キャプテン・シネマの奮闘記

映画についてを独断と偏見で語る超自己満足ブログです

第213回:映画『PERFECT DAYS』感想と考察

2024年一発目は、去年の最後に映画館で観た作品『PERFECT DAYS』を語っていこうと思います。毎度のことならが、ややネタバレ注意です。

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イントロダクション

渋谷区がデザインに力を入れている17か所の公共トイレたちを舞台にしたドラマ作品。去年のカンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、主演の役所広司が日本人俳優として柳楽優弥以来(2004年公開『誰も知らない』)2人目となる男優賞を受賞しました。柳楽優弥の受賞って確か最年少記録とかでしたよね?そう考えるとやっぱ凄いな。

東京 渋谷でトイレ清掃員として働く平山(役所広司)。彼の日常は、昔からカセットテープで聴いている音楽やフィルムカメラで撮る何気ない写真、毎日夜に少しずつ読む古本屋で買った文庫など一見淡々としているようで小さな幸せに満ちていた。そんな日常に現れる人々によって彼の過去が見え隠れする。

監督はヴィム・ヴェンダース。『ベルリン、天使の詩』(1987年公開)や『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』(1999年公開)で有名ですが、うーん私1作品も観てなかったぞ。『パリ、テキサス』(1984年公開)はロードムービーですよね、観よう。

主演は役所広司。去年は別班をモチーフにしたドラマなんかにも出ていましたが、もう日本を代表するレジェンド役者といった感じです。個人的には『CURE キュア』(1997年公開)や『降霊〜KOUREI〜』(2000年公開)が印象的。また黒沢清作品に出ないかなぁ。『孤狼の血』(2018年公開)や『十三人の刺客』(2010年公開)も最高。やっぱり名作多しの邦画業界を支えてる感が半端ないです。

日本人は幸福か?

年の瀬って世の中全体がいそいそとします。このクリスマスから大晦日にかけての忙しなくなる様が好きだと言っていた友人も居ましたね。確かにちょっと分かる。そんな時期にゆっくり観るのに丁度良い作品でした。公開時期はそれを見越していたのかな?どうやら企業案件(ユニクロ、ローソン、ダイワハウスTOTOが関わってるっぽいぞ)の作品ですが、そうとは思えない仕上がりです。

清掃員の平山さん。基本、近所から聞こえる箒の掃く音で目覚め、缶コーヒー飲んで仕事へGO。仕事から帰ると行きつけの銭湯&飲み屋、そして寝る前に古本屋で買った文庫を読んで寝るのを繰り返す日々。多少ルーティンが乱れるちょっとした変化はあれど、大きな事件が起きるでもなく進む時間。それでも見入ってしまうのは、役所広司の俳優力とベンダース監督の手腕による賜物なのでしょうか。2時間ちょっとがあっという間に感じてしまう魔法です。

しかしこれを観て”質素な暮らしでも文化を嗜んでいれば幸せになれる”と思うのは少し違うかもしれません。映画業界でも低予算の大ヒット作品がもてはやされる風潮がありますが、お金はあるに越したことはないですしそういった貧乏性マインドが社会で蔓延するのは決して良いことではないでしょう。

なんせ当の平山さん、どうも裕福な家庭で育った模様。明確には言及されませんが、家族特に父親との軋轢によって今の生活を選択しているのだと伺えます。育った環境、残念ながらこれが文学や音楽、写真を嗜めている理由だと感じました。いわゆる文化資本って育った環境や受けてきた教育に比例すると思うんですね。子どもの頃からどんなものに触れて蓄積されてきたのかってこと。本当は全ての人にいきわたるべき文化芸術ですが、音楽に聴くにしても絵画を見るにもお金が掛かりますからね。映画だって値上がりを続け決して安いものでは無くなっています。そうなると生活する上で二の次になって当然です。

結局、幸福になるのは金なのか…。平山さんの同僚(柄本時生)が”お金がないと恋愛も出来ないのか”と嘆いていましたが、まるで今の日本を象徴しているように感じますし、日本人は幸福なれるのか?をつい考えてしまいます。

まとめ

以上が私の見解です。

ちょっと穿った見方もしちゃいましたが、とりあえず映画館の暗闇でじっくり観るにはとても贅沢な作品でした。

それにしてもなんで渋谷区はやたらトイレを洒落乙にしてんだろ。街全体がアーティーにならないと、トイレだけ浮いちゃう気もするけど。あのスケスケトイレとか誰の発想よ、使用中にシステムがぶっ壊れないかヒヤヒヤして出るもんも出なくなりそうっすね。それに恵比寿駅前のところや渋谷駅と原宿駅の中間地点ぐらいにあるトイレとか見覚えあった。言われてみれば凝ったデザインだったような。ちょっと聖地巡礼じゃないですが、トイレ巡りしてみても面白いかもしれません…いやそれは単なる変態かw

ということこの辺でお開きです。ありがとうございました。