キャプテン・シネマの奮闘記

映画についてを独断と偏見で語る超自己満足ブログです

第126回:映画『ストーリー・オブ・フィルム 111の映画旅行』感想と考察

はい、久方ぶりとなりましたが、今回は現在公開中の(と言っても都内は新宿シネマカリテぐらい?)映画『ストーリー・オブ・フィルム 111の映画旅行』を語っていこうと思います。毎度のことながら、ややネタバレ注意。いやそんなにネタバレらいしネタバレはないかも。

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イントロダクション

2011年にイギリスで放送されたTVシリーズ「The Story of Film」がきっかけで制作されたフィルムドキュメンタリー。日本でも話題となった『アナと雪の女王』(2013年公開)や『パラサイト/半地下の家族』(2019年公開)、『ミッドサマー』(2019年公開)など2010年~2021年の11年間に公開された世界各国の作品をメインに様々な角度から「映画」についてが紐解かれていく。

監督はマーク・カンザス。本作のナレーションも務めています。この方、今までに観てきた映画は何と16000本を超えるらしい映画オタクの権現です。某不倫で干されたコメンテーターみたいに2画面同時視聴とかはしてないだろうと思いますが、1万タイトルも超えればもはや映画の生き字引、歩く辞書でしょう。でも言われてみれば私自身、今までの鑑賞タイトル数はトータル何本になるんでしょうか。2~3千タイトルは超えてると思うけどなぁ。

映画=睡眠

本ドキュメンタリー、映画とは眠りにつくことであるという定義を軸に様々な映画が紹介されていきます。映画紹介とはあまり関係のない人が目を閉じる動作が度々シーンとして織り込まれているのもその象徴と言えます。

確かにこの例えは私も理解出来ます。私自身、映画とは「現実逃避の夢」だと考えていますので。自分の人生ではきっと経験しない事象や味わわない感情を目の当たりにする事で、自己を消失させる夢が映画。この夢には良い/悪いもありますし、時に「共感」や「懐古」を味わう事もあります。それも全部ひっくるめて鑑賞前の自分とは異なる“何か”になった時間を過ごすことが出来ると思うのです。

また「寝たら嫌なことが忘れられる」や「寝て気持ちをリセットする」とか言うのと同じ感覚になれるのも類似点だと思います。長時間暗い中で物語に浸る事で一時的にでも諸々の環境や状況から離れることが出来るそんな現実逃避が人間には必要なんです。でなきゃね、やってけないっすよ。

「邦画はつまらない」と思っている人たちへ

あまり本編そのものとは関係がありませんが、少し前にSNS上でよく見かけた「邦画はつまらない」という話題を引き合いにちょっと思ったことを語ってみます。

残念ながら本ドキュメンタリーで紹介される日本の映画は『万引き家族』(2018年公開)とその関連として出される『麦秋』(1951年公開)のみ。勿論ここで挙げられる映画が全てではありませんが、フランスやアメリカと映画の歴史年数がそう変わらないはずの日本がこの有様。パンプレットに載っている監督のインタビューで挙がる日本映画のタイトルに10年代や20年代に公開された作品はありません。つまりこの2010年~2021年の11年の間にどの国の人が観ても面白いと思える日本映画があまり生まれていないのかもしれません。

しかしこれが国内の「邦画はつまらない」風潮とリンクしているのかと考えてみるとちょっと腑に落ちません。国外で注目されてなくたって充分面白い映画はあったと思っているので。今年だけでも例えば『さがす』や『ちょっと思い出しただけ』、『流浪の月』なんかはなかなか良かったと思います。特に個人的に『さがす』は大傑作だと思いましたよ。まぁ作品の好き嫌いはあくまで個人的な嗜好になりますが、果たしてこれらの面白い作品がどれだけ世間的に知られているかによるんじゃないかと思います。面白い作品が認知されておらず、逆にそうでもない作品が目立っている可能性が大いにある気がしてなりません。

ぶっちゃけ私も以前はつまらなさそうな作品が邦画には多いなと思ってました。しかしコロナ禍で洋画の公開が減ったタイミングでミニシアター系列で公開されている邦画を中心に観に行く機会が増えた(結局映画館が好きなので)ことで、今まで自分のテリトリーではないと思っていたジャンルに面白い作品が転がってるもんだと気づかされました。ちょっと視野を広げて観る作品変えてみると意外な「面白い」に出会えるのが映画なんですよね。まぁ未だにシネコンで見かける邦画にはほとんど心を動かさせることがないんですがw。予告の作り方にも問題はある気がするんだよなぁ…。

まとめ

以上が私の見解です。

正直、本気で映画が好きな人じゃないと苦行かもしれないドキュメンタリーです。なんせ淡々と映画か紹介されていくのが3時間近く続きますからね。知らない映画やあまり興味のないジャンルはウトウトしながら観るのが正解かもしれません。だって映画は睡眠ですから。私自身も所々“ぽかーん”でしたし。

ただ学びがあるのは間違いないですし、観終わった後はとりあえず映画が観たくなるはずです。個人的には「肉体」を観点として観るのは発見でした。まさか『ムーンライト』(2016年公開)や『ゼロ・グラビティ』(2013年公開)にその観点があるなんて気付かなかった。それと『マッド・マックス怒りのデスロード』(2015年公開)が如何に素晴らしいアクション映画であるかの再認識が出来たのも嬉しいポイント。つい先日、日本公開から7年(2015年6月20日だからね)経ちましたが、やっぱりあれは歴史が動いた瞬間だったんだろう。

まぁともあれ映画オタクを自負する、あるいは志す同胞の方々は挑戦してみてはいかがでしょうか。ということでこの辺でお開きです。ありがとうございました。