キャプテン・シネマの奮闘記

映画についてを独断と偏見で語る超自己満足ブログです

第47回:映画『新感染半島/ファイナルステージ』の感想と考察 マッドマックス純度、濃っ!

 今年1発目に語るのは韓国産ゾンビ映画です。前々から結構楽しみにしてた作品。2021年の映画館始めですし、期待値爆アゲで観て来ました。

※今回はがっつりネタバレしているので、ご注意を。

 

f:id:captaincinema:20210104145725j:image

 ↑こういう図々しいくらにドーン!とタイトルが書かれたポスター、大好きです。

 

 

イントロダクション

特急列車という限定された空間で繰り広げるゾンビとの攻防と個人主義が招く2極化による悲劇が合わさりゾンビ映画の傑作に踊り出た2016年公開『新感染/ファイナルエクスプレス』の続編。続編があるとは想像してませんでした。

舞台は前作から4年後。家族を守ることが出来なかった元軍人の男(カン・ドンウォン)。亡命先の台湾でひっそりと暮らす彼がなんだか如何わしいビジネスをやってるおっさんから、金を大量に積んだトラックをゾンビ渦巻く国家崩壊した韓国から輸送するように命じられます。義理の兄弟を始めとした仲間と共に挑むも…。

そういえは邦題について言いたかった。本作の原題って確か「半島」なんですよね。前作でオヤジギャグみたいな題名を付けるから(前作の原題は「プサン行き」)続編と分かるように『新感染半島』なんて、かなり頑張ったタイトルになっちゃってます。前作の邦題付けた人もまさか続編が出るとは思ってなかったのかもしれませんね。

 

このご時世で観るにはタイムリーな序盤

まず注目したのが序盤で描かれる内容です。

ゾンビウイルスの蔓延により1日で国家崩壊をした韓国。そこから脱出を図る人々は隣国や欧米諸国を頼ります。しかし、ウイルスの脅威に国を晒すことは出来ないとし、日本を始め多くの国が逃げてきた韓国人の受け入れを拒否する内容が語られます。このような、目に見えない脅威がグローバリズムを遮断してしまっているのは今の世界情勢も同じです。

また最近ではあまり聞かなくなりましたが、欧米ではアジア人というだけで、ウイルスを持っていると疑われ差別を受けることがありましたし、日本国内では「県外ナンバー狩り」なんて現象も発生しました。そんなウイルスが引き起こす差別という社会の病理を感じられるシーンも今作にはあります。

たまたまタイムリーな時期にぶつかってしまっただけかと思いますが、胸の痛む序盤となっていました。

 

マッドマックス純度

今作の見どころは、何と言っても2015年公開『マッド・マックス怒りのデスロード』への愛が溢れている点だと思います。“怒りデス”オタクである私が観たところ大きく3つの点での影響を伺い知ることが出来ました。

 

1.カーチェイスシーン

まず分かりやすくオマージュが効いているシーンは、映画の一番の見せ場でもあるカーチェイスです。改造した車でゾンビの群れをボウリングのピンの如く吹っ飛ばしながら荒廃した街中を爆走。このシチュエーションだけでテンション挙がります。おまけにタイヤの軸にスパイクのようなものを付けた車なんて明らかにヤマアラシですし、デカい照明を焚いて夜道を駆ける姿は、まるで武器将軍。嬉しいオプション満載です。

ただし、“怒りデス”とは違いCGに頼りきっている点はちょっと残念でしたかね。やっぱりリアルな車がぶっ壊れる方が迫力があると個人的には思います。

 

2.主人公の設定

2つ目は、主人公の人物設定。これは、明らかにマックスと同じ境遇を背負ってます。あらすじでもちょっと触れましたが、家族を救うことが出来ずに生き残ったという経緯があります。そのこと根に持っているというか、払拭出来ずにいるわけです。この「救えなかった」という思いが原動力となって多くの困難に立ち向かっていくキャラクターなのです。決して純然たるヒーローではないところが共通していると思います。比較的無口なんだけどやる時はやる男という点も似てますね。

似ていない部分を挙げるなら雰囲気、というか見た目です。マックスの野性味溢れる一匹狼という雰囲気はなく、端正な顔付きをした根暗といった印象です。いや、貶してるわけじゃないですよ。どっしりとした銃の構え方とか、すげー良かったし。

 

3.女性陣の奮闘

3つ目は女性陣の活躍です。中盤ぐらいから『ワイルドスピード』よろしくディストピア界のDK(ドリフトキング)と化した長女とラジコンカーを使って絶妙なフォローをする次女を引き連れたお母さんが登場。このお母さんのキリっとした目が格好いい。ライフル(あれはK2か?)を構えた姿はさながらフュリオサ隊長です。主人公はこの女性陣3人とおまけのおじさんと共にゾンビと狂人の世界からの脱出を図ることになるのです。ついでにラストで駆けつけてくる救助隊のボスも女性。

このように女性陣が奮闘をし道を切り開いていくのは、怒デスと同じ様相を呈しています。世紀末を迎えた世界では、圧倒的に女性の方が頼れるのかもしれませんね。まぁ世紀末じゃなくても男はしょーもないかw

 

※金網デスマッチ

あともう一つ。中盤に登場する捕らえた人々をゾンビと対峙させる闘技場。あれはシリーズ3作目の『マッドマックス/サンダードーム』を意識しているような気もしてきますが、あんな風な闘技場は様々な映画に登場するので微妙なとこです。意識してんじゃないかと信じてます。

 

まとめ

以上、かなりマッドマックスまみれになってしまいました。

本作に関してはラストの感動演出を盛り過ぎてる割には、全体的なドラマ要素は薄かったり、悪役のクソっぷりは良いけどカリスマ性に欠けていたり、そもそも「ゾンビ」らしい恐怖があまりないなど言いたいことは色々あります。

しかし5年という短い歳月を経て、異国の地の作品へも影響力を与えている『マッドマックス怒りのデスロード』の素晴らしさを改めて痛感する良い機会でしたし、新年一発目としては丁度良いテンションで充分に楽しめる作品でした。

ということでこの辺でお開きです。ありがとうございました。