ついにこの時がやって来ました。2022年の総決算、ベスト映画を決める運命の季節です。今年私が映画館で鑑賞したのは全97作品。全タイトルがこちらになります。※赤字は邦画。
- レイジング・ファイア
- キングスマン/ファース・エージェント
- スパイダーマン/ノー・ウェイ・ホーム
- ハウス・オブ・グッチ
- クライ・マッチョ
- ライダーズ・オブ・ジャスティス
- Coda あいのうた
- さがす
- フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊
- 大怪獣のあとしまつ
- デモニック
- バイオバザード/ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ
- ゴーストバスターズ/アフターライフ
- ウエスト・サイド・ストーリー
- ちょっと思い出しただけ
- ロスバンド
- ドリームプラン
- ナイル殺人事件
- 愛なのに
- ザ・バットマン
- ガンパウダー・ミルクシェイク
- ベルファスト
- SING/シング:ネクストステージ
- ポゼッサー
- アンビュランス
- ナイトメア・アリー
- シャドウ・イン・クラウド
- TITAN/チタン
- モービウス
- カモン カモン
- ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密
- ハッチング 孵化
- ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス
- N号棟
- シン・ウルトラマン
- 生きててよかった
- 死刑にいたる病
- フォーエバー・パージ
- 流浪の月
- 犬王
- トップガン マーベリック
- ストーリー・オブ・フィルム 111の映画旅行
- 神は見返りを求める
- ベイビー・ブローカー
- モガディシュ 脱出までの14日間
- リコリス・ピザ
- 哭悲 THESADNESS
- ブラック・フォン
- X エックス
- バズ・ライトイヤー
- ソー:ラブ&サンダー
- PIG/ピッグ
- キャメラを止めるな!
- バッドマン 史上最低のスーパーヒーロー
- グレイマン
- 女神の継承
- ジュラシック・ワールド/新たなる支配者
- 復讐は私にまかせて
- サバカン SABAKAN
- NOPE/ノープ
- スワンソング
- ブレット・トレイン
- さかなのこ
- 地下室のヘンな部屋
- グッバイ・クルエル・ワールド
- 沈黙のパレード
- LOVE LIFE
- LAMB/ラム
- マイ・ブロークン・マリコ
- 渇きと偽り
- RRR
- ノースマン/導かれし復讐者(TIFF)
- アムステルダム
- ホワイト・ノイズ(TIFF)
- ザ・ビースト(TIFF)
- 犯罪都市 THE ROUNDUP
- ドント・ウォーリー・ダーリン
- ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー
- ある男
- 窓辺にて
- ザ・メニュー
- ブラックアダム
- グリーン・ナイト
- マッドゴッド
- MEN/同じ顔の男たち
- アバター:ウェイ・オブ・ウォーター
- ケイコ 目を澄ませて
再上映作品
- 男たちの挽歌
- オールド・ボーイ(2003)
- ナイト・オブ・ザ・リビングデッド
- 灼熱の魂
- ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー
- プッシャー
- ドライヴ
- オンリー・ゴッド
- 殺し屋たちの挽歌
- マッドマックス 怒りのデス・ロード
去年は全79作品なのでかなりの増加傾向。3桁の大台には惜しくも、いや危うく届きませんでしたが、これは流石に観に行き過ぎました。もう少し絞らないとこの不景気時代、そろそろ財布が悲鳴をあげるわ。そんな私がこの中から、感動と興奮に苛まれた10本を選出し傍若無人にランク付けをしていこうと思います。例年通り再上映作品はランキングからは除外。また東京国際映画祭(TIFF)で鑑賞した作品も今後公開予定の可能性を鑑みて対象外とし、あくまで劇場で一般公開された新作のみを対象にします。相変わらず再上映作品のラインナップ、攻撃性が高いわね。
今年買ったパンフレットたち。いい感じに映えそな表紙が多い。
↓今年はワーストも出してます
↓去年の内容はこちら
※その前に
順位発表の前に直前までランキングに入れようか悩んだ作品をピックアップ。12月に良い映画があるとこうなるのよね。それが・・・
『MEN/同じ顔の男たち』
夫の死を目撃したハーパー(ジェシー・バックリー)は、心の傷を癒すためイギリスの田舎町のカントリーハウスで過ごす事にするもその町には同じ顔をした陰険な男たち(ロリー・キニア)が待ち受けていたというサスペンスホラー。
今年観た中で最も気持ち悪い映画でした。面白いというより突き抜けたキモさが光りました。痛々しいゴア描写も去ることながら、終始嫌な雰囲気が立ち込めるこの作品のキモさの正体は男性が女性に向ける見え透いた下心や女性蔑視といったところでしょう。思わず失笑が漏れてしまうキモいシーンの数々。あの年齢を聞いてからのくだりとかヤバいでしょ。そんな気持ち悪さに主人公も最初は怯えているも徐々に呆れて果てたリアクションになっていくのも興味深いです。ラストなんて最高にキモいのにリアクション薄っw。
去年にも『プロミシング・ヤング・ウーマン』や『最後の決闘裁判』といった男尊女卑やミソジニーをテーマにした傑作が多数公開されましたが、同じ路線の新たな良作が今年も生み出されました。この手のジャンル、勢いありすぎだろ。
第10位
それでは発表に移りましょう。第10位は...
『ちょっと思い出しただけ』
ダンサーの道を諦めた照生(池松壮亮)とタクシードライバーの葉(伊藤沙莉)のラブストーリーを軸に、東京で交錯する様々な人々の人生が描かれます。ラブストーリーに関してはNetfilxの『ボクたちはみんな大人になれなっかた』と同様(こっちも伊藤沙莉出てたね)逆行の構造をとってます。「あの頃」への郷愁がトレンドなんでしょうか。
このランキングを考えていた際、ふと浮かんできたシーンの数々。まさにタイトル通り。それで“あぁあの作品好きだったんだ”となったのでランクインです。特に序盤の方のタクシードライバーとお客たちの会話のシーンが好きでした。光もあれば影もある東京を如実に表したようなあの会話だけでオムニバスの短編ドラマが作れそう。
また、かなり個人的な理由として劇中見知った場所はいくつか登場していたのもポイントでした。“あっあの場所!”ってなる感覚には抗いようがないですね。
第9位
第9位は...
『ケイコ 目を澄ませて』
生まれつき両耳とも聞こえないプロボクサーのケイコ(岸井ゆきの)の静かだけどアツい葛藤が描かれるヒューマンドラマ。こちらが私の2022年ラストの映画館だったのですが、いや~シメにこういう作品と出会えるのはマジで幸福ですわ。
最初のミット打ちのシーンでズキュン! 井上尚弥を相手にした選手ばりに早いノックアウトです。澱みない動きも天晴れでしたが、ミットを打つグローブの音やパンチをかわす時の空気が揺れる音が豊かに表現されていました。そんなジムでのトレーニング音のみならず街の喧騒が際立つ音響が静かな闘魂と葛藤を味わい深くしていたと思います。
また、ケイコとジムのトレーナーや会長が動きで通じ合う絆に心が熱くなります。海外の方とのコミュニケーションも身振り手振りで通じることがあるって言いますし、やっぱり対話は「言葉」だけではないなと。
ボクシング映画らしい派手なサクセスストーリーでは決してありませんが、明日へと走り出す勇気を貰えるような美しい物語でした。ラストカットも美しかったな、今年のベストラストに選出です。
第8位
第8位は...
『リコリス・ピザ』
ポール・トーマス・アンダーソン監督による青春ラブストーリー。1970年代のロサンゼルスを舞台に俳優活動を行う男子高校生(クーパー・ホフマン)と10歳年上の女性(アラナ・ハイム)の恋模様が描かれます。
なんて説明したら良いんでしょうか、好きです。このカップル、恋も仕事も将来も基本どん詰まり。それでも全力で走り続けます。すれ違ったりくっついたりしながら好き同士で居られるその瞬間に全力疾走な様に心打たれました。俺も人生、走り続けないとな。
もちろん物理的にも走るシーンも多いので“走ってる映画”好きとしても大満足。さらに70年代を舞台にしていながら、現代にも通ずる社会風刺が散りばめられているのも上手いですね。時代は外面しか変わってねーわけだ。
何てことないどうでも良いシーンの連続だと思ったら物凄い事が起きているのにオフビート。長回しも多いですし観る人によっては“ぽかーん”とした気持ちになるかもしれません。でも、その“ぽかーん”が気持ちの良い映画だと思います。きっと倍速視聴をする人たちには到底理解の出来ない魅力がこの映画にはあります。
第7位
第7位は...
『ゴーストバスターズ/アフターライフ』
幽霊退治を行う科学者たちが活躍する1980年代に世界的ブームを巻き起こした「ゴーストバスターズ」シリーズの31年ぶりの最新作。今作ではゴーストバスターズのメンバーの孫娘とその友人家族が新たな脅威に立ち向かう姿が描かれます。
まさかこんなに面白いとは…。シリーズの大ファンというわけではない私。1989年公開の2作目なんてほぼ記憶にないですが、これは琴線を的確に刺激してきました。思わず泣きそうになったし。恐らくシリーズ初鑑賞の人でも感動が出来る親切丁寧なファンサービス。ここ最近の某ユニバース大作群のファンサとは毛色が少し異なります。
また「ゴーストバスターズ」が公開された80年代らしいクラシカルな様相を保ちつつも、しっかり現代的なアップデートがされていたのもシリーズもののお手本のような仕上りだったかと思います。今年は『トップガン マーベリック』もそうでしたけど、80年代の逆襲が始まったのかもしれませんね。
ミニマシュマロマンも可愛かったな。もっとグッズの販促があれば良かったのに。
第6位
第6位は...
『さがす』
懸賞金目当てに連続殺人犯(清水尋也)を追って失踪した父(佐藤二郎)を探す中学生の娘(伊藤蒼)という三つ巴の捜索劇を映画サスペンス。
2017年に埼玉県座間市で起きた連続殺人事件や2019年に起きた医師による嘱託殺人の事件がベースとなっているように感じたので社会問題をはらんだ重めな内容となっていますが、純粋にエンタメ作品としてもめちゃくちゃ面白かったです。時系列を巧みにばらした先の読めないストーリーと暗くざらついた質感の映像は韓国ノワール作品のテイストが強し。こういう映画、日本でも出来ますよ というのを証明した作品になったかと思います。
それに寂れた商店街をチャリで爆走するシーンが“走ってる映画” 好きの性癖にぶっ刺さりました。その後裏路地に入った時のあの暗黒感も良き。「それは有料コンテンツだね」のセリフは個人的には流行語大賞です。
第5位
ランキングも中盤です。第5位は...
『ある男』
平野啓一郎の小説を原作としたヒューマンミステリー。
再婚相手が不慮の事故で亡くなった後に全くの別の名前を名乗っていた事が判明し、その調査を依頼された弁護士(妻夫木聡)が中心に描かれます。
端的に言えば「自分」を巡るミステリーだと思います。名前や国籍が果たして自分を自分であると本当に証明してくれるのか?また、そうしたものが呪縛となっていることもあるのではないかという事を突き付けられます。なので観ていて自分のアイデンティティが揺らぐと言いますか、何だか不思議な気持ちになりました。
ここ最近の邦画には珍しい台詞が控えめな視覚的映画であるのもポイント。度々登場する人物の後ろ姿を捉えたシーンが良いスパイスとなってラストに効いてきます。あのラストは必見だと思いますね。
第4位
第4位は...
『アンビュランス』
銀行強盗にしくじった“兄弟”(ジェイク・ギレンホール&ヤーヤ・アブドゥル=マーティン2世)が負傷した警官を搬送する救急車をジャックし、LAの街で破壊的カーチェイスを繰り広げるアクション大作。
今年一番テンションの上がったアクション映画でした。マイケル・ベイが『マッドマックス』を撮ったらこうなるといった感じです。キレキレのドローンショットとド派手なクラッシュシーンのマリアージュ。銃撃戦にも手抜かりのないハリウッドらしい密度の高いアクションを魅せつけてきます。特に低空飛行で迫る追跡ヘリをLA名物の水路で撒くシーンめっちゃ格好良かったよな。
また、ほとんどシーンが救急車内で展開されるワンシュチュエーション的ドラマも面白かったです。血の繋がらない“兄弟”のブロマンスと救命士のプロフェッショナル精神が救急車内で激突。ここもテンション上がるポイントでした。
ギャグのセンスやエモいライティングも流石なマイケル・ベイ監督。単なる破壊王ではないその実力は今なお健在です。
↓詳しくはこちら
第3位
さぁーここからはトップ3。見事3位と大健闘をみせたのは...
『女神の継承』
今年はアジア系ホラーが勢いをみせましたが(残念ながらこのムーブメントに日本がついていけてない感じが惜しい)中でもこちらの“アジア版『エクソシスト』”は凄まじき火力でした。
作品の構図としてはタイ北部に伝わる伝統を重んじる祈禱師一族を取材するモキュメンタリーの体を取っています。これだけなら他のホラー映画でもちょくちょく見る手法ですが、ここに『チェイサー』(2008年公開)のナ・ホンジンのエッセンスが加わるとどうなるか?化学反応を超えた化学爆発の発生です。序盤は落ち着いて観られていても徐々にヒートアップする不吉さ。そして気付けば破竹の勢いで地獄へと突き落とされます。この理論や道徳の通用しない圧倒的邪悪に苛まれる感じ。これですよ、ホラー作品で観たいのは。
終盤のハイテンションなカメラワークや何ものかに取り憑かれた不憫過ぎる娘さんを演じるナリルヤ・グルモンコルペチも素晴らしい。終わり方も絶望的だったなぁ。
↓詳しくはこちら。こちらの記事は今年最もアクセス数が伸びたようで。
第2位
惜しくも、しかし堂々の第2位の座を獲得したのは...
『Coda あいのうた』
今年はフジテレビ系列で放送され話題を呼んだTVドラマ『Silent』や邦画では9位にあげた『ケイコ 目を澄ませて』や『LOVELIFE』でも描かれたろう者と聴者の物語がある種のトレンド的な年となりました。そんな中で代表格と呼べるのがこの米国アカデミー賞作品賞を獲得した本作でしょう。
聾唖者である両親と兄を持ち家族の中で唯一の聴者である主人公の高校生 ルビー(エミリア・ジョーンズ)は、幼い頃から家族の“通訳係”となり家業の漁を毎日手伝っていた。そんな中、学校の合唱クラブで歌の才能が開花をし顧問の教師から音楽大学への進学を勧められ家業との両立に悩むことになります。
私にとって今年観た映画で唯一ボロ泣きした作品。とにかく手話の豊かな表現力とルビーの伸びのある歌声に完膚なきまでにやられました。後半のコンサートのシーンから目頭がヒートアップし、その後のシーン全てがどれも愛おしくて鳥肌が止まらず。これは役者陣の素晴らしいアンサンブルの賜物ですよね、本当の家族にしか見えなかったもの。
また、ハンディキャップを抱えた人の登場する物語はある種の「健全さ」や「美しさ」がとかく主張されがちですが、同じ人間な訳ですから時には下ネタで盛り上がったり、汚い言葉で悪態をついたり、他人と意見が対立して喧嘩になったりもします。そうした人間の決して綺麗ではない部分がしっかり描かれていたのが観ていて嬉しかったというか清々しかったです。
作品賞に輝くのも納得の出来栄え。是非とも『Silent』に感銘を受けた皆さんには観て欲しい傑作です。
↓詳しくはこちら
第1位
それでは群雄割拠、数多の作品を抑え王座に輝いた栄えある2022年の覇者は...
『NOPE/ノープ』
ジョーダン・ピール監督が仕掛ける巨大飛行物体を巡る人々を描いたSFホラー。
映画やCMの撮影で使われる馬の飼育とその牧場を経営する主人公のOJ(ダニエル・カルーヤ)と妹のエメラルド(キキ・パーマー)が、父親が亡くなった事にも関係している謎の巨大飛行物体の存在を収めた動画を撮影すれば一攫千金が狙えると画策するも彼らには予想を遥かに超えた「最悪の奇跡」が待ち受ける事になります。
ピール監督の過去作品に比べるとかなりエンタメ色が強くなっていますが、これが大当たりだったと感じました。
昨今、SNSや動画サービスが発展しメディアを通して「見る/見られる」やメディアを「送る/受け取る」の立場があやふやに。分断社会が進む一つの要因とも言えそうで個人個人のメディアリテラシーがより一層問われるご時世ですが、このテーマを「UFO」というフェイクニュースのネタにもなりそうなハッタリの利いたコンテンツで炙り出します。目には目を、ハッタリにはハッタリをです。さらに映画史も巧みに織り込まれているので驚異的。これを大傑作と呼ばずしてどうするか!と思ったのも、もしかしたら学生の頃にメディアやジャーナリズムについて少し学んでいたからかもしれませんがマジですげぇ物語でした。また見る加害性に関しては2017年の『ゲットアウト』でも扱われていたテーマだと思いますが、より迫真性が増した気もしました。
ちょっと堅い話になってますけど、秀逸過ぎるストーリーのみならずダイナミックな映像、不気味なサウンド、素晴らしい演技と全てが揃った映画でもあったと思います。終盤の巨大飛行物体を映像に収めてやろうと大勝負をかけるシーンなんて面白すぎて涙出そうだったし。やはり映画は総合力でしょう。
いや~マジで想像を遥かに超えた驚きと感動。こういう映画と出会うためにオタクやってんだよ。最高で最悪な奇跡を魅せてくれた作品に携わった全ての人に感謝です。
出来ればまた映画館で観たいな、ちょっと前めの席でスクリーンを見上げながら。
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まとめ
以上、全細胞をフル稼働させて激選した至極の10+1作品でした。少しホラー系統の作品が多めですが、意外と王道も押さえてるラインナップになった気がします。ゴリゴリの映画オタク層じゃないライト/ミドル層にも比較的ウケが良いのでは?
その他『トップガン マーベリック』や『神は見返りを求める』、『X エックス』、『LOVE LIFE』、『RRR』も大変素晴らしかったのですがランクインさせる事が叶わず。トップガンはベスト映画だって言う人が多そうだな。
という事で長くなりましたが、この辺でお開きです。後編では印象に残った俳優やアクションシーンを語り散らします。それではありがとうございました。