キャプテン・シネマの奮闘記

映画についてを独断と偏見で語る超自己満足ブログです

第164回:2023年2月後半はエグいよ、2月下旬に観た映画をまとめて語る

さて2023年2月。私はある問題に直面しました。それは観に行きたい映画多すぎる問題。この頭痛の種を抱えた映画ファンはきっと多かった事でしょう。各配給会社さん、もうちょっと散らしてくれよぉ~。2月だけで計10本観に行ったのですが、とにかく有名フィルムメーカーたちの新作が集中。特に2月後半は激アツラインナップで追いつけず。だって『アントマン&ワスプ:クアントマニア』が観に行けてないですし。キャスリン・ニュートンを拝みたい気持ちはあるんですけど、内容にイマイチ惹かれず食指が他の作品ばかりに動いてしまうのでこれは観に行かない気がするぞ。MCUはフェイズ2の『アイアンマン3』からずっと映画館で観続けてきましたが、ついに袂を分かつ時が来たようです。その他『ベネデッタ』や『エゴイスト』、『呪呪呪』も気になっていましたが未見な状況となっています。

で、そんな大挙に押し寄せてくる作品たちを相手取っていると、感想を書く時間を削がれていく訳です。私自身、割とじっくり煮詰めて書くタイプなのでどう考えも追い付けません。(まぁそこまで長文で書くほどじゃないと判断すればTwitterにサクッと感想をほうりますが) というわけで今回は2月下旬に私が観た合計3作品+αをピックアップして適度に語っていこうと思います。毎度のことながら、ややネタバレ注意です。

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↑関係ないですがそろそろ桜の季節ということで。城と桜はジャパニーズ浪漫です。

 

『別れる決心』

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まずは韓国映画『別れる決心から』。私「一番好きな韓国映画は?」と聞かれれば『オールド・ボーイ』(2003年公開)と答えると思います。去年4Kリマスター版が劇場公開となったので観に行きましたけど、やっぱスゲーよ。その監督であるパク・チャヌクの新作なので、こりゃ優先して行かなくてはいけませんね。

男性が崖から転落死する事件が発生しその捜査する刑事(パク・ヘイル)は事故ではなく事件だと考える。被害者の妻である女性ソレ(タン・ウェイ)を疑い捜査を始めるも徐々にかヘソレに惹かれていき…というような典型的なファムファタルが登場するノワール映画のようなストーリーの作品。しかしそれは刑事である男性側の視点の話。

本作のポイントになってくるのが容疑者として疑われた女性側の視点で観てみるとどうなのかという事だと思います。中国から渡ってきた影響から上手く言葉が話せず(これが後々良い伏線に)とも心身に向き合ってくれる刑事に特別な思いが芽生えるも、それは許されない事だと分かっている といった切ない様子が感じられます。こうした今まで男性視点で描かれる事が多かったノワールサスペンスに女性視点を組み込んだというのが新鮮な部分だったかと思います。視点が変われば景色が変わる、これは同じく公開中の『逆転のトライアングル』もそうです。

視線と息つがいの交錯といったエロティシズムな演出もめちゃくちゃ冴えてましたね。パク・チャヌクらしい変態性が上品なエロティックサスペンスに昇華した印象。こういう演出が出来るのはやっぱりレベル高いよ。あまり詳しくないですけどヒッチコック作品っぽい気もしました。

ちなみにミステリアスな容疑者を演じた女優さん、どっかで見た気がすると思ったら『ロング・デイズ・ジャーニー この夜の涯てへ』(2020年公開)でした。途中から3Dに変わる不思議な映画。あれ以来3D映画って観てない気がするな。

↓『オールド・ボーイ』についてはこちら

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アラビアンナイト 三千年の願い』

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お次は、我らが元帥ジョージ・ミラー監督の新作です。ジョージ・ミラーと言えば私のオールタイムベスト映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015年公開)の監督。ホントあの映画は時代を変えたと思いますよ。昨今のシスターフッド系映画に弾みを付けた一本だと思いますし、高水準のアクションで観客をねじ伏せるというスタイルでいえば、去年の『トップガン マーベリック』も“怒デス”が無ければ存在していただろうか?…なんて語っていると本論に進まないw。

本作ではそんな圧倒的アクションは影を潜めてほぼホテルの一室で物語が進みます。原作はイギリスの作家A・S・バイアットの短編集「The Djinn in the Nightingale's Eye」でイスラムの説話集「アラビアンナイト」をモチーフとしているようです。

3つの願い事を叶えないと自由になれない魔人(イドリス・エルバ)が出会ったのは無欲な独身貴族な文学者(ティルダ・スウィントン)。魔人はどうにか願いを引き出そうと且つ暫くぶりの孤独からの解放もあってか3000年に渡る身の上話を始めます。

この魔人の長い長い旅路を聞いていると、人を救うのはきっと夢や欲望が叶う事ではなくて「物語」ではないかと思えてきます。ジョージ・ミラー作品はよく『千の顔を持つ英雄』という古今東西の神話や民話に登場する「英雄」たちの冒険を比較した古典的名著の影響があると言われますが、本作でもまさにそうした神話的要素もあったと思います。どうして人は物語を語り継ぐのか?どうしてヒーローを物語に求めるのか?

正直もっとぶっ飛んだシーンやキャラクターが欲しいところでしたが、改めて「物語」の意義を考えさせられる大人のおとぎ話でした。

ちなみに3つ願い事、私なら一生贅沢三昧出来る大金とどんな人間をも屈服させる権力はマストとしてあと一つなんですよねぇ。金と権力されありゃ舐められる事もないし大抵の事は出来るよな、ってこの2つの時点で我ながらクソ人間ですわw。

『エンパイア・オブ・ライト』

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ラストは賞レースの常連サム・メンデス監督の新作です。サム・メンデス監督といえばまぁ良作が多いこと。『アメリカン・ビューティー』(1999年公開)や『007/スカイフォール』(2012年公開)。個人的には『ロード・トゥ・パーディション』(2002年公開)が好き。最近観た『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』(2008年公開)も面白かったな。そんな監督が描くのは80年代イギリスのとある海辺街にある映画館です。

とある海辺街にある映画館 エンパイア劇場で働くヒラリー(オリビア・コールマン)は、ある過去のせいで心に闇を抱えていた。そんな彼女の前に映画館で働き始めた青年スティーヴン(マイケル・ウォード)が現れる。人種差別に夢を阻まれてきた彼とヒラリーは少しずつ心を通わせていきます。

映画の暖かい光がそっと人々を照らす人生リスタートの物語。どんなに辛く過酷な現実だって、映画館のスクリーンに映る光は平等に人々を照らします。いや~さっきの「物語」もそうですが、「映画館の光」にどれだけ私も救われきたことか。あの光を浴びている時はどんな事からも解放されている気がします。

そんな光を撮影監督の巨匠 ロジャー・ディーキンス&サム・メンデスの安定タッグがカメラに収め、品のある映像に仕上げています。どのシーンも贅沢さが匂い立ってるんですよね。とくに年越しの花火の眺めるシーンは美しかった。

なお本作を観ていて初めて知った事がありました。フィルムで撮られていた時期の作品を観ていると、画面の上の方に黒い丸が一瞬表示される事がありますよね。あれは劇場上映時のフィルムの入れ替えタイミングなんですね、知らんかったなー、単なるノイズだと思ってたよ。今後は気にして観てみます。

ロードムービー2連打

ちなみに2月は私の大好物ジャンルであるロードムービーが2本ありました。まぁこちらはTwitterでざっくり感想を書いたので繰り返しになりますが、一応まとめとして載せておきます。

『コンパートメントNo.6』

日本じゃほとんど見かけないコンパートメント席を中心としたロードムービー、ってか寝台列車で見知らぬ男女相席はちょっとな…いや同姓だって。台詞等で説明し過ぎない行間豊かな印象でラストがなかなか味わい深かったです。ペトログリフはどんなだったかはもう関係ないか、旅の恥は掻き捨てですね。

『ボーンズアンドオール』

人肉を欲する若者たちの恋愛ロードムービー。しかしカニバリズム設定が上手く機能していないというか必要性が感じられませんでした。特に後半はだいぶその設定が薄まった気がしました。ロードムービーの見応えとしてもイマイチ。不気味なカニバリズムの大先輩 マーク・ライランス登場シーンは面白かったんですけどね。

まとめ

以上3作品+αの雑記でした。

3月もスピルバーグの新作『フェイブルマンズ』にA24が本気のエンタメを撮ったっぽい『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が1週目に(というか今日から公開か)控えていますし、個人的に期待しているKingGnuの井口理が初主演を務める『ひとりぼっちじゃない』も公開されます。まだまだゆっくりしている暇のない戦いが続きそうだというところでお開きです。ありがとうございました。

↓ここでは語っていない2月公開作はこちら。

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