キャプテン・シネマの奮闘記

映画についてを独断と偏見で語る超自己満足ブログです

第139回:映画『沈黙のパレード』感想と考察 ※ドラマ「ガリレオ」シリーズについても

今回は現在公開中の映画『沈黙のパレード』について語っていこうと思います。毎度のことながら、ややネタバレ注意です。

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イントロダクション

東野圭吾の人気シリーズ「ガリレオ」の9作目にあたる同名小説の映画化。「ガリレオ」はドラマシリーズと劇場版2回の映像化がされています。ちなみに私「ガリレオ」シリーズの原作小説に関しては『容疑者Xの献身』は多分2回読み、『探偵ガリレオ』だかを随分前に読んだ程度。今作は真っ新な状態で観ました。

数年前から行方不明だったある女子高生が遺体となって発見された。警視庁の内海(柴咲コウ)によると、容疑者は物理学者 湯川(福山雅治)の大学時代の同期である草薙(北村一輝)が以前に担当した少女殺害事件で容疑を掛けられたものの、黙秘を貫いた事で無罪となった男(村上淳)だった。男は今回も黙秘を貫き証拠不十分として釈放。女子高生が住んでいた街に戻って来るが、夏祭りの日に変死体となって発見される。

福山雅治柴咲コウ北村一輝のお馴染みのメンバーに加え、今作では飯尾和樹戸田菜穂、𠮷田羊、岡山天音檀れい椎名桔平などが出演。さすがフジテレビの映画ってメンツです。グランドホテル形式の邦画大作といえばフジテレビなイメージは私だけかな?

※ドラマシリーズについて

前2作品の映画について語るのもありだったのですが(とくに2008年公開『容疑者Xの献身』は傑作だからね)、丁度映画公開を記念してか平日の昼に再放送しているドラマを改めて見たのでその話でもしようかと思います。なんせ私、とにかくこのドラマのファンで再放送があるとつい見てしまいます。

第1シーズン目が2007年、第2シーズン目は2013年に放送。先日放送された「禁断の魔術」も含めスペシャルドラマも幾つか放送されている結構ご長寿なシリーズです。基本的には帝都大理工学部物理学科の准教授 湯川学(福山雅治)にもとに新人刑事(第1シーズンは柴咲コウ、第2シーズンは吉高由里子)が事件の際に起きた超常現象の解明を依頼しに来るという1話完結型のドラマ。私が思う面白さは主に3つあります。

1.実証実験という名の種明かしの面白さ

恐らくこのシリーズの一番の醍醐味です。幽体離脱やテレポーテーション、念力といった胡散臭さたっぷりの現象を天才物理学者が鮮やかに立証していきます。特に実証実験を行う種明かしのシーンは好奇心と感心がピークに。何回見てもその巧妙さに唸らされます。これの影響で理系を志した人もきっと居たでしょう(なぜ俺は目指さなかったのか…)。なので、どちらかと言えば「犯人は誰?」よりも「なぜこんな事が起きたのか?」にフォーカスした稀有なミステリー作品になっていると思います。“現象には必ず理由がある”か、なるほどね。

2.湯川学というキャラの強さ

数あるキメ台詞や唐突に数式を書き殴って事件を解決に導く必殺奥義、頭脳明晰が故の変人キャラが織りなす会話といったキャラの強さがドラマの下支えになっているのは間違いありません。

しかもただの天才ではなく、スーツを着こなすイケメンっぷり。そりゃ福山雅治だし、結局一番格好いい男ってスーツがサラッと着こなせるだと思いますね。おまけにスカッシュやアーチェリーといった様々なスポーツもこなしてしまう身体能力も。それを物理の法則だなんだって考えながらやっているので、そこらの筋肉バ○とは次元が違います。天は二物を与えずは嘘のようなハイスペックっぷり。もはや神の領域です。

3.エンドロールの満足感

ここ最近の地上波のTVドラマで見ることがめっきり減ったエンドロール。これがあるのとないのとでは満足度が変わる気がます。しかもKOH+なるドラマの主役を張る福山雅治柴咲コウが、エンドロール曲を手掛けているという贅沢さがあります。

オープニング或いはエンドクレジットって意外とお金が掛かるみたいな話は耳にした事があります。まぁある種のミュージックビデオですし。視聴率の低迷で今のTV局にはその体力がないのかもしれませんが、出来れば制作して欲しいですね。

心苦しき沈黙の謎

さて、そろそろ本題に入りましょう。

相変わらずな湯川のキャラの強さや二転三転する真相、コロナ禍で遠ざかっていたダイナミックな祭囃子の喧騒を味わうことが出来きたりと面白いのは確かですが、感動するというより心苦しくなる作品でした。

個人的には同じく東野圭吾が手掛けた小説『さまよう刃』が頭を過りました。この『さまよう刃』では少年法が、そして今作は黙秘権が加害者へ断罪の機会を与えず、遺族たちを苦しめる様が描かれます。特に今作では遺族の苦しみ以上に北村一輝演じる犯人を逮捕する事が出来なかった刑事 草薙の苦悩が密に描かれていた印象です。だってあんな苦虫を噛み潰したような顔ばっかりの草薙さんは見たことないよ。冒頭で盛大にゲロってたし、PTSD予備軍って感じです。

このやるせないもどかしさが新たな悲劇を生む何とも心を締め上げられるような展開となっています。どうすりゃ丸く収まるんだって話。つくづく世の中には理不尽に出来てる部分があると思います。

何だか暗いことばかり言ってますが、誰かが誰かのためにという「愛」をテーマにした物語である点は前2作と同じ。そこはちょっとした希望なのかなぁ。「愛」と真面目に向き合った劇場版にはドラマシリーズの爽快さとは一味違った気品が感じられます。

まとめ

以上が私の見解です。

予想を超える程ではありませんでしたが、安定感のあるシリーズであることを証明付けられた気がします。また新作をやって欲しいですね。次は吉高由里子演じる岸谷も出てくる事を望んで(ワンチャン特別出演とかあるかなと思ったんだけど)。

ちなみに小出しにした『さまよう刃』は読んでて精神的にしんどくなる小説。映画化もされてたっけ?そこまで東野圭吾の小説を読んだわけではありませんが、作者史上最も衝撃的な作品だと思います。

ということでこの辺でお開きです。ありがとうございました。