キャプテン・シネマの奮闘記

映画についてを独断と偏見で語る超自己満足ブログです

第187回:映画『Pearl/パール』感想と考察

今回は現在公開中の映画『Pearl/パール』を語っていこうと思います。毎度のことながら、ややネタバレ注意です。

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イントロダクション

殺人老夫婦に襲われる若者を描いたスプラッターホラー『X エックス』。そのシリーズ2作目にして前日譚。前作にも登場した殺人老婆 パールの若かりし頃が描かれます。っていうかA24製作作品としては初のシリーズものではないか?

時は1912年。厳格な母と病気で口が聞けない父と人里離れた農場で暮らすパール(ミア・ゴス)は、若くして結婚した出征中の夫の帰りを待ちながら父の世話と家畜の餌やりを繰り返す退屈な毎日に鬱屈としていた。ある時、父親の薬を買いに出た町で観た映画を期にスクリーンの中で踊る華やかなスターへの憧れを強くし、女優になる決意を新たにする。しかし厳格な母親がそれを許す事はなく、抑圧は日に日に増していく。

監督は前作から続投のタイ・ウェスト。ちょっと前に短編ホラーの詰め合わせ「V/H/S」シリーズの2作目(2013年公開『V/H/S ネクストレベル』)を観たんですけど、そのシリーズ1作目に参加してるっぽいですね。あのシリーズのボックスとかあるのかな?あったら地味に欲しいぞ。ちなみに、監督の次回作は本シリーズの3作目『MaXXXine』になります。2024年公開予定、日本公開は25年かな?

主演はミア・ゴス。前作ではファイナルガールとなる主人公を演じていましたが、今回は前日譚という事で老婆の若かりし頃で続投という形になっています。クレジットを見たところ脚本にも参加してるみたいですね。肝入りだ。

そして次期スーパーマン俳優に就任したデヴィッド・コレンスウェットを確認する事が出来ます。正直まだヘンリー・カヴィルスーパーマンが煮え切らない状況ですが、とりあえずどんな感じになるのかチェックです。

↓前作『X エックス』についてはこちら。

captaincinema.hatenablog.com

"無敵の女性"の誕生

本作のネット広告で「女版ジョーカーの誕生」って触れ込みを見かけたんです。“いやパチこいてるだろ” と思ったわけですよ。だってさ、女版ジョーカーってハーレイクインが既に居るしそれを差し置けるのかよって。

しかしいざ観てみるとなるほど、そういう事か。パールさんのキャラクター像は、恐らく2019年公開の『JOKER/ジョーカー』を意識したものだろうと思いました。介護やショービジネスへの憧れなど似通った要素が沢山。つまりは『タクシードライバー』(1976年公開)や『キング・オブ・コメディ』(1982年公開)の片鱗も感じられます。そこにパンデミック&戦争をはじめとした現代的なエッセンスが加わり、若者の夢や希望が潰される閉塞感マックスな様相を呈しています。

孤立と抑圧。私はスターで特別なのにどうしてそんなものに苛まれるんだ! と荒んでいくパールさん。こうして誕生するがいわゆる“無敵の人”に通ずるような精神状態。無敵の女性の誕生です。丁度、小田急線刺傷事件(2021年)で懲役20年の求刑が下り、京王線刺傷事件(2021年)は初公判、さらに安部元首相暗殺事件からおよそ1年が経過という“無敵の人”と総称される状態に陥った人たちに関するニュースが多いタイミングの日本。意図せずタイムリーなタイミングでの公開になったと感じましたし、社会からの孤立や抑圧から生まれる凶行をどう無くしていくか真面目に向き合う必要がありそうです。

まとめ

以上が私の見解です。

ミア・ゴスの圧巻の演技も含め、何ていうか優等生が過ぎる良く出来た作品って感じが盛り上がり切れなかったです。

前作はポルノ映画を撮影で今作はポルノ映画を観る視点の変化といった前作とのクロスポイントがあるのは面白いですし、ビビットな色彩や様式美なショットも冴えてます。シンプルにタイ・ウェスト監督は映画撮るの上手いんだな。それがあまりホラー映画というジャンルとは相性良くない気もしました。前作はテーマ性が斬新で面白かったから良かったんですけど。ってかそもそもホラーじゃなくてスリラーを撮ろうとしてたのかな?

あっでも相変わらず『悪魔のいけにえ』(1974年公開)要素は高めに感じました。だって本作で最も可哀そうな状況のお父さん、ほぼ『悪魔の~』のおじいちゃんじゃん。最後の強烈な笑顔も通ずることろがあるよね。

という事でこの辺でお開きです。ありがとうございました。

 

参考:

小田急線 刺傷事件 被告に懲役20年を求刑 検察 | NHK | 事件

京王線刺傷、被告が起訴内容の一部を否認 ハロウィーンの夜に仮装:朝日新聞デジタル