キャプテン・シネマの奮闘記

映画についてを独断と偏見で語る超自己満足ブログです

第226回:『マッドマックス:フュリオサ』公開記念 凄いぞ!豪州映画の世界

ついに今年のビッグイベントである『マッドマックス:フュリオサ』の日本公開が5月31日に決定しました!その嬉しさに乗じて今回は前々から温めていた企画を放出しようと思います。

1979年に公開された記念すべき1作目『マッドマックス』と人気シリーズに押し上げた1981年公開の2作目『マッドマックス2』はオーストラリアで製作された映画。3作目からはハリウッドが携わる巨大シリーズとなりましたが、元はと言えばいわゆるB級、自主製作映画だったのです。

そんなシンデレラストーリーを体現した本シリーズを筆頭に、調べてみると気付いていないで観てる可能性があるほどオーストラリア産映画を色々発見しました。しかも関連しているのか分かりませんが、案外出身俳優も多くいる事も。そんな訳でオーストラリア映画の世界をちょっくら掘ってみようという事でございます。そこまで内容に触れる話は出ないかと思いますが、毎度の事ながらややネタバレ注意です。

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↑内容と関係ありませんが桜の季節ですよ。この時期が一番好きかも。

多いぞ!出身スター

では、まずは出身スターについて触れていきましょう。

まず、言わずもがな「マッドマックス」でスターとなったメル・ギブソン。プライベートはなかなか大変な方ではありますが、「リーサル・ウェポン」シリーズへの出演や監督としても活躍する大スター。あれっ?リーサル・ウェポンって新作出るんでしたっけ?やるやる詐欺じゃなきゃ良いんだけど。それと監督作品として再び沖縄戦を扱うみたいな話もありましたよね?『ハクソー・リッジ』(2016年公開)は傑作でしたし、新作が早く観たいものです。

そして今回の『マッドマックス:フュリオサ』の敵役として出演しているクリス・ヘムズワースもオーストラリア出身の方です。「マイティ・ソー」シリーズや「タイラー・レイク」シリーズのイメージが強いので悪役というのが意外と新境地なのかなと思うところですが、バイカーギャングの親玉ですね。楽しみ。予告の「Ladies and Gentlemen~.Start your Engine!」の響きとか良いもの。

つまり弟のリアム・ヘムズワースも出身俳優さんとなるのは置いておいて、「マッドマックス」シリーズは故ヒュー・キース・バーンヴァーノン・ウェルズといったオーストラリア出身俳優に悪役を演じさせるのが定石なのでしょうか?でもティナ・ターナーは違うか。

マッドマックス関連から話は逸れますと、恐らく一番有名なのがヒュー・ジャックマンではないでしょうか?どうも今年復活するらしいウルヴァリン役や『グレイティスト・ショーマン』(2017年公開)で日本でも非常に人気のある方。そういえばとんねるずの番組、食わず嫌いに出てたのが記憶に残ってんな。筋肉を作るためにささみ肉食い過ぎて嫌いになったって言ってた。『チャッピー』(2015年公開)とか『イーグル・ジャンプ』(2016年公開)にも出てて良かったよ。

また直近作品でいえば去年『TRA/ター』で大暴れをしていたケイト・ブランシェットもそうです。『キャロル』(2015年公開)や『ナイトメア・アリー』(2021年公開)でも抜群の演技力を発揮していますが、地味に『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』(2008年公開)の敵役も印象深いのよね。

そんな中でも個人的にプッシュしたいのがテリーサ・パーマーです。昔ハマった時期がありましてね。『ウォーム・ボディーズ』(2013年公開)や『ライト/オフ』(2016年公開)は去ることながら『魔法使いの弟子』(2010年公開)とか『殺し屋チャーリーと6人の悪党』(2014年公開)みたいな普段ならチョイスしないであろうタイプの作品にまで手を出してたもの。『X-ミッション』(2015年公開)とかいう変な映画にも出てたなぁ。そんな中でも面白いのは先述『ハクソー・リッジ』、主人公が一目惚れしちゃう看護師さんの役でした。

その他マーゴット・ロビーエリック・バナ等も該当者。スター勢揃いの映画が間違いなく一本作れます。

パワフルだぞ!作品たち

それでは作品について触れていきましょう。

豪州映画の代表といっても過言ではない「マッドマックス」シリーズ。そんな「マッドマックス」の亜種的な作品が2014年公開の『奪還者』。舞台は世界経済が破綻して10年が経ったオーストラリアの荒野。誰も彼もが略奪や殺しに手を染めた世界で、愛車を強盗団に奪われた主人公がひたすらその強盗団を追うというサスペンス映画です主人公が車と暴力に取りつかれている様は、まさしくマックスと同じ境遇。怒りと喪失に身を任せ、破滅の道を進みます。なお、ガイ・ピアースロバート・パティンソンのダブル主演の作品なので、クリストファー・ノーラン作品好きは目の色を変えるのでは?っていうかガイ・ピアースもオーストラリア俳優なんですね。

そしてマッドマックスっぽいディストピアな要素とゾンビを掛け合わせた作品も存在。それが『ゾンビマックス!/怒りのデス・ゾンビ』。こんなタイトルが付いてますが、原題は「Wyrmwood」。2014年制作の映画なので2015年の「FuryRoad」の影響ではなさそう…滅茶苦茶な邦題や。しかし内容は侮るなかれ、ゾンビを操ったり、ゾンビの吐く息がガスなのか資源として利用出来るなんていうトンデモ設定が楽しいアイディア勝負な映画。ホームメイド感溢れる“お手製マッドマックス”な装備にも遊び心が感じられます。チープさは否めませんが、ゾンビとマッドマックスが好物の私にとっては満足な一品でした。ちなみにアクションマシマシになった続編の邦題は『ゾンビ・サステナブル(2021年公開)。ゾンビの世界にもSDGsの波ですか?...いい加減しろよ!w 中盤にある体操の吊り輪やってるみたいなシーンがバカっぽくて良いです。

シリーズものでいえば、『ウフル・クリーク/猟奇殺人谷』(2005年公開)&『ミック・テイラー/史上最強の追跡者』(2014年公開)のWolf Creekシリーズもあります。こちらもシリーズものとは分かりづらい邦題となっていますが、実際に起きた事件をベースに若い観光客たちが荒野の人間ハンター ミックさんに追われるというホラー。1作目の『ウルフ~』はドキュメントタッチなサイコスリラー仕立てになっていますが、次作の『ミック~』は次々と人が死んでいくスラッシャー映画と化しています。個人的には見世物感の強い2作目の方が面白かったですね。ゴア描写の気合の入り方やミックさんのぶっ飛び右翼思想といったキャラクターの面白味も増していて良かったです。ちなみに本国では3作目が今年公開予定っぽいです。3作も作られるのは人気の証ですね。これはハリウッドリメイクの可能性もありえなくない?ってか日本でも公開して頂戴。

ホラー繋がりでいくと去年日本で公開されたTALK TO ME トーク・トゥ・ミー』も該当作品。まぁ私はハマらなかったんですけどね。序盤の霊が憑依してトリップする描写のは良かったのですが、その後の展開が解せぬ。主人公の言動が腑に落ちず、久しぶりに映画館でイライラすることになりました。

そんな中で推したい作品がプリシラ(1994年公開)。オーストラリアの砂漠を舞台に3人のドラァグクイーンの珍道中を描いたロードムービー。オーストラリア中部にあるリゾート地でショーを行うべくおんぼろバスで旅へ…道中、差別や偏見に晒されながらも下ネタとめげない気持ちで突き進んでいきます。3人の凸凹アンサンブルが魅力的で観ていて元気が湧いてきます。そして衣装の気合の入りようが凄まじい。ビーチサンダルがぶら下がったドレスやマントなのか裾なのか何だかよく分からない無駄に長い布が風になびく服など奇抜でギラギラした衣装の数々。米国アカデミー賞で衣装デザイン賞を獲得してるようですが、そりゃそうだ。って言うかABBAのウ〇コって何だよw。そしてここでも登場『悪魔のいけにえ』でございます。

その他『二トラム NITRAM』(2021年公開)やナイチンゲール(2018年公開)、『アングスト/不安』(1983年公開)といった作品もあります。3作品とも未見ですが、あらすじを見る限りなかなかパワフルそう。近いうちに観てみよ。

↓以前に感想を書いた吞兵衛さん必見の荒野の千鳥足(1971年公開)もオーストラリア映画でした。

captaincinema.hatenablog.com

まとめ

以上、実は奥が深いオーストラリア映画の世界でした。

韓国やインドの映画旋風が昨今の日本ではありましたが、今度はきっとオーストラリアです。ここで挙げた作品以外にもパワフルかつちょっと変な愛すべき作品が沢山あるはず。流行を先取り…にはならないでしょうが、ご興味のある方はオーストラリア映画を掘ってみては?

という事でこの辺でお開きです。ありがとうございました。

第225回:映画『オッペンハイマー』感想と考察

お久しぶりとなった今回は結構ヘビーですよ。日本での公開が先送りとなっていた映画『オッペンハイマー』を語っていこうと思います。毎度の事ながらややネタバレ注意です…といってもネタバレって程ネタバレな事は本作においてはあんまり無いと思うのですが。

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↑こちらがパンフレット。読みごたえ抜群で勉強にもなりますよ。

イントロダクション

”原爆の父”と呼ばれたアメリカの物理学者 ロバート・オッペンハイマーの半生を綴ったたノンフィクション「『原爆の父』と呼ばれた男の栄光と悲劇」を題材にした歴史映画。

時は1954年。「赤狩り」の余波を受け、ソ連のスパイ容疑を掛けられた物理学者のロバート・オッペンハイマー(キリアン・マーフィー)。聴聞会が開催されそこで様々な詰問を受ける中、彼の様々な過去や世界の在り方を変えてしまったマンハッタン計画についてが語られていく。

監督はクリストファー・ノーラン。昔は“一番好きな映画監督は?”と聞かれれば真っ先に答えていた名前。今はそこまでの熱の入れようはありませんが、やはり映画好きのきっかけの1つにもなった『ダークナイト』(2008年公開)があるだけに絶対に隅には置けません。『インセプション』(2010年公開)もSF映画の中じゃ1位2位を争うぐらい好きですし、いつか007を撮る事も期待してますよ。

主演はキリアン・マーフィー。先述『インセプション』や『ダンケルク』(2017年公開)とノーラン作品の常連としてお馴染み。「ダークナイト」シリーズでは3作皆勤賞なのに回を追うごとに小者と化していく男がついに主役の座に、良かった良かった。主演作だと『ピーキー・ブラインダーズ』のドラマシリーズがありますね。面白そうなんだけど、長いんだよなぁ。

その他エミリー・ブラント、フローレンス・ピュー、ロバート・ダウニー・Jrマット・デイモンが名を連ね、更に割とちょい役でデイン・デハーンケイシー・アフレックラミ・マレックケネス・ブラナー等が登場するという主役クラスの俳優が隅々まで配置された超絶豪華キャスト。公開中の『デューン 砂の惑星 Part2』が霞むレベルかと。そんな中で注目したのがベニー・サフディ。サフディ…えっ『グッド・タイム』(2017年公開)や『アンカット・ダイヤモンド』(2019年公開)のサフディ兄弟ですよね? 役としても後に”水爆の父”と呼ばれるようになるエドワード・テラーという結構なポジション。俳優も出来るんですね、そして監督最新作はいつになるんでしょうか。

力と力の対立

鑑賞前は私以外にも多くの人が思っていたのではないでしょうか?本作が核兵器誕生にまつわる話だと。勿論そうしたテーマを含んでいるのは間違いないですのが、戦争や核兵器を扱ったドラマ以上に科学の力と国家権力の対立を描いた政治ドラマの要素が強く感じられました。

ノーラン作品らしい難度の高い時系列バラバラな語り口で展開されるのは、世界の覇権を取るのはどの国なのか?というパワーゲームに巻き込まれた一人の科学者 オッピー。国際競争の施策の目玉として生み出されたのが原爆であるという解釈も出来るので、広島/長崎の描写がない事に違和感はさほど覚えませんでした。(オッピーさんが被害状況の報告を受けるシーンにはあった方が良いと思ったけど)

そして終戦後は原爆開発の後悔に駆られる中、原子力委員会のドンで水爆開発を主導する ルイス・ストローズの嫉妬に晒されるオッピー。このストローズ演じるロバート・ダウニー・Jrがとにかくクソ野郎なんです。アカデミー授賞式でもクソ呼ばわれしてましたが、自惚れと思い込みの激しい政治屋。他人のちょっとした言動を根に持つ(この辺の見せ方は上手かったよね)性格から周りに嫌われてるであろう(エアエンライクも絶対嫌ってるだろw)人物で、彼がソ連のスパイだとオッピーに嫌疑をかけた事が物語の軸となっています。とはいえ"慧眼にして盲目"と言われるだけあって女性関係にだらしなく、科学に対してのみ誠実なオッピーも決して人格者ではない複雑さを持っているので周囲に憎む人が居るのもおかしくなさそう。こうした人間臭さ漂う政治ドラマが主なテーマとなっているように見えました。

そもそも日本への原爆投下自体がアメリカの国際政治的なパワーゲームだったという考えもありますしね。東京大空襲の時点でケリはついていたはずで新兵器である原爆を行使せずとも日本が降伏するのは時間の問題。そんな中、

・実運用による国際的なアピール

・日本の降伏にソ連の介入を避けるべく一刻も早く決着を付けたかった

・アジア人に対する侮蔑や優性思想(黄色人種相手なら使って良いんじゃねぇ的な)

があったとされ、自由のためや国民保護というのは兵器使用を正当化するためのプロパガンダという見方もあります。まぁ結局、権力に飢えた連中はけしからん!科学が持つ力と権力者が持つ力がタッグを組むと惨劇を招く事があるわけですね。これは今なお続いている状況であり、そんな世界で生きていると思うと背筋が凍ります。

まとめ

以上が私の見解です。

きな臭い事ばかりを述べてきましたが、トリニティ実験や原子/分子の世界を表現した映像と音響は圧巻でノーラン監督の集大成的作品であることは頷ける力作でした。一部で批難された原爆賛美では決して無いので一見の価値はある作品です。

ただ会話のシーンで1セリフごとにカットが変わるのが難点。他のノーラン作品にもある傾向かと思いますが、今回はドラマ要素が強いだけあって如実に見られた気がします。あのカットの割り方ってデカいスクリーンに向かない気がするんですけどねぇ。まぁ英語が分からず字幕を追って観ている人間だから感じるのであって、英語圏の人は気にしないのかも。

あっそれとサンスクリット語を読みながらの濡れ場シーンは笑ってしまった。ノーラン作品には珍しいガッツリ濡れ場ですが、いやそこもインテリ風にするんかい!一周回ってアホっぽいぞwあの描写はどこまで実話なんでしょうね。

という事でこの辺でお開きです。ありがとうございました。

※ちなみに

実は原爆投下が国際政治的なパワーゲーム云々の話はNetfilxのドキュメンタリー『ターニングポイント:核兵器と冷戦』の受け売り知識でございました。これを観ると核兵器開発が世界にどんな影響を与えてきたかが分かります。

また劇中何度か登場するアインシュタインが原爆にどう関わっていたかは『アインシュタインと原爆』(2024年公開)。さらに戦時下の日本においても原爆開発が進められていたという事は『太陽の子』(2021年公開)という作品で把握していたので、この辺を抑えておいて良かったなという気がしました。

第224回:映画『デューン 砂の惑星 PART2』感想と考察

今回は現在公開中の映画『デューン 砂の惑星 PART2』を語っていこうと思います。毎度の事ながらややネタバレ注意です。

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イントロダクション

フランク・ハーバートの同名SF小説を映画化した2021年公開の『DUNE/デューン 砂の惑星』の続編。

人類に必要不可欠の香辛料の採掘が出来る惑星アラキスの覇権を巡るハルコンネン家の陰謀によって一族を滅ぼされたアトレイデス家の後継者ポール(ティモシー・シャラメ)は、砂漠の民フレメンと共に反撃の狼煙を上げる。そんな中、ハルコンネン家の冷酷非道な次期男爵フェイド=ラウサ(オースティン・バトラー)が惑星の新たな支配者としてフレメン抹殺のために動き出していた。

監督はドゥニ・ヴィルヌーブ。いやぁ前作の時は有給休暇取って初日に観に行くぐらいのテンションでして好きな監督なんですよ。ただ前作は有給休暇を取る程満足したかと言われるとそうでもなかったので今回は普通に休日に行きました。ヴィルヌーブ監督にはそろそろ『ボーダーライン』(2015年公開)みたいなサスペンスに戻って来て欲しい気がしますし。

前作に引き続きティモシー・シャラメを筆頭にレベッカ・ファーガソンゼンデイヤジョシュ・ブローリンハビエル・バルデムと豪華キャストが再集結。さらに今作ではフローレンス・ピュー、レア・セドゥ、クリストファー・ウォーケンも登場。キャスティング頑張りまくってますね。

↓前作についてはこちら

captaincinema.hatenablog.com

凄い!でも面白い?

この映画を一言で言い表すなら“凄い!”です。前作同様の映像の超スケール感やモダンな色彩、各軍の衣装の感じも良かったです。やっぱサーダガーの出で立ちがかっけえよ。前作みたくワイヤーでゆっくり降りてきてバンバン敵を屠る活躍が観たかった。そして今回は音響に磨きがかかっていた気がしました。重低音が体にズドンと響いてくる感じ。この感覚は『トップガン マーベリック』(2022年公開)以来だったかも。

ただ面白かったかと問われる微妙。ストーリーが何だかよく分からないので…いや、おおまかには分かりますよ。予言や運命(この運命はヴィルヌーブ監督のSF作品に精通するテーマでしょう)に翻弄された青年が人々をコントロールしプライドや権力のために殺し合いをさせるという現実で行われている戦争となんら変わりない展開。平気で核兵器をちらつかせ脅すのなんて気分悪い、愚かな人間たちの群像劇といえます。

このストーリーを通して現代へのアイロニーかヒロイズムな英雄伝を描きたいか曖昧な気もしますが、シーンとシーンの繋がりの曖昧さの方で混乱しました。例えば序盤、砂漠の民フレメンの仲間になるための試練として砂漠を一人を進んで夜を明かせみたいな展開になるんです。そこでデカいムカデより小さいムカデに気を付けろとか砂漠の妖精に惑わされるな…みたいな忠告をされるんです。じゃ当然そのシーンが出てくると思うじゃないですか。しかし登場はなし。ちょっとすると突如香辛料採掘の襲撃シーンが始まります。こんな感じで唐突な場面展開が連続する形式で進んでいくので、誰が何処で何をしているのか物語を追うのが大変。ってか前作に比べてテンポアップし過ぎでは?

つまり技術特化型といった作品です。少しでも気になっている方は映画館、なるべく設備の良い上映スタイルで観るべきです。逆に自宅のTV画面なんかで観たら魅力の大半を失った凡作を目の当たりにする事になるでしょう。

まとめ

以上が私の見解です。

だいぶ腐す内容になってしまいました。好きな監督だけにモヤっとする。シーン単体で観ると今回の方が良かったのですが、映画全体の完成度として観ると前作の方が良かったなぁ。ってな感じでどっこいどっこいな状態なので、恐らく既に製作に入っているであろうPART3を待ちましょう。次で完結?そしてアニャ・テイラー=ジョイが本格参戦かな?

という事でこの辺でお開きです。ありがとうございました。

※ちなみに

私、本作はTOHOシネマズ日比谷の1スクリーンで観ました。IMAXで観ろよとか言われそうですが、ラージフォーマットのスクリーンに音響も結構良い箱。何より新宿や池袋に比べ客の治安がよろしいので、あそこで観たい作品が流れてると積極的に選択するんです。しかし今回行ったら気付かぬ内に高い料金を払って座るボックス席が増設してたんですよ…。あぁ勘弁してくれぇ~ よりによって私がよく座ってた列がぁ~。そうやって金をむしり取るんですか、世知辛いっすわ。

第223回:映画『ゴールドボーイ』感想と考察

今回は現在公開中の映画『ゴールドボーイ』を語っていこうと思います。毎度の事ながらややネタバレ注意です。

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イントロダクション

『バッド・キッズ 隠秘之罪』でドラマ化され中国で人気を博した紫金陳(ズー・ジェンチン)の小説「悪童たち」を原作に日本で映画化したクライムサスペンス。「三体」といい何だか最近中国産小説のブームが到来しているのか?

沖縄で財を成すグループ企業の婿養子である東昇(岡田将生)は、義理の両親を崖の上から突き落として殺害する。完璧なアリバイで事故死として処理されるはずだったが、偶然にも3人の少年少女が殺人の証拠をカメラでとらえていた。各々複雑な家庭環境を持つ3人はそんな環境からの脱却のため、東を脅迫して大金を手に入れようと画策する。

監督は金子修介。特撮映画の傑作として名高い平成ガメラシリーズを手掛けた監督です。確かにあれは素晴らしいですよ。とくに私は『ガメラ3 邪神(イリス)覚醒』(1999年公開)が大好き。子ども頃はトラウマ映画だったんですけど、数年前のリバイバル上映で観て感動したなぁ。また「デスノート」シリーズの実写映画もやってるようです。友人にあれ観て藤原竜也が好きになった奴が居たな。

主演は岡田将生。最近だと『ドライブ・マイ・カー』(2021年公開)が印象深いですが、個人的にはTVドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』の顧問弁護士の“シーズン3”が良かった。理屈っぽくて面倒くさいけど嫌いになれないキャラでした。

そしてもう一人の主演が羽村 仁成。私お初にお目にかかりますでしたが去年の『リボルバー・リリー』に出演している旧ジャニーズグループのジュニアアイドルらしいですよ。へぇーアイドルか、そのオーラは全く感じなかった。今後の活躍も期待出来そうです。

子どもを舐めるな

中学生が犯罪に手を染めるという内容は奇遇にもホットなタイミングでの上映になったかと思います。大阪で起きた男子大学生の転落死で中学生男女3人が逮捕され、何でも中学生たちが美人局をしようとしたのが原因ではないかという話。真偽はまだ不明ですが、もし本当なら中学生たちの狡猾さに身震いしてしまいます。

本事件においては大学生というまだ社会人ではない身分の成人相手でしたが、本作の中学生たちが相手取るのは大企業に勤める一端の大人にして冷静沈着な殺人犯。”流石に相手が悪すぎるぜぇ中坊よ”と思って観ていたら意外な展開を見せ、見事な心理戦と新たな死体が積みあがっていくことになります。いや結構人死ぬじゃんw

そんなサスペンスには子供の貧困問題や沖縄が抱える問題も感じられますが、何より「子供だから」が通用しない時代の到来を痛感させられました。インターネットの普及で幼い頃から多くの情報に触れ、精神的に未発達な状態で上辺だけの知識を身につけた彼ら。そこに子供だからこそ持ち合わせる”無垢な悪”が加わると手の施しようがないなと。こんな事を書いていたら去年の『イノセンツ』なんかも思い出しましたが、子供だからと舐めてかかると痛い目に合うかもというのは肝に銘じておきたいところです。

↓『イノセンツ』についてはこちら

captaincinema.hatenablog.com

まとめ

以上が私の見解です。

一応観ておこうぐらいの感覚で行ったんですけど思ってたより面白かったですね。

沖縄の夏なのにどこか温度の低い雰囲気と岡田将生が良いですよ。色んな回で書いてるかもですが、私お顔が整った人の演じるヤバい奴が大好物。人前じゃ同情を誘う顔なんてお手のものなのに、いざ本性を表すとニヒルな表情のサイコ野郎。”イケメン”という何処か畏怖を感じるポテンシャルが活かされていたと思います。

という事でこの辺でお開きです。ありがとうございました。

 

参考:

女子中学生が「美人局」か 大学生が中学生3人から逃げる途中でビルから転落死 防犯カメラが中学生とみられる男女を捉える | 特集 | 関西テレビニュース | ニュース | 関西テレビ放送 カンテレ

第222回:「死霊のはらわた」シリーズって面白い の話

今回は旧作映画、というかシリーズを語ります。つい先日、日本では劇場公開がスルーとなってしまった『死霊のはらわた ライジング』がNetfilxで見放題となりました。で、それを観るついでにこの際だからと観ていなかった2013年度版のリメイク作品を観たんですよ。これがまぁー大興奮でして。そんな興奮が勢い余って他シリーズ作品も観たので、ざっくりまとめて語っていこうと思います。毎度の事ながらややネタバレ注意です。

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↑こちら2013年度のポスター。赤黒い!

死霊のはらわた』(1981年)

とりあえず1981年公開のオリジナル版について語らないといけませんね。こちらは私自身3~4年前ぐらいに観ていたのですが、シリーズの元祖にしてスプラッタホラーの草分け的な作品です。

休暇で森のロッジにやって来た5人組男女。そのロッジの地下で“死者の書”なるものを発見する。興味本位で探っていると一緒に保管されていたテープレコーダーに録音された呪文によって死霊が復活してしまう。死霊に乗り移られた者が他の者を襲い始める中、主人公のアッシュ(ブルース・キャンベル)は何とか脱出を試みる。

悪魔とゾンビの合わせ技といった欲張りセット。この時点でナイスアイディアですが、主人公の男とその妹さんに主人公の彼女&友達とその彼女さんという座組で殺し合いをさせるというエグい構図も凄い点でしょう。身近な人を襲うのはゾンビ映画の仕掛けではありますが、よりその仕掛けの不条理さにフォーカスを当てたのが特徴だと思います。

監督はサム・ライミ。本シリーズは勿論、後にアメコミ映画ブームの火付けといっても良い『スパイダーマン』(2002年公開)も手掛けていきます。この監督も映画史を語る上では外せないですね。

死霊のはらわた』(2013年)

では今回のきっかけとなった本題です。

シリーズを通してこの2013年度版が一番好き。ストーリー自体はほぼオリジナル版通りなんですが、とにかくやりすぎ度が強すぎます。まず登場キャラたち、みんなフィジカル強い。登場人物の関係性もオリジナル版と同じですが、主人公がオリジナル版でいう妹さんのポジションになっています。そんな彼、彼女たちはセルフで腕をちょん切ったりネイルガンで滅多撃ちにされても簡単にはくたばらずに頑張ってます。とくに主人公のお兄さんなんて凄いですよ。左腕は被弾、右腕はカッターで滅多切り、足には釘ぶち込まれる有様。普通のホラー映画じゃとっくのとうに死ぬダメージ量を負いながらも立ち上がるという強靭さを見せつけます。妹を救いたいという一途な思いがそうさせているのかと思うと泣けてきます。

そしてラストがザ・ケレン。燃え盛る小屋と降りしきる血の雨、そこで真っ赤なドレスの女性がチェーンソーを振りかざす…画力強すぎ最高。これは一回観たら嫌でも忘れないやつです。思えば『ハロウィンKILLS』(2021年公開)の冒頭はこのオマージュだったのか?

ちなみに監督はフェデ・アルバレス。この後サイレントジジイ映画『ドント・ブリーズ』(2016年公開)を手掛けてます。そして現在は今年公開予定の「エイリアン」の新作映画を仕掛中。当初私の好きなニール・ブロムカンプ監督が手掛ける予定だったエイリアンの新作。ブムロカンプ版が無くなったのは残念ですが、アルバレス監督ならやってくれそうな気がします。

死霊のはらわた ライジング』(2023年)

それではお次は最新作2023年度版について。

ストーリー自体は1981年or 2013年の前日譚にあたり、舞台は森のロッジからおんぼろアパートに変更されています。ただ本シリーズの醍醐味である友人家族同士の殺し合いというルールは変わりありません。しかも今回は死霊の乗っ取られた母親が自身の子供たちを襲うという今までのシリーズ以上にショッキングな構図となっています。それでもシリアスさは感じずカジュアルに観られるのがこのシリーズが持つ魅力でしょう。

ただアクション味が強く気味の悪さはさほどなし。ロッジほどの閉塞感もありません。まぁそれほどホラーが得意でない方には観やすい作りなのかとは思います。

死霊のはらわたⅡ』(1987年)

最後にシリーズ2作目と3作目をちょっと。

オリジナル版続編にあたりますが物語的にはリメイクに近い内容です。1作目から6年の間に映画業界における技術向上があったのでしょう。81年の時点では出来なかった事、やりたかった事が具現化出来るぞ!ってなったのかも。

前作と同じく主演はブルース・キャンベルで、体を張った一人芝居がほとんどの時間を占めるおもしろホラーとなっています。カメラワークもCGもやりたい放題のフルスロットル。この一人芝居シーンが素晴らしいせいか、途中参加のメンバーが合流してからストーリーが失速するように感じました。

ちなみに『死霊のはらわたⅡ』の続編にあたるキャプテン・スーパーマーケット(1993年公開)は流石に別個な作品な感じはします。確かに2作目からの直接的繋がりはあれど、あまりにもジャンルが異なり過ぎてます。もうホラーじゃなくてファンタジーアクションだもの。まぁ「マッドマックス」も1作目から2作目で急激に作風変わるし、ありっちゃありなんですが。

まとめ

以上、全シリーズのざっくり見解でした。

だいたいリメイクやスピンオフ作品って何だかなぁ~と消化不良な気持ちになる事も多いですが、全作品面白いシリーズって珍しくないか?まさに”Groovy”なシリーズです。恐らく全ての作品に生みの親 サム・ライミが製作や脚本だったりに必ず携わっているのが大きいのかもしれませんね。いわば品質保証です。

そういえば『死霊のはらわた リターンズ』ってドラマシリーズもあるのか。これもブルース・キャンベルが主演だし観てみっか。それにPS4かPS5にゲームもありますよね?オンライン系じゃなきゃ即買いなんだけどなぁ…。

ということこの辺でお開きです。ありがとうございました。

第221回:映画『ネクスト・ゴール・ウィンズ』感想と考察

今回は現在公開中の映画『ネクスト・ゴール・ウィンズ』を語っていこうと思います。毎度の事ながらややネタバレ注意です。

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イントロダクション

米国領サモアのサッカーチームが起こした奇跡を基にしたスポーツコメディ。この実話はどうもドキュメンタリー映画にもなってるらしいですよ。

米国領サモアのサッカー代表チームは、2001年のワールドカップ予選でオーストラリアに対し0対31の歴史的大敗を喫した過去を持ち、以降1ゴールも決められずにいた。試合に勝てなくとも攻めて1ゴールは欲しい…目標のため弱小チームとアメリカから左遷されて来たトーマス・ロンゲン監督(マイケル・ファスベンダー)の挑戦が始まる。

監督はタイカ・ワイティティ。「マイティ・ソー」シリーズ2作を手掛けた事で一躍人気者となりました。1作目(ケネス・ブラナー監督)とは路線変更したのが、ウケたという事でしょう。また『ジョジョ・ラビット』(2019年公開)が面白かったですね。ヨーキーが良い。

主演はマイケル・ファスベンダー。直近ですと、プロなんだろうけどどっか抜けてる殺し屋を演じた『ザ・キラー』(2023年公開)がありました。まぁあとは『イングロリアス・バスターズ』(2009年公開)じゃないですか。指の出し方という凡ミスでああなっちゃうんだからさ。

みんなで負けよう

最初に言っちゃいますけど、出来自体はそれほど良い作品ではないと思います。とにかくコメディ演出がしつこい。天丼芸が上手くいってないように見えましたし、このしつこさが作品全体をテンポ悪くしている気もしました。かといってスポ根映画程ガツガツしていないので、カタルシスもそこまで感じることのないフワッと緩い印象を受けました。

でもね、観ていて悪い気はしなかったですよ。妙に響くシーンがあったので。それが終盤、トンガとの試合で前半戦のおそまつな内容に憤慨した監督はハーフタイム中に試合放棄しようとします。そこにタビタさんだったかな?米国領サモアのサッカー協会の会長をやってる方なんですけど、めちゃ良いこと言うんですよ。”勝ち星おろか1点すら無理なら負けよう、一人で負けるんじゃなく一緒に負けよう。みんな幸せであればそれで良いんだ”ってなことを。あぁなるほど、当然ちゃ当然だけど人生で大事なのは勝ち負けじゃなくて自分が幸せか否かだよな。

同時に勝利ばかりが正義と思われがちな昨今のスポーツ業界へのアイロニーにも感じました。国の代表だとかスポンサーがどうとか、そうした政治/経済的な要素が絡んでいるせいで時におかしな方向へいってしまうスポーツイベント。しかしスポーツなんて所詮はゲームです。選手も観客も楽しんだもん勝ちなはずです。そんな当たり前だけどつい忘れてしまいそうな事を思い出させてくれるのが、物語の力だと改めて思ったりもしました。

まとめ

以上が私の見解です。

そんな響くシーンは去ることならが、実は私が目的にしていたのがシヴァタウをスクリーンで拝むことでした(米国領サモアでも呼び名は同じで良いのかな?)。シヴァタウはサモアの士気を鼓舞するための舞踊(ウォークライ)。ラグビーのW杯で試合前に披露されるので知られ、ニュージーランドの”ハカ”が有名でしょう。私これが好きでして。ラグビーW杯の時期はYouTubeに各国のウォークライがアップされますけど、そればっか観て肝心の試合はあんまり観てないというね。だって格好いいじゃないですか。なのでそれが観れただけでまぁ元は取れた。終盤のしっかり格好良いのと冒頭の統率が取れていないショボいバージョンもあって良かったですよ。

という事でこの辺でお開きです。ありがとうございました。

第220回:映画『ボーはおそれている』感想と考察

今回は現在公開中の映画『ボーはおそれている』を語っていこうと思います。毎度の事ながらややネタバレ注意です。

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イントロダクション

ホラー界の新鋭 アリ・アスター監督と怪演でお馴染みホアキン・フェニックスの劇薬タッグでおくるホラーコメディ。

些細な事に気を揉み不安になってしまう中年男のボー(ホアキン・フェニックス)は、母親の住む家への帰省をしようとしていた。しかし相次ぐトラブルに見舞われてんやわんやしている内に突如母が死んだとの連絡が入ってくる。呆然とするのも束の間、急ぎ葬儀に出席すべく奇妙な旅路が始まる。

監督はアリ・アスター。『ヘレデタリー/継承』(2018年公開)と『ミッドサマー』(2019年公開)に続く長編3作目になります。とりわけ日本では『ミッドサマー』が大人気ですよね。未だに理由がよく分からない。ルックが綺麗ってとこがお洒落映画好きには好評なのかな?そういえば昔「映画秘宝」の2020年代映画監督ベストの記事で、”西はアリ・アスター、東は三宅唱”って書いてましたが、今月がまさにそんな状態になってます。『夜明けのすべて』良かったもんなぁ、秘宝も先見性のある雑誌だったのにねぇ…。

主演はホアキン・フェニックスアスター監督の次回作への出演が既に決まっているようですが、まず今年は『ジョーカー』(2019年公開)の続編が公開ですね。続編ってまだどんなアプローチになるのか予想が付かないぞ。若かりしブルースはまた出てくるのかな?また去年公開の『ナポレオン』で大砲ボンボン撃っていたのも記憶に新しいです。

そしてドゥニ・メノーシェにびっくり。一昨年の東京国際映画祭で最高賞を受賞し、去年劇場公開をした『理想郷』の主演でしたが、なんだよあの役w。予測出来ない動きをする気味の悪い奴でした。ちょっと『悪なき殺人』(2019年公開)も観てみよ。

↓『ミッドサマー』についてはこちら。自分の過去の記事を読み直すのってちょっと気恥ずかしいなぁ。

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帰省したいだけなのに…

あの…本作はコメディでOKです?私はちょいちょい吹いちゃったんですけど、結構場内はしーん としてたのでボーちゃんと同じく不安になりました。私とひと席空けて隣に居たおっちゃんぐらいしか笑ってなかったもんな。

また本作、綺麗に4幕構成になっていて各々異なる不条理が楽しめる仕組みになっていたので、各パートごとに語っていこうと思います。つまり今回はややじゃなくガッツリネタバレになりそうです。これからもご覧になられる方はどうぞお引き取りを。

 

一幕目

まず最初に展開されるのがアポカリプスな世界。恐らくボーちゃんの妄想や薬による幻覚の影響だと思われますが、ここが一番面白かったです。奇人狂人で溢れかえるストリートには普通に死体も転がるカオスぶり、貧困と暴力が跋扈しています。そんなカオスワールドのアパートの一室に住むボーちゃんは、帰省するための準備をするも次から次へと不幸に見舞われ最後は全裸で街を駆ける有様。とくに自宅に見ず知らずの他人が勝手に侵入し、やりたい放題されるシーンは『マザー!』(2017年公開)を思い出します。あのプライバシーや人権が見事に潰される感じが嫌すぎますね。

ちなみにアポカリプスな都市で次々と不幸に見舞われる様はマーティン・スコセッシ監督の『アフター・アワーズ』(1985年公開)では終始続くらしいっすね。俄然観たくなったけど、配信サイトにないしレンタル店でも見覚えないんよなぁ。


二幕目

お次はドラッグ漬けの家族の狂気。わけあって外科医の住む自宅でお世話になるボーちゃん。一刻も早く母親の葬儀に向かわないといけないのに、この家族がまた酷いのなんの。何かを隠している不穏なご両親とドラッグ漬けの感じ悪い娘さん、そして先述ドゥニ・メノーシェ演じる怖い元軍人さんに振り回されます。この時点でアスター監督が前2作でも描いてきた「家族」の呪縛的なテーマが見え隠れしてきます。またここで『トゥルーマン・ショー』(1998年公開)的な伏線も見えてきます。


三幕目

狂った家族からの逃走中に気を失ったボーちゃん。森の中の演劇団女性に助けてもらい、そこで演劇を観る事になります。この演劇を通して家族の存在が足枷となっている事に気づく事になります。このパートは他と比べ落ち着いて観られますが、もちろん最後は酷いことになりますよ。

ちなみにこのパートで展開されるアニメーションは、日本では去年公開したチリ産不条理ホラーアニメ作品『オオカミの家』(2018年公開)の監督(クリストバル・レオン&ホアキン・コシーニャ)が手掛けているそう。ファンタジックでどこか不気味な作画はそれこそ『ミッドサマー』お好きな方には刺さるのかな?っていうか『オオカミの家』はアスター監督が絶賛してたみたいですけど、こうして一緒に仕事やってるあたり宣伝目的で言ったわけじゃなさそうね。


四幕目

ついにお家に到着したボーちゃん。そこで母親から植え付けられていたある性的な思い込みからの卒業を迎え(ここも爆笑してしまったよ)、ついに家族との対峙と訣別が描かれます。いや訣別ではないのか?家族という束縛は死んでも続くのです。とりわけ母親との関係は人生において超デカい。親ガチャならぬ、この世に生を授かった時点で逃れることが出来ない縛りというのをホラーで表現したいのだろうと感じました。こうやって書いてるとファミリー映画なんじゃないかと思えてきましたし、ボーちゃんはアスター監督自身の虚像なのかもしれません。

まとめ

以上が私の見解です。

アスター作品の中じゃ最もストレートで面白かったかも。まぁ私が一周回って幼稚なんでしょう。全裸でダッシュや取っ組み合いをしてるシーンを観ると反射的に笑ってしまいますし、終盤のデカチ○コも凄かった。ああいうのがケレンってやつですね。

という事でこの辺でお開きです。ありがとうございました。