今回は現在公開中の映画『哀れなるものたち』を語っていこうと思います。毎度の事ながらややネタバレ注意です。
イントロダクション
スコットランドの作家アラスター・グレイの同名小説の映画化。去年のベネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞をしています。
天才外科医ゴッドウィン・バクスター(ウィレム・デフォー)による驚異の蘇生手術を受けたベラ(エマ・ストーン)。「世界を自分の目で見たい」という強い思いに突き動かされ、放蕩者のダンカン(マーク・ラファロ)と共に旅に出る。そこで世界の酸いも甘いも知り急速に成長を遂げていく。
監督はヨルゴス・ランティモス。『女王陛下のお気に入り』(2019年公開)と『ロブスター』(2016年公開)ぐらいしか観てないぞ。『ロブスター』は変な映画だったな。独身だと動物に変えられるってどういう発想なんだw。胸糞映画だという『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』(2018年公開)は観てみよ。
主演はエマ・ストーン。この方といえば『ララランド』(2016年公開)でしょう。いや私にとってミュージカル映画食わず嫌いの解消となった映画でもあるので。囁くような歌い方良かったな。あとは『ペーパーマン』(2009年公開)のスープ作る人も地味に印象深い。
そして共演のマーク・ラファロが結構好きなんです。『フォックスキャッチャー』(2014年公開)や『はじまりのうた』(2013年公開)、『スポットライト 世紀のスクープ』(2015年公開)となかなか良い作品に出まくってます。あと勝手なイメージ、性格良さそう。
「女性」として生きる
本作をずばり一言で表すならフェミニズム映画です。「フェミニズム」と聞くとネット上じゃ性的搾取の論点ばかりの誇張や男性嫌悪と履き違えて捉えている人々もおられるようで、攻撃的で差別的な一面がちょっと残念な印象も受けます。しかし本来は男女両方の平等な権利を訴えるものであり、このテーマを含んだ映画は性別関係なく勇気や元気が湧湧くような内容が多くなります。本作はまさにそれ。何だか心がアツくなるエンパワーメントな作品でした。
例えば閉鎖的/限定的な空間から解放され、外の世界を知った女性が成長するという構図は、多くのフェミニズム系統の作品で描かれているテーマだと思います。最近の作品いえば『バービー』(2023年公開)が代表格。『ワンダーウーマン』(2017年公開)や『塔の上のラプンツェル』(2010年公開)もその傾向が見られる作品でしょう。ベラさんは外の世界から元々居た場所へ戻る選択をしますが、そこはもう閉鎖的な場所ではなくなっています。人間として成長を遂げ自身で選択しているわけですから。この流れは『ローマの休日』(1953年公開)、そして『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015年公開)なんかが思い出されます。
また、一部じゃ露骨過ぎるみたいな批判もあるという性描写に関してもフェミニズム的なアプローチだったかと思いました。確かにここ最近の映画じゃ考えられない程シーンとして多く、物語の軸となっているといっても過言ではありません。しかしそれは性への目覚めから成熟していくまでの過程を描いているのであって、決して生々しく過激な描写を見せたい意図でないのは観れば分かる事でしょう。各ベットシーンは決してエロティシズムに撮られいるわけでなく、寧ろ即物的なものとして撮られている感じもしましたし。また娼館のシーンはベラさんが「労働」というものに初めて接触する意味合いがあると感じましたし、その後の娼婦をやっていた事への各男性キャラクターのリアクションが後々ポイントになっています。
といった感じて思いついた要素をつらつら書いてるだけになってきましたが、要は「女性」としての生き方とは?という時代性を取り入れつつしっかりエンタメとなっている素晴らしい作品でした。
まとめ
以上が私の見解です。
予想していた以上に面白い作品でしたね。1つ言いたい事があるとするなら、マーク・ラファロが演じた”悪い男”だけで充分説得力があるのに、その後さらに酷い男が登場するのは説明過多では?ザ・有害な男らしさなキャラは結末含め面白いのですが、描写としてごっぞり無くても成立する気がしたので冗長さは感じました。
そういえばあの魚眼レンズや穴から撮ったような画は『女王陛下のお気に入り』でもあったの思い出た。人の生活を覗き見してるような感じ。変な動物や鼻血だったり端々にランティモス監督のフェティッシュさが見えるのも良かったです。
ということこの辺でお開きです。ありがとうございました。