気付けば早くも12月。毎年恒例ニュースで1年を振り返る季節がやって来ました。思えば中居正広・フジテレビ問題で開幕した2025年。その後の国分太一の問題も含め、いわゆるオールド・メディア(私はこの呼び方が嫌いです)への信頼が低下する一方で、チャッピー(ChatGPT)やDeepSeekのようなAIの急成長が情報社会に混迷をもたらしているのは事実かと思います。
そして日本社会に混迷をきたしていたのが去年から続く米の価格高騰。古古古米やカルローズといったあまり聞き慣れない言葉が飛び交う中、小泉コメ大臣(元)が失言ジジイよりはマシな働きをした事で一時は小康状態に。しかし内閣支持率の低さは取り戻せず、今年の参院選では与党が惨敗。石破茂が首相を辞任をし公明/維新による連立騒動を経て高市早苗総理が誕生しました。保守というより極右風味の過激派に傾く中、外国人労働者や同性婚のようなマイノリティの声が封殺されない事を祈るばかり。トランプ来日時の接待外交や台湾有事を巡る発言などからは穏やかな政局は期待できなさそうです。
こうした政治情勢で躍進したのが参政党。排外主義や反知性主義とも捉えられる主張を繰り返す政党の台頭は、ハーバード大への助成金凍結やICE(移民税関捜査局)による過度な取締などが起きるアメリカを対岸の火事だと呼べない状況に日本も差し掛かっていると感じさせます。7月5日の大災害の予測は外れたようですが、ガザ地区やウクライナへの軍事攻撃が終わらない事に落胆し、トカラ列島群発地震やクマ被害の多発に怯える日常を過ごすに、どうやら日に日に世界が悪くなるのを見守るしかないような気がしてきます。
そんな暗澹たる世の中を少しでも明るくしようと頑張ったのがミャクミャク。2025 大阪・関西万博は問題点が多く当初は不評でしたが、イタリア館の本気やインドネシア館のオリジナルソングもあってか盛況に。パビリオンの建設費未払いなど課題は残しつつもひとまずは成功といっても良い結果となりました。
その他KKパークやSwitch 2、山本由伸、ラブブ、グエー死んだンゴ、ジャングリアなどが話題となった2025年。映画関係でも様々なニュースが飛び交いました。細かいニュース含めると膨大な情報量となるので、私個人がデカいと思ったテーマを偏った独自見解を基に振り返っていこうと思います。

↑今年のベストショット、巌流島での一枚です。決闘の瞬間を切り取ったような写真が撮れました。
LAの山林火災
まず新年早々飛び込んできたのがこちらの話題でした。米カリフォルニア州ロサンゼルス近郊で1月7日から発生をした山火事。ハリウッド俳優たちが多く住む高級住宅街にも火の手は回り、一連の火事による死者は31名を出しました。火災による避難指定区域の中にはチャイニーズシアターや各映画スタジオも含まれていたことが影響し、米国アカデミー賞の受賞式が延期となったり映画撮影の一時中断なども発生しました。
丁度同じ時期に日本でも大船渡市や今治市で大規模な山林火災が発生しており自然災害の猛威を改めて感じたところでしたが10月に入って状況が一転。7日に放火の容疑で男性が逮捕され事故から事件へと切り変わりました。まさかの放火だったとは…容疑が確定すれば相当な重大犯罪になりそうです。
デヴィッド・リンチ逝去
この山火事による避難生活が心身共に疲弊し体調を悪化させてしまったとも聞きかじりましたが、映画監督のデヴィッド・リンチが78歳で亡くなりました。
日本でもブームとなったTVドラマ「ツインピークス」シリーズで有名な監督。私自身、めちゃくちゃファンというわけでは無かったのですが非常にショックを受けました。なぜでしょう、それだけのカリスマ性を兼ね備えた大きな存在だったのだと思います。『ブルーベルベッド』(1986年公開)の再上映も行けて良かったな。ちなみに私にとってベストトラウマ映画が『イレイザー・ヘッド』(1977年公開)。いやもっとグロテスクだったり鬱展開な作品は数多あるんですけどね。妙に神経を刺激してくる映像の連続で最後まで観るのが辛かった印象が残っています。この際だから観直してみるかとも思ってたんですけど、なかなか勇気がいるなぁ。
その他、ジーン・ハックマンやロバート・レッドフォード、ヴァル・キルマー、ウド・キアといったビッグネームなスターたちも亡くなりました。また日本でいえば長嶋茂雄やみのもんたといった一時代を築いた人々も旅立ちましたが、映画関連でいえばSNS上で有名だったビニールタッキー氏の急逝も驚きでした。今後は墓碑銘みたいなコーナーを設けるべきかもしれないなぁ。
ハリウッドvsトランプ
そんな多くのスターを失ったハリウッドですが、この1年はトランプに翻弄され続けていたと思います。っていうかここでもトランプの名前を出さなくちゃいけない。ほんとお騒がせセレブが国の中枢を司っちゃうとこうも忙しなくなるという。
まずはシルベスター・スタローン、ジョン・ヴォイト、メル・ギブソンをハリウッド特別大使なるものに就任させた件。何をやっているのかよく分かりませんが、リベラル色の強いハリウッド業界を牽制する目論見があるのでしょう。ヴォイトやギブソンはまぁ何となく分かりますが、スタローンは一体どうしたのでしょう。24年の大統領選後半から支持を表明。選挙戦のイベントへの出席もしていました。『ランボー 最後の戦場』(2008年公開)を撮っていた頃なんかを考えると人が変わってしまったような気がして残念です。
また外国映画に対して100%の関税を課す方針の表明もありました。こちらも実際に関税を課しているような動きは未だ見られず口先だけな状況。恐らくはハリウッドに釘を刺すといった意図と同時に、国内でロケが慣行されず内需の獲得が減っている事への不満の現れでもあると思います。確かにハリウッド作品を観ていると最後のエンドクレジットでオーストラリアやカナダのコミッションのロゴが出ますもんね。しかしですよ、米国の映画産業が成功してきたのってグローバルな視点でいち早く国際的なマーケットを意識したからこそじゃないか?今、韓国やインドのエンタメ産業に勢いがあるはグローバル市場を意識した戦略を取っているからでしょう。それとは逆行してしまいそうな措置は業界を萎縮させる悪手になるのでは?そもそも財政的な課題を関税で賄うことしか発想がなさそうな事に呆れてしまいます。
ちなみに今年の米国アカデミー賞では若かりし頃のトランプを描いた『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』が主演男優賞&助演男優賞でノミネートされていました。受賞したら面白かったんですけど、それは流石に政治色が強過ぎる気もしますね。
↓『アプレンティス』についてはこちら
洋画の正念場
山火事に暴君との対峙と受難のハリウッド。日本での売り上げでも苦境に立たされている印象を受けます。ハリウッド作品というより洋画全体が映画館での上映される機会が少ない、あるいは上映自体が全く無いといったケースが多く見られる1年でした。
まず人形系ホラー映画『ミーガン2.0』の公開中止。映画館では大々的に予告が流れていたので、そんな事が起きるのかという衝撃。どうも本国での売り上げが芳しくなかった事が影響したようで、ブラムハウス・プロダクション自体が厳しい状況に立たされているのかリー・ワネル監督の『ウルフマン』も映画館での上映がありませんでした。同監督の『透明人間』(2020年公開)がなかなか面白かっただけに残念。
また『ザ・コンサルタント2』の劇場公開が無かった事にも驚かされました。これに関しては前作の1作目が2016年公開なのでブランクが大きいというのがあったのかもしれません。ちなみに『ミーガン2.0』『ザ・コンサルタント2』ともにアマゾンプライム独占配信という事なので、U-NEXS&Netfilxユーザの私は未見。作品に触れる窓口が狭いのは困ったものです。
さらに当初上映予定の無かった作品が急遽公開決定となる事案も多くありました。ライアン・クーグラー監督の新作『罪人たち』やスラッシャー映画シリーズの最新作『ファイナル・デッドブラッド』。そして全米でスマッシュヒットを記録した『Weapons/ウェポンズ』がその該当作品。来年公開予定のダーレン・アロノフスキーの新作も緊急公開らしいので中小規模の洋画が劇場で公開するというのが普通ではなくなっている危機的状況といえます。フィンランド産最強ジジイ映画『SISU』の続編に関する日本公開の音沙汰が全く聞こえて来ない事やジェラルド・バトラー主演『ザ・アウトロー』の続編の公開が先日やっと発表されたりと非常にシビア。何度でも言いますが「作品の多様性」が社会的に大事だと思っているので、それが担保されず資本主義的価値観ばかりが先行しない事を切に願います。
↓緊急公開で一番嬉しかった作品はこちら
東宝一強時代へ
実は緊急公開の決まった作品の多くがワーナーブラザースジャパン配給である事は一つポイントになってきます。ワーナーブラザースジャパンは今年限りで事実上解体。26年以降のワーナー・ブラザース作品は東宝東和が配給を行う事が決定しています。東宝東和は東宝の連結子会社であり、ユニバーサル・ピクチャーズ作品の配給も行っています。また、東宝傘下ですとパラマウント作品も東和ピクチャーズが行っているので配給が東宝一社に集中している事が見て取れます。つまり上映される作品のほとんどが東宝の裁量次第という事になってくるわけで、さらに洋画が映画館で観られる機会が減少するのではないかと不安視してしまいます。
何しろ東宝は国内作品がとにかく好調ですからね。今年は『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』や『8番出口』、『チェンソーマン レゼ篇』と大ヒットを飛ばす作品を連投。「名探偵コナン」と「ドラえもん」というファミリー層を確実に集客できるコンテンツを毎年公開させる事で、日本の映画会社では毎年唯一の黒字経営と噂の東宝がさらに市場を独占する構造となっています。
中でも注目は『国宝』です。吉田修一による同名小説が原作の歌舞伎をテーマしたドラマ作品で6月に公開し異例の大ヒットを記録中。9月の時点で150憶円を突破し11月に邦画実写での歴代最高売り上げを更新しました。っていうかそれまで最高売り上げを記録していたのが『踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』(2003年公開)なのも驚き。いや他に無かったのかよ!
それにしてもなぜここまで『国宝』が支持を得ているのか不思議です。私自身は原作者のファンという事もあったので公開初週に観に行きましたが、決して娯楽大作という作風でもなければ上映時間が3時間ですからね。尺の長い作品ってなかなか映画館でリピートしようって個人的には思いませんし。美男子2人が主演という事でBLっぽさがウケたのではないかという視点や源氏物語などにも通底する普遍性のある物語が支持されたのではといった話もありますが、確かに”BLっぽさ”が支持される傾向はかなり高いと思います。同様ケースに当てはめれば、インド映画『RRR』(2022年公開)がロングランヒットを記録した事も理解できます。私自身でいえばBLとは異なりますがブロマンスものは大好物ですし、主演2人体制でアツい絆を描くストーリーが多くの人を魅了するのかもしれません。
なお、本作の主題歌を歌っているのがKingGnuでお馴染み井口理。つまり歴代最高売り上げの映画主題歌歌手になったわけです。今年はご結婚や舞台初主演とめでたいニュースが沢山でした。あぁ~来年のライブツアー行きてぇ~。
↓『国宝』について詳しくはこちら
コンクラーベ旋風
このような邦画大盛況の中、今年唯一話題になったといっても良い洋画が『教皇選挙』でした。何だか新語・流行語大賞にもノミネートされているとか。日本での公開がされているタイミングでローマ教皇フランシスコの逝去が発表され、実際に新しい教皇を決める選挙”コンクラーベ”が開催された事が図らずも影響していました。しかしそれ以前から客入りは結構良かったように思えます。私が観に行ったのも逝去が伝えられる前でしたが、会場は満席だったと記憶。恐らくは米国アカデミー賞関連の作品だったからだと思います。「米国アカデミー賞」って依然としてネームバリューがあるなと。しかしもう一つ考えられる理由は上映館数が少なかったという事。私が新宿へ観に行った当初はミニシアターのkino cinema新宿一館に限りシネコンでの上映が無かったはず。その後しばらく経ってからTOHOシネマズ新宿でも上映していたかと思いますが、観られる映画館が少なければ観たい客が集中するのは当然な事。おまけにそれが1スクリーン100席程度のミニシアターだけとなればチケットは争奪戦です。先日観に行った『落下の王国』のリマスター上映も同じような状況だよなぁ。ここにもまたシネコンで洋画の枠が確保出来ない厳しい興行事情が浮き彫りとなってきます。
ちなみに内容はおじさんたちが眉間に皺を寄せてうんうん唸る映画で面白かったですよ。特に主演のレイフ・ファインズは終始困り顔で可哀想な有り様。同じく今年の公開の出演作『28週後…』での骨アーティストはストレスから解放された清々しいキャラクターに見えるぐらいでした。それにしても『国宝』といい漢字の主張が激しいタイトルの映画は話題性が高いのでしょうか?今やってる鬼滅も全く知識のない人間からすると副題が読めませんもん。「猗窩座再来」って何なんw
相次ぐ映画館閉館
洋画が大手シネコンでの上映時間が確保出来ない状況に加えて、映画館自体の閉館が相次いでいるのも辛い現実です。
まずは丸の内TOEIが今年の7月にクローズ。2022年には渋谷TOEIも無くなったため、これで東映直営の映画館が消滅してしまいました。個人的な思い出としては東京国際映画祭で随分とお世話になったこと。毎年コンペティション部門の上映会場となっており、いつも2階席の最前列を確保して作品を楽しみました。2階席を備えた天井の高さが感じられる映画館って少なくなってるよなぁ。立派な大理石の柱があったのもシネコンとは違った味わいで好きでした。ちなみに跡地の建つ事になるのはホテルだそう。銀座の一等地にホテルなんて外国人観光客がターゲットでしょう。それなら地下とかにひとスクリーン残してくれたって良くないですか?映画館併設のホテルなんて魅力的だと思いますが。
そして来年1月にはシネマカリテ新宿とシネ・リブール池袋が閉館する事が決まっています。こちら2館に関しては来年のニュースで振り返り回の時に詳しく書くとは思いますが、シネマカリテは非常に残念。私が初めて足を踏み入れたミニシアターだったはずなので思い入れがあったのに…。来年の春には大井町にTOHOシネマズがオープンするようですが、シネコンが増えたところで中小規模の洋画が日の目を見る事はないでしょうから厳しい事には変わりありません。まぁ大井町は前に働いてた場所という事もあるので一度は行ってみますが。
マッドマックス関連
うーん世知辛い話ばっかりになってきたぞぉ。という事で最後はパッと明るく恒例マッドマックス関連のお話…ですが流石に去年新作が公開されたばかりというのもあってか次回作の動向に関する情報は確認できませんでした。しかし今年は「怒りのデス・ロード」の公開から10周年のアニバーサリーイヤー。そうなるとやはりこの映画館が動いてくれます、立川シネマ・シティ。去年も『マッドマックス:フュリオサ』公開記念で上映してくれましたし本当にありがたい。今後ともどうぞご贔屓に。
シリーズ出演者の話題でいえば旧3部作の絶対的スター メル・ギブソン。監督作であるクライムアクション『フライト・リスク』が公開されました。トランプ云々のテーマの際に名前は出した通りちょっとどうかと思うところはありますが、そうはいっても監督として手腕は超一流です。小道具の使い方が非常に上手いと思いましたし、全体的にタイトにまとまった良い作品でした。また今年はニュークスことニコラス・ホルトが頑張ってました。『ノスフェラトゥ』ではオルロック伯爵にイジメられ『スーパーマン』ではクリプトに振り回されていました。それにして酷い目に合わされる役に悪役と多岐にわたる役どころで活躍する良い役者さんになりましたね。きっと『スーパーマン』でのレックス・ルーサー起用理由は「怒りのデス・ロード」を観たジェームズ・ガンが”おぉ!スキンヘッドの形が良き!”ってなった事が少なからずあると信じてます。
そして個人的マッドマックスニュースでいえば「怒りのデス・ロード」の前日譚をまとめたコミック&アート集の手に入れたこと。マジで長らくずっと探してたんですけど、たまたま行った古本市場で発見し即買い…とはいかず結構迷いました。だって定価の倍以上の値段ですもん。しかし絶版になっているらしい代物で二度とめぐり逢う事は無いかもしれないと考えれば買わざる得ない。2015年に戻れるのなら当時の私に”いいから買っておけっ!”と強く念押ししたいです。
おわりに
以上、8つテーマで今年を振り返りました。
その他、米アカデミー賞にスタント部門が新設される事やたべっ子どうぶつ映画化、『ビーキーパー』の入場者特典へのクレーム等もありましたがこの辺でお開きとしましょう。来年もきっと嬉しいニュースも残念なニュースもやってきます。いち映画オタクの端くれとして今後も追っかけていく所存です。それではありがとうございました。
※参考
・朝日新聞 8月1日 夕刊4頁
・朝日新聞 9月26日 朝刊 1~2頁
・ロス近郊の山火事さらに拡大、5人死亡10万人超避難 セレブ住宅も被害 | ロイター
・米ロサンゼルスの1月の山火事、発生させた疑いで男性を逮捕 チャットGPTで生成の火災画像を押収 - BBCニュース