キャプテン・シネマの奮闘記

映画についてを独断と偏見で語る超自己満足ブログです

第219回:映画『夜明けのすべて』感想と考察

今回は現在公開中の映画『夜明けのすべて』を語っていこうと思います。毎度の事ながらややネタバレ注意です。

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イントロダクション

瀬尾まいこの同名小説を映画化したヒューマンドラマ作品。今年のベルリン国際映画祭への出展も決まっているようです。

PMS/月経前症候群の影響で倦怠感やイライラが抑えられなくなる藤沢(上白石萌音)。そのせいで新卒入社した会社を退職し親への負担も気にしていた。そんな中、転職先の会社の同僚 山添(松村北斗)のある行動に怒り爆発。しかしそんな彼もパニック障害を抱えて苦心する身であった。

監督は三宅唱。一昨年公開の『ケイコ目を澄ませて』が非常に素晴らしかったですね。それこそ一昨年のマイベストに滑り込みで入れましたし、本作を観に行くきっかけにもなってます。Netfilxのドラマシリーズ『呪怨:呪いの家』も良かったし、今後さらなる活躍が見込まれそうな気がしています。

主演は上白石萌音松村北斗。ええっと…萌音さんで大丈夫ですか?萌歌さんじゃないですね?どっちがどっちなのか分からなくなるという。それに松村北斗に関しても旧ジャニーズのアイドルってのは認知してるんですよ(だからかファンと思わしき方々で満席でした)。ただ、えー…ストーンズ所属の方?いや、スノーマンか?何だかそれがいつも謎で。こういうジジババ臭いマインドは修正していきたい!共演の渋川清彦や芋生悠はすぐ分かったんだから何とかなるはず。

理解を超えて

PMSパニック障害という症状のレベルがなかなか他人に理解して貰えない主人公2人。勿論ここにスポットがあたって話は進行していきますが、決して闘病生活的な路線にはならず、主人公を取り巻く人物たちにも何かしらの悩みや喪失感を抱えて生きている事が伺えるシーンが多く散りばめられています。ほんとそうだと思いますね。その人にはその人の悩みがあり、日々葛藤しながら生きているわけで。それを理解するのって非常に難しい事なのです。しかし昨今を見ると、SDGsやらダイバーシティの影響か「理解」というワードが安易に使わている気がしてなりません。なんせLGBTQ”理解”増進法なるものまで出来ましたし。無論、理解をしようとする行為自体に問題はありませんが、それ止まりでは意味がないはず。理解を超えて大事なのが「助け合い」という優しさである事が本作を観ると感じられるでしょう。

そんな助け合いが描かれるだけあって人間関係の描写は濃厚でウエットかと思いきや意外とドライ。ここが個人的には良かったですね。そっけないぐらいの関係性だけど、困っている時は手を差し伸べるといった丁度良い関係性が表現されていました。なんでしょう、私の大好きな『横道世之介』(2013年公開)らしさを感じました。登場人物たち個々の関係性は比較的ドライなんだけど、全体を通して観ると深いヒューマンドラマに仕上がってる感じ。だからか ”あのキャラはあの世界で元気にやっているだろうか?”的な事をふと思い返したくなるような心に残る映画でした。

まとめ

以上が私の見解です。

『ケイコ目を澄ませて』の時と同様、優しさと生きる強さをもった作品。優しさでいえば劇中度々登場するちょっとした手土産文化、あれ良いですね。円安物価高で悠長に手土産なんぞ買ってられっか!な世知辛かもしれませんが、貰う側もあげる側にも小さな喜びはきっとあるはず。あの鯛焼きのシーンとか観てるこっちもホッコリしてしまいましたし。時期的にいえばバレンタインなんかも良いチャンスかもしれませんね。まぁ私自身はテレワークなんでまったく関係ないんですけど…

ということでこの辺でお開きです。ありがとうございました。

第218回:映画『哀れなるものたち』感想と考察

今回は現在公開中の映画『哀れなるものたち』を語っていこうと思います。毎度の事ながらややネタバレ注意です。

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イントロダクション

スコットランドの作家アラスター・グレイの同名小説の映画化。去年のベネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞をしています。

天才外科医ゴッドウィン・バクスター(ウィレム・デフォー)による驚異の蘇生手術を受けたベラ(エマ・ストーン)。「世界を自分の目で見たい」という強い思いに突き動かされ、放蕩者のダンカン(マーク・ラファロ)と共に旅に出る。そこで世界の酸いも甘いも知り急速に成長を遂げていく。

監督はヨルゴス・ランティモス。『女王陛下のお気に入り』(2019年公開)と『ロブスター』(2016年公開)ぐらいしか観てないぞ。『ロブスター』は変な映画だったな。独身だと動物に変えられるってどういう発想なんだw。胸糞映画だという『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』(2018年公開)は観てみよ。

主演はエマ・ストーン。この方といえば『ララランド』(2016年公開)でしょう。いや私にとってミュージカル映画食わず嫌いの解消となった映画でもあるので。囁くような歌い方良かったな。あとは『ペーパーマン』(2009年公開)のスープ作る人も地味に印象深い。

そして共演のマーク・ラファロが結構好きなんです。『フォックスキャッチャー』(2014年公開)や『はじまりのうた』(2013年公開)、『スポットライト 世紀のスクープ』(2015年公開)となかなか良い作品に出まくってます。あと勝手なイメージ、性格良さそう。

「女性」として生きる

本作をずばり一言で表すならフェミニズム映画です。「フェミニズム」と聞くとネット上じゃ性的搾取の論点ばかりの誇張や男性嫌悪と履き違えて捉えている人々もおられるようで、攻撃的で差別的な一面がちょっと残念な印象も受けます。しかし本来は男女両方の平等な権利を訴えるものであり、このテーマを含んだ映画は性別関係なく勇気や元気が湧湧くような内容が多くなります。本作はまさにそれ。何だか心がアツくなるエンパワーメントな作品でした。

例えば閉鎖的/限定的な空間から解放され、外の世界を知った女性が成長するという構図は、多くのフェミニズム系統の作品で描かれているテーマだと思います。最近の作品いえば『バービー』(2023年公開)が代表格。『ワンダーウーマン』(2017年公開)や『塔の上のラプンツェル』(2010年公開)もその傾向が見られる作品でしょう。ベラさんは外の世界から元々居た場所へ戻る選択をしますが、そこはもう閉鎖的な場所ではなくなっています。人間として成長を遂げ自身で選択しているわけですから。この流れは『ローマの休日』(1953年公開)、そして『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015年公開)なんかが思い出されます。

また、一部じゃ露骨過ぎるみたいな批判もあるという性描写に関してもフェミニズム的なアプローチだったかと思いました。確かにここ最近の映画じゃ考えられない程シーンとして多く、物語の軸となっているといっても過言ではありません。しかしそれは性への目覚めから成熟していくまでの過程を描いているのであって、決して生々しく過激な描写を見せたい意図でないのは観れば分かる事でしょう。各ベットシーンは決してエロティシズムに撮られいるわけでなく、寧ろ即物的なものとして撮られている感じもしましたし。また娼館のシーンはベラさんが「労働」というものに初めて接触する意味合いがあると感じましたし、その後の娼婦をやっていた事への各男性キャラクターのリアクションが後々ポイントになっています。

といった感じて思いついた要素をつらつら書いてるだけになってきましたが、要は「女性」としての生き方とは?という時代性を取り入れつつしっかりエンタメとなっている素晴らしい作品でした。

まとめ

以上が私の見解です。

予想していた以上に面白い作品でしたね。1つ言いたい事があるとするなら、マーク・ラファロが演じた”悪い男”だけで充分説得力があるのに、その後さらに酷い男が登場するのは説明過多では?ザ・有害な男らしさなキャラは結末含め面白いのですが、描写としてごっぞり無くても成立する気がしたので冗長さは感じました。

そういえばあの魚眼レンズや穴から撮ったような画は『女王陛下のお気に入り』でもあったの思い出た。人の生活を覗き見してるような感じ。変な動物や鼻血だったり端々にランティモス監督のフェティッシュさが見えるのも良かったです。

ということこの辺でお開きです。ありがとうございました。

第217回:映画『みなに幸あれ』感想と考察

今回は現在公開中の映画『みなに幸あれ』を語っていこうと思います。毎度の事ながらややネタバレ注意です。

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イントロダクション

「不幸の上に成り立つ幸せ」がキーワードだというホラー映画。

東京から祖父母の暮らす田舎に泊まりに来た看護師学生の”孫”(古川琴音)。久しぶりの再会に喜びを感じるも祖父母の様子に違和感を感じる。どうやら何かを隠している…その正体を知った時、世界の成り立ちや人間の在り方といった根源的な価値観を揺るがす事になっていく。

監督は下津優太。本作が商業的映画初作品。何でも同名短編作品が「第1回日本ホラー映画大賞」で大賞を受賞したんだそうですよ。その賞の審査委員長を務めたのが『呪怨』(1999年公開)でお馴染みの清水崇監督で、本作のプロデゥーサーになっています。

主演は古川琴音。ここ最近よく見かけますね。映画だと『偶然と想像』(2021年公開)にも出演してましたし、TVドラマだと『コントがはじまる』にも出てました。まぁよく見る理由は多分三井住友カードだかのCMの影響かも。

貴方は幸せ?

まずね、ポスターが良いですよ。タイトルの「みなに幸あれ」なんて良い事言うなぁ!と思うじゃないですか。しかしそれらしさのない不穏な古川琴音のポスター。えっどういう事?これは観に行きたくなります。

序盤は『ヴィジット』(2015年公開)っぽさを感じました。孫が祖父母の家に泊まりに行ったらなんかヤバいぞぉ…的な。しかし次第に村の因習も疎か世の中を形成するとある仕組みの気持ち悪さに胸糞が悪くなっていきます。でも何で主人公だけ例の仕組みに気付いてなかったんだ?…

というのは置いておいて、この胸糞悪くなる正体というのが最初に挙げた「不幸の上に成り立つ幸せ」という理論です。果たして自分は幸せなのか?実は幸福って明確なアベレージが存在しないので結構フワッとした概念なんですよね。だから自分が幸せかを計るのに大抵の人がやるのが、他人と比較する事になるわけです。劇中では、やりたい事やって食っていけてる人は幸せだろうけど、皆が皆やりたい事やってたら世の中回らないから犠牲になってる人もいる といった話がありました。そりゃそうですよ、私だってこんな感じで適当な文章書いて大金稼げたら悠々自適ですけどね。世の中そんな甘くないっすよ。その他比較する尺度は色々ですが、誰かの犠牲で自分の幸福は成り立っているのでは?という考えと否が応でも向き合わざるを得なくなります。

でもね、この幸福については丁度私が読んでいた伊坂幸太郎の小説『777(トリプルセブン)』に良い事書いてました。幸せについては「他人と比べた時点で、不幸が始まる」んですって。それに梅は梅、リンゴはリンゴに成れば良いのだから薔薇と比べたって仕方ないなんて話も出てきました。まぁそういう事ですよ。誰かと比較したって誰かが犠牲になってたって自分は自分です。考えたって埒が明かない。使い方は違いますが、憧れるのをやめましょう!

まとめ

以上が私の見解です。

とは言ってもやっぱりモヤっとするよなぁ~。台詞で説明し過ぎず、気味の悪い映像の連続で語る上手さもありますし、思わず“痛てぇ痛てぇ!”と口にしてしまうシーンもあって面白いんですけどねぇ…何とも嫌な映画でした。

という事でこの辺でお開きです。ありがとうございました。

第216回:映画『アクアマン 失われた王国』感想と考察

今回は現在公開中の映画『アクアマン 失われた王国』について語っていこうと思います。毎度の事ながらややネタバレ注意です。

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イントロダクション

DCコミックスのヒーロー アクアマンを主人公とした2018年公開の『アクアマン』の続編。2013年の『マン・オブ・スティール』から始まったDCEUと呼ばれた一大ユニバースの終章だそうで、今後はジェームズ・ガンの下で新たなフランチャイズが公開されるようです。『ザ・スーサイド・スクワッド』(2021年公開)やドラマシリーズ『ピースメイカー』の評判が良かったのかな?確かにどっちも面白かったけど。

海底王国 アトランティスの王として従事する傍ら子育てに奮闘するアクアマンことアーサー・カーリー(ジェイソン・モモア)。二足の草鞋にヘトヘトな毎日を送る中、アクアマンへの復讐を誓うブラックマンタ(ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世)が南極の氷河に封印されていた邪悪な古代兵器を発見。それは海洋世界のみならず地上世界への脅威となっていく。

監督はジェームズ・ワン。映画監督の中にはホラーやサスペンス、大作系アクションに至るまでどんなジャンルでも上手くまとめるエリート職人監督が存在します。ジャウム・コレット=セラとかイーライ・ロスとかね。その代表格といっても過言でないでしょう。「SAW」や「死霊館」シリーズを生み出し、ワイルドスピードや本作のようなアメコミ映画も手掛けています。『マリグナント 狂暴な悪夢』(2021年公開)も面白かったですもんね。そういえば「インシディアス」シリーズの最終章ってどうなった?

主演はジェイソン・モモア。代表作といえばこの「アクアマン」シリーズになるかと思いますが、『バレット』(2012年公開)でスタローンと斧ファイトしてたのも印象深い。また前作では主人公の敵として登場したパトリック・ウィルソンも続投。ワン監督作品ではお馴染みですが、『トマホーク ガンマンVS食人族』(2015年公開)が傑作っすね。攫われた奥さんを救おうと松葉杖で頑張ってました。さらに科学者役のランドール・パークという方。どっかで観た気がしたので調べてみると『アントマン&ワスプ』(2018年公開)を始めとしたMCU作品にも出演していました。2大アメコミフランチャイズの掛け持ちって儲かりそう。

陽キャ王の敵は温暖化?

前作同様、持ち前の筋肉とノリの良い勢いで物事を解決していく陽キャな王様が描かれます。そこに今回は兄弟バディ路線がプラス。どことなく2017年公開の『マイティ・ソー バトルロイヤル』(「バトルロイヤル」って言うとMCUファンに怒られるやつ?「Ragnarok」かw)っぽさの強い既視感ある内容でしたが、それ以上に決して勢いだけじゃ解決には至らない問題がテーマになっていると思いました。

今作でネックとなるのが、古代文明の遺産なわりにハイテクな兵器を動かすための資源です。具体的な名前は忘れましたが、燃やすと温室効果ガスをバンバン排出。それにどうも廃棄するにも色々問題があるらしく、まるで化石燃料原子力の悪いとこどりの物質なのです。そんな資源を存分に利用して世界の覇権を奪おうってのが今回のヴィランの魂胆なわけです。昨今脱炭素に向けたムーブメントが起きており、近くEUじゃガソリン車が禁止なるとか。その脱炭素の代替として原子力に頼るのってのもチェルノービリや福島の事例から考えると煮え切らない。自然エネルギーだけでは到底賄え切れない経済規模を回すにはどうするか?は国際的な問題ですね。そんな資源と温暖化の問題に正面きって挑もうとする指導者が今の世界に求められているヒーロー像なのかもしれません。

まとめ

以上が私の見解です。

ちょっと頭でっかちな事を考えながら観てしまいましたが、そんな事はほっといても純粋に楽しめるライド感のある作品だと思いました。
ただ矛バトルが少ないせいかワン監督らしいキレキレカメラワークがありません。それにさかなクンが羨むであろう海洋生物たちと会話出来る能力の発揮シーンも少ない。ってな感じで主役のキャラスペックがいまいち活かされていない印象を受けたのは残念な点でした。

そういえばアンバー・ハード。ジョニデとの死闘の影響で出演シーンがごっそりカットされたなんて話もありましたがおやっ?結構出てるじゃん。寧ろどこをカットしたんだと思うほど物語に違和感がありませんでした。やっぱりこういうとこでしょ、監督の器用さって。トラブルに見舞われても安心安全の品質保証、こう言っちゃ悪いけど日本にもこんな映画監督が沢山居たら安泰よ。

ということこの辺でお開きです。ありがとうございました。

第215回:今まで鑑賞した映画を数えてみた件

今回は本ブログ史上最もどーでもいいことを書いていきます。

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↑ネタとは関係ない写真ですが、雪深い神社って良いよね

10年間の歴史

私、我ながらマメな人間なもので日頃から鑑賞した映画のタイトルをルーズリーフにメモってるんですね。それを2013年から続けているので去年で丁度10年間が経過しました。うわー10年も経ったのかぁ、歴史ですよ。そんな区切りの良さがあったので、果たして何本観て来たのかメモの集結を取ってみようと思い立ちました。厳密には11年の記録になりますが、カウントしたところ総計…

 

2047本

…おおぅ。同じ作品の繰り返し鑑賞もあるので作品数にすると体感値1800~1900タイトルになるかと思います。世間一般のアベレージのような比較対象は当然ないので何とも言えませんが、人と話していても「最近観たい映画ないんだよねぇ」とか「最後に映画館行ったの何年前だ?」なんて事を聞く機会も多いので明らかにトチ狂った本数でしょう。では、何故そんなに観てしまうのか?考えてみると2つの事が思い浮かびました。

狂ったように観る理由

1守備範囲の拡大

メモを見返して気付いたのが観ているジャンルの拡大でした。元々ハリウッド系列の洋画大作を中心に観ていたのが、年数が経過するごとに邦画や様々な国の作品の本数も増加傾向に。とりわけコロナ禍で外出が憚れた期間に動画配信サービスに加入したのも大きかったような気がします。レンタル店だと洋画と邦画でだいたいコーナーが分かれていたりするので、洋画ゾーンのみ漁って終了がほとんどだったのですが、配信サイトのホーム画面は結構ごちゃごちゃ挙がっているせいで、別に観ようと決めていなかった作品を観ちゃったりするんですよね。「映画」と一括りにいってもとにかく幅広いので、良くも悪くもテリトリーが広がってしまいました。

2これだけ観てもまだ観ていない作品がある

そうなんです。どれだけ観てもまだまだ観た事のない作品が存在する事が私を狂わせます。いわゆる名作扱いをされている作品も世間的に人気のある作品に至るまで多数。以前どこかにも書いたかもしれませんが『風の谷のナウシカ』や『サウンド・オブ・ミュージック』を観た事ないっていうと驚かれますもん。きっかけやタイミングの問題なのよぉ~。ってな感じで一生かけても観てない作品が存在するのは間違いないという現実。恐ろしいちゃありゃしないぜぇ。

本数マウントってさ

こうした鑑賞本数の話になると、”年間○○本以上観てないと映画好きじゃない”や”○○本観てればシネフィル” みたいな謎の基準で数マウントを取ろうとする発言がSNS上で定期的に散見されます。で、今回数えてみてそれが不毛な事だと改めて思いました。

だってどれだけ本数こなしたって観た事を忘れてる作品ばっかりになるもの…。これはメモを見返して実感しました。「もしドラ」の映画?ホントに観たのかよ!『エクトプラズム/怨霊の棲む家』とか『陰謀のスプレマシー』とかそんな映画もあったなぁ、内容覚えてねーよ!こうなるから感想をブログやSNSになるべく残すという事にしている訳ですが、去年観た映画ですら”えっと…たったしかに観たぞぉ!”みたいなあやふやな作品もあるぐらい。これが大量消費社会の良くない部分なのでしょう。

しかし、本数をこなさい限り自分の心にジャストミートする作品に出会えないのも事実ではあります。正直、ネット上や周囲の人の評価や口コミで観る作品を選択してるようじゃ甘いと思います。”ちょっとでも気になったらとりあえず観る!”の精神です。当たって砕けろじゃないですが、数撃ちゃ当たるので。ちなみに私のマインドは、オールタイムベストである『マッドマックス 怒りのデス・ロード』を超える、あるいはそれと肩を並べる感動に出会えるかを基準に作品を漁ってます。そんなのあるかねぇ~でもあるかもしれない。私に課せられた世知辛い運命です。

まとめ

以上、我ながらキモい戯言でした。

キモいとはいえ、これからも金と時間が許す限り漁り続けますしメモも欠かさず残していきますよ。次の10年後は果たしてどれだけの本数を積み重ねているでしょうか…。10年後とかあんまり想像したくねーな。俺にあるのは”今”だけだ!

ということこの辺でお開きです。ありがとうございました。

第214回:映画『エクスペンダブルズ ニューブラッド』感想と考察

今回は現在公開中の映画『エクスペンダブルズ ニューブラッド』を語っていこうと思います。毎度ことながらややネタバレ注意です。

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イントロダクション

アクションスターが一同を介する映画界隈じゃアベンジャーズ以上にアベンジャーズな事になるお祭り映画シリーズ第4弾。

CIAから依頼される汚れ仕事を命懸けで遂行してきた傭兵軍団 エクスペンダブルズ。そんな最強軍団を率いるバーニー・ロス(シルベスター・スタローン)は、相棒のリー・クリスマス(ジェイソン・ステイサム)を筆頭にした新旧メンバーとテロリストが強奪した核兵器を奪還するミッションへ乗り出す。

監督はスコット・ウォー。『ニード・フォー・スピード』(2014年公開)等を手掛けているみたいです。あれっスタローンが監督じゃないの?と思って調べてみるとスタローン自身が監督したのは1作目だけだったんですね、お恥ずかしい。

スタローン、ステイサムの他にシリーズレギュラーキャストはドルフ・ラングレンランディ・クートゥアが出演。あっ僕にAA-12の凶悪さを教えてくれたテリー・クルーズが不在…悲しい。1作目では大活躍だったのに、2作目でシュワにAA-12を借りパクされ3作目では序盤でメルギブに狙撃され入院生活。なんかアンギラスばりに可哀そうじゃん。

新メンバーにはミーガン・フォックストニー・ジャーアンディ・ガルシアが出演。そして今回敵役はイコ・ウワイス。ネット上では何かと人気の超ハイカロリー映画「ザ・レイド」シリーズでお馴染みの方。ハイカロリーでいえば『シャドー・オブ・ナイト』(2018年公開)も凄い。ってかイコ・ウワイス出るならヤヤン・ルヒアンも出て欲しかったよね。

これエクスペ?

率直に言ってこれです。期待してエクスペンダブルズシリーズを観に行ったけど何か違うものを見せられいる違和感。そう思った物足りないポイントが主に3つありました。

肉密度が足りない

ひとことで言えば肉密度が落ちシュッとした消耗品軍団。皆さんしっかり着こんじゃってパンパンの腕や隆起する肩の露出が少ない。冒頭のバーのシーンが一番シリーズっぽい雰囲気だっのは残念でした。またアクションスタイルにも肉密度の不足が見受けられました。ステイサム、イコ・ウワイス、トニー・ジャーとスピード系のスターが暴れるのは良しとして、例えば1作目のスタローンvsオースチンのような筋肉と筋肉のぶつかり稽古のようなパワーファイトが一切無かったのは不満です。みんなお年を召されたから仕方ないのかもしれませんし、パワーファイトよりスピードファイトが好まれる風潮もありそう。アクションスタイルの変化はある意味ニューブラッドに感じました。

”エクスペ”ノリが足りない

筋肉てんこ盛り以外の本シリーズといえば、シリーズ特有のノリです。とは言ってもシリーズを重ねるごとに薄くなっている要素ではあります。

アメリカ映画らしい皮肉でお互いをおちょくり合ってニヤニヤするおじさんたちの仲良しっぷり。あのノリが観ていて好きなポイントだったんですけどね。現実にいたらちょっと嫌だけどw。まぁ私ですらそう思うので、今の時代じゃああいうノリはホモソーシャルとかいって叩かれるのかな。そもそもジョークのキレがあまり良くなかった気もします。

お祭り感が足りない

これに関してはキャストを見た時点で薄々感じてはいましたが、やっぱりちょい役でもシュワ、ウィリス、フォードがいると空気が違います。そのちょい役でもしっかり華を添えるタイプのゲスト出演がなかったのは物足りなさを感じる点でした。予想以上にスタローンの退場が早かったのも痛手だったでしょう。えっ?飛行機に乗ってるだけで終わり?せめてバーニー名物”早撃ちリボルバー”が観たかったですね。

それにガルゴの息子とは?普通にアントニオ・バンデラスを出せなかったのか。常に化粧ゴリゴリなミーガン・フォックスも別に悪くはないですが、もっと張り合いのある姐御肌な人じゃないと薄くない?ミシェル・ロドリゲスとか前作のロンダ・ラウジー続投とはいかなかったんですかね。こうしたキャスティングの馬力がいまいち足りず、おまけにステイサムが無双するシーンがほとんどを占め、各キャラの見せ場にバラつきがあるのも問題だと思いました。


以上を踏まえると、今回観たのはステイサムワンマンプレーの映画になります。ゆえにいつものステイサム映画として観れば満足、エクスペとして観ると微妙、そんなとこです。

まとめ

以上が私の見解です。

消化不良な結果とはなりましたが、トニー・ジャーは良かったぞ。封印したスキルを発動しちまったら…みたいな変な事言ってたわりにあっさりスキル発動。カッコよくククリをぶん回してました。ステイサムとの相性抜群のアクションも魅せてくれたので続編があれば続投で。

そんな5作目があるなら、テリー・クルーズを復活させておくれ!あとちょい出しで良いからシュワ&ジェット・リー コンビも。それで新メンバーにマ・ドンソクとデイブ・バウティスタ。ボス敵はジェイソン・モモアorスティーブン・ラングで、そのサイドキックにジョー・タスリムでいきましょう!いや、敵をドンソクにしてスタローンとのボクシングファイトってのもアツくないか?妄想が絶えない、これぞエクスペの醍醐味ですな。

ということこの辺でお開きです。ありがとうございました。

第213回:映画『PERFECT DAYS』感想と考察

2024年一発目は、去年の最後に映画館で観た作品『PERFECT DAYS』を語っていこうと思います。毎度のことならが、ややネタバレ注意です。

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イントロダクション

渋谷区がデザインに力を入れている17か所の公共トイレたちを舞台にしたドラマ作品。去年のカンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、主演の役所広司が日本人俳優として柳楽優弥以来(2004年公開『誰も知らない』)2人目となる男優賞を受賞しました。柳楽優弥の受賞って確か最年少記録とかでしたよね?そう考えるとやっぱ凄いな。

東京 渋谷でトイレ清掃員として働く平山(役所広司)。彼の日常は、昔からカセットテープで聴いている音楽やフィルムカメラで撮る何気ない写真、毎日夜に少しずつ読む古本屋で買った文庫など一見淡々としているようで小さな幸せに満ちていた。そんな日常に現れる人々によって彼の過去が見え隠れする。

監督はヴィム・ヴェンダース。『ベルリン、天使の詩』(1987年公開)や『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』(1999年公開)で有名ですが、うーん私1作品も観てなかったぞ。『パリ、テキサス』(1984年公開)はロードムービーですよね、観よう。

主演は役所広司。去年は別班をモチーフにしたドラマなんかにも出ていましたが、もう日本を代表するレジェンド役者といった感じです。個人的には『CURE キュア』(1997年公開)や『降霊〜KOUREI〜』(2000年公開)が印象的。また黒沢清作品に出ないかなぁ。『孤狼の血』(2018年公開)や『十三人の刺客』(2010年公開)も最高。やっぱり名作多しの邦画業界を支えてる感が半端ないです。

日本人は幸福か?

年の瀬って世の中全体がいそいそとします。このクリスマスから大晦日にかけての忙しなくなる様が好きだと言っていた友人も居ましたね。確かにちょっと分かる。そんな時期にゆっくり観るのに丁度良い作品でした。公開時期はそれを見越していたのかな?どうやら企業案件(ユニクロ、ローソン、ダイワハウスTOTOが関わってるっぽいぞ)の作品ですが、そうとは思えない仕上がりです。

清掃員の平山さん。基本、近所から聞こえる箒の掃く音で目覚め、缶コーヒー飲んで仕事へGO。仕事から帰ると行きつけの銭湯&飲み屋、そして寝る前に古本屋で買った文庫を読んで寝るのを繰り返す日々。多少ルーティンが乱れるちょっとした変化はあれど、大きな事件が起きるでもなく進む時間。それでも見入ってしまうのは、役所広司の俳優力とベンダース監督の手腕による賜物なのでしょうか。2時間ちょっとがあっという間に感じてしまう魔法です。

しかしこれを観て”質素な暮らしでも文化を嗜んでいれば幸せになれる”と思うのは少し違うかもしれません。映画業界でも低予算の大ヒット作品がもてはやされる風潮がありますが、お金はあるに越したことはないですしそういった貧乏性マインドが社会で蔓延するのは決して良いことではないでしょう。

なんせ当の平山さん、どうも裕福な家庭で育った模様。明確には言及されませんが、家族特に父親との軋轢によって今の生活を選択しているのだと伺えます。育った環境、残念ながらこれが文学や音楽、写真を嗜めている理由だと感じました。いわゆる文化資本って育った環境や受けてきた教育に比例すると思うんですね。子どもの頃からどんなものに触れて蓄積されてきたのかってこと。本当は全ての人にいきわたるべき文化芸術ですが、音楽に聴くにしても絵画を見るにもお金が掛かりますからね。映画だって値上がりを続け決して安いものでは無くなっています。そうなると生活する上で二の次になって当然です。

結局、幸福になるのは金なのか…。平山さんの同僚(柄本時生)が”お金がないと恋愛も出来ないのか”と嘆いていましたが、まるで今の日本を象徴しているように感じますし、日本人は幸福なれるのか?をつい考えてしまいます。

まとめ

以上が私の見解です。

ちょっと穿った見方もしちゃいましたが、とりあえず映画館の暗闇でじっくり観るにはとても贅沢な作品でした。

それにしてもなんで渋谷区はやたらトイレを洒落乙にしてんだろ。街全体がアーティーにならないと、トイレだけ浮いちゃう気もするけど。あのスケスケトイレとか誰の発想よ、使用中にシステムがぶっ壊れないかヒヤヒヤして出るもんも出なくなりそうっすね。それに恵比寿駅前のところや渋谷駅と原宿駅の中間地点ぐらいにあるトイレとか見覚えあった。言われてみれば凝ったデザインだったような。ちょっと聖地巡礼じゃないですが、トイレ巡りしてみても面白いかもしれません…いやそれは単なる変態かw

ということこの辺でお開きです。ありがとうございました。