キャプテン・シネマの奮闘記

映画についてを独断と偏見で語る超自己満足ブログです

第106回:映画『Coda/あいのうた』感想と考察

今回は現在公開中の『Coda(コーダ)/あいのうた』を語っていこうと思います。毎度のことながら、ややネタバレ注意です。

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イントロダクション

Coda(コーダ)とは耳の聴こえない親を持つ耳が聴こえる子供のこと。恥ずかしながら私、初めて知りました。こうした事を学べるのも映画の側面ですね。

舞台は小さな海の街。聾唖者である両親と兄を持ち家族の中で唯一耳が聞こえる主人公の高校生 ルビー(エミリア・ジョーンズ)。幼い頃から家族の“通訳係”となり、家業の漁も毎日手伝っていた。そんな中、学校の合唱クラブに入部したところ歌声の才能が開花。顧問の教師から音楽大学への進学を勧められ、家族との両立に悩むことになる。

本作はサンダンス映画祭でグランプリを始めとした4冠を達成している映画。サンダンスですよ。『フルートベール駅で』(2013年公開)や『セッション』(2014年公開)などを世に知らしめた映画祭です。今じゃライアン・クーグラーデイミアン・チャゼルも映画界を代表する監督ですから、今作を監督したシアン・ヘダーもその仲間入りは確実でしょう。

主演はエミリア・ジョーンズ。私、この方はお初にお目にかかりますな気がしていましたが、『パイレーツ・オブ・カリビアン/生命体の泉』(2011年公開)に出演しているようなので観てはいるはずなんですね。いやー分からん。非常に伸びのある歌声をしているので、歌手が本業の人だと思って劇中観てました。

 

「思いやり」は一方的ではいけない

ハンディキャップを抱えた人物やマイノリティと呼ばれる人たちが登場する作品を観る際、個人的に一番気にする点がありまして。それが如何にフランクな視点であるかという事です。「辛い思いをしているので労わってあげましょう」みたいなメッセージが前面的に押し出された作品だと、どうも説教臭さを感じてモヤモヤします。もちろん特有の苦労が描かれるのは当然だと思いますが、そもそも「配慮し過ぎる」ということ自体がフィルターを挟んで接している感じがして好きじゃないです。同じ「人間」なんだし同じように扱えよなって話。

その点本作は、耳の聞こえない側と聞こえる側どちらの葛藤も描かれており、どちらか一方の視点に偏り過ぎることがなかったので好感が持てました。例えばルビーが音楽学校へ進学したい意志を告げた際、歌声が聞こえない両親は娘の才能を信じられずに反対。自分たちの通訳をしてくれる存在が居ないと家業が続かない理由も重なります。そんな、頼り頼られといった家族だからこそ起こり得る普遍的な関係性にフォーカスされていてました。

また作品全体を通して、聞こえる側と聞こえない側それぞれの理解や思いやりが感じ取れて感動的でした。思いやりが一方的ではコミュニケーションを取ることは出来ないんですよね。

さて、これで言いたい事伝わるか?自分でも書いてて上手くまとまっていない気が。何考えてんだコイツと思った方は本作&『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』(2019年公開)を観てもらうと分かるかも。

 

手話の表現力

それともう1つこの映画で感動したのが手話の表現力。こんなにも表現力のある言語だとは思いませんでした。コミカルさもエモーショナルさも感じられるし、時に口に出す言葉以上に表情豊かに見える瞬間があるから物凄いのなんの。

また、いざ手話と向き合ってみると気付きもありました。手話は手だけなく顔や体の様々な部位を動かしてコミュニケーションを取っている事が分かります。昨今のコロナ禍において、TVを観ていると手話通訳の人は口元の見える透明なマスクやフェイスシールドを着けていますが、なるほど。「手」と同じぐらい「口元」も重要なんだと。

このような感動と学びを与えてくれた最たる理由は、やはり耳の聞こえない役は実際に聴覚障害のある俳優さんたちが演じられていたからでしょう。ホントに素晴らしかった。健聴者の俳優が演じるのとでは明らかに説得力が違いました。

こうした聾唖者の役には聾唖者の人が演じることのみならず、アジア人役はアジア人が演じる等の役柄に沿ったキャスティングをする事で多様性や平等を打ち出すような作品が近年増えてきました。しかしそんな社会的意義が云々以前に、実際の経験や境遇があるからこそ表現出来るものがあり、それは観客の心を動かすパワーがあるからだとつくづく思いました。

 

まとめ

以上が私の見解です。

もうね、久々にボロ泣きでした。後半のコンサートのシーンから目頭が烈火の如くヒートアップ。その後の1つ1つシーンはどれも愛おしくて鳥肌が止まらず。特に夜空を見ながらお父さんと二人で語るシーンは、思い出すだけで胸に込み上げてくるものがあります。既に今年のナンバーワン作品で確定な気がしている大傑作でした。あとパンフレットは必読かと。読みながらまた目頭が熱くなるという現象に見舞われましたので。

ちなみにラストの指の形。私もマネしようと思ったのですが…んっ?あれっ上手く出来ねぇ。指の節々に柔軟性がないこと忘れてた。不器用なんですね、わたし…。

ということでこの辺でお開きです。ありがとうございました。