今回は現在公開中の映画『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』を語っていこうと思います。毎度の事ながらややネタバレ注意です。っていうか未見であればこんなん読んでないで今すぐ映画館に駆け込んで下さい!
イントロダクション
2018年に公開しその圧倒的なビジュアルで話題を呼んだアニメーション映画『スパイダーマン:スパイダーバース』の続編。
ピーター・パーカーの意志を継ぎスパイダーマンとしてブルックリンで活躍するマイルス・モラレス(声:シャメイク・ムーア)に、別次元でスパイダーマンとして活動する友人 グウェン(声:ヘイリー・スタインフェルド)が会いに来る。彼女は「スパイダー・ソサエティ」という多次元(マルチバース)間で起きる問題を監視するスパイダーマンたちの組織に勧誘されたと話す。そしてどうもこの次元に来たのはその任務であるという事にマイルズは気付く。彼女の後を追ってマルチバースの世界へ、そして哀しき運命を突きつけられる。
監督はホアキン・ドス・サントス、ケンプ・パワーズ、ジャスティン・K・トンプソンの3人体制。前作からの続投ではないようですが脚本は前作に続きフィル・ロード&クリス・ミラーが手掛けています。
声の出演では、オスカー・アイザック(2013年公開『インサイド・ルーウェン・デイヴィス 名もなき男の歌』)やジェイソン・シュワルツマン(1998年公開『天才マックスの世界』)といったなかなか面白いメンツが揃ってますが、やはり個人的にはグウェンを務めるヘイリー・スタインフェルド。『スウィート17モンスター』(2016年公開)がとにかく傑作。これだけで充分ですが『バンブルビー』(2018年公開)に当シリーズなわけですからね。一生応援しますよ。そういえば グウェンが主人公のスピンオフ作品があるとかないとかの噂はどうなってるのかな?気のせいか。
「スパイダーマン」をぶっ壊せ
スパイダーマンというヒーローにとって最大の敵とは何でしょうか。グリーン・ゴブリン?ヴェノム?…対立するヴィランは沢山いますが、スパイダーマンに課せられた運命こそが最大の敵だと言えるのが本作です。
今までのスパイダーマン作品に触れていればお分かりの通り、愛する人の死と世界の崩壊を同時に止める事が出来ない運命が存在します。個人を取るか?全体を取るのか?という命題は様々なヒーロー映画で描かれるテーマではありますが、とりわけスパイダーマンにとっては呪いとなっていると思えます。そんな呪縛にまっこうから反発するのがマイルズ。従来の「スパイダーマン」としての物語ではなく「マイルズ・モラレス」という自分だけの物語を紡ぐんだと意気込みます。
うひぁー!ついにやりましたね。「スパイダーマン」という規範や固定観念からの脱却を計り、キャラクターそのものの解放と次のステージへと導く革命。パンクでエネルギーに満ちた快作でした。それに今まで作られてきたスパイダーマン映画(前作も含めた)、というよりは近年量産されているアメコミヒーロー映画へのある種アンチテーゼにもなっている辺りかなり革命的だと思います。これならワンチャン、タランティーノ監督やスコセッシ監督のお気に召すのでは?
革命的なのは勿論テーマ性だけではありません。驚くなかれ異なるスパイダーマンやヴィラン、そのキャラが住む世界ごとに絵のタッチや色の濃淡を変えてるんですよ。前作でもやってましたけど、登場するスパイダーマンの種類が多くなった事でより明確に表現してます。これこそアニメーションにしか出来ないアプローチじゃないですか。私の好きなジブリ映画『かぐや姫の物語』(2013年公開)もシーンに応じて絵のタッチを変えていたようなのを思い出しましたが、グラフィックデザインの方々には賞賛を送らなくてはいけません。今年の視覚効果的な賞は総取りでもおかしくないかと。
相変わらずアクションシーンのサイケなハイスピード感にも舌を巻きますし(序盤の美術館でのアクションシーンは半端ないって)、実質的な敵として登場する“穴ぼこマン”の見せ方も白眉。またソニー・ピクチャーの力であの世界線、脚本のフィル&クリスの力であの世界線の登場もポイントです。押し付けがましいサプライズ感なくスマートに登場させていたのが好印象でした。
まとめ
以上が私の見解です。
いや~完全にやられた…前作を超えてくるまさかの革命的傑作。既に決まっている来年公開予定の3作目『スパイダーマン:ビヨンド・ザ・スパイダーバース』は間違いなくお祭りになります。とりあえずアメコミ映画好きはこのビッグウェーブ乗るしかないですよ。
という事でこの辺でお開きです。ありがとうございました。
※余談
こちらのシールですが、本作の前売り券特典で付いて来たもの。どのキャラが貰えるかシークレットだったので、当初は“えぇーマイルスじゃないんか”と思ってましたが、このスパイダー・パンクさんは映画を観た後だと印象がガラリと変わり、かなり気に入りました。寧ろアタリじゃね?しかも声がダニエル・カルーヤだったんですね。俄然好きになったわ。