感がバグってくるんですよね。

だから「最近○○って映画観たんだけどさ…」っと言っても相手の反応が薄かったり「○○って俳優がさ…」と言っても「誰?」と返されたり。そこで初めて “あぁ自分はマニアックな話をしたんだ” とオタクになった事に気付かされるんです。誰もが通る公道を無視してジャングルを無邪気に突き進んでいたらいつの間にか誰も居ない荒野にたどり着く、そんな感じです。

それに色々失ったものもあるでしょう。お金や時間、経験、あったであろう交友関係など。勿論自分の好きな世界に没頭できるのは楽しい事ですが、没頭し過ぎた分だけ得られなかったものもあるはずです。

つまりオタクなりたいのであれば、知識への貪欲さとそれなりの覚悟が必要だってことです。まぁなろうと思ってなれる奴なんて端から居ないと思ってますが。

まとめ

以上、言いたいことの独白劇でした。

倍速視聴やファスト映画、ネタバレなどの「イマドキ視聴方法」について、多少なりとも理由が把握出来たのは収穫。しかし自分もやろうとは毛頭思えないですし、嫌悪感は拭えませんでした。価値感が古いんでしょうね。まぁアップデートする気はないですし、私のような時代に抗う残党兵もまだまだ居るはずなので製作者サイドも1つの作品を大事にしない連中に尻尾振る必要はないですよと言いたいです。

そして、これからも私は私の道を突き進みます。タイパやコスパが悪い?売れてる話題の作品?観てないと友人たちとの話についてけない? そんな事は知らん!観たい作品だけを観ていくだけぞ!

という事でこの辺でお開きです。ありがとうございました。

第154回:2022年映画ベスト(後編)

さて後半は様々な「ベスト」から2022年の映画を振り返っていきます。あっ最初に言っておくと配信サービスの作品や地上波TVドラマの話も含むかもしれません。また、ややネタバレがあるかもしれないのでご注意を。

↓前半の内容はこちら

captaincinema.hatenablog.com

 

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↑今年使った前売り券たち。やっぱり『ブレット・トレイン』の乗車券デザイン(左下)、センスあるわ。今年のベストデザイン賞です。

ベストアクション賞

それでは最初に発表するのは印象に残ったアクションシーンです。元々映画を本格的に趣味にし出したのはアクション映画から。なので、アクションシーンにはちょっと煩い人間です。

作品部門

『RRR』

今年のアクションを語るうえでやはり外せないのがこのインド産アクション超大作。

一人で暴動を鎮圧するゲリラ戦、虎とのランニングチェイス、ケモナーもびっくりなカチコミ、“軍神”による弓矢無双…。とにかく終始異常なレベルの筋肉モリモリアクションの波状攻撃。3時間をあっという間に感じさせるその引き出しの多さに脱帽です。肩車ファイトなんてどうやって思いついたの?

でも何だかんだ一番凄いのは高速ダンスバトルですかね。貴方はナートゥをご存じか?w

↓詳しくはこちら

captaincinema.hatenablog.com

近接部門

『シャドウ・イン・クラウド』クロエ氏vsグレムリン

第2次世界大戦下の女性パイロットのあるミッションと空の厄介者 グレムリンとの対峙する姿が描かれてた作品ですがマジか、モンスターとステゴロでやり合うヒロインは初めて観たかもしれませんね。それが『キックアス』(2010年公開)で大人たちをボコしたクロエ氏が演じているってところが激アツ。時代は着実に変わっているのだと実感出来ます。

射撃部門

『レイジング・ファイア』ストリートガンファイト

今年はガンアクションが少々寂しい時だった気がする年でした。印象に残ったのは『アンビュランス』の序盤ぐらいだし。

というわけで厳密には去年公開の強盗団vs警察の台湾産アクションから。終盤に繰り広げられる『ヒート』を彷彿とさせる車列の遮蔽物にした華々しい銃撃戦。

なによりピストルカービンの登場がアツかった。ピストルカービンとは拳銃に長い銃身やストックを装着しライフル形状にしたものを指します。あれが登場するのって結構珍しいと思いますし、ニコラス・ツェーの立ち回りもかっちょ良かったです。

ベストアクト賞

続いては、印象に残った役者陣をピックアップ。去年まで男女別に2人ずつ挙げてましたが、今年は絞るのが難しかった(毎年ムズいけど)ので一斉に列挙することにします。

『NOPE/ノープ』より

死んだ目からヒーローの眼差しに覚醒、カッコよすぎす ダニエル・カルーヤ

『MEN/同じ顔の男たち』より

全裸ジジイは無論、子どもになってもしっかり気味が悪い多彩な年齢層を演じ分けた ロリー・キニア

『流浪の月』より

顔だけが取り柄、モラハラDVクソ野郎 横浜流星

トップガン マーベリック』より

若造なんかに負けやしない!いくつになっても第一線を駆け抜ける鉄人 トム・クルーズ(これは演技賞以上に功労賞ですかね)

『さがす』より

曲者の父親&殺人鬼を相手に大立ち回りを繰り広げる小さな巨人 伊東蒼

『ちょっと思い出しただけ』より

あんなタクシー運転手がいたら良い 伊藤沙莉

『Coda あいのうた』より

本物の親子にしか見えなかったエミリア・ジョーンズ&トロイ・コッツアー

ここで特に触れておきたいので『NOPE/ノープ』のダニエル・カルーヤ。私、目力のある役者さんが好きなんですよね。セリフがないシーンでの心情や境遇の変化が如実に伝わりやすいのが目だと思ってます。

目力という観点で見ると先日最終回を迎えたドラマだと『エルピス 希望、あるいは災い』の眞栄田郷敦も非常に良かったです。お父さん譲りなのかな?あの目力。

ベスト予告編賞

『ミッションインポッシブル デッドリコニングPART1』

人気スパイ映画「ミッションインポッシブル」シリーズの最新作。トム・クルーズは来年も世間を湧かせることでしょう。

一体何回観たことか。予告編だけであんなにワクワクさせるなんて期待せずにはいられません。超人的な宙を舞うバイクスタント、『ミニミニ大作戦』(2003年公開)や『ボーン・アイデンティティー』(2002年公開)を彷彿させるカーチェイス、『キートンの大列車追跡』(1926年公開)へのオマージュっぽい列車アクション。何だか砂漠での戦闘やソードアクションもあるっぽい。

こんな盛りだくさんのアクションをセリフはほとんどなしの作りで魅せてくれます。最高、セリフとキャッチコピーを乱打する日本での予告映像とは根本的に作りが違うと思いました。

来年楽しみで賞(来年のベスト候補?)

毎年微妙だった作品を振り返る“俺のラジー賞”「う~ん…な作品賞」を今年は独立させましたので、その代わりじゃないですが、最後に個人的に楽しみにしている来年公開作品をピックアップ。もしかしたら来年のベストにも絡んできそうな強者の匂い漂う作品たちです。

なお、(原題)としているのがまだ日本での公開が明確に決まっていない作品。恐らく公開されると思うのですが、再来年になる可能性や劇場公開なしもありえますので。

いや、ちょっとね。現時点で多すぎる。また金が絞り取られてゆく運命にあります。

またリストには載せませんでしたが来年はゴジラの新作がありますね。山崎貴監督という事で恐らくCG/VFXによるゴジラという事になるでしょう。う~ん、どうなんだろ…。なるべくニュートラルな気持ちで作品に向かいたいのですが、特撮でやって欲しい気持ちは捨てられません。変にお涙頂戴演出とかもない事を願ってます。

また宮崎駿監督の新作君たちはどう生きるかもありますね。こちらはタイトルだけで原作をアニメ化するわけでは無さそうですので、私が求めているものとは異なる気がしています。果たしてどうなるか。

※追伸

「マッドマックス」シリーズのジョージ・ミラー監督の最新作「Three Thousand Years of Longing(原題)」の日本公開が2月に決まりました。邦題は『アラビアンナイト 3千年の願い』だそう。アラビアンナイト?汎用性の高い名前だな。

まとめ

以上、今年の締めくくりとなる2022年映画の諸々のベストでした。

ふぅ今年も何とか年内に挙げられました。去年と比べて投稿数は微減しましたがアクセス数もじわりじわりと伸びてるっぽいので、こんな感じで気ままに語りたくなったら吐き出すを繰り返そうと思います。

ということでこの辺でお開きです。ありがとうございました。

第153回:2022年映画ベスト(前編)

ついにこの時がやって来ました。2022年の総決算、ベスト映画を決める運命の季節です。今年私が映画館で鑑賞したのは全97作品。全タイトルがこちらになります。※赤字は邦画。

再上映作品

去年は全79作品なのでかなりの増加傾向。3桁の大台には惜しくも、いや危うく届きませんでしたが、これは流石に観に行き過ぎました。もう少し絞らないとこの不景気時代、そろそろ財布が悲鳴をあげるわ。そんな私がこの中から、感動と興奮に苛まれた10本を選出し傍若無人にランク付けをしていこうと思います。例年通り再上映作品はランキングからは除外。また東京国際映画祭(TIFF)で鑑賞した作品も今後公開予定の可能性を鑑みて対象外とし、あくまで劇場で一般公開された新作のみを対象にします。相変わらず再上映作品のラインナップ、攻撃性が高いわね。

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今年買ったパンフレットたち。いい感じに映えそな表紙が多い。

 

↓今年はワーストも出してます

captaincinema.hatenablog.com

↓去年の内容はこちら

captaincinema.hatenablog.com

※その前に

順位発表の前に直前までランキングに入れようか悩んだ作品をピックアップ。12月に良い映画があるとこうなるのよね。それが・・・

『MEN/同じ顔の男たち』

夫の死を目撃したハーパー(ジェシー・バックリー)は、心の傷を癒すためイギリスの田舎町のカントリーハウスで過ごす事にするもその町には同じ顔をした陰険な男たち(ロリー・キニア)が待ち受けていたというサスペンスホラー。

今年観た中で最も気持ち悪い映画でした。面白いというより突き抜けたキモさが光りました。痛々しいゴア描写も去ることながら、終始嫌な雰囲気が立ち込めるこの作品のキモさの正体は男性が女性に向ける見え透いた下心や女性蔑視といったところでしょう。思わず失笑が漏れてしまうキモいシーンの数々。あの年齢を聞いてからのくだりとかヤバいでしょ。そんな気持ち悪さに主人公も最初は怯えているも徐々に呆れて果てたリアクションになっていくのも興味深いです。ラストなんて最高にキモいのにリアクション薄っw。

去年にも『プロミシング・ヤング・ウーマン』や『最後の決闘裁判』といった男尊女卑やミソジニーをテーマにした傑作が多数公開されましたが、同じ路線の新たな良作が今年も生み出されました。この手のジャンル、勢いありすぎだろ。

第10位

それでは発表に移りましょう。第10位は...

 

『ちょっと思い出しただけ』

ダンサーの道を諦めた照生(池松壮亮)とタクシードライバーの葉(伊藤沙莉)のラブストーリーを軸に、東京で交錯する様々な人々の人生が描かれます。ラブストーリーに関してはNetfilxの『ボクたちはみんな大人になれなっかた』と同様(こっちも伊藤沙莉出てたね)逆行の構造をとってます。「あの頃」への郷愁がトレンドなんでしょうか。

このランキングを考えていた際、ふと浮かんできたシーンの数々。まさにタイトル通り。それで“あぁあの作品好きだったんだ”となったのでランクインです。特に序盤の方のタクシードライバーとお客たちの会話のシーンが好きでした。光もあれば影もある東京を如実に表したようなあの会話だけでオムニバスの短編ドラマが作れそう。

また、かなり個人的な理由として劇中見知った場所はいくつか登場していたのもポイントでした。“あっあの場所!”ってなる感覚には抗いようがないですね。

第9位

第9位は...

 

『ケイコ 目を澄ませて』

生まれつき両耳とも聞こえないプロボクサーのケイコ(岸井ゆきの)の静かだけどアツい葛藤が描かれるヒューマンドラマ。こちらが私の2022年ラストの映画館だったのですが、いや~シメにこういう作品と出会えるのはマジで幸福ですわ。

最初のミット打ちのシーンでズキュン! 井上尚弥を相手にした選手ばりに早いノックアウトです。澱みない動きも天晴れでしたが、ミットを打つグローブの音やパンチをかわす時の空気が揺れる音が豊かに表現されていました。そんなジムでのトレーニング音のみならず街の喧騒が際立つ音響が静かな闘魂と葛藤を味わい深くしていたと思います。

また、ケイコとジムのトレーナーや会長が動きで通じ合う絆に心が熱くなります。海外の方とのコミュニケーションも身振り手振りで通じることがあるって言いますし、やっぱり対話は「言葉」だけではないなと。

ボクシング映画らしい派手なサクセスストーリーでは決してありませんが、明日へと走り出す勇気を貰えるような美しい物語でした。ラストカットも美しかったな、今年のベストラストに選出です。

第8位

第8位は...

 

リコリス・ピザ』

ポール・トーマス・アンダーソン監督による青春ラブストーリー。1970年代のロサンゼルスを舞台に俳優活動を行う男子高校生(クーパー・ホフマン)と10歳年上の女性(アラナ・ハイム)の恋模様が描かれます。

なんて説明したら良いんでしょうか、好きです。このカップル、恋も仕事も将来も基本どん詰まり。それでも全力で走り続けます。すれ違ったりくっついたりしながら好き同士で居られるその瞬間に全力疾走な様に心打たれました。俺も人生、走り続けないとな。

もちろん物理的にも走るシーンも多いので“走ってる映画”好きとしても大満足。さらに70年代を舞台にしていながら、現代にも通ずる社会風刺が散りばめられているのも上手いですね。時代は外面しか変わってねーわけだ。

何てことないどうでも良いシーンの連続だと思ったら物凄い事が起きているのにオフビート。長回しも多いですし観る人によっては“ぽかーん”とした気持ちになるかもしれません。でも、その“ぽかーん”が気持ちの良い映画だと思います。きっと倍速視聴をする人たちには到底理解の出来ない魅力がこの映画にはあります。

第7位

第7位は...

 

ゴーストバスターズ/アフターライフ』

幽霊退治を行う科学者たちが活躍する1980年代に世界的ブームを巻き起こした「ゴーストバスターズ」シリーズの31年ぶりの最新作。今作ではゴーストバスターズのメンバーの孫娘とその友人家族が新たな脅威に立ち向かう姿が描かれます。

まさかこんなに面白いとは…。シリーズの大ファンというわけではない私。1989年公開の2作目なんてほぼ記憶にないですが、これは琴線を的確に刺激してきました。思わず泣きそうになったし。恐らくシリーズ初鑑賞の人でも感動が出来る親切丁寧なファンサービス。ここ最近の某ユニバース大作群のファンサとは毛色が少し異なります。

また「ゴーストバスターズ」が公開された80年代らしいクラシカルな様相を保ちつつも、しっかり現代的なアップデートがされていたのもシリーズもののお手本のような仕上りだったかと思います。今年は『トップガン マーベリック』もそうでしたけど、80年代の逆襲が始まったのかもしれませんね。

ミニマシュマロマンも可愛かったな。もっとグッズの販促があれば良かったのに。

第6位

第6位は...

 

『さがす』

懸賞金目当てに連続殺人犯(清水尋也)を追って失踪した父(佐藤二郎)を探す中学生の娘(伊藤蒼)という三つ巴の捜索劇を映画サスペンス。

2017年に埼玉県座間市で起きた連続殺人事件や2019年に起きた医師による嘱託殺人の事件がベースとなっているように感じたので社会問題をはらんだ重めな内容となっていますが、純粋にエンタメ作品としてもめちゃくちゃ面白かったです。時系列を巧みにばらした先の読めないストーリーと暗くざらついた質感の映像は韓国ノワール作品のテイストが強し。こういう映画、日本でも出来ますよ というのを証明した作品になったかと思います。

それに寂れた商店街をチャリで爆走するシーンが“走ってる映画” 好きの性癖にぶっ刺さりました。その後裏路地に入った時のあの暗黒感も良き。「それは有料コンテンツだね」のセリフは個人的には流行語大賞です。

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第5位

ランキングも中盤です。第5位は...

 

『ある男』

平野啓一郎の小説を原作としたヒューマンミステリー。

再婚相手が不慮の事故で亡くなった後に全くの別の名前を名乗っていた事が判明し、その調査を依頼された弁護士(妻夫木聡)が中心に描かれます。

端的に言えば「自分」を巡るミステリーだと思います。名前や国籍が果たして自分を自分であると本当に証明してくれるのか?また、そうしたものが呪縛となっていることもあるのではないかという事を突き付けられます。なので観ていて自分のアイデンティティが揺らぐと言いますか、何だか不思議な気持ちになりました。

ここ最近の邦画には珍しい台詞が控えめな視覚的映画であるのもポイント。度々登場する人物の後ろ姿を捉えたシーンが良いスパイスとなってラストに効いてきます。あのラストは必見だと思いますね。

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第4位

第4位は...

 

『アンビュランス』

銀行強盗にしくじった“兄弟”(ジェイク・ギレンホール&ヤーヤ・アブドゥル=マーティン2世)が負傷した警官を搬送する救急車をジャックし、LAの街で破壊的カーチェイスを繰り広げるアクション大作。

今年一番テンションの上がったアクション映画でした。マイケル・ベイが『マッドマックス』を撮ったらこうなるといった感じです。キレキレのドローンショットとド派手なクラッシュシーンのマリアージュ。銃撃戦にも手抜かりのないハリウッドらしい密度の高いアクションを魅せつけてきます。特に低空飛行で迫る追跡ヘリをLA名物の水路で撒くシーンめっちゃ格好良かったよな。

また、ほとんどシーンが救急車内で展開されるワンシュチュエーション的ドラマも面白かったです。血の繋がらない“兄弟”のブロマンスと救命士のプロフェッショナル精神が救急車内で激突。ここもテンション上がるポイントでした。

ギャグのセンスやエモいライティングも流石なマイケル・ベイ監督。単なる破壊王ではないその実力は今なお健在です。

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第3位

さぁーここからはトップ3。見事3位と大健闘をみせたのは...

 

『女神の継承』

今年はアジア系ホラーが勢いをみせましたが(残念ながらこのムーブメントに日本がついていけてない感じが惜しい)中でもこちらの“アジア版『エクソシスト』”は凄まじき火力でした。

作品の構図としてはタイ北部に伝わる伝統を重んじる祈禱師一族を取材するモキュメンタリーの体を取っています。これだけなら他のホラー映画でもちょくちょく見る手法ですが、ここに『チェイサー』(2008年公開)のナ・ホンジンのエッセンスが加わるとどうなるか?化学反応を超えた化学爆発の発生です。序盤は落ち着いて観られていても徐々にヒートアップする不吉さ。そして気付けば破竹の勢いで地獄へと突き落とされます。この理論や道徳の通用しない圧倒的邪悪に苛まれる感じ。これですよ、ホラー作品で観たいのは。

終盤のハイテンションなカメラワークや何ものかに取り憑かれた不憫過ぎる娘さんを演じるナリルヤ・グルモンコルペチも素晴らしい。終わり方も絶望的だったなぁ。

↓詳しくはこちら。こちらの記事は今年最もアクセス数が伸びたようで。

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第2位

惜しくも、しかし堂々の第2位の座を獲得したのは...

 

『Coda あいのうた』

今年はフジテレビ系列で放送され話題を呼んだTVドラマ『Silent』や邦画では9位にあげた『ケイコ 目を澄ませて』や『LOVELIFE』でも描かれたろう者と聴者の物語がある種のトレンド的な年となりました。そんな中で代表格と呼べるのがこの米国アカデミー賞作品賞を獲得した本作でしょう。

聾唖者である両親と兄を持ち家族の中で唯一の聴者である主人公の高校生 ルビー(エミリア・ジョーンズ)は、幼い頃から家族の“通訳係”となり家業の漁を毎日手伝っていた。そんな中、学校の合唱クラブで歌の才能が開花をし顧問の教師から音楽大学への進学を勧められ家業との両立に悩むことになります。

私にとって今年観た映画で唯一ボロ泣きした作品。とにかく手話の豊かな表現力とルビーの伸びのある歌声に完膚なきまでにやられました。後半のコンサートのシーンから目頭がヒートアップし、その後のシーン全てがどれも愛おしくて鳥肌が止まらず。これは役者陣の素晴らしいアンサンブルの賜物ですよね、本当の家族にしか見えなかったもの。

また、ハンディキャップを抱えた人の登場する物語はある種の「健全さ」や「美しさ」がとかく主張されがちですが、同じ人間な訳ですから時には下ネタで盛り上がったり、汚い言葉で悪態をついたり、他人と意見が対立して喧嘩になったりもします。そうした人間の決して綺麗ではない部分がしっかり描かれていたのが観ていて嬉しかったというか清々しかったです。

作品賞に輝くのも納得の出来栄え。是非とも『Silent』に感銘を受けた皆さんには観て欲しい傑作です。

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第1位

それでは群雄割拠、数多の作品を抑え王座に輝いた栄えある2022年の覇者は...

 

『NOPE/ノープ』

 

ジョーダン・ピール監督が仕掛ける巨大飛行物体を巡る人々を描いたSFホラー。

映画やCMの撮影で使われる馬の飼育とその牧場を経営する主人公のOJ(ダニエル・カルーヤ)と妹のエメラルド(キキ・パーマー)が、父親が亡くなった事にも関係している謎の巨大飛行物体の存在を収めた動画を撮影すれば一攫千金が狙えると画策するも彼らには予想を遥かに超えた「最悪の奇跡」が待ち受ける事になります。

ピール監督の過去作品に比べるとかなりエンタメ色が強くなっていますが、これが大当たりだったと感じました。

昨今、SNSや動画サービスが発展しメディアを通して「見る/見られる」やメディアを「送る/受け取る」の立場があやふやに。分断社会が進む一つの要因とも言えそうで個人個人のメディアリテラシーがより一層問われるご時世ですが、このテーマを「UFO」というフェイクニュースのネタにもなりそうなハッタリの利いたコンテンツで炙り出します。目には目を、ハッタリにはハッタリをです。さらに映画史も巧みに織り込まれているので驚異的。これを大傑作と呼ばずしてどうするか!と思ったのも、もしかしたら学生の頃にメディアやジャーナリズムについて少し学んでいたからかもしれませんがマジですげぇ物語でした。また見る加害性に関しては2017年の『ゲットアウト』でも扱われていたテーマだと思いますが、より迫真性が増した気もしました。

ちょっと堅い話になってますけど、秀逸過ぎるストーリーのみならずダイナミックな映像、不気味なサウンド、素晴らしい演技と全てが揃った映画でもあったと思います。終盤の巨大飛行物体を映像に収めてやろうと大勝負をかけるシーンなんて面白すぎて涙出そうだったし。やはり映画は総合力でしょう。

いや~マジで想像を遥かに超えた驚きと感動。こういう映画と出会うためにオタクやってんだよ。最高で最悪な奇跡を魅せてくれた作品に携わった全ての人に感謝です。

出来ればまた映画館で観たいな、ちょっと前めの席でスクリーンを見上げながら。

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まとめ

以上、全細胞をフル稼働させて激選した至極の10+1作品でした。少しホラー系統の作品が多めですが、意外と王道も押さえてるラインナップになった気がします。ゴリゴリの映画オタク層じゃないライト/ミドル層にも比較的ウケが良いのでは?

その他トップガン マーベリック』『神は見返りを求める』『X エックス』『LOVE LIFE』『RRR』も大変素晴らしかったのですがランクインさせる事が叶わず。トップガンはベスト映画だって言う人が多そうだな。

という事で長くなりましたが、この辺でお開きです。後編では印象に残った俳優やアクションシーンを語り散らします。それではありがとうございました。

第152回:う~ん…と頭を抱えた2022年の映画を振り返る

さて、今回はクリスマス・イブの幸せムード流れる日になんてマイナスな企画を挙げるんだって話になります。

毎年、ベスト映画企画の後半で禊として行っていた個人的に頭を抱えた作品を振り返る儀式ですが、残念ながら今年は個人的にハマらなかった作品が例年よりも多かったので、1つの記事に独立させて先に大掃除を完了しようと思い至りました。というわけでここからは辛辣かつ罵倒が飛び交う事になります。仮にお好きな作品があっても怒らないでね。貴方は貴方自身の「好き」を信じて、私の戯言なんかに騙されないで下さい。そして毎度のことながら、ややネタバレ注意です。

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↑関係ないですが冬なので。まぁ微妙な作品を観た時の心はこんな感じですよ。

作品選びの選球眼が…

まず各作品を切り捨てる前にこんな話をしておきましょう。文中にも野球の例えを出すと思うので。

私、自分に合った作品を選び抜くセンスはそれなりに長けていると思っています。言い換えるなら駄作を回避する能力です。映画鑑賞を本格的に趣味にし始めた頃は手当たり次第に観ていたので良作にも駄作にもぶつかる事を繰り返していましたが、段々と自分の好みや傾向が分かってくるようになったんですね。そうして予告やあらすじをざっくり確認すれば“自分に合わない作品だろう”という直感が働くようになってきたのです。これを自分で「選球眼」と呼んでいるわけです。自分の得意球に手を出せば最悪2塁打ぐらいにはなる、そんなニュアンスです。おかげでここ数年は映画館で空振ることはごく稀。自分の選球眼を過信して上々の映画ライフを過ごしていたのです。しかし2022年はそう上手くはいきませんでした。トリッキーな難敵が多く、選球眼に狂いが生じたのです。

う~ん…な作品賞

それでは私の映画の選球眼を欺いて見事に空振りを取った6作品+αを紹介しましょう。覚悟しやがれ!

・大怪獣のあとしまつ

まぁ本作に関しては多くの人がボロクソ言ってたかと思いますし、今更掘り返したところで死体損壊みたいになる気もするので簡単に。

人類を脅かしていた超巨大怪獣が突然死亡し、その後処理に追われる人々を描いた異色のSF映画。怪獣映画だ!と安易に飛び付いたのが落とし穴だったか。端的に言って予告詐欺な映画です。予告編ではシリアスな雰囲気を装っておきながら、いざ蓋を開けるとジョーク・演出共に幼稚なコメディー映画。面白い発想はいくつもあったのにそのアイディアを活かせず飼い殺しにしているようにも見えました。畜生、これは見抜けなかったわ。

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・ドリーム・プラン

テニスプレーヤーのビーナス&セリーナ・ウィリアムズ姉妹を世界チャンピオンに育てたテニス未経験者の父親を基にしたヒューマンドラマ。主演を務めたウィル・スミスが本作で主演男優賞を獲得しました。

あっ平手打ちは関係ないっすよw。感動ではなく違和感の残る演技派作品。正直こういうのを美談として語るのは古臭いと感じました。娘たちがグレずに偉大な結果を残したから良かったものの、夢や目標を強要するような教育姿勢はどうなんでしょうか?あれです、医者の家の息子が必ず医者を継ぐようにスパルタ教育を叩き込む堅苦しい家族と同じです。最近よく言う多様性ってのは人種だけじゃなく個人の心情や価値観が大事だと思いますし。まぁこれぐらいしないと超一流のアスリートは生まれないのかもしれませが、私の琴線に触れることはありませんでした。

ジュラシックワールド/新たなる支配者

恐竜たちが現代に復活した世界を描くSF映画の代表格であるシリーズの最新作。

私の今年のワーストはこちらの作品です。そもそも前作の「炎の王国」が微妙だったので期待はしていませんでした。しかし子供の頃から親しんできたシリーズ。攻めてヒットが打てれば良いかとバッターボックスに立ちましたが、これはさすがに酷かった。空振りどころかデッドボールですよ。

恐らく誰も望んでいない蝗が主軸となるストーリーは非常に退屈。昆虫ディザスターがやりたいなら他でやってくれ。そして、とりあえず色んな種類の恐竜出しとけば良いでしょ精神が垣間見える浅はかなシーンの数々。オリジナルメンバーの復帰やシリーズのオマージュシーンがあるわりに愛が感じられません。これはシリーズに汚点を残す作品となったのは間違いないでしょう。

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・グッバイ・クルエル・ワールド

互いに素性の知らない5人組強盗団がラブホテルで行われていたヤクザの資金洗浄現場を襲い、1億円近い大金の強奪に成功。金を奪われた側のヤクザは現役の刑事を雇い強盗団を追い始め、ホテル従業員も巻き込んで大金の争奪戦が発生するとったクライムサスペンス。

予告を観た時点では“和製版タランティーノ作品って感じ?”と見極めカッ飛ばしにいきました、久々に何も引っ掛からない凡作に出会いました。

この手のジャンルは海外作品だと良い感じに洒落た映画になったりしますが、本作からはどこなくチープさが漂いダサく見えます。なんでしょう、ジャンル自体が日本の風土や文化に合わないのかも。銃撃戦の構図も特に面白いわけでもありませんでしたし、魅力的なキャラクターも居ませんでした。せっかく『ドライブ・マイ・カー』の西島秀俊や『窓辺にて』の玉城ティナと良い役者使ってるのに勿体無いですね。

・ザ・メニュー

有名シェフが料理長が務める孤島の高級レストランで繰り広げられるサプライズを描いたスリラー。

そりゃ出てるメンツも良いし、サーチライトピクチャーはコンスタントに良作を輩出してますからハズレる可能性は低いと思います。本作も面白い映画だと思いましたし。ただし何だか癪に触りました。バットに当たりはしたけどファールボール的な。

私自身もアルバイト程度ではありますが、接客業の経験はあるので伝えたい事の意図は分かります。でもそれが上から目線に感じたのが良くなかった。ブラックユーモアや皮肉は効きすぎていると毒になります。純粋に料理長のキャラクターが嫌いだったのかもしれませんが、観に来ている客にスカした態度を取る映画はちょっと受け付けないです。

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アバター:ウェイ・オブ・ウォーター

世界で最も売れたメガヒット超大作『アバター』(2009年公開)の続編。つい先日ボコボコしたばかりなので端的に処理しましょう。

はっきり言って綺麗な映像だけの映画です。例えて言えば、映えを狙った人工甘味料たっぷりの美味しくないスイーツといったところ。何なら私はCGの綺麗な映像より、実際に行うアクションや特撮、特殊メイクの方が好きだしさ。

まぁそれは置いておいて、描いていることが前作に他のキャメロン作品を合わせただけの新鮮味のないストーリーは冗長。これで3時間超えはケツが痛くなって当然でした。今年で言えば引き出しの多さが圧巻だった『RRR』とか見習えよって話です。

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MCUのDisny+配信ドラマ(とくに『シー・ハルク』)

最後はドラマシリーズからの選出です。今年はMCUのドラマシリーズは『ムーン・ナイト』、『ミズ・マーベル』、『シー・ハルク』の3つが公開されました。正直、去年以降の作品だと『ホークアイ』は楽しめましたが(キングピンの描き方だけは解せぬ)、それ以外はいまいち盛り上がれなくてですね。さほど期待はせずに『ムーン・ナイト』に向き合う形となりましたが、これが大空振り。アクションもストーリーも平坦に感じましたし「過激」ワードを売り文句で見ましたが、どこが過激なのか説明してほしいレベル。途中で観るのを止めてしまいそうになりながら完走したせいか『ミズ・マーベル』の配信が始まっても食指がピクリとも動かず。未だに観ていない状況です。

しかし、その後配信となった『シー・ハルク』に私の好きなNetfilxから引き継いだデアデビルが登場するとの事で重たい腰をあげて再びバトルフィールドへ。しかしこの迷走ぶりは頂けないです。もうMCUのドラマに関してはトラウマになりそうだ…。面白かったのは2~3話目まで。徐々に方向性を見失い最終的には自爆死を選択してきました。脚本の着地点が見いだせなかったのかな?有害な男らしさやミソジニーをテーマにしたいと見受けられますが、フワッとしか描かれていないので全く響いてきません。また著しいCGの品質低下(ここはアバターを見習って)。そして何よりNetfilxが3シーズンを通して作り上げた素晴らしいデアデビルのキャラクターを1話にして破壊する所業(チャーリー・コックスが演じる意味…)など目も当てられない惨劇でした。面白いと感じた人には申し訳ないですが、こんなに面白くないドラマは稀有。私の人生におけるワーストドラマかもしれません。

同じディズニー傘下なのでどうしてSWのドラマシリーズとは雲泥の差があるのでしょう。1度製作体制の見直しが必要では?

まとめ

以上、不満を言葉にのせて批判という名の軍事力を容赦なく行使させて頂きました。

ここでは紹介していないだけで可もなく不可もなくぐらいな作品も幾つかあったので、ちょっと自分の直感にあぐらをかいていたのかもしれません。損したとまでは言わないですけど、やっぱり自分の感性に合わない作品はなるべく避けたいですよね。せっかく楽しさや面白さで気持ち良くなりたいのに、モヤモヤしたり怒りを抱いてしまうようでは勿体ない。改めて作品選びの選球眼を研ぎ澄ます必要があると身の引き締まる年になりました。

あぁースッキリした。ということでこの辺でお開きです。ありがとうございました。