キャプテン・シネマの奮闘記

映画についてを独断と偏見で語る超自己満足ブログです

第158回:映画『ノースマン 導かれし復讐者』感想と考察

今回は現在公開中の映画『ノースマン 導かれし復讐者』を語っていこうと思います。毎度のことながら、ややネタバレ注意です。

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イントロダクション

北欧を舞台に描かれる王の血を継ぐ男の壮大な復讐劇。

9世紀のとある島国。叔父のフィヨルニル(クレス・バンク)によって父であるオーヴァンディル王(イーサン・ホーク)を殺され、母(ニコール・キッドマン)を奪われ1人祖国を脱出した主人公のアムレート(アレクサンダー・スカルスガルド)。父の復讐と母の救出を誓いながらもアムレートはバイキングの一員となって戦闘に明け暮れていた。そんな中、預言者との出会いによって誓いを思い出した彼は叔父が国を追われ農場を営んでいることを知り、奴隷に扮してアイスランドへ向かう。

監督はロバート・エガース。『ウィッチ』(2015年公開)と『ライトハウス』(2019年公開)に続く長編3作目。前2作とも閉塞感漂うシチュエーションを扱っていましたが、本作から急に視界が開けたかのような北欧の大自然が舞台です。噂によると次回作は兼ねてより製作を希望している『吸血鬼ノスフェラトゥ』(1922年公開)のリメイクらしいですね。主演は今作の主役であるアレクサンダー・スカルスガルドの弟 ビル・スカルスガルドが出演するとか。

そうなると似たようなメンツをキャスティングするのがエガース監督作品の特徴に見えてきます。本作には『ウィッチ』に出演したアニャ・テイラー=ジョイとラフル・アイネソン。そして『ライトハウス』に出演したウィレム・デフォーが出ています。これもうエガース組じゃんか。

愛より敵討ちを

実は私、本作を去年開催された東京国際映画祭のガラ・セレクションで鑑賞していました。ただあの時は荒々しくも神秘的な世界観に圧倒され、やや思考停止をしてしまったので改めての鑑賞という事にしました。

改めて観てみると過去の時代に舞台にしつつも扱っているテーマは、ここ最近の作品のトレンド「男らしさ」がもたらす弊害といったところだと感じました。まぁ思えばエガース監督作品の『ウィッチ』にも『ライトハウス』にもその要素はあったかなと思いますが今回はより顕著です。主人公は小さい頃からお父ちゃんから“男ってのは戦いで死ぬ事が誉だ!愛より敵討ちじゃ!”ってマッスル英才教育を叩き込まれてます。領土を取り合う戦争の絶えない時代はどの国でもそうなりがちなんでしょうが(現に太平洋戦争時の日本がそうでしたし)、名誉の死である戦死を遂げた魂は英雄の神殿(ヴァルハラ)に送られるというのは2015年公開『マッド・マックス怒りのデス・ロード』の人を使い捨ての資源としか見なしていない悪党、イモ―タン・ジョーと言ってる事が同じでした。

それに主人公が奴隷として使い走りにされてる場面も意外と現代的というか。なかなか渋い条件で働かされ、ちょっと目に止まる事をすると少しだけ条件が良くなる。しかし支配階級から逃げる事は出来ずな状態。何だか今の企業体制となんら変わらないように見えてきます。

ちなみにエガース監督は人間が動物へ抱くスピリチュアルさを描く事に興味があるのでしょうね。『ウィッチ』ではヤギ、『ライトハウス』ではカモメ、そして本作ではカラス&雌狐が物語を進展させる一つのキーポイントになっていました。

東京国際映画祭についてはこちら。

captaincinema.hatenablog.com

まとめ

以上が私の見解です。

少々話運びがスケールが大きいわりに鈍重な気もしましたが、映画らしい贅沢なシーンが多い作品。なるべくデカいスクリーンで観たい一品です。特に私が一番好きなシーンは、バイキングの皆さんによるムキムキキャンプファイヤーのシーン。だって炎を囲んで野性マッチョたちが雄叫びあげながら踊ってるんですよ。破壊力抜群の画力。最高以外に言うことないでしょw

ということでこの辺でお開きです。ありがとうございました。