キャプテン・シネマの奮闘記

映画についてを独断と偏見で語る超自己満足ブログです

第58回:映画『ノマドランド』感想と考察

今回は現在公開中の『ノマドランド』について語ろうと思います。毎度のことながら、ややネタバレ注意です。

 

 

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イントロダクション

タイトルにある「ノマド」とは「遊牧民」を意味する言葉で、各地を彷徨いながら短期の仕事を点々と行って食つなぐ高齢労働者を描いたロードムービー。各映画祭を賑わしている今年大注目の作品でしょう。

監督は『ザ・ライダー』(2017年公開)のクロエ・ジャオ。MCUの新作『エターナルズ』を手掛けることが決まっている監督さんです。でもどうなんでしょう?こうしたインディーズ系を撮っている監督がエンタメ色の強い、しかも天下のマーベル作品に挑むとどうなるか。面白い化学反応を期待してます。

そして主演はフランシス・マクド―マンド。『スリー・ビルボード』(2017年公開)で主演女優賞を獲得したのは記憶に新しいですが、私的にはなぜか、勘違いに勘違いが重なるスリラー『ブラッド・シンプル』(日本公開は1987年)のイメージが強い。そんなに細かくは覚えてないんだけどなぁーw。

 

典型的なロードムービーではない

まず初めに言っておくと私「ロードムービー」というジャンルにはとっても弱い。雄大な自然を彷徨いながら人生を見つめ直す過程は否応なしに心洗われます。私にこのような弱点を作り出した映画が、2008年公開の『イントゥ・ザ・ワイルド』でした。

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 一人の青年が自身の豊かな環境を捨て去り、アラスカを目指して旅をする作品。まぁ詳しくはその時が来たら語るとして、今作『ノマドランド』も同じような雰囲気を醸したロードムービーであったので、私の中では良作確定。ただ典型的なロードムービーとは決定的に異なる点が2つありました。

1つ目は、旅に出た理由が半強制的であること。『イントゥ・ザ・ワイルド』含めロードムービーの多くは、自ら決断をし旅立つことが多いです。しかし本作の主人公は違います。貧しい高齢女性である主人公は旦那を亡くしており、住んでいた街の閉鎖により家どころか街から追い出されてしまいます。もし車を持っていなかったら「ハウスレス」じゃなくてホントに「ホームレス」になっているところです。なので、いたたまれなさがあるんですよね。きっとこんな人生望んでなかっただろうと。

2つ目がリアリティーが色濃い点。史実を基にしているので当たり前ちゃ当たり前なんですけど、とある場所を通して様々な人々の人生が交錯していく様は、私の好きなNHKのドキュメンタリー番組『ドキュメント72時間』っぽく見えました(途中、頭の中でテーマソング流れ出したしw)。そう思ったのも納得で、エンドクレジットを見ているとご本人出演の方が何人かおり、実際にノマドとして生活をしている人が登場していたことが分かります。つまりドキュメンタリー寄りのフィクション映画という作風になっているのです。まぁそうなるともう少し映画的カタルシスがあっても良かったのかなぁと個人的には思いました。

よって、『イントゥ・ザ・ワイルド』に軍配。まぁ私自身が『イントゥ・ザ・ワイルド』の主人公と年齢と近く「共感」という情が湧くこともあるので、もう少し年を取って人生経験が豊かになると本作の方が好きにかもしれません。

 

家は心の中にある

 今作は名言の宝庫ではあるんですが、作品そのものを一番表している言葉はこの「家は心の中にある」だと思いました。割と序盤で出てくる言葉なんですよね。心の中にある家とは、言い方を変えればその人を形成する信念というか一本の軸だと思います。本作の主人公は、半強制的に始まったノマドとしての生活だけれども、様々な人の生き様に触れることで、リアルな形ではない「家」を手に入れたんだと感じました(ラストの行動もこれが理由なんじゃないかな)。どんなことがあってもブレない軸を持った人間というのは強い。静かだけど力強い生命力が宿った作品でした。

そんなことを感じたからでしょう。観終わった後ファストフード店で昼飯を食べていると、正面に座っていた人たちに目が留まりました。スーツに身を固めた女子大生が高そうな靴を履き自信に満ち溢れた若い男に投資のレクチャーを受けているご様子。ふと彼らが本作を観たら何を思うんだろうかと考えていました。人の人生なんて勝手だし、投資で儲けた金を元手に何か夢に挑戦しようとしている立派な人かもしれない。でもお金、お金と果てのない欲望を追いかけている事がものすごくちっぽけに見えてくるのではないかと思いました。心の中の家はお金で買えませんから。そんなことを考えながらポテトを黙々と頬張るボク。ふっw完全に酔ってるなぁー。

 

まとめ

以上が私の見解です。

うーん他にも書いたい気持ちが溜まっているのですが言葉で表現しにくいというか、色々と感じることが多くキャパオーバーしてる状態です。様々な俗っぽいものを超越した何とも言えない感情を沸き起こることでしょうし、これは観てもらうにつきるな。

一つ簡単に触れるとすると、食事をしているシーンが多く見られました。ファストフード店タロイモ?の出荷場で仕事をする場面もあります。これらは「生きる」を表現してるのだと思いました。「死にたくなきゃ食うしかない。食うんだったら美味い方が良い。」という『おくりびと』(2008年公開)に登場する名言通り、食べる行為は生きることに直接繋がっています。食べ物のシーンって生命を感じさせる重要なアイテムなんだと改めて思いました。

あとパンフレット売ってないのどうにかしてー。欲しかったんですけど。パンフが売られていない理由が製作会社の都合上みたいに書かれていたので、ディ〇ニーの買収関連ですかね。やっぱり障害になったよ。勘弁してくれ~。

はい、ということでこの辺でお開きです。ありがとうございました。