キャプテン・シネマの奮闘記

映画についてを独断と偏見で語る超自己満足ブログです

第177回:映画『食人族』感想と考察 ※映画『EO イーオー』についても

今回は現在4K版が再上映中の『食人族』を扱っていきます。また話の流れで現在公開中の映画『EO イーオー』についても触れていこうと思います。毎度のことながら、ややネタバレ注意です。

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↑本当は焼き鳥の写真を載せたかったのですが…団子の写真しかなかったぁー

↓こちらがポスター画像

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イントロダクション

1980年に公開されその比類なき残酷描写で世界各国で上映禁止やフィルム没収、ビデオ発売中止騒動など物議を醸したモキュメンタリー映画。ホラー映画におけるファンドフッテージもののルーツとも言われているそう。

男女4人組のドキュメンタリー映画撮影隊が、南米アマゾンの奥地“グリーン・インフェルノ”で消息を絶った。現地へ赴いた救助隊は“グリーン・インフェルノ”奥地の食人族の村で4人の白骨化した遺体を発見。持ち帰った撮影済みフィルムには想像を絶する映像が収められていた。

監督はルッジェロ・デオダート。今作において撮影のためのキャスト殺害容疑で逮捕(その後容疑は晴れる)され、その後動物虐待をしたとして告訴されたりしたそうです。おぉ…なるほど、まぁ後に触れますけど確かにそうなってもおかしくないわな。

これぞ問題作

私、本作は初鑑賞でした。よく耳にするタイトルですし、焼き鳥みたく(ここは団子というべきか)串刺になってる人間ポスターが強烈過ぎるので前から気になっていましたが、なかなか踏み出せずにいました。そんな時に劇場公開。これは「劇場で観なさい」という映画館の神様からの思し召しでしょう。

率直な感想を書くと映画として良く出来てますし、ぶっちゃけ滅茶苦茶面白いです。しかしあまりにも多くの問題を孕んでいると思いました。絶賛して良いのかな?この背徳感のある面白さ。これぞガチな問題作だと思います。よくぞ4Kリマスター&無修正での上映に踏み切ったもんです。天晴!

というわけで私が感じた問題点3つを展開していきます。

人間と動物の関係

まず「食人族」というタイトルから推測するに最大の残酷描写って人が人を食ってるシーンだと思うはず。しかしそれ以上に残虐極まりないのが、登場人物たちが動物を殺すシーンが克明に映し出されている事でした。

亀をはじめネズミや猿を屠殺するシーンが映されいますが、あれは本当に殺してしまってます。個人的にはネズミの喉笛を掻っ捌くシーンは直視出来ませんでしたね。悶え苦しむ鳴き声が事切れる感じがキツい。映画撮影のための命を奪う演出があってよいのか?現在の作品においては、動物への虐待や屠殺のシーンがあるとエンドロール前にそのような事は一切行っていない旨の注釈が表示されるのでタブーとされている事は明白ですが。

人間と動物の関係性については直近で観た『EO イーオー』という映画でも考えさせられるものがありました。

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サーカス団を離れることを余儀なくされた一頭のロバを通して人間社会が描かれるロードムービー。ロバが主人公の斬新な作品で、勿論こちらの作品では動物への虐待は行っていない旨の注釈がエンドクレジット前に表示されます。

ロバのEOがサーカス団を離れることになった原因が過激な動物愛護団体による抗議。動物を虐待、酷使していると決めつけてしまっているわけですが、共にパフォーマンスをしていた女性との関係性は良好に見えますし、寧ろ離ればなれてになってしまう事の方が可哀想に見えるのです。つまり動物が“幸せか?可哀想か?”の判断って人間側の立場や考え方の違いで変わってきてしまうんですよね。動物は言葉を発しませんし、そもそも感情を持っているかどうかも明確には分かりませんから。

ちなみに作品としては結構好み。ロバのつぶらな瞳が人間の愚かさを映し出します。『2001年宇宙の旅』(1968年公開)のようなトリップ感のある映像の連続で若干ウトウトしてしまいましたが、何とも気持ちの良い映画。万人にオススメするならこちらです。

ヤラセの限度

本作はモンド映画と呼ばれるジャンル。如何にも実際に存在するんだという程を取り、観客の好奇心を掻き立てる偽のドキュメンタリーで、今で言う「ヤラセ」な作品です。公開当時はこれが実際にあった話だと勘違いした人も居たのでは?

僻地の知られざる世界を扱うようなコンテンツは現在日本のTV番組にも『クレイジージャーニー』や『世界の果てまでイッテQ』があります。特に前者の方はヤラセが発覚し暫く休止をしていたはず。まさにモンド映画的です。どこまでがリアルでどこからがフェイクなのかを視聴者が判断する事は難しいのです。

一体ヤラセは何処まで許されるのでしょうか?『キング・オブ・コメディ』(1982年公開)や『神は見返りを求める』(2021年公開)を観ても思いますが、面白ければ、或いは世間の注目を集める事が出来れば何をしてもOKみたいな考えが少なからずエンタメ業界にはあるのかもしれません。危ういですね。

誰が一番残虐なのか?

恐らくこの映画における一番のテーマ。私たち文明社会で生きる人々とジャングルに暮らす原住民族はどちらが野蛮で暴力的なのでしょうか?

そりゃカニバリズムの文化としてるなんて倫理的にどうかしてる!と思うのが大多数かもしれませんが、文明人側として登場する撮影クルーもまぁ酷いのなんの。法律上から逸脱した相手であれば何をやっても構わないと思ったのか。撮影クルーたちは平気で原住民を撃ち殺し、家に火を付けレイプも厭わない蛮行の限りを尽くします。人でなしはどっちだよって話なんです。

先ほどの屠殺やヤラセの件もひっくるめると、結論この映画を製作した人間もそしてそれを観て“面白いなぁ”と感じた私も含めた観客全員が野蛮で狂暴であるって事なんだと思います。人間ってこわいよ~。

ちなみにイーライ・ロス監督がオマージュを捧げた2013年公開の『グリーン・インフェルノ』はこうした人間の野蛮性が比較的原住民族側でしか描かれておらず、随分マイルドになっていたと思います。「やらせ」の要素は上手くフィクションに落とし込まれており観やすい作品になった印象ですが、これじゃ何か違うよね。ウ○コでキッズが笑うのは世界共通なシーンは感動したけど。

まとめ

以上が私の見解です。

私シネマート新宿で観たのですがこの時の場内はなかなかカオスでしたね。

まず驚きだったのが、妊婦さんが観にいらしてたんですよ。妊婦さん自体を映画館でお見かけするのが珍しい気がするのによりによってこの映画で出くわすか!お腹の子への映画英才教育、半端ないっす。それに私の隣に座ってたお爺なんて、上映前の予告編の最中にコンビニソフトクリーム(しかもカロリーオフのやつ)で腹ごしらえしてましたし、後ろに座ってたグループは嘔吐者続出だというホラー映画『テリファー2』の予告でキャッキャ言ってました。あの場内は映画オタク界隈の限界集落だったのかも。私も行きついた身なのかぁ…色んな意味で感慨深い。

という事でこの辺でお開きです。ありがとうございました。

参考:

食人、人体串刺し、白骨遺体…監督が殺人容疑で逮捕された、あの問題作は“やらせ”だった?|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS