キャプテン・シネマの奮闘記

映画についてを独断と偏見で語る超自己満足ブログです

第92回:映画『最後の決闘裁判』感想と考察

今回は現在公開中の『最後の決闘裁判』を語っていこうと思います。毎度のことながら、ややネタバレ注意です。

 

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↑デザインかっこよすぎな。

イントロダクション

中世ヨーロッパで実際に行われていた裁判としての決闘。相手の命を奪った方の主張が認められるという今じゃトンデモない話ですが、その決闘裁判の最後とされる事例を描いた歴史ドラマ。

舞台は百年戦争下のフランス王国。騎士であるジャン・ド・カルージュ(マット・デイモン)の妻マルグリット(ジョディ・カマ―)が、夫の旧友ジャック・ル・グリ(アダム・ドライバー)に性的暴行されたと訴える。しかし目撃者がおらず、ル・グリは無実を主張する。真実の行方は生死によって判決が下される決闘裁判へと持ち込まれる事となる。

監督はリドリー・スコット。『エイリアン』(1979年公開)や『ブレードランナー』(1982年公開)といったSF作品の印象が強いですが、ローマ帝国コロッセオを描いた『グラディエーター』(2000年公開)や十字軍を描いた『キングダム・オブ・へプン』(2005年公開)など歴史ものもお得意の監督ですね。

主要キャストは、マット・デイモンアダム・ドライバー、ジョディ・カマ―の3人。

実質的には今年公開の『フリー・ガイ』にも出演していたジョディ・カマ―が主役といった感じでしょう。『フリー・ガイ』のあのラスト、良かったよなぁ~。

またマット・デイモンに関しては主君のピエール伯を演じているベン・アフレックと共に脚本にも携わっています。なるほど『グッドウィルハンティング 旅立ち』(1997年公開)のコンビという事か。

そしてアダム・ドライバーに関しては、次のリドリー・スコット作品『ハウス・オブ・グッチ』にも出演しています。ノア・バームパック作品の常連に続き、リドリー・スコット作品の常連にもなるのか?今後も大注目な役者さんです。

 

ちょっと待てよ

本作のテーマとして、理不尽な男性社会に一矢報いようと声をあげるMeeToo運動的文脈やリドリー・スコット作品では割とお馴染みの強い女性の登場(『エイリアン』もそうですし2017年公開の『ゲティ家の身代金』なんかもそうですよね)があるのは、観れば誰もが感じ取れるぐらいハッキリと描かれているので、ここではちょっと違った部分で感じたことを言及しようと思います。

本作の最たる見せ場と呼べるのは、やはりタイトルにもある決闘裁判の様子です。まず映画の冒頭。決闘に臨む二人の騎士と一人の女性の「戦闘服」に着替える準備シーンと共に決闘裁判を開始するあたっての文言が高らかに読み上げられます。そして馬に跨った騎士が正面からぶつかり合うぞ!という瞬間までを臨場感たっぷりに見せつけてきます。その後、裁判が開かれた経緯を3人の言い分の微妙なズレを巧みに描いた3幕構成を経て、肝心な決闘裁判シーンに戻ってくるといった仕組みになっています。

冒頭の部分で既に“何が始まるんだ?”というワクワクが感じられるので、いざ決闘シーンに入るとカタルシスが非常に大きいのです。所々に登場するバイオレンスな戦争シーンもアクセントになっているので、この見せ場に持っていくまでの流れには脱帽です。

でもちょっと待てよ?いくら構成が上手いからといって興奮している自分が居る事に疑問が生じたのです。

結局のところ名誉や権力に固執するプライド高い堅物男(カルージュ)VSちやほやされて調子に乗った強姦男(ル・グリ)の対決なので、どっちを応援するとかそうした気持ちはほとんどなく、正直どっちが死のうが決着さえが付けば良い状況。ただ、声を挙げた罪なき女性 マルグリットさんの命が掛かっているので、堅物男が勝たないと胸糞悪いって感じでした。

要するに「暴力」を高みの見物している自分に気付いたのです。これは決闘の様子をニヤニヤしながら見ていた国王や決闘場に群がっていた関係ない市民と同じレベル。まぁ映画だしそうなって当たり前かもしれないんですけど、こんな気持ちを感じたのは初めて。つくづく自分の心の中の醜さを実感させられました。

 

まとめ

以上が私の見解です。

重たく苦しい(個人的には特に陪審員?だかに質問攻めに合うマルグリットさんのシーンは最悪。デリカシーが無いってレベルじゃない気持ち悪さです)作品ではあるので「面白い」という言葉は似合いませんが、来年のアカデミー賞関連の賞レースに絡んでくるんじゃないかと思う力作。観る価値は大いにあります。

最後にちょっと話は変わりますが、本作を観に行った際の客層に若いカップルを見かけ、何だかそれには感心したところがありました。だって内容が内容ですからね。私だったら敬遠しちゃうなぁ。しかしこうしたセンシティブなテーマを共有し、語り合えるカップルはきっと上手くいくと思います。幸あれw!

ということでこの辺でお開きです。ありがとうございました。