キャプテン・シネマの奮闘記

映画についてを独断と偏見で語る超自己満足ブログです

第210回:映画『VORTEX ヴォルテックス』感想と考察

今回は現在公開中の映画『VORTEX ヴォルテックス』を語っていこうと思います。毎度のことながら、ややネタバレ注意です。

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↑花!カッコいいっすね

イントロダクション

病を患った老夫婦を分割映像による2つの視点から同時進行で描いた作品。

心臓に持病を抱えた映画評論家の夫(ダリオ・アルジェント)と認知症の元精神科医の妻(フランソワーズ・ルブラン)。妻の認知症は日に日に悪化の一途を辿り、日常生活へも支障をきたすようになっていた。そこへ離れて暮らす息子(アレックス・ルッツ)が訪ねて来る。彼自身も多くの問題を抱えており、両親に付ききっりというわけにはいかない状況だった。

監督はギャスパー・ノエ。私、初ノエ作品となりました。有名どろこの『アレックス』(2002年公開)や東京が舞台らしい『エンター・ザ・ボイド』(2009年公開)は予習も兼ねて観ておこうと思ったのですが…。間に合わなかったので復習って事で観てみよ。

出演者での注目はやっぱりダリオ・アルジェントでしょう。役者としての登場は初、映画監督としてはマリオ・バ―ヴァやルチオ・フルチと並んでイタリアンホラー いわゆるジャッロ映画をけん引してきた巨匠です。近年ジャッロ的要素を含んだ作品(2021年公開『ラストナイト・イン・ソーホー』等)が多くあり、ちょっとしたブームだったような。監督本人の作品でいえば『ダークグラス』(2022年公開)が最近公開していました(日本公開は今年か)。個人的にはダリオ・アルジェントと聞くと『ゾンビ』(1987年公開)のアルジェント版が思い浮かびます。たしか尺を短めにカット&冒頭にゾンビ発生源の理由付けのシーン(惑星だかの爆発による放射線?)があるバージョンですよね。とはいえ私が一番観てるはディレクターズカット版な気がする。あーなんか久々に『ゾンビ』観たくなってきた、定期的に観たくなるのよね。

先に壊れるのは…

まずいっておきますが、大きな病気をしたとか近いうちに定年後の生活が待ってます な方々はあんまり観ない方が良いんじゃないか?あまりに生々し過ぎるので年齢を重ねるごとに観るのが辛くなっていくであろう映画です(観客はご高齢の方が多そうだっただけに)。

どんな人間にも必ず訪れる老い。老いれば体の節々にガタが生じ、病気にもなりやすくなるのは生きていれば誰もが通る道です。では老いて病に侵された場合、先に壊れるのは身体かそれとも精神なのか?こうした普遍的な恐怖に真摯に向き合ったある種ホラー映画だと感じましたし、病は人と人との間に隔たりを作り出し、肉体的そして精神的に破壊する究極の暴力と捉える事も出来るとも思いました。こえ~。

そんな老いと病によって緩やかに崩壊していく様をスプリットスクリーンで冷徹に映し出されており、父/母/息子三者の繋がれそうなのにすれ違ってしまう曖昧でもどかしい距離感が表現されています。個人的には施設に入れるか否かでお母さんを真ん中にお父さんと息子が言い合いになるシーンが凄かった。距離感がほんと絶妙でしたね。

この非常に効果的な使われ方をしている2分割画面ですが、慣れるのにはちょっと時間を要しましのも正直なところ。どっちか片方ばかり気にして注目してしまうと、もう片方が何をやってたかを見逃すという事が序盤何度かありました。そういえば観ている最中、チャーリー・プースのセレーナ・ゴメス フィーチャリング曲「We Don't Talk Anymore 」のMVなんかも思い出しましたけど、あれよりはゆっくり&同じ空間で展開してる事が多いので追いやすいかも。いや、画面が大きいと追いづらいってのもあるか。

まとめ

以上が私の見解です。

画面2分割のスプリットスクリーン以外にも、最初に洒落たクレジットが流れる構造やタイトルが出た後、ひらすた本筋とは関係のない顔面アップの女性の歌唱シーンを見せられるといったようにかなり特殊な作りの作品となっています。監督さん、映画で何が出来るのかを色々実験がしたいんでしょうね。そうなると他作品も相当クセがあるんだろうな、合う合わないがハッキリしそう。

という事でこの辺でお開きです。ありがとうございました。