キャプテン・シネマの奮闘記

映画についてを独断と偏見で語る超自己満足ブログです

第212回:2023年ベスト映画(後編)

それでは後半は様々な「ベスト」から2023年の映画を振り返っていきます。ちなみに配信サービスの作品や地上波TVドラマの話も含むかもしれません。また、ややネタバレがあるかもしれないのでご注意を。

↓前編の内容はこちら

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↑今年買った前売り券たち。グッドデザイン賞ジョン・ウィックかな。ネクタイが弾丸砂時計になってるのが洒落てる。

うーんな作品賞

去年はあまりに頭を抱えた作品が多かったため切り出して行ったこちらの企画。今年はそれほど空振りをしなかった…とはいえ看過出来ない4作品の愚痴を書き殴り今年の禊を完遂しましょう。容赦なくいくんで夜露死苦

・『ボーンズ・アンド・オールド』

人肉欲が抑えきれない若い男女を描いた恋愛ロードムービー

見た目だけで中身スカスカじゃないか映画でした。ルックは良い感じなんですよ、80年代アメリカンな田舎な感じ。でもほんとそれだけの印象でした。ロードムービーって主人公の成長や変化が垣間見えるものだと思っているのですが、それらが感じられません。だって同じ境遇のイイ感じのイケメンに出会って結ばれただけにしか見えないぞ。結局マーク・ライランス演じる不気味なおっさんは何だったの?まぁ出会いはそれはそれで収穫でしょうけど、観てる側としてはたいして面白くないです。そもそもカニバリズムと純愛の食い合わせも悪い気もしましたね。殺人カップルとかの方がまだ良さそう。カニバリズムというテーマで言えば、前編でもご紹介した『食人族』(1980年公開)の方がエンタメ性然り、人間の心理を付いた内容だったと思います。

ティモシー・シャラメ出演させときゃ良いってわけじゃねえからな、覚えとけ!

・『ハロウィン THE END』

私にとって今年度のワースト作品となったホラー映画「ハロウィン」シリーズの最新作。

なんと言ってもスラッシャー映画なはずなのに人が死なな過ぎる。序盤のダルい青春グラフティーなんてさっさと済ませておくれ。『首』のたけしじゃないですが“さっさと死ねよ!バカヤロー!”が頭を巡ってなんともイライラさせてくれました。そして満を持して登場のブギーマンさんがまぁーみっともないこと。不死身要素は何処へ?ブギーマンを通して『LOGAN/ローガン』(2017年公開)でもやりかったのか、だとしたら失敗でしょう。

同監督が手掛けた今年公開の『エクソシスト/信じる者』も大概しとけって作品でした。デヴィッド・ゴードン・グリーン監督、貴方にとっての居場所はホラー映画ではないのでは?不発ばっかりなのでジャンルを変えてみれば?という余計なお世話でした。

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・『アステロイド・シティ』

あるアメリカの砂漠都市で繰り広げられる洒落乙群像劇。

今年の見た目だけで中身スカスカじゃないか映画第二弾。こちらもルックは良い。パステル調の様式美はウェス・アンダーソン監督ならではの世界観。ただ全体的にのぺーっとした感じ。天才たちの孤独や愛した人を失った悲壮感といった様々な心情は汲み取れますが、どれも印象が弱い気がしました。セリフにしてもそれっぽい事を言っているだけ感が否めません。

それにやっぱり宇宙人やらUFOってなったらケレン味とでも言えばいいのか、もっとサービス精神たっぷりなアホっぽくても良いんじゃないかと。似たような事をやっていた去年公開の『NOPE/ノープ』の方が倍増しで面白かったと思いました。

・『ゴジラ-1.0』

世間的には絶賛っぽいですし、アメリカでも大当たりしているとか。しかしここはあえて言わなくてはならない。怖気づいて逃げてはいけない正念場です。

まず作品として好きなんです。だってゴジラはとっても良いので。各国の映画祭で技術部門の賞を貰うのも分かります。しかしゴジラ登場以外のシーンは擁護し難い。オーバー&いちいち心境を口に出す違和感たっぷりな登場人物たち。戦争や国家を批判したいのか賞賛したいのか微妙なポジショニングで展開する物語。大衆受けを狙ったのか無理やり感動の幕引きにするラスト。映画の良くない要素が色々見受けられたと思います。

それとアメリカで当たった事を免罪符にするのも良くないと思いますよ。なんていうか今作は『インディペンデンス・デイ』(1996年公開)や『アルマゲドン』(1998年公開)的な路線じゃないですか。国民の威信をかけて頑張るぞ!みたいな。だからアメリカで当たったんじゃないかと思うのです。別に今挙げた2作品を批判してるわけではないですが、ダメだった部分はちゃんと表明するのがファンってやつだと思うぞい!

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※ちなみに

現在公開中かな。現代から戦時中にタイムスリップしたJKが特攻隊員と恋に落ちる邦画。あれ予告の時点でちょっと…本編未見ですけど匂います、美化した内容だってことが。特攻隊がどういう状況下で編成されたか理解してるのかが疑問。『ゴジラ-1.0』で描かれる「戦争」だって比較的小綺麗してるように見えて引っかかりましたけど、あれは…もう…あぁぁ…力が出ない…。ある一定層には「戦争」を語るツールとして機能するのかもしれませんが、そもそも意図として死ぬ運命にある青年とJKの恋愛が描きたいだけで、特攻隊や戦争にはあまり興味がないのでは?今なお世界各地で戦争が起きているってのにそれで良いのかと鼻白んでしまいます。とはいえ未見で批判するのもポリシーに反する。配信サイトで見かけ次第チェックしましょう。

ベストアクション賞

はい、本性剥き出しの性格の悪いパートはここまで!こっからは褒めちぎりますよ。

まずは数々のベストアクション振り返る性癖ゴリゴリコーナーになります。

総合部門

スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』

こちらに関しては前編のNo1で挙げ、充分語ったので良いでしょう。ただアクションの観点でいえば、アニメーションだからこその強みを遺憾なく発揮した肉体での再現不可能な離れ業アクションが展開されていました。ほんと映像革命だと思うぞ、あれは。

格闘部門

ジョン・ウィック:コンセクエンス』よりケインさん

では肉体で表現の出来るアクションの限界値と言えそうなのはどうか?今年の作品ならドニー・イェン演じるケインさんではないでしょうか。年齢を感じさせない(あれで60歳は超人だって)超高速モーションに加え、目が見えていないからこそのトリッキーさもプラス。こんな表現が出来るのかと感心してしまいました。人を感知して音が鳴る人感センサーの使い方も面白かった。それに戦闘開始前に腹ごしらえなのかラーメン食ってるシーン良かったよね。いや蕎麦?うどん?実はフォーとかだったら笑うねw。

射撃部門

『ロングショット』より競技用ピストルで殴り込み

実は今年は私の中で銃撃戦不足だった気がしています。観に行く作品のチョイスが良くなかったのかな?そもそもガンアクション映画自体が年々減ってる気もするんですけどね。

そんな中でチョイスしたのは東京国際映画祭で鑑賞した作品。耳の障害が理由で射撃の選手生命を絶たれてしまった鉄工所の警備員が主人公の中国産クライムサスペンスです。

サスペンス系の映画なので銃撃戦自体は終盤にしか登場しませんが、これが凄い。まだ日本での正式な上映が決まっていないようなのであんまり言うのもアレかもしれませんが、アサルトライフル(あれは中国だし56式とか?)やショットガン(オーソドックスにレミントンかな?)を持った連中に対して競技用ピストルって無茶すんな!一発装填、しかも競技用なので弾薬のパワーも低い。しかし重要なのはモノではありません。使用している人間の腕です。辞めたとはいえやはりプロの射撃選手、命中精度がえげつない。言うなれば素人のチンピラがプロボクサーに拳で挑んだといった構図です。プロを相手にした瞬間、死が確定してしまうという事ですね。皆さんも気を付けてましょう。

大砲部門

『ナポレオン』よりアウステルリッツの戦い

いや、他に大砲が登場する作品があったかと問われるとないのでシード権でそのまま優勝みたいになります。しかしこんなボンボン撃って人間がぶっ飛んでいく映画なんてないですよ。とくにアウステルリッツの戦いの凍った湖面を大砲で割り、敵兵を冷たい湖へ突き落としていくシーンは凄まじかった。無慈悲にも程があるぞ。大砲映画といっても過言ではない作品でした。

ベストアクト賞

お次は今年印象に残った役者の皆さんをピックアップ。一番を決めるのはハードなので片っ端から列挙します。

『SEI SEID/シー・セッド その名を暴け』より

ジャーナリズム魂を見せつけた新聞記者さん キャリー・マリガンゾーイ・カザン

『ソフト/クワイエット』より

気迫と根性フルパワーなレイシスト軍団最年少さん オリヴィア・ルッカルディ

『after sun/アフターサン』より

妙に心に残る繊細で儚いお父さん ポール・メスカル

グランツーリスモ』より

夢を捨て切れなかった胸アツコーチ デヴィッド・ハーパー

(『バイオレンス・ナイト』のサンタさんも良かったぞ)

『首』より

尾張弁でがなる生まれた時から全て遊びな信長 加瀬亮

『正欲』より

「正義」を振りかざす空っぽな男 稲垣吾郎

『PERFECT DAYS』より

多くを語らず「人生」を体現する清掃員 役所広司

なお、TVドラマ『いちばん好きな花』の出演者全ても印象深い。多部未華子松下洸平今田美桜神尾楓珠の4名がメインどころでしたが、その他キャストもほんとに良かったと思いました。”このキャラクターにはこの役者さん”がバッチリだったのでしょう。適材適所のキャスティング、一般企業的にいえば的確なアサインというのがその人を魅力や特性を存分に引き出すのだと改めて思いました。

ベスト予告編賞

お次は心に残る予告編です。

『SISU/シス 不死身の男』

映画館で観るたびに笑ってしまった予告です。「彼は”一人殺戮部隊”です」や「世界一幸せな国・フィンランドの爆風マッド・エンターテインメント」。そんで最後は「俺に死んでる暇はない」。字面が面白過ぎます。宣伝だから煽ってるのかと思いきや、まったく噓付いてないのも好印象です。確かにあの爺さんに死んでる暇はなかった。

それに銀河万丈の壮絶で迫真なナレーションが予告を味わい深くしています。昔の木曜洋画劇場のCMっぽさを感じてテンションあがったのは私だけ?アクション映画の予告が全部あんな感じだったら最高なのに。

↓せっかくなのでURLも載せておきましょう。何度見てもオモロいぞ。

www.youtube.com

ベスト井口理賞

って何だよ!と我ながら思ってます。でも何とか井口理初主演映画『ひとりぼっちじゃない』をねじ込みたかった、それだけです。今年は呪術廻戦のテーマ曲にもなった「SPECIALZ」を始めとした曲を収録したアルバム「THE GREATEST UNKNOWN」の発表もあったKingGnuのボーカル。今後はどのような作品に出るのかが楽しみです。役者の経験が恐らく歌唱の表現力にも結び付いているはずなのでじゃんじゃん出て欲しいところ。でもまぁダダ滑りなコメディ映画とかベタ過ぎるラブストーリーは私のテリトリー圏外なの避けて欲しいぜ。あぁ来年のドーム公演、楽しみだなぁ~。

↓作品について、詳しくはこちら

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流行語大賞

最後に発表するのは個人的流行語大賞になります。

クリード 過去の逆襲』よりSHIN JIDAI

「ロッキー」シリーズを継ぐ「クリード」シリーズの3作目。そのエンドクレジット後に日本限定でわざわざ用意されていた謎のアニメーション短編が『クリードSHIN JIDAI』です。映画館のスクリーンにデカデカと映し出されたあれは一体何だったのか?そもそも本当に目撃したのでしょうか?…私の中で迷宮入りの難解なミステリーと化しています。

そんなわだかまりを抱えてしまったのが影響したのでしょう。事あるごとに"SHIN JIDAI"を連呼しまくった2023年。語尾に元日本ハム監督のトレイ・ヒルマンの「シンジラレナ~イ」っぽく「SHIN JIDA~I」を付けるとそれっぽくなるんですよ。”紅白歌合戦SHIN JIDA~I”とかね。今年の世間的な流行語大賞の「アレ」より汎用性が高いので是非使ってみて下さい。

まとめ

以上、今年の締めくくりとなる2023年映画の諸々のベストでした。

よし、今年は去年比べ割とスムーズにベスト選出が出来ました。良いのか悪いのはさておきもうちょっと悩む時間を楽しみたかったかも。なにせ来年は『マッドマックス:フュリオサ 』があるんで。もう観る前からボルテージが違います。早く公開日決まんないかなぁ~。前売り券出たら走って2~3枚は買いに行こ。

という事で今年はこの辺で。ありがとうございました。

第211回:2023年ベスト映画(前編)

ついにこの時がやって来ました。2023年の総決算、ベスト映画を決める運命の季節です。今年私が映画館で鑑賞したのは全95作品。全タイトルがこちらになります。

  • 非常宣言
  • ファミリア
  • SHE SAID/シー・セッド その名を暴け
  • グッドバイ、バッドマガジンズ
  • ノースマン/導かれし復讐者
  • イニシェリン島の精霊
  • FALL フォール
  • バイオレント・ナイト
  • バビロン
  • コンパートメントNo.6
  • 別れる決心
  • アラビアンナイト三千年の願い
  • ボーンズアンドオール
  • 逆転のトライアングル
  • エンパイア・オブ・ライト
  • フェイブルマンズ
  • エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス
  • ホーリー・トイレット
  • ひとりぼっちじゃない
  • シャザム! 神々の怒り
  • ベイビーわるきゅーれ2ベイビー
  • マッシブ・タレント
  • ベネデッタ
  • エスター ファースト・キル
  • オオカミ狩り
  • ザ・ホエール
  • AIR エア
  • 聖地には蜘蛛が巣を張る
  • ハロウィン THE END
  • ダークグラス
  • ヴィレッジ
  • レッド・ロケット
  • ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーVol.3
  • EO イーオー
  • フリークスアウト
  • TAR ター
  • ソフト/クワイエット
  • after sun/アフターサン
  • クリード 過去の逆襲
  • 怪物
  • THE KILLER 暗殺者
  • スパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバース
  • ザ・フラッシュ
  • プー あくまのくまさん
  • To Leslie トゥ・レスリー
  • リバー、流れないでよ
  • マルセル 靴をはいた小さな貝
  • インディ・ジョーンズと運命のダイアル
  • Pearl パール
  • 君たちはどう生きるか
  • マッド・ハイジ
  • ヴァチカンのエクソシスト
  • ミッション:インポッシブル デッドレコニング Part1
  • イノセンツ
  • 神回
  • 658km、陽子の旅
  • バービー
  • クライムズ・オブ・ザ・フューチャー
  • トランスフォーマー ビースト覚醒
  • 春に散る
  • 君は行く先を知らない
  • ステロイド・シティ
  • オオカミの家
  • グランツーリスモ
  • ジョン・ウィック:コンセクエンス
  • ミステリと言う勿れ
  • PIGGY ピギー
  • コカイン・ベア
  • イコライザー THE FINAL
  • ハント
  • キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン
  • カンダハル 突破せよ
  • ザ・クリエイター 創造者
  • ロングショット(TIFF)
  • 開拓者たち(TIFF)
  • エクソシスト/信じる者(TIFF)
  • SISU/シス 不死身の男
  • ザ・キラー
  • ゴジラ-1.0
  • 愛にイナヅマ
  • こいびとのみつけかた
  • 正欲
  • デシベル
  • ロスト・フライト
  • ナポレオン
  • VORTEX ヴォルテックス
  • TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー
  • PERFECT DAYS


再上映作品

はい、今年もギリギリ100本には到達せず。ひゅ~(汗) 映画評論家の柳下さんかな?映画館鑑賞の100本の壁があるんだ的な話をしていたの。それを超えると歯止めの効かなくなるみたいな。この理論だと私ももう少しで領域展開に陥ってしまう…。

さて、それは置いといてこの中から感動と興奮に苛まれた10本を選出し傍若無人にランク付けをしていこうと思います。例年通り再上映作品はランキングからは除外。また東京国際映画祭(TIFF)で鑑賞した作品、『ロングショット』と『開拓者たち』も今後公開予定の可能性を鑑みて対象外とし、あくまで劇場で一般公開された新作のみを対象にします。毎度のことながら、ややネタバレ注意です。

↓去年の内容はこちら

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↑今年入手したパンフレットたち。どれも良いデザイン。

その前に

トップ10発表の前に再上映は含めないとはいえこちらの作品には触れて置かなくてはいけないと思いました。それが『食人族』。1980年公開の大問題作。こちらが4K無修正版というとんでもないバージョンで劇場公開となりました。私、初見だった事もあって途轍もない衝撃にブチのめされました。どう考えても倫理、道徳に反する描写の数々。しかし困った事にこれが滅茶苦茶面白い。好奇心を掻き立てる巧妙な構成と演出に脱帽です。登場キャラクター、映画の作り手、そして鑑賞者全てが野蛮で狂暴な人間に感じる背徳映画でした。きっとこんな映画が生まれる事は今後ないでしょうね。そう考えると奇跡ですし、それを映画館で観られたのは貴重な体験でした。

↓詳しくはこちら

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第10位

それではランキングの発表にいきましょう、第10位は...

 

『PIGGY ピギー』

 

いじめっ子たちが拉致されるのを目撃した少女の最高じゃないスペイン産青春グラフティ。

自身を苦しめる加害者が転じて被害者となった姿を目撃したら人はどうするのか?というセンセーショナルなテーマの時点で良作確定。いじめへの断罪と同時にだからといって犯罪や暴力の黙認をしても良いのか?良心のグレーな部分を刺激してきます。

ただこれだけにとどまらないのがまた面白い。思春期ならではの鬱屈した思いやルッキズムとの格闘、さらにどす黒い欲望も。藤井風の『青春病』って曲に「青春はどどめ色」という歌詞が出てきますが、まさにそんな映画でした。決して綺麗じゃない青春、実はこういうのが心にクリーンヒットする人が多いのでは?少なくとも私はそうです。だって思い返せば綺麗な思い出ばかりじゃないはずですから…。

それとラストが超カッコイイ。今年のベストラストシーンかも。『悪魔のいけにえ』(1974年公開)よろしくな赤銅色の朝焼けに心ときめきます。

第9位

第9位は・・・

 

『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』

 

殺しを生業とする凄腕女子2人組による日常を描くアクションコメディ。前作観てないしぃ…という理由で観に行かない選択をしなくて良かった。ナイス俺!

恐らく現邦画界における最高レベルのアクションを堪能する事が出来ます。格闘、銃撃どれをとってもキレ味抜群。着ぐるみファイトとかいう面白アイディアなアクションも楽しいです。そんなアクションとは対照的な社会に馴染めず悪戦苦闘する2人をオフビートに描いた日常。シャープさとダウナーさでバランスを取った殺し屋映画なんてそうお目にかかれるものじゃないですね。

これがきっかけで阪元祐悟監督という今後追っていきたい監督ができました。恐らく本作を観てなければ2021年の前作を始め、『ある用務員』(2021年公開)や『最強殺し屋伝説国岡』(2019年公開)等々もチェックしていなかったでしょう。何ならU-NEXTに登録してたかどうかも怪しい。ありがとうベイわる!来年公開予定の新作も楽しみにしてます。

第8位

第8位は・・・

 

『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』

 

#MeToo運動の火付けとなったハーベイ・ワインスタインの性的暴行問題を暴いた新聞記者を描いた社会派ドラマ。性加害に関しては今年日本でも旧ジャニーズ事務所の問題が明らかになり、多くの人が考えたのではないでしょうか。

映画そのものはアポとってインタビューしての繰り返しなので単調で地味なのですが、それが寧ろ映画全体を強靭なものにしておりジャーナリズム映画として素晴らし仕上りになっていたと思います。この単調で地味というのが昨今のメディアに必要ではないでしょうか?極論、ジャーナリズムにエンタメなんて要らないんですよ。政治や権力に対して常に監視の眼差しを向けていく、そして間違った方向に行った/行きそうなら修正をかけるよう促す。この繰り返しを地道にやってかなければならないと思います。今年は私人逮捕なんて言葉も出回りましたが、そんなに悪を糾弾したいならジャーナリストなれよ!暴力じゃなく公的な言葉で潰せ!そんなジャーナリズムはこうであって欲しいという私の願いも込みでランクインとしました。

それと主演の一人であるキャリー・マリガンが良い。先日観たブラッドリー・クーパー監督作『マエストロ 音楽と愛と』にも出演してましたが、やっぱりこの方上手いよね。感情を表に出したチャーミングな表情も出来れば、怒りや使命を内側に秘めさせた抑えめの表情も。諸々の感情を自由自在に操ってる感じがします。

第7位

ラッキーセブンですよ、第7位は・・・

 

『オオカミ狩り』

 

凶悪犯たちをフィリピンから韓国へ移送するための貨物船で巻き起こる凶悪犯vs警官vs怪物の三つ巴バトル映画。

本年度ベストスプラッタ映画であるのは間違いないでしょう。老若男女、美男も美女ももれなく血塗れと去年公開の『哭悲 TEH SADNESS』ばりにドバドバじゅるじゅる。個性的なキャラクターも多数(中でも一番は女刑事さんだな)登場するご機嫌な内容でした。

それに今の韓国映画が8~90年代のハリウッド大作らしいザ・エンタメ映画を積極的やろうとしていると感じさせました。本作で言えば『コン・エアー』(1997年公開)にユニバーサル・ソルジャーが殴り込んできた景気の良い映画でしたし、その他私が鑑賞した作品でいえば『ハント』や『非常宣言』、『デシベル』もスケール感がひと昔前のハリウッド的で、様々な作品を彷彿させるどれも楽しい映画でした。今一番ド直球のエンタメ映画が撮れるのは韓国なのかもしれませんね。いつからそうなったんだろう?

ちなみに今作での映画館体験もなかなか興味深かった。従来こんなバイオレンス作品に人ってそんなに集まらないと思うんです。しかしこの作品は違った。登場人物の一人 人殺し大好きなイケメンチンピラを演じたソ・イングクさんのファンの方々と思わしき女性陣で映画館は満席。それにこの映画について書いた回のアクセス数も結構伸びたようで。ほんと凄いっすよ推し活パワーは、日本経済の救世主は"完璧で究極のアイドル"なのかもしれません。

第6位

第6位は・・・

 

AIR エア』

 

バスケシューズにしてファッションアイテムとしても名高いエア・ジョーダン誕生を描くお仕事映画。

私、バスケについて全く存じ上げない弱者。今年は沖縄でバスケのW杯があったらしく(そもそもバスケにもW杯があったのか)、何だか日本も頑張ったっぽいですね。ボク八村塁しか知らんからなぁ…。かと言ってスニーカーが好きってわけでもないんですよ。足のサイズが微妙な人間なので、なかなか合う靴が見つからんしさぁ。

それでもこの映画は面白かった。業績が落ち込むナイキを立て直すため、まだ無名時代のマイケル・ジョーダンと契約を結んでシューズを作ろうという博打におっさんたちが奮闘。奮闘といっても基本電話。電話ばっかりしてるのに見入ってしまうのは俳優力に尽きるでしょう。マット・デイモンジェイソン・ベイトマンクリス・タッカー、そしてベン・アフレック。根拠のない情熱で突き進む姿を観ていると何だか“さぁ!頑張ろう~ぜぇ~♪”な気持ちになってきます。今年は『グランツーリスモ』や『カンダハル 突破せよ』のような、おっさんたちのアツきお仕事映画が豊作だった気がしますね。元気が出る映画ってこういう事ですよ。Just Do It!

第5位

ランキングも半分まできました、第5位は・・・

 

『別れる決心』

 

夫殺しの容疑を掛けられた女性と事件を追う男性刑事によるラブサスペンス。

先程の7位で韓国映画はハリウッド的エンタメやってんな と書きましたが、私の好きな監督パク・チャヌクは変わらずパク・チャヌクやってました。

とはいえ今回は他作品に比べるとケレン味たっぷりな作家性は落ち着いていたでしょうか?いやそんな事もないか。寧ろエロさに関しては磨きがかかっていたかもしれません。直接的な描写は封印、しかしそれがなくとも思わずドキッとしてしまうシーンは多かった印象です。だってさ、何で取り調べ室で2人が寿司食ってるだけでエロい画が撮れるのよwリップクリームの使い方もエグい。相変わらず視線や息づかいのやり取りにも色艶があり品のあるエロスが匂い立っていました。監督、やっぱエロいぜ!

と「エロい」ばっか言ってると変なアカウントから連絡が来そうなので、真面目な視点を。話の本筋自体は典型的なノワールタイプのサスペンス。しかし物語が進むにつれて容疑を疑われている女性視点の心情を入ってくるので、男性視点と女性視点が交差するちょっと変わったノワールものになっているとは思うんですね。こうした複雑怪奇なストーリーってのもチャヌク監督作品の面白さでもあると思いました。

第4位

第4位は・・・

 

『逆転のトライアングル』

 

階級社会やダイバーシティの矛盾を痛烈に皮肉る逆転に次ぐ逆転ブラックコメディ。

まるで昨今の多様性だの平等主義に中指を立てるかのような今年度ベスト意地悪映画。結局、安息地からギャーギャー申し立てたって仕方ない。いざ自分の置かれた社会的/経済的立場が揺らぎ、反転するような事があれば人はどうなるかを嘲笑う性格の悪さが滲み出ていて最高でした。映画だから許されるっていうか、こうしたアイロニーは文化芸術に必要な要素だと思います。これがカンヌでグランプリってのも加点ポイント。いや選考委員の皆さんどんな気持ちよw 

また今年、というより定期的にネットで話題になるデート代の奢り奢られにおけるある種のアンサー的な描写も面白かった。これ万国共通のモヤモヤなんですね。もう面倒くさいから、稼いでほうが払え!同じぐらいなら仲良く出し合え!以上!

第3位

ここからはトップ3。見事銅メダルに輝いたのは・・・

 

『首』

 

北野武が仕掛けるコント”本能寺の変”。

おふざけが強いコメディ映画は大半受け付けない私ですが、これはストレスなく面白く観られました。おふざけはおふざけでも合戦シーンや衣装/装飾がリッチに仕上がっているので、TVやネット動画の程度の低いバラエティっぽさを感じなかったからかもしれません。思えば9位の『ベイビー~』もコメディ映画でしたが、あれだってアクションの質が高いからチープさを感じずに気持ちが冷める事なく楽しめたんだと。

ともあれ私の中で冬眠していた戦国オタクの血が覚醒!よくある勇ましく美しい英雄伝ではないタカが外れた連中による血と泥の権力闘争が描かれていました。だって考えてみて下さいよ。敵国や主君と家臣で争うどころか親子兄弟でも家督を巡り殺し合う時代。一国の主に留まらず全国を権力下にしようなんて相当狂った人間じゃなきゃ出来な芸当でしょ。だからそこ、こういう戦国が観てみたかった。個人的な願望が叶いましたし、山崎の戦い以降の流れを描いた続編があってもええんやで。

ちなみに鑑賞したちょっと後に秀吉が大規模な花見をした事でも有名な京都の醍醐寺へ行きました。桜ではなく紅葉が見頃の時期でしたが、しっかり聞こえてきましたよ。「花見してぇんだ、バカヤロー!さっさと植えろよ!」の声が。

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第2位

お次は準優勝作品、堂々の銀メダルに輝いたのは・・・

 

『SISU/シス 不死身の男』

 

伝説の元軍人爺さんとナチスの戦車隊が爺さんの掘り当てた金塊を巡って争うフィンランド産バイオレンスアクション。

実は私、日本公開が決まる以前に偶然YouTubeで予告を見ておりまして、陰ながら公開を待ち望んでいた作品でした。昨今の舐めてたおっさんがヤバかった系痛快アクションなんだろうなぁと。そんな期待は思い切り超えてくる快作でした。

今年はこの舐めてたおっさんがヤバかった系映画は『ジョン・ウィック:コンセクエンス』(もはやその枠ではない?)や『イコライザーTHE FINAL』とありましたが、本作はどちらかといえば「マッドマックス」タイプ。っていうかやってる事が『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015年公開)というまさかのFR魂の継承作品だったのです。そりゃもうテンション爆上げですよ。7位に挙げた『オオカミ狩り』同様、無駄な贅肉が一切ないストイックな純エンタメ作品。こちらの方がよりストイックに絞っている印象を受けました。PascoのCMじゃないですけど”余計なものは入れない”の精神は非常に大事なのです。

この作品から得られる大事な精神はもう一つ。死なないと心に決める事、「決める」のが大事です。かの「元気があれば何でも出来る」と同じで死なないと決めれば何とかなるんです。世の中にはすぐ「死にたい」なんて口走る人も居ますが、死にたくなったら思い出しましょう。死なないSISU爺さんの事を。

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第1位

それでは第1位。2023年の玉座に鎮座す栄えある作品は・・・

 

 

スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』

 

イエ~イ!

2018年公開『スパイダーマン:スパイダーバース』の続編。この2018年の作品も革新的でしたが、今作はそれをも凌駕するもう本当に凄いもん目撃したっ!という衝撃。今後アニメーション映画の歴史を語る上で重要な作品になってもおかしくないのでは?

冒頭、グウェンとバルチャーのグッゲンハイム美術館での戦闘シーンの時点で腰抜かすかと思いました。キャラクターごとに絵のタッチや色彩がまったく異なる、しかもそれを疾走感マックスのハイスピード映像で魅せるという神作画。いちいち面白い色彩や動きがあるので、人間が1度観て処理が出来る脳のキャパを優に超えてきます。映像表現の限界値、そんな映像体験をさせて貰いましたし、まだまだ映画にも可能性があるように思えてなりません。

また映像表現だけが突き抜けているわけではなくストーリーも野心的でした。今まで描かれてきた「スパイダーマン」の固定観念を覆すかのような展開は激アツ。ラストの終わり方もズル過ぎる。映像や音楽といった技術面と物語やメッセージ性のバランスの良さといった点でも今年トップレベルの大傑作だったと思います。

完結編となる『ビヨンド・ザ・スパイダーバース』の公開が未定となってしまいましたが(何だか制作スタッフが相次ぎ“こんな熾烈な現場やってられっか!”と離脱したとか)、頑張って公開して欲しい。公開したら走って観に行くんでお願いします。

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まとめ

以上、全細胞おろか全DNAまで結集させて選び抜いた至極の10+1作品でした。マイベストにおいてアニメーション映画が1位となるのは史上初。珍しくコメディ系統の作品も複数入っており"SIN ZIDAI"の到来を予感させます。

その他『after sun/アフターサン』グランツーリスモ『バイオレント・ナイト』『イノセンツ』も大変素晴らしかったのですが、惜しくもランクインさせる事が出来ず。これらもオススメですから観てない人は観てね。

という事でいつも通り長尺なってきました。映画でも長尺はブーブー言われますし一旦お開きにします。後編では印象に残った役者やアクションシーン、そして個人的に頭を抱えた作品について言及します。それではありがとうございました。

第210回:映画『VORTEX ヴォルテックス』感想と考察

今回は現在公開中の映画『VORTEX ヴォルテックス』を語っていこうと思います。毎度のことながら、ややネタバレ注意です。

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↑花!カッコいいっすね

イントロダクション

病を患った老夫婦を分割映像による2つの視点から同時進行で描いた作品。

心臓に持病を抱えた映画評論家の夫(ダリオ・アルジェント)と認知症の元精神科医の妻(フランソワーズ・ルブラン)。妻の認知症は日に日に悪化の一途を辿り、日常生活へも支障をきたすようになっていた。そこへ離れて暮らす息子(アレックス・ルッツ)が訪ねて来る。彼自身も多くの問題を抱えており、両親に付ききっりというわけにはいかない状況だった。

監督はギャスパー・ノエ。私、初ノエ作品となりました。有名どろこの『アレックス』(2002年公開)や東京が舞台らしい『エンター・ザ・ボイド』(2009年公開)は予習も兼ねて観ておこうと思ったのですが…。間に合わなかったので復習って事で観てみよ。

出演者での注目はやっぱりダリオ・アルジェントでしょう。役者としての登場は初、映画監督としてはマリオ・バ―ヴァやルチオ・フルチと並んでイタリアンホラー いわゆるジャッロ映画をけん引してきた巨匠です。近年ジャッロ的要素を含んだ作品(2021年公開『ラストナイト・イン・ソーホー』等)が多くあり、ちょっとしたブームだったような。監督本人の作品でいえば『ダークグラス』(2022年公開)が最近公開していました(日本公開は今年か)。個人的にはダリオ・アルジェントと聞くと『ゾンビ』(1987年公開)のアルジェント版が思い浮かびます。たしか尺を短めにカット&冒頭にゾンビ発生源の理由付けのシーン(惑星だかの爆発による放射線?)があるバージョンですよね。とはいえ私が一番観てるはディレクターズカット版な気がする。あーなんか久々に『ゾンビ』観たくなってきた、定期的に観たくなるのよね。

先に壊れるのは…

まずいっておきますが、大きな病気をしたとか近いうちに定年後の生活が待ってます な方々はあんまり観ない方が良いんじゃないか?あまりに生々し過ぎるので年齢を重ねるごとに観るのが辛くなっていくであろう映画です(観客はご高齢の方が多そうだっただけに)。

どんな人間にも必ず訪れる老い。老いれば体の節々にガタが生じ、病気にもなりやすくなるのは生きていれば誰もが通る道です。では老いて病に侵された場合、先に壊れるのは身体かそれとも精神なのか?こうした普遍的な恐怖に真摯に向き合ったある種ホラー映画だと感じましたし、病は人と人との間に隔たりを作り出し、肉体的そして精神的に破壊する究極の暴力と捉える事も出来るとも思いました。こえ~。

そんな老いと病によって緩やかに崩壊していく様をスプリットスクリーンで冷徹に映し出されており、父/母/息子三者の繋がれそうなのにすれ違ってしまう曖昧でもどかしい距離感が表現されています。個人的には施設に入れるか否かでお母さんを真ん中にお父さんと息子が言い合いになるシーンが凄かった。距離感がほんと絶妙でしたね。

この非常に効果的な使われ方をしている2分割画面ですが、慣れるのにはちょっと時間を要しましのも正直なところ。どっちか片方ばかり気にして注目してしまうと、もう片方が何をやってたかを見逃すという事が序盤何度かありました。そういえば観ている最中、チャーリー・プースのセレーナ・ゴメス フィーチャリング曲「We Don't Talk Anymore 」のMVなんかも思い出しましたけど、あれよりはゆっくり&同じ空間で展開してる事が多いので追いやすいかも。いや、画面が大きいと追いづらいってのもあるか。

まとめ

以上が私の見解です。

画面2分割のスプリットスクリーン以外にも、最初に洒落たクレジットが流れる構造やタイトルが出た後、ひらすた本筋とは関係のない顔面アップの女性の歌唱シーンを見せられるといったようにかなり特殊な作りの作品となっています。監督さん、映画で何が出来るのかを色々実験がしたいんでしょうね。そうなると他作品も相当クセがあるんだろうな、合う合わないがハッキリしそう。

という事でこの辺でお開きです。ありがとうございました。

第209回:映画『ナポレオン』感想と考察 ※『ブラック・レイン』についても

今回は現在公開中の映画『ナポレオン』について語っていこうと思います。毎度のことながら、ややネタバレ注意です。

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イントロダクション

フランスの英雄として名高い皇帝 ナポレオン・ボナパルトの半生を描いた歴史大作。

18世紀末のフランスは革命によって大きな混乱に揺れていた。そんなフランスの若き軍人 ナポレオン(ホアキン・フェニックス)は天才的な統率力を発揮。各地で快進撃を繰り広げ、クーデターにも成功して皇帝にまで昇り詰めていく。しかしその一方、一目惚れで結婚をしたジョゼフィーヌ(ヴァネッサ・カービー)とは、なかなか上手くいかず変にねじ曲がった関係が続いていた。

監督はリドリー・スコット。『エイリアン』(1979年公開)や『グラディエーター』(2000年公開)、直近では『最後の決闘裁判』(2021年公開)といった様々な作品を手掛けてきた巨匠。そんな中でもやっぱり見逃せないのが『ブレードランナー』(1982年公開)でしょう。なんでしょうね、あの唯一無二な世界観。決して凄く面白いわけではないんですけど一体何回再上映を観に行ったかな?底知れぬ魅力があるSF映画の金字塔です。

主演のホアキン・フェニックスは今や大スターとなりました。やっぱり『JOKER』(2019年公開)が大きかったのかな。『容疑者、ホアキン・フェニックス』(2010年公開)で一回消えたとは思えない活躍ぶりです。そういえば『ボーはおそれている』の日本公開が決まりましたね。楽しみです。そして本作のもう一人の主役といっていいのがヴァネッサ・カービー。「ミッションインポッシブル」シリーズにも出ていますし、お産のシーンが凄まじい『私というパズル』(2020年公開)なんて映画もありましたね。

「不可能」の文字はあった

ナポレオンと言えば「我が辞書に不可能という文字はない」ってのが名言として残ってますが、いや不可能な事あるじゃないすか。それが夫婦円満

婚約した時期から早々に仲が良いのか悪いのかよく分からない微妙な関係を続け、結局世継ぎ跡取り云々で離婚というか別居というか。浮気が分かれば戦線放棄もするわでなかなか無茶苦茶です。っていうかあの"マッマッ"と口をパクパクさせて奥さんに惚気るのは一体誰の思いつきだよwあれが史実って事もあるの?w高速ピストンといい場内の空気的に笑っていいのか迷いましたね。そもそもナポレオンさん自身がちょっとウジウジしたマザコン気質があるよに見えるんです。だから夫婦仲が変になるんじゃね?ジョゼフィーヌさんが奔放で肝っ玉ってのもあるんだろうけど。

この不可能な夫婦円満が後々のキャリアに響いたのか、次第に勢いを失っていくナポレオンさん。兵術の才があった事で人気となり皇帝にまで上り詰めたけれど、英雄というよりもそんなに強くない男というのが今作のナポレオン像でした。まぁこの強くない男ってのは割と監督作品では多いですよね。『悪の法則』(2013年公開)然り前述『最後の決闘裁判』然り”男より女の方がつえ~” みたいな路線が今作にもあった気がします。

まとめ

以上が私の見解です。

率直に言うと愛憎劇より戦闘のシーンがもっと観たかった。ワーテルローの戦いでのイギリスの方形陣とかアツかったです。『レッドクリフ』(2008年公開)思い出しちゃった。大砲もバカスカ撃ちまくるし数の暴力としか言いようがない人馬と贅沢過ぎる映像だけにそう思いました。でもあれだけ贅沢なのになんて言うさらっとした平熱感があったよね。愛憎劇パートだって割っとさらっとしてたし。あっそれはAppleTVで配信される4時間越えと噂のバージョンで濃くなるのか?AppleTVに加入する気はないけど、気になるなぁ。DVDとか出ないかなぁ。

という事でこの辺でお開きです。ありがとうございました。

※ちなみに

一部映画ファンはお気付きでしょうが、実は現在リドリー・スコット監督作品がもう一つ映画館で流れているのです。それが午前10時の映画祭で上映している『ブラック・レイン』(1989年公開)。私『ナポレオン』を観に行く前にこちらを観て、一人勝手にリドスコ祭りをやっておりましたので、その話もさらっとしておきます。

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NYで逮捕したヤクザの頭(松田優作)を大阪へ護送。しかしなりすましの警官に引き渡すというミスを犯した事で異国の地で何としても逮捕しようとする刑事たち(マイケル・ダグラスアンディ・ガルシア)が描かれます。

ヤクザ映画的な任侠モノとハードボイルドなノワール映画を掛け合わせたような作品。そしてマイケル・ダグラス高倉健の日米バディ映画でもあります。バディっていうかブロマンスといっても良いかも。警察組織やお国柄違いを超えて築かれる絆に痺れます。

また、舞台である大阪がまさに『ブレードランナー』と化しています。本当は新宿歌舞伎町で撮りたかった的な裏話をどっかの雑誌で読んだ気もしますが、大阪でも充分な画になっています。道頓堀のごちゃついた感じも去ることながらあの阪急梅田駅のとこが良いですね。現在は名残があるだけになっちゃってますが、昭和モダンな感じが格好イイです。あと屋台でうどん食ってるシーンが「ブレラン」ですね。“2つで充分ですよ~” それ以外にもやたら麺を啜ってる場面が多かった印象。健さん、初登場シーンはそば食ってたし。飯食ってるシーンが残る映画は良作です。

リドリー・スコット作品の中で純粋な面白さで選ぶなら今作が一番かもしれないです。そういえば以前『ブレードランナー』の再上映を会社の同期と観に行って微妙な顔されたこと思い出したわ。こっちオススメすべきだったかねぇ~。

第208回:2023年を映画関連ニュースで振り返る

気付けば今年も残りあと1か月。ついにこの自分だけ楽しい企画を行う季節となりました。思えば今年はコロナウイルスの話題も薄まり人々が良くも悪くも活動的になってきたのでしょうか。年明け早々闇バイトなるバイト感覚で犯罪に手を染める若者たちが社会問題に。某海賊アニメへの風評被害もさることながら、やはり根本にあるのは経済的あるいは精神的貧困や不景気という事になるわけで、対策が急がれる岸田首相は爆弾による襲撃に遭うというきな臭い事件も起こりました。G7広島は成功したのかもしれませんが、経済対策や少子化対策(こども家庭庁?)、マイナンバーの不備をどうにかしてくれというところで問題は山積み。支持率低下もあってか増税メガネなんてイマイチな蔑称まで飛び出しました。

そんな日本において今年最も大きなニュースとなったのはジャニーズ性加害問題でしょう。ジャニー喜多川による悪行は、過去に一部週刊誌での報道や暴露本の出版があったものの真剣に向き合う事を避けてきた日本社会。BBCという他国からの糾弾には黙ってられなくなったのでしょう。社名変更や所属タレントの相次ぐ退所、CM/歌番組への出演の大幅減少、さらに紅白歌合戦への出演が一切なしと波紋を呼んでいます。(だからといって流行語大賞の候補に性加害がノミネートされるのは流石に気持ち悪さを感じます、流行りみたいに言うのもねぇ)

そして世界に目を向けてみると、ウクライナ侵攻(まさかレオパルト2に注目が集まるとは)の終わりが見えない状況下でイスラエル ガザ地区の軍事衝突が苛烈化。ワイ島の山火事トルコ・シリア大地震もあり、いよいよ世界が黙示録的なフェーズにでも突入したかのように混迷を極めています。

その他、ヌートバー「アイドル」インボイスカイラサ合衆国チャットGPTDon't worry I'm wearingクマ被害ウータン卒業が話題となった2023年。映画関係でも様々なニュースが飛び交いました。細かいニュース含めると膨大な情報量となるので、個人的にデカかったと思う話題を偏った独自見解まみれで振り返ってみようと思います。

↓こちら中野サンプラザでの一枚、再開発に伴い今年閉館となりました。

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↓去年の内容はこちら

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変わる配信サービス業界

まずは、毎年目まぐるしく変わる配信サービス業界の話からいきましょう。

私、今年からU-NEXTに加入しましたが、今年U-NEXTはParaviと統合しました。まぁ統合というかU-NEXTが吸収したといった方が良さそうですが、これで国内最大規模の配信サービスになったのではないでしょうか。U-NEXTって映画・ドラマに限らずエンタメ総合プラットフォームって感じ。有線サービスのノウハウを活かしてのサービス展開でしょうね。(就活の時、USENの採用試験受けたっけなぁ…)

また『怪物』でカンヌ国際映画祭脚本賞を受賞した坂元裕二は、Netflixと5年契約を締結。その1発目として映画『クレイジークルーズ』も11月配信されました。坂元裕二の作品は暫くはNetflix独占という事になるのか?『東京ラブストーリー』などTV業界で活躍してきた方が配信サービスに鞍替えって事ですから時代を感じさせます。

さらにGAYO!のサービス撤退Paramount+が日本上陸と新旧プラットフォームが群雄割拠状態。世はまさに配信サービス戦国時代です。いち消費者としては困ったものです。観たい作品ごとに独占配信されているプラットフォームが異なるので、一体どれだけサブスクの掛け持ちしないといけないんだって話。評論家やコメンテーターの方々はさぞかし大変でしょうね。

これら配信業界の煽りを受けたのは間違いないでしょう。国内最大規模を誇ったSIBUYA TSUTAYAでの店頭レンタルが廃止となりました。渋谷に行く用事があれば、ほぼ必ず覗きに行っていたレンタルコーナー。平気で1時間近くブラブラしてしまうその物量は私にとって“こんなに観た事ない映画があるのだ”という洗礼を受け、映画への思いを引き締める場所だったんです。ネットでレンタル出来る?違う、そうじゃないんだ!大事なのは「所狭しと陳列」なのよ。一時代の終焉は哀しいものです。

↓『怪物』についてこちら。

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ハリウッドでのストライキ

こうした配信サービスの隆盛は映画を作る側の人々にも影響を与え、それらによって起きた問題解決のためハリウッドが立ち上がりました。

5月から約1万人の脚本家が加入する全米脚本家組合ストライキを行う事を発表。その後7月からは追随するようにハリウッド最大規模の組合である全米俳優組合ストライキを始めました。俳優と脚本家の同時ストは1960年代以来63年ぶりとなり、製作停止による作品公開日の延期や俳優のプロモーション活動停止によるハリウッドスターの来日キャンセルも相次ぎました。

そのストライキの内容は、動画配信サービス関連企業に対するの適切な賃金やロイヤルティの是正と人工知能(AI)を使用する際の保証が主な争点となりました。

まず動画配信におけるギャラの問題ですが、こちらは以前から問題として話題となっていたかと思います。一昨年の本企画で取り上げました MCU作品『ブラック・ウィドウ』が当初、劇場公開のみの契約だったはずが配信サービスとの同時公開によって貰えたはずのロイヤルティが減ったという事で、主演のスカーレット・ヨハンソンがディズニーを提訴したなんて話もありましたし、後でまた名前が登場しますクリストファー・ノーラン監督も動画配信関連で揉めてワーナーブラザーズと手を切った話がありました。この問題に関しては有名役者/監督だから表沙汰になったわけで、他にもこうしたトラブルが絶えなかったからこそ今回の動きとなったのでしょう。

またAIに関してはどうなんだと驚きましたよ。AIでスキャンした俳優を作品に出して永続的使うみたいな。で、報酬はそのスキャンした際だけ発生ってそりゃ酷い搾取だこと。やくざ的にいえば“顔でメシ食ってんだ、馬鹿野郎!”です。脚本に関しても今やAIに小説や脚本を書かかせるだなんて血の通ってない無機質な事をやるなと思いました。そこまでして人件費を削減したいんですかね、世知辛い世の中です。

なお、AI技術の発展は脚本家や俳優のみならず、多くの人々の職業にも絡んでくる問題だと思います。何でも手当たり次第にAIや自動化で代替なんて事になれば、雇用がなくなりますからね。仕事がなくなればお金を得る仕組みは破綻、極論資本主義社会が立ち行かなくなるのでは?技術革新が必ずしも良いとは限らないそんな気がしてなりません。技術を開発する側のインテリさんもメリットばかりでなくデメリットも考慮してほしいものです。

現在、双方共に主張内容の合意が概ね取れ、脚本家組合は9月に、俳優組合は11月にスト集結となっています。各企業としては、動画やAI導入で恐らくどさくさ紛れのコストカットを狙ってたのかもしれませんが、そうはいかなったかな?仕事には正当な報酬を払えという事。西武そごうのストとは違ってしっかり結果が出ました。

俳優たちの不祥事

こうした時代の進歩とも戦わなくてはいけない俳優たちですが、今年は俳優の不祥事関連もちょこちょこありました。

数年前から暴行による警察沙汰やグルーミング、薬物疑惑とトラブルまみれのエズラ・ミラーが主演の『ザ・フラッシュ』。さらにDV疑惑で裁判沙汰のジョナサン・メジャーズの出演しているクリード 過去の逆襲』が公開されました。私自身どちらの作品も観に行きましたが、決してまっさらクリアな気持ちで観ていたわけではありませんでした。二人とも演技が上手いから尚更モヤモヤするのよねぇ…。

俳優のトラブルの扱いは海外でおいてどのぐらいものなのか、世論的にはどのようなリアクションなのかは分かりませんが、日本においても様々なトラブルがありました。まず広末涼子が芸能界抹消という形に。私、ぶっちゃけ不倫というパーソナルな問題程度であそこまでこっぴどくタタき潰す世間にも恐ろしさを感じざるを得ません。まぁ芸能界抹消には他にも何か理由があったのかもしれませんが。

また薬物使用の容疑で逮捕された永山絢斗のケースに関してもそうです。確かにこちらは法律違反という意味で不倫以上のシビアな判断を要しますが、二度と表舞台に出られないぐらいのプレッシャーをかけるのはちょっと違うと思います。現に逮捕後直近で公開が控えていた「東京リベンジャーズ」の最新作はそのまま公開となりましたし、過去に薬物使用歴のある方の俳優業復帰もある(沢尻エリカって復帰するのね)ので、昔ほどの手厳しい風潮は無くなったのかもしれません。

どちらも人殺したわけじゃないですしねぇ。という点で言うと自殺幇助の容疑で逮捕された市川猿之助に関しての処遇(出演映画の公開中止やNHK+での出演作の配信停止)は致し方ないと思います。映画やドラマってたいてい人が死にますからね。さすがに殺人系統の容疑の掛かった人の出演作は気が進まん…。

こうした問題は昨今のキャンセルカルチャーにも結びつくテーマ。以前どっかで書いたかもしれませんが、キャンセルカルチャーは個人各々で行うものだと思っています。”あいつが出演してる作品は観るな”と社会全体が強要し、皆で同じ方向となるのは如何なものか。それは不健全な文化だと思います。

↓『ザ・フラッシュ』と『クリード 過去の逆襲』についてはこちら。

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“バーベンハイマー”問題

てな感じで不祥事には割と寛容なところを持ち合わせていますが、こちらはちょっと看過できないぞ。それがバーベンハイマー問題です。

米国にて世界的人気を誇る人形 バービーを実写化したコメディ映画『バービー』と原爆開発者を描いたクリストファー・ノーラン監督の最新作オッペンハイマーが同日公開となり双方共に大ヒット記録。2本立てで観に行く人が増えた事もあり、ファンの間で2作品の画像を加工/合成し、キノコ雲の髪型をしたバービーや爆発を背景にキャラたちが笑っている画像をSNSに投稿するのが流行したのが「バーベンハイマー」です。

いわるゆミームというもの。まぁこれ自体は別に良いんですよ。そりゃ私も日本で育った関係上、原爆というものの恐ろしさは子供の頃から教育されているぶん不謹慎さは感じました。ただ流行りの「ネタ」ですからね。私たち自身も無自覚なうちに誰かが不謹慎だと思う事を「ネタ」として消費してたりするはずでネタやジョークには常にこうした問題が付いて回るものです。

しかしこのミームの画像に対して『バービー』の公式アカウントが便乗。画像に対して好意的な返信(リプ)を行ったのです…ってちょいちょい!それはダメだろ!個人と企業とでは社会的責任というものが大きく変わってきますし、しかも「忘れられない夏の思い出になる」でしたっけ?企業の対応としてあまりに無神経過ぎますし、リスクヘッジが出来ていないと思います。なお、先ほど取り上げたエズラ・ミラー&ジョナサン・メジャーズの問題に関してもワーナーブラザーズ関連なんですよね。世界的企業の信用問題が問われます。

なおこの騒動、なんと映画化の噂がある様子。いや、どういう事?バービーが核兵器を製造する話でしょうか(それは1979年公開の『太陽を盗んだ男』じゃんか)。それとも一連の騒動を描いた戦争や核兵器の捉え方を問う社会派映画か?どっちにしても流石何でもエンタメ消費してしまうアメリカです。

ちなみに米国における原爆使用が正当だったと考える人は減少しているといいます。それもあってか『オッペンハイマー』で被爆の実態がほとんど描かれていない事も議論になっているようです。私自身、去年広島の平和記念資料館を訪れた際、アメリカ国籍の方かまでかは分かりませんが、思っていた以上に海外からの方も来ており真剣な表情で展示をご覧になっていたのを見てその変化は感じました。ちょっと言い方はアレですが、わざわざ日本へ旅行に来て、他に沢山観光地があるのにあえて選んで訪れているわけですよ。他国の戦争の歴史に目を向ける、これは非常に立派な事ですし私たち自身も国内における被害の側面だけでなく、他国への加害の側面も注視すべきだと思いました。

っていうか早く『オッペンハイマー』日本公開してくれ!観ない事には始まらん!

↓『バービー』についてはこちら。

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『リトル・マーメイド』人種論争

ハリウッド大作での論争はもう一つ。

予告公開の時点から議論を呼んでいたディズニープリンセス作品『リトル・マーメイド』が公開となりました。主演を演じるのはハリー・ベイリーというアフリカ系女優。白い肌に赤毛というアニメ版とは異なる褐色の肌にドレッドヘアというルックスが注目を受けました。とりわけ日本ではポリコネ(ポリティカルコネクト)の影響で容姿の似ていない人がキャスティングされたなんて意見も散見されました。

私、つくづく実写映画における実在した人物や漫画/アニメのキャラクターを演じる役者を「似ている」or「似ていないか」で良し悪しを判断する傾向にまったく好感が持てません。大事なのは似ているか否かではなく「見える」か「見えないか」だと思うのです。例えば『ボヘミアン・ラプソディ』(2018年公開)のフレディ・マーキュリー。演じているラミ・マレックは本人にさほど似ているように見えませんが、不思議なものでしっかり「らしく」見えます。今年でいえばあれですね。お笑い芸人の山里亮太若林正恭をジャn…失礼、スマイルアップ所属のアイドルが演じたTVドラマ『だが、情熱はある』も見た目は似ていなくても「らしく」見えるを体現していたかと思います。実写の作品はルックスではなく「演技」というのが最大のポイントなのです。本当に似ているのが見たいならコスプレで事足りるだろうし、それこそAI生成したCG人間で代替出来ると思ってしまいます。実写化たる所以をもう少し考えるべきではないでしょうか。

なんて偉そうな事を言ってますが、本作『リトル・マーメイド』は未鑑賞。アニメ版も観た記憶がありません。最近ディズニー作品自体ご無沙汰になっているので、そもそも畑が違う話題でした。あっそういえば今年はウォルト・ディズニーが創立100周年ですって。それを記念してかリバイバル上映が何作かされてたかと思いますし、これからその記念作品である『ウィッシュ』が日本公開予定です。やっぱタイトルだけ見るとDAIGOが思い浮かぶ。宣伝大使みたいな粋な事やってないかなぁw

物価高は映画館も

そんな話題作が公開される映画館ですが、昨今の値上げラッシュがここにも影響しているようです。今年の6月以降、TOHOシネマズを皮切りに順次100円の値上げで通常料金が2000円となりました。東宝さんは黒字じゃないの?なのに値上げってのは恐らくですけど、近年の物価高の影響と予約画面のQRコードで入場可能となったチケットレス導入もあるのかなと。まぁ私は半券コレクターなので何が何でも発券しますけどねぇ!

また、新宿歌舞伎町には料金が4000円を超える映画館 109シネマズプレミアム新宿がオープン。正直あそこに誰が観に行ってるんでしょうか、めちゃくちゃ稼いでいるホストとか?悪質ホストではないだろうな。少なくとも私のような毎週映画館へ行く人間には不向きです。だって2本分でしょ?ありえねー。おまけにトー横キッズと呼ばれる人々が集う場所にあるのもカオスな光景です。

ともあれ2000円代への突入により、私自身TOHOシネマズの200円オフクーポンやU-NEXTのポイント使ってちょっとでも安く抑えようと努める気持ちが高まりましたし、観に行こうか足踏みする作品も増えた気がします。年々気軽さが薄まってる気がするんですよね。これでは映画館への来客数がより減少しまうのも懸念されます。別に話題作は良いんですよ、問題は中小規模の作品により人が集まらない事の常態化です。って考えると私みたいな人間が身を削ってでも観に行った方が良いのかぁ。

テーマパークとは?

映画離れを感じざるを得ないのはこんな所でも。

ユニバでお馴染み大阪のユニバーサルスタジオジャパン。そこから映画をテーマにした数々のアトラクションの撤退が決定したようです。まぁスパイダーマンのアトラクションはディズニーやソニーの利権が絡んでいて複雑でしょうから致し方ないのかも。しかしターミネーター2やバック・ドラフトのアトラクションが無くなるのは集客不足が理由でしょう。以前にはバック・トゥ・ザ・フューチャーのアトラクションもなくなりましたが、ディズニーリゾートのように新アトラクションはエリア増築する事で増やすのとは違って入れ替わりで対応しているようです。

まぁ今のUSJが集客を見込めるのは容易に想像が出来ますよ。ただコンセプトに統一感がないのが引っかかるんです。果たしてテーマパークと呼べるのか?という。それに、あからさまな"売れてるコンテンツ"とのコラボは金儲けのニオイが如実で嫌らしさを感じてしまいます。それとさ、一時期流れてた地元を離れたけどUSJのある大阪に引っ越して良かった〜的なCM、めっちゃ癪に障ったな。二度と地元に顔出すな!破門じゃ!

それに比べると、としまえんの跡地に今年オープンしたハリーポッターの施設 メイキング・オブ・ハリー・ポッターはテーマが一貫しており「テーマパーク」と呼べる気がします。そういえばとしまえんはなくなったけど、トイザらスや温泉施設みたいなのは残ってるのかな?

マッドマックス関連

としまえんの跡地がワーナーブラザーズ管轄だけにマッドマックスのテーマパークを期待していたのは7割冗談で、毎年恒例こちらの企画マッドマックス関連です。

さて来年にまで迫ったスピンオフ作品『Furiosa』ですが、来年のカンヌ国際映画祭でのお披露目を目指しているとの噂が。これはあくまで噂であり、やはりネックになるのが全米映画俳優組合ストライキ明けの動きなようです。だとしても、あぁじわじわ現実味を帯びてきた。つい先日、ファーストルックも出ましたし、もしカンヌで公開となれば日本公開は早くて夏から秋にかけてぐらいでしょうか。それまでは健康で文化的な模範市民として生活しなくてはw

そんな私の個人的ニュースとして、実は今年「怒りのデス・ロード」を映画館で観れていないという大惨事が…これで私の2015年から毎年1回は観ていた連続記録が途切れました。だって都内でどこも上映してませんでしたよね?畜生め!しかし「怒りのデス・ロード」の意志を継ぐ映画『SISU/不死身の男』があったのは救いとなりました。さらに映画館で観られなかった事を補うかのようにマッドマックスのゲームを購入。ご存知の方からすれば、2016年発売の随分昔のゲームじゃないかという話なんですが、訳あってPS4を入手したのがきっかけでした。やっぱりゲームになってもマッドマックス世界観は唯一無二です。ってかデス・ランムズくね?私のマシン操作がポンコツなだけか?

ってな事を書いていたら何と本日1日にUS版予告が解禁!うあぁぁああヤバいヤバい、うほっ!って何書いてんだ俺は。ちょっとテンションおかしくなっちゃいましたが、一時停止して細部を確認しながら既に10回近く見てしまってます。若かりし頃のイモータン・ジョー(演じているのは誰だ?)やピカピカなウォータンク、フュリオサ愛用のシモノフSKSと怒りデス・ロードからの流れを組んでいるだけあって血潮が沸く要素が盛りだくさん。クリス・へムズワースも髭もじゃ&変な格好で元気良く登場してます。もうここで宣言しますがよっぽどの事がない限り私にとって来年のベスト映画ですよ(スパイダーバースの新作が対抗馬かなぁ)。あぁ早く観てー。

↓リンクも貼っておきます。皆で沢山見てバズらせよな!

www.youtube.com

↓『SISU/不死身の男』についてはこちら

captaincinema.hatenablog.com

最後に

以上、8つのテーマを思う存分語りました。

その他、ラジー賞の謝罪坂本龍一逝去、またも濱口竜介監督快挙がありましたがこの辺でお開きにしましょう。来年もきっと嬉しいニュースも残念なニュースもやってきます。いち映画オタクの端くれとして今後も追っかけていく所存でございます。それではありがとうございました。

※参考

朝日新聞 2023年6月27日(火) 朝刊24頁

朝日新聞 2023年7月15日(土) 朝刊3頁

朝日新聞 2023年8月8日(火) 朝刊3頁

朝日新聞 2023年8月20日(木) 夕刊1頁

週刊文春CINEMA2023秋号 72~75頁

ハリウッド脚本家、スタジオ側と暫定合意 スト終結に向け - BBCニュース

米俳優労組、スタジオ側と暫定合意 118日間のスト終結へ - BBCニュース

『マッドマックス』シリーズ新作『フュリオサ』、2024年5月にカンヌ国際映画祭で初上映か | THE RIVER

 

第207回:映画『ロスト・イン・トランスレーション』感想と考察

今回は旧作を。現在Bunkamuraル・シネマ渋谷宮下で『ロスト・イン・トランスレーション』の35mmフィルムでの再上映がやっておりそれを観に行きましたので、本作を語っていこうと思います。毎度のことながらややネタバレ注意です。

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イントロダクション

2004年に公開した東京が舞台のロマンティックコメディ。

ウイスキーのCM撮影のために東京へやってきた中年ハリウッド俳優(ビル・マーレイ)とカメラマンの夫に同行して東京にやってきた若い妻(スカーレット・ヨハンソン)。年齢の違う2人は同じホテルに宿泊してた事で知り合いとなり、見知らぬ異国の都市 東京を流れ歩くようになる。

監督はソフィア・コッポラ。あのフランシス・フォード・コッポラ御大の娘さんですね。私、たぶんソフィア・コッポラ作品で観てるのこれだけじゃないかな?『ヴァージン・スーサイド』(2000年公開)とか観た覚えなしなぁ。

主演のビル・マーレイは観なくなりましたね。不適切な言動があったとかで干されちゃいました。『アントマン&ワスプ:クアントマニア』に出てたよく分からないおっさんが最後?ってあれはまだ今年の映画か。そしてもう一人の主役がスカーレット・ヨハンソン。どうも『ゴーストワールド』(2001年公開)の再上映がある関係でこちらの作品も再上映という事みたいです。『ゴーストワールド』は観た事がないので、この期に観に行くのもアリかな?出演作で好きなのは『マリッジ・ストーリー』(2019年公開)と『her/世界でひとつの彼女』(2013年公開)です。ちなみに日本人出演者にはダイアモンド☆ユカイ藤井隆が確認出来ます。藤井隆はいつも通り藤井隆だったのであれは笑います。

なぜ好きなのか?

本作、数年前に一度観た事のあって何故かめちゃくちゃ印象に残っていた作品でした。決して面白い!や傑作だ!ではないんですけどね。そんな映画がフィルムで再上映されるってなったら、そりゃ観に行きますよ。なぜ印象に残っていたのかを探るいい機会ですし。

で、改めて観て思ったのは面白くはないという事でした。ぶっちゃけ話自体が平凡な印象。例えば中盤のマーレイ演じる中年俳優がシャーロットさん(スカヨハ)とその現地のお友達とダラダラしてるシーンなんて特に面白い会話があるわけでもなくちょっと退屈でした。それに日本の風習を小馬鹿にしたようなコメディは確かに笑えますが、同時に悪どさも感じます。翻訳のレベルなんてそりゃそうでしょう、公用語として用いてる人からすりゃさ、本人たちはきっと頑張ってんだからバカにするのも程々にしてよ…。しかし観終わった後は“あぁ良い映画観たなぁ~”の余韻マックス。夜道を一人で歩くのがなんて気持ちが良いこと!この「面白くないけど好き」の感情はどっから来るのか?考えたあげく、私が今まで観てきた映画の中で最も現代の「東京」を上手く描いた作品だろうという結論に至りました。

生まれも育ちも東京という地元話になると引き出しが少ないつまらない私自身が思うに東京って「孤独と空虚さ」です。自分が孤独である事を紛らわそうと何かで埋め合わせする為に集まる、そんな街だと思っています。とくに本作の中心舞台となる新宿&渋谷はまさにそのもの。なんて言うか物と人で溢れているのによそよそしくて空虚。だから用が済んだらそそくさと退散したくなる気がします。

そんな街の雰囲気と主人公2人の心境が共鳴したかのようなドラマが展開されます。家族や友人は居るし恐らくそれなりの生活が出来ているので傍から見れば勝ち組な2人。しかし心は満たされず、孤独さを抱えています。その孤独さにシンパシーを覚え、年齢差はあれどプラトニックな関係が築かれていくように見えるのです。孤独をテーマにしたストーリーを東京を舞台にして描くというのは監督の優れた観察眼があっての事でしょう。

それにラストの耳元で囁くあのシーンがマジで名場面っすね。行き交う人々の中からその存在を見つけ出し、翻訳や字幕の要らない2人だけの言葉を交わす。そうして別れ際は人混みに姿がかき消されていく様はまさに「東京」。人と人の出会いと別れを集約したような素晴らしいシーンです。

まとめ

以上が私の見解です。

改めて観る、しかもそれを映画館でというのは再確認と再発見が出来て乙なものです。唐突な京都観光シーンが南禅寺平安神宮だという事にも気付けましたよ。紅葉や新緑、桜といった季節じゃないちょっと寂しい時期にロケやったんだろうね。

そういえば建物の改装か何かで仮移転みたいになってるBunkamuraル・シネマに行くのは初めてでした。場所は以前渋谷TOEIがあったところ。エントランスをちょっと変えただけで、劇場の中自体は渋谷TOEIのまんまでした。これがサステイナブルってやつか。ひと昔前の天井の高さが感じられるスクリーンは結構好きです。

という事でこの辺でお開きです。ありがとうございました。

第206回:映画『首』感想と考察

今回は、現在公開中の映画『首』を語っていこうと思います。毎度のことながら、ややネタバレ注意です。

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イントロダクション

日本のカルチャーを代表する北野武が構想に30年を費やして監督・脚本を手がけた戦国バイオレンス作品。今年のカンヌ映画祭にも出典しています。

時は戦国。織田信長(加瀬亮)が隆盛を極め、各地の大名たちと凌ぎを削っていた。そんな中、織田家家臣であった荒木村重(遠藤憲一)が謀反を起こし居城である有岡城に立て籠る。しかし城は陥落、村重は姿を消したため、信長は明智光秀(西島秀俊)や羽柴秀吉(ビートたけし)ら家臣たちに、自身の跡目相続を餌に村重の捜索命令を出す。しかし秀吉は弟の秀長(大森南朋)や軍師の黒田官兵衛(浅野忠信)らと共にこの機に乗じて、信長や光秀を殺して天下を取る事を目論んでいた。

監督は北野武。本作の公開前に色々と過去作を観ました。『その男凶暴につき』(1989年公開)や『BROTHER』(2000年公開)、『キッズ・リターン』(1996年公開)と。中でも一番好みだったのが『3-4X10月』(1990年公開)でした。ガソスタの草野球団がヤクザに因縁を付けられ、訳の分からない世界へと踏み込んでいく事になる作品。沖縄のシーンとか意味わかんないんですけど、まぁー面白いこと。テンポ感がとにかく絶妙でした。

主演は…誰なんだ?一応秀吉を演じているビートたけしなのか。個人的には明智光秀演じる西島秀俊が主役といっても過言ではない気もしましたし、恐らく本作で一番働いている木村祐一演じる芸者で元忍者の曾呂利新左衛門が主人公っていってもおかしくないよね。ただやっぱり注目は信長演じる加瀬亮でしょうか。北野作品でいえば「アウトレイジ」シリーズですが、ドラマシリーズ「SPEC」も好きでしたし、冤罪ドラマの傑作映画『それでもボクはやってない』(2006年公開)もありました。『MINAMATA-ミナマタ-』(2020年公開)や『硫黄島からの手紙』(2006年公開)と海外作品でも活躍してるし、今回改めて観て“いやスゲェなこの人”ってなりました。

こんな戦国が観たかった

私、小学生の頃は歴史オタク、とくに戦国時代オタクとして生きていた身。今でもその時の血は流れているので、城跡や戦国武将と縁のある寺社仏閣に行けば血が騒ぎますし、バラエティ番組で取り上げられてるのを見るのも結構好きです。ただし、ここ最近の大河ドラマは観ていなくて…。現在放送中の大河なんて徳川家康が主人公でストライクゾーンなネタですが、どうもしっくり来ないのです。その一番の理由は「綺麗さ」にあります。衣装や美術といった視覚的綺麗さと同時に人物描写としても綺麗過ぎちゃうんですね。登場する武将たちのほとんどが人民や平和のために戦うヒーロー。方向や形は変われど共通するこの高潔さを見ていると、本当はもっと私利私欲に満ちた人間臭さたっぷりな人々だったんじゃないかと思ってしまいます。大河ドラマのみならず、映画にしてもこうしたヒロイズムな風潮ばっかりな気がしますね。ちなみに視覚的な汚さのあるテイストでいえば以前大河ドラマ平清盛』でやって不評だった的な話も見たことありますが、いや寧ろあれ、私は結構好きでしたよ。世間と合わんなぁ…。

と思っていた矢先にこれですよ、やっとです。やっと観たかった戦国時代がここにありました。本作で描かれる戦国時代は血と泥に塗れた人間群像劇。ヒロイズム的な要素は皆無で、頭のネジが飛んでる狂人たちが「天下統一」という権力の頂点を目指した時代であって優美さや格好良さは二の次となっています。まぁ格好良さで言ったら斉藤利三(勝村政信)&服部半蔵(桐谷健太)のボディガード枠がそれ。2人が合間見えるシーンも良かったですよ。

また、どいつもこいつも勇猛果敢で狡猾…って事でもなく、どっか適当で抜けてるところがあるのも観たかった武将たちの姿でした。秀吉なんて全部家臣に任せっきりだわ、光秀も何がしたいか分からないと思ってたら急に割り切って残酷になるし。そうした部分に人間臭さが感じられ、往年のヤクザ映画やギャング映画にも精通する人物描写だと思えました。

荒木村重のまんじゅうエピソードや家康の影武者エピソードの解釈/アレンジも笑えます。でも何だかんだ一番面白かったのは中国大返しのシーンかな、あれは東京マラソンか何かですか?w ZARD「負けないで」とか流れたら傑作でしょw。

てな感じで、とにかくずっと観ていられるやつ。“えっもう終わり?”感が強かったです。あの調子で関ヶ原までやってくれても良かったよ。少なくとも秀吉、秀長、官兵衛の3人のわちゃわちゃで小田原攻めまでは観たかった。あんないい塩梅に力の抜けた大森南朋浅野忠信は観た事なかったし、いっそ大河ドラマをあのメンバーでやってくれたら最高だと妄想が膨らみます。

まとめ

以上が私の見解です。

北野作品らしいバイオレンスとコメディの調和を時代劇でやるというのが一つの狙いだったと思われる本作。とはいえかなりコメディ路線が強いので、予告だけを頼りに観に行った人はちょっと裏切られた気持ちになりそう。私自身コメディ系映画は大半苦手ですけど、これは素直に飲み込めました。不思議なもんだ。
それに今回はBL展開が多いこと。確かに主君とそれに仕える小姓との間での関係は織田信長しかり武田信玄にもあったとかで、描かれる事自体は不思議ではないんですけど北野作品って割とどの作品にも描写があったりしますよね。何を意図してるんだろう?

という事でこの辺でお開きです。やっぱ戦国好きの血が騒いだ、公開初日に観た作品の感想をその日に挙げちまったよ。ありがとうございました。