キャプテン・シネマの奮闘記

映画についてを独断と偏見で語る超自己満足ブログです

第255回:映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』感想と考察

今回は現在公開中の映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』を語っていこうと思います。毎度の事ながらややネタバレ注意です。

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イントロダクション

内戦が勃発した近未来のアメリカを舞台にしたディストピアスリラー。2021年に起きたアメリカ国会議事堂襲撃事件から着想を得たのではと思ったりもするタイムリーさを帯びた作品となっています。

連邦政府からテキサス州カリフォルニア州を中心とした19の州が離脱し、その州が編成する武装勢力と政府軍による戦闘が行われているアメリカ。FBIの解散や反発する市民への空爆を行った大統領は追い詰められており、ワシントンD.Cの陥落も目前に迫っていた。そんな窮地に立たされる大統領のインタビューを試みる戦場カメラマンのリー(キルスティン・ダンスト)を中心としたジャーナリストたちが、ニューヨークからワシントンD.Cへと車を走らせる。

監督はアレックス・ガーランド。『エクス・マナキ』(2014年公開)や『MEN/同じ顔を持つ男』(2022年公開)の監督ですが、実はこの方小説家としての一面も。レオナルド・ディカプリオ主演の『ザ・ビーチ』(2000年公開)の原作を書いてる人なんです。知らんかった。

主演はキルスティン・ダンスト。この方と言えばサム・ライミ監督の「スパイダーマン」シリーズですね。このシリーズの影響でガキの頃に”海外の綺麗な女優さん”と言われて思い浮かべるのがこの方でした。そしてその旦那さんあたり色々あって飛び入り出演となったジェシー・プレモンスが怪演を見せています。夫婦での出演作だと『パワー・オブ・ザ・ドッグ』(2021年公開)もあったな。また公開中の『エイリアン:ロムルス』も記憶に新しいケイリー・スピーニーも出演。こういう言い方も何ですが、怯えた表情がめちゃ映える人だなと。今回みたいなスリラーやホラー映画にじゃんじゃん出て欲しい次世代スターです。

混沌をSHOOTせよ

まずこの映画、一言で言うならカオスです。

序盤は私服の武装者が連邦政府から離反した集団で軍服姿が正規軍と思って観てたんですけど、軍服同士でも殺し合いをしており誰が誰を攻撃しているか分からないカオスが展開。敵味方の概念が崩壊しています。そんなカオスの象徴的存在なのがジェシー・プレモンス演じる赤サングラスの武装男。「お前どこ中だよ?」とカツアゲするヤンキーの最終形態にも見えるレイシストは、恐らくどの部隊にも所属しておらず、内戦に便乗して本性剝き出しで有色人種や移民をルーツを持つ人々を殺し回っているのではと思いました。恐ろしや~。水の配給も滞ってる事からインフラが機能していないのも分かるしアメリカドルは価値を失ってるし…。

しかしそれはあくまで舞台設定であってこの映画で描かれるテーマはジャーナリズムでした。多くの凄惨な現場を撮り続けた事で心を失ったリーさんから序盤じゃ怯えながらカメラを向けていたものの終盤になるとカオスを撮る事に憑りつかれ寧ろ楽しんでいるかのようになる後輩のジェシーさんへ歪なジャーナリズム精神が受け継がれます。”歪な”と表現したのも「記録に収める」という大きな使命があると同時にどんな凄惨な現場でもシャッターを切るというある種の狂気をはらんでいると思うから。しかしその使命と狂気の間にこそ真実が浮かび上がるのかもしれません。
ちなみに中盤辺りにリーさんのフラッシュバックでリンチに合った男性が焼き殺されるシーン(ジュノサイドの現場とか?)があるんですが、あれを観た時にピューリッツァー賞を受賞した「サイゴンでの処刑(グエン・ヴァン・レムの処刑)」が頭をよぎりました。テト攻勢の最中に撮影されたもので、ベトナム反戦運動の起因にもなったと言われる一枚。見た事ある人も多いと思います。それに私、この直前に『プライベート・ライアン』(1998年公開)の再上映を観ていたので、ロバート・キャパのノルマンディーの写真を思い出したりもするわけで。そんなキャパの写真で有名なのが「崩れ落ちる兵士」という銃弾に倒れる瞬間を映したやらせの噂もある一枚。本作の中にも銃弾に倒れた兵士の写真が登場します。きっとこの辺も意識して作られたんじゃないですかね?

まとめ

以上が私の見解です。

ロードムービー、ジャーナリズム、ミリタリーと私の好きな要素モリモリだったので満足ではありますが、期待していた程の衝撃は無かったかなと。先述のグラサンプレモンスのシーンがあまりに強烈&テーマからは少しズレた印象を受けたので、あのシーンだけ浮いていて全体的なバランスの悪さがあったと思います。

また個人的にはもっと軍隊と軍隊がガチンコでぶつかり合って人間が将棋倒しになってく様を期待していたのですが…。大量の戦車が隊列を組んでホワイトハウスへ!みたいな。ただこうしたシーンはスペクタクルになってしまうので、表現としてあえて避けたのかもしれません。すんません、私の発想がガキでしたわw

という事でこの辺でお開きです。ありがとうございました。