キャプテン・シネマの奮闘記

映画についてを独断と偏見で語る超自己満足ブログです

第127回:映画『神は見返りを求める』感想と考察

今回は現在公開中の映画『神は見返りを求める』を語っていこうと思います。毎度のことながら、ややネタバレ注意です。

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イントロダクション

小学生のなりたい職業ランキングでも登場するようになったYouTuberを題材にしたヒューマンドラマ、いや歪なラブストーリー。ちなみに私、いわゆるYouTuberの方々が作成された動画はほとんど見た事のない人間。YouTubeといったらほぼ音楽を聞くのにしか使ってないですし。そんな無知なせいもあってか炎上だの暴露だのあまり良い印象は持っていないのですが。

イベント会社に勤める主人公の田母神(ムロツヨシ)は、合コンで売れないYouTuber ゆりちゃん(岸井ゆきの)と出会う。再生回数の少なさや心ないコメントに頭を悩ます姿を見過ごす事が出来ない田母神は彼女の動画作成を無償で手伝い始める。人気が出ないながらも二人の関係は良好になっていた矢先、ある事がきっかけでその関係に亀裂が生じる。

監督は𠮷田佳輔。去年公開の『空白』や『ヒメアノ~ル』(2016年公開)など、エグいヒューマンドラマを撮ったらここ最近の映画監督では抜きん出ている方だと思います。毎回ほんとHP削られますよ。去年は泥臭さが胸を打つボクシング映画『BLUE/ブルー』もありました。あっそういえば主演のムロツヨシは『ヒメアノ~ル』に出てましたね。清掃会社のちょっとヤバい先輩でしたが、もっとヤバい奴にキンのボールを吹き飛ばされる不憫な役どころでした。

承認欲求の成れの果て

本作の主人公はとにかく純粋で良い奴。良い奴過ぎるせいで徐々にダークサイドへ堕ちていく姿を観ていると、真面目な奴ほどバカをみるってのは正しいのかもと思わざる負えなくなってきます。そんな彼を陥れる原因が「承認欲求」。彼の周りには承認欲求に取り憑かれた人々が蔓延ります。恩を仇で返す勘違い女、面白ければ何をやっても良いと思っている売れっ子YouTuber、お高くとまったアートディレクター、モラルの欠片もないYouTuberキッズ。特に悪質なのが若葉竜也演じる八方美人に人の悪口を流布する会社の後輩。罪の意識は毛頭なく、自分は人を見る力があるとか言い出す始末。こわっ、こういう人居るんだろうなぁ。

勿論誰かに認められたいと思う気持ち自体が悪い訳ではないですし、どんな人にもある程度存在する感情の一つです。しかしそれがあまりにも肥大化しているのが現代だと思います。その導火線はSNSYouTubeといった誰もが自分からコンテンツを発信出来るツールが発達したからでしょう。本作中盤の印象深いファイトシーンに登場する自撮り棒なんてのもまさにその象徴的存在です。

まぁただ主人公も関係に亀裂が生じた際にあれだけジェラシーを爆破させていたのを観ると、恋心は去ることながら心のどっかに支配欲みたいのがあったのかもしれません。それに見返りを求めないってのも建前だった感はあるし。あぁ清廉潔白な人間は何処に居ませんね。卑怯で汚くてバカバカしい、ある意味それが人間らしさでもあるような気がします。

まとめ

以上が私の見解です。

本作を実際のYouTuberの方々が観たらどう思うのか気になりました。描き方としてはかなり批判的。一部肯定的とも取れる台詞も登場しますが、やはりモラルの在り方を呈するような騒動が相次いで取り沙汰される状況が反映されている印象です。真面目に取り組んでいる人も居るでしょうし、企画から撮影、編集まで手掛けるなんて相当大変だろうとは思います。ただ社会的にみると不信感が拭い切れていないのが実状といったところなのでしょうか…。

ということでこの辺でお開きです。ありがとうございました。