キャプテン・シネマの奮闘記

映画についてを独断と偏見で語る超自己満足ブログです

第57回:映画『ミナリ』感想と考察

今回は、現在公開中の『ミナリ』を語っていこうと思います。毎度のことなが少々ネタバレ注意です。

 

 

f:id:captaincinema:20210327214915j:image

 

イントロダクション

 A24とプランB という強力タッグで送るヒューマンドラマ。アメリカに渡り農業で成功を修めようと奮闘する韓国人家族が描かれます。今年の米国アカデミー賞でも注目を集めている作品の一つですね。

主演はTVドラマシリーズ『ウォーキング・デッド』のグレンで有名なスティーブン・ユァン。TWDねぇ…。めちゃめちゃドハマりしてたんですけど、シーズン8か9の途中だったかでリタイアしちゃいました。理由はこのグレンってキャラクターも含め好きなキャラクターが居なくなっていくことで、どんどん気持ちが覚めていったからでした。決定打は、“その人退場させたらダメじゃね?”って人物の退場だったんですけど。ゾンビ的要素もだいぶ薄まりつつあったし(そういや日テレでやってたゾンビドラマもゾンビ要素最初だけだったなぁー)、新たに加わるキャラクターにもあまり魅了されなかったし。

ってそこまで関係のないぼやきを言ってても仕方ないですね。いやーでも、あのグレンが今やオスカーノミネート俳優ですから何だか感慨深いです。

 

おばーちゃーん!

この作品、一番の魅力と言ったらおばあちゃん(ユン・ヨジョン)でしょう。映画開始しばらくは、アメリカに来たは良いけどトレーラーハウス暮らしの先行き不透明な状況から少しぎすぎすした家族が描かれていきます。雰囲気も何となく暗いので、気持ちが乗り切れずに観ていました。しかし韓国から呼び寄せたおばあちゃんの登場によりガラッと作品の色が変わります。

口は悪く、がさつで子供っぽいところのある花札大好きおばあちゃん。こんな性格なもんだから長男には「おばあちゃんらしくない」と言われ敬遠される始末。でもこの長男とのやり取りが至極。飾らない性格で接してくれるおばあちゃんへ次第に心を開いていく過程を見ていると温かい気持ちに包まれますし、ラストこの長男が夜闇で「おばーちゃーん!」と叫びながら取る行動にはノックアウトです。

エンドクレジットで「全てのおばあちゃんに捧ぐ」というのも納得の魅力あるキャラクターでした。

 

成功が全てなのか?

そんなおばあちゃん絡みのコミカルなシーンとは裏腹に物語を追うごとに様々な障壁が家族の前に立ちふさがります。それも結構容赦なく悪化を辿る一方で、正直に言ってしまうとハッピーエンドを迎えることなく映画は終了します。序盤の方で感じた何となく暗い雰囲気は、おばあちゃんの登場で誤魔化させれいただけだったのです(逆に言うとおばあちゃんのフィールド支配力が凄すぎるんだよw)。

しかし不思議なことに重い作品を観た後のしんみりした気持ちには成らず、どこか清々しい気持ちで映画館を後にすることが出来ました。それはなぜか?アメリカンドリームを夢見て移住したけど「成功」ではない他に大事な物を手に入れたように感じられたからでした。そりゃ仕事が上手くいって、富と地位を手に入れ贅沢な暮らしが出来るに越したことないですけど、現実はそう簡単に上手くいかないことの方が多いです。だからと言って必ず不幸になるとも限らないのが人生。それは「成功」以外にも幸せになる為のツールがあるからだと思います。

あんな結末だとしてもあの家族なら大丈夫です。きっと乗り越えていけるはずです。

 

まとめ

以上が私の見解です。

観る前は「移民」をテーマにした社会派ドラマだと思ってましたが、いやいや全然違いました。登場人物たち其々に魅力のある王道ヒューマンドラマ。この王道をハリウッド作品として白人種が中心ではないキャスティングで行ったことが諸々の賞を賑わせている理由かもしれませんね。

ちなみにタイトルの「ミナリ」は「セリ」を意味する言葉だそうです。どうでしょう。日本では春の七草ぐらいの印象しかないのか、都内のスーパーではあまりお見かけしませんね。ただ東北の方ではよく食べるっぽくて、東北に縁のある私はちょくちょく食べます。天ぷら、お浸し等どんなスタイルでも美味いですが、特に仙台市が名物のセリ鍋はいいっすよ。根の部分がクセになります。でもよく考えてみたら子供の頃はそんなに好きではなかったです。こうしたセリとか春菊みたいなちょっと独特な野菜の美味さに気付くと大人になった感じがします。

それではこの辺でお開きです。ありがとうございました。

 

※追伸

あっ映画の内容以外に珍しいことがあったので書いておきますか。

私が観に行った回はほぼ満員。そのせいでしょう。私の座っていた席が、老夫婦に挟まれるというオセロだったらひっくり返るしかない状況に陥ってしまったのです。最初は別々で入って来たので気付かなかったのですが、なぜ夫婦だと分かったのか?それは左に座っていた女性のアツい視線でした。最初は私の事を見て訝しがっているのだと思いましたよ。白髪頭が目立つ中、なんでこんなひょろい若造が居るんだと。でも違ってました。私の右に座る男性が何か行動するたびに、こちらを見てくるので“なるほど夫婦か…”と察しました。自分に向けられた視線じゃないことは一安心。しかし決して落ち着きはしませんでした。恐らく駆け込みで来て丁度私の両サイドが空いていたから席を取ったという経緯でしょう。

こんなシチュエーション初めてでした。夫婦仲が良いのはよろしい事ですけど、上映中は勘弁して。視線邪魔!ただ予告が流れてる段階で席を代わることを打診するなり配慮をすべきだったと少し後悔しました。こんなシチュエーションには金輪際巡り合いたくないですが、仮にあったら絶対代ってやろ。