キャプテン・シネマの奮闘記

映画についてを独断と偏見で語る超自己満足ブログです

第228回:映画『異人たち』感想と考察

今回は現在公開中の映画『異人たち』を語っていこうと思います。毎度の事ながらややネタバレ注意です。

f:id:captaincinema:20240420191245j:image

イントロダクション

日本を代表する脚本家で、去年逝去した山田太一が手掛けた小説「異人たちとの夏」を原作としたドラマ作品。舞台は昭和の日本から現代のイギリスに変わっています。

幼くして交通事故で両親を亡くし、孤独な人生を歩んできた40歳の脚本家アダム(アンドリュー・スコット)。ロンドンのタワーマンションに一人で住む彼は両親の思い出を基にした作品執筆のため幼少期を過ごした郊外の家を訪れる。そこで30年前に他界した当時のままの姿の父(ジェイミー・ベル)と母(クレア・フォイ)に遭遇する。

監督はアンドリュー・ヘイ。私、監督作品は一つも観ておらず…あっ『荒野にて』(2017年公開)はロードムービーっぽいぞ。馬と少年の逃避行ってこれはチェックですな。

主演はアンドリュー・スコット。監督も主演も“アンドリュー”は混乱するぞ。TVドラマ「SHERLOCK/シャーロック」シリーズや『007/スペクター』(2015年公開)に出演しているようです。そしてその恋人役として登場するのがポール・メスカル。出ました、日本では去年公開し、まことしやかに話題となった『after sun/アフター・サン』の儚いお父さん。妙に後引く存在感なのよね。「グラディエーター2」の主演らしいのでそちらも楽しみです。

斬新な原作改変

私、本作観る前に原作にあたる小説「異人たちとの夏」を取り急ぎ読みました。そりゃ日本の小説がイギリスで映画化って聞けば気になりますからね。全体的に夏の湿気と「死」が匂い立つオカルトファンタジー。ただホラーのような描写はほどんとなく鰻屋のシーンとかは読んでてジーンとしちゃいました。

で、本題の映画ですがかなり違った印象を受ける原作改変がなされています。TVドラマの脚本では、変更/脚色を許さなかったと言われる山田氏。しかし今回の映画については自由にして良いとの事で、どのような映画になるのかを寧ろ楽しみにしていたそうです。(問題になった某漫画原作のTVドラマの状況とはまったく違うね)

まず主人公が同性愛者に変わっているのは一目で分かる点。これはストーリーにより深みを与えるものとなっていた気がします。とくに親にカミングアウトするのシーンは秀逸。言ってしまえば、現代的な考えを持ち合わる機会なく過去の価値観で時が止まってしまった両親になるので、あのリアクションは非常に説得力があるというか。親と子の対峙が同時に「時代」が対峙する構造にもなっているシーンだと思いました。

また、登場人物が減っているのも面白い点。実質1人しか登場しない映画になってるんですね。これにより孤独感や空虚さがより印象強くなっており、現代社会らしいポイントになっている気がしました。

ただラストの改変だけは個人的に腑に落ちませんでした。あれは「生」より「愛」を選んだんですかね?私にはそう受け取れましたが何だか原作の方向性からは違ってくる気がしました。思えば原作を読んでいる時に感じた匂い立つ「死」は無かったので、そもそもその要素はごっそり落としたという事なんでしょう。

まとめ

以上が私の見解です。

オチ以外は良かったですし、アンドリュー・スコット&ポール・メスカルのやり取りがめちゃくちゃ繊細。特にポール・メスカルのあの妖艶な雰囲気は凄いっすよ、やっぱ存在感強いなぁ~。

そういえば既に日本では大林宣彦監督で1988年に映画化されているようですね。そちらとも比較して観ても良いかもしれませんね。

という事でこの辺でお開きです。ありがとうございました。

 

参考:

脚本家・山田太一さんの小説『異人たちとの夏』 イギリスで映画化 その魅力は | NHK | WEB特集 | 映画