キャプテン・シネマの奮闘記

映画についてを独断と偏見で語る超自己満足ブログです

第161回:映画『バビロン』感想と考察

今回は現在公開中の映画『バビロン』を語っていこうと思います。毎度のことながら、ややネタバレ注意です。

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↑何だろう、007っぽくないですか?

 

イントロダクション

1920年代のハリウッド黄金時代の無声から有声へ映画変わる過渡期を舞台に4人男女の栄枯盛衰を描いた作品。

乱痴気騒ぎのカオスなパーティー会場。夢を抱いてメキシコからハリウッドへやって来た青年 マニー(ディエゴ・カルバ)とそこで意気投合した女優志望のネリー(マーゴット・ロビー)、そしてパーティ会場でトランペットを演奏していたシドニー(ジョバン・アデポ)の運命はパーティ会場の主役で映画業界を牽引してきた大物スター ジャック(ブラッド・ピット)を中心に動いていく。各々が業界の荒波に揉まれる中、やがてサイレントからトーキー映画への変化が業界に押し寄せる。

監督はデイミアン・チャゼル。日本でも話題となった2016年公開の『ラ・ラ・ランド』で米国アカデミー賞 監督賞を最年少で受賞した秀才。何でもハーバード大学出身なんだとか。ちなみに私にとって『ラ・ラ・ランド』はミュージカル映画を観るきっかけになった作品です。それまでミュージカル映画はノータッチでしたが、監督の前作『セッション』(2014年公開)が面白かったという理由で観に行ったところストライクゾーン。『ラ・ラ・ランド』を観ていなければその後『雨に唄えば』(1952年公開)や『ジャージー・ボーイズ』(2014年公開)に出会えてなかったわけですから有難き一本です。

4人が主人公の群像劇といったところですが、やはり目立つのはマーゴット・ロビーでしょう。今回のキャラクターを観ていていると『アイ・トーニャ』(2017年公開)を思い出されるものがありました。あのぶっ飛んだ感じはなかなか他の女優さんで見ることのない希少価値。今年はバービー人形の実写もあるんですよね。監督はグレタ・カーヴィグだしちょっと面白そうだけど一体どんな内容になるんだ。

なお、地味にサマラ・ウィーヴィング(2019年公開『レディ・オア・ノット』)やキャサリン・ウォーターストーン(2017年公開『エイリアン・コヴェナント』)も出演しています。使い方が贅沢。

映画は見世物

こちらの作品、ミュージカル映画の傑作『雨に唄えば』で描かれなかった人たちにスポットライトを当てたいわば『雨に唄えば』のアナザーストーリーといった感じの内容。なので随所に『雨に唄えば』へのオマージュらしいシーンがあります。しかしそれだけに留まらずあらゆる作品を感じさせます。

恐らく本作ベースとなっているのはポール・トーマス・アンダーソンの『ブギーナイツ』(1997年公開)です。技術革新による業界の栄枯盛衰を描く流れや PTS作品らしい対象人物の背を追う形で様々な状況を魅せる長回しを多用しているのはそのものです。ただ、ストーリーの語り口はどこかスコセッシやタランティーノの作風を感じさせるスタイル。そして極み付けのラストはキューブリックの『2001年宇宙の旅』(1968年公開)&『時計仕掛けのオレンジ』(1971年公開)の合わせ技といったところでした。こんな感じで往年のフィルムメーカーたちへのオマージュがふんだん盛り込まれた高カロリームービー。正直これが色彩も相まってちょっとクドい。オマージュに関してはクドいというか、私みたいな素人でも察してしまうあからさま感があります。“どうだ!俺だってこんな映画撮れるんだぜぇ!”というチャゼル監督の野心が過剰に感じられます。きっとこの辺が鼻につく人もいるでしょう。でも私は嫌いじゃないです。寧ろそれはそれで良いじゃん。

そこで改めて感じたのが、結局映画は見世物ってことです。冒頭、象のう○ちドバーで始まりそっからの下品で醜い乱痴気騒ぎのカオスパーティで私は勝利を確信しました。“おやっ?チャゼルさん実はこちら側の人間なんだ”と。

“芸術性だとか高尚ぶったって観てもらえねんだよ!”とブラピが演じるサイレント映画のスターの叫ぶシーンもありますが、まさにその通りだと思います。コンテンツが溢れかえり、どんな作品が話題になるかも分からない今の時代においては尚更。映画が斜陽化しつつあるのは世間のどっかに「映画=芸術」の認識が根付いているからかもしれません。もっとカジュアルに観ましょうよ。

しかしそんな見世物を作る過程において多くの人々が犠牲になっているわけですね。打ち砕かれた夢や差別との戦い、それによって無駄に流れたかもしれない血と汗が堆積した上に成り立ってるのです。それを私のような人間が観てこうやってピーチク語って消費してんだから酷いもんだw。アプローチの仕方は違えど去年公開の『NOPE/ノープ』と同じメッセージが込められていたのかもしれません。観る側には潜在的な加害性があるのだと。

↓『NOPE/ノープ』についてはこちら。

captaincinema.hatenablog.com

まとめ

以上が私の見解です。

賛否の分かれそうなサイケでエネルギッシュな作品。こういう景気の良い映画は何時でもウェルカムです。

また役者陣各々がのびのびと仕事をしているように見えたのも良かったです。とくにブラッド・ピットの哀愁漂う感じにグッと来ました。『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019年公開)や『ブレッド・トレイン』(2022年公開)といい何だかここ最近のブラピはより脂が乗ったように思えます。ちょっとスルーしてた『アド・アストラ』(2019年公開)観てみよ。

ということでこの辺でお開きです。ありがとうございました。