キャプテン・シネマの奮闘記

映画についてを独断と偏見で語る超自己満足ブログです

第20回:祝!20回目特集『マッド・マックス怒りのデス・ロード』の凄さを独白

このブログを書き始めて今回で20回目となりました。人間の年齢でいうところの20歳(はたち)です。やった、大人だ!っと1人でお祝いムード。そんなラブリーデイな今回は、今後塗替えられることは到底ありえない私の生涯ナンバーワン作品、2015年公開の『マッド・マックス怒りのデスロード』について語ろうと思います。

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今までに私は映画館で5回。Blu-ray(ブラック&クロームの入った初回限定盤)を持っているので、それも合わせると一体何回見たのか分からない作品です。それもそのはず、定期的に鑑賞しないと禁断症状が出そうになる始末。もう中毒者です。なぜそこまで取り憑かれてしまったのか。改めて考えてみたところ、3つのフルスロットルな軸に魅了されたからだと思いました。この3つの「○○過ぎる」を順々に説明します。今回はかなりネタバレ込みの内容になるので、ネタバレの気になる方は作品を見た後にでもご覧ください。まぁネタバレっていうほどの仕掛けはなんですけどね…。

 

イントロダクション

まずは予告を

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予告から既に尋常じゃない雰囲気を感じます。

1979年に1作目が公開されたバイオレンスアクション『マッド・マックス』シリーズの4作目。前シリーズとの関連性はないので、続編ではありません。2作目(1981年)のリメイク作品になります。監督はシリーズの生みの親であるジョージ・ミラー。常に革ジャンを着ているおっちゃん。この方はマッド・マックスシリーズ以外だと、豚を主人公にしたコメディ『ベイブ』やアニメ作品『ハッピーフィート』など意外にもファミリー層向けの作品を手掛けています。ジャンルを問わず撮れる職人監督といったところでしょうかね。

本作は米国アカデミー賞で、この年の10部門ノミネート、最多6部門受賞を果たしました。さらにイギリスのエンパイア誌の「今世紀最高の映画100選」の1位、先月発売された雑誌「映画秘宝」では、2010年代のベスト1映画として紹介しており、各界からも絶大な支持を得ている作品です。

そして現在、続編にあたる作品の企画が進んでいるようです。

japanese.engadget.com

気になるストーリーは、今作に登場した女戦士、フュリオサの前日譚になるようです。本作を超えるような傑作が生まれるかは分かりませんが、今から非常に楽しみな人は私以外にも多くいるはずです。首をすげー長くして待ってますので、頑張れ!ジョージ・ミラーとマッドなスタッフ関係者!

 

シンプル過ぎるストーリ

まず始めに挙げるのが、ストーリー。序盤に「ネタバレっていうほどの仕掛けはない」と言った理由が、この圧倒的なまでの単純さがあるからでした。

仮に誰かに「この映画ってどんなお話?」と聞かれとします。そしたら、私はこう答えます。「砂漠を改造車で爆走することを2時間ほぼぶっ通しでやる映画」正直に言って本当にこれだけなんですよね。

まぁ流石にこれじゃあまりに雑過ぎるので、もうちょっと詳しく説明します。

舞台は資源の枯渇や自然破壊などを経て訪れた世紀末。希望を喪失した一匹狼のマックス(トム・ハーディ)が、水を牛耳ることで、絶大な権力を手にしたイモータン・ジョー(ヒュー・キース・バーン)の軍団に血液利用のために捕まってしまいます。そんな最中、軍団の隊長を務める女戦士フュリオサ(シャーリーズ・セロン)がジョーの妻たちと共に逃走。彼女たちと手を組んだマックスが激しい逃走劇を繰り広げる。

どっちが主人公サイドで、そうじゃないかの対立構造さえ分かれば良いだけのストーリーなのです。よくエンタメ映画でありがちな、主人公とヒロインが恋愛関係に発展するくだりもないですし、メンバー同士の意見の対立でダラダラすることもありません。とにかく無駄な贅肉を落とし切った極限レベルにまで単純化したストーリーは、まるで生きることへの必死さを表現しているようです。

また、シンプル過ぎるせいか「この作品は一体何を伝えたかったのか」など背景にあるメッセージを独自の考察や見解で紐解きたくなってしまうのです。「ストーリーを限界までシンプルにする=鑑賞者が考察出来る余白を与える」ことを予知していたのであれば鳥肌モノの脚本だと思います。

 

ヤバ過ぎるアクション

ストーリーが純化されたことで何が起きたかというと、アクションの濃度が極限レベルにまで上がったのが本作2つ目のポイントです。

前にアクションシーンを言語化することは、難しいと書きましたが、まさに今作が最たる例。とにかくどのシーンのアクションも圧倒的迫力、そして美しい。2時間ほぼぶっ通しだと飽きるのではと考える人もいると思いますが、そんなことは全くありません。特に序盤の方に砂嵐の中に突入していくシーンがあるのですが、私はあのシーンをみると、あまりの美しさに毎度涙が出そうになります。まさかアクションシーンで泣きそうになるなんて夢にも思ってませんでしたよ。こんな感情を抱かせてくれるのは、芸術と呼んで良いでしょう。一般的にアクションシーンは暴力的で粗野なものが多いですが、芸術レベルに到達している作品は、今まで見てきたアクション映画の中でも、この作品ぐらいです。

また、主人公たちに絆が生まる過程や、それ以前に各キャラクターがどんな人物なのがあらかた把握出来るようにもなっています。言葉で説明するという野暮な事はせず、アクションそのもので物語を展開させているのです。これは、ミュージカル映画が歌や踊りで物語る手法となんら変わりません。よって、ミュージカル映画好きの皆さんにオススメなのです。

さらに、CGには極力頼らない方法で撮影されているので非常にリアルなアクションです。アフリカの砂漠をロケ地に、車のクラッシュや爆発のシーン自体を実際に行っています。特に驚いたのは、車の後部に付けた数メートルにおよぶしなる棒を使って走る車に飛び移る「棒飛び隊」と呼ばれる集団のアクション。これは、シルクドソレイユの人々が実際にこなしているそうです。あんな事故でも起きたら一発アウトなアクション、普通CGでやると思いますが(監督自身も当初はCGで表現するもりだったようです)、リアルでやってしまうのですから度肝抜かれます。

 

個性的過ぎるキャラクター

3つ目に挙げるのは、奇抜で個性的なキャラクターたちです。まずは主要キャラクターを紹介していきます。

 

・マックス(トム・ハーディ)

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一応主人公。過去に色々あったせいで人見知りがちな性格。口数は少ないけどやる時はやる頼れる男ですが、他のキャラクターの個性的が強すぎて、やや主人公らしさが薄いです。しかしそこが何だか愛おしい部分でもあるキャラクターなのです。また、サムズアップをカッコ良くキメる名人でもあります。

ちなみにシリーズ同じみのマックス愛用のダブルバレルショットガンは脅しに使用されるだけで、火を吹くシーンがないという悲しい扱いに。変わりにグロック17やFNブローニング・ハイパワーといったハンドガンを多用しています。一回でいいからショットガン、撃って欲しかったなぁー。

 

・フュリオサ(シャーリーズ・セロン)

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映画史上、最高のヒロイン。この逃走劇の首謀者である女戦士です。化粧っけのない丸刈りで、砂まみれなのに美しいという謎の反則ルックスも持ち合わせると同時にドライビングスキルやライフルの扱い(使用銃はSKS)など、どれを取ってもハイスペックでたくましいキャラクターです。周りの男以上に男らしいので、彼女が主人公じゃないか説が頭によぎるぐらいのです。

たくましいヒロインと言えば、例えばサラ・コナー(『ターミネーター』シリーズ)であったり、キャプテンマーベル(2019年公開『キャプテン・マーベル』)など、映画にはたくさん登場します。勿論どのキャラクターにも魅力がありますが、彼女以上に雄叫びの入魂具合が凄まじいキャラクターには過去出会ったことがありません。そのせいで私は2回目鑑賞以降、彼女が吠えるシーンは一緒に吠えたくなります。特に終盤で見せる砂漠に崩れ落ちて叫ぶシーンは圧巻。あのシーンは魂揺さぶられます。

 

・ニュークス(ニコラス・ホルト)

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運転と修理は得意なんだけど、それ以外は取り柄のない悩める青年。ジョー様の教えを狂信的に信じ、戦いで命を散らすことを本望としています。しかし、失敗ばかりでなかなか活躍出来ず、遂には憧れのジョー様の目の前でとんだ大失態を犯してしまいます。希望を喪失し、ふさぎ込んでいたところに声をかけたのがジョー様の奥さんの一人。あんな憔悴しきってる時に女の人に優しくされたら、そりゃー男としてはねぇー。ということで、淡い恋心とジョー様への疑心暗鬼によって晴れてマックスたちの味方になるキャラクターなのです。

何とかいい所見せようと頑張る姿は、ついつい応援したくなります。ラリーとバリーという親友(顔に見える二つの腫瘍)と共に頑張ってますし、何食わぬ顔で虫を食べるサバイバル精神も垣間見せる名脇役です。

 

・イモ―タン・ジョー(ヒュー・キース・バーン)

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ずんぐりした白い図体にイカついマスクをした本作の悪役です。人間の生命維持には欠かせない水を管理することで、権力を手にしています。また自身を神のようなポジションに位置付け宗教的支配を行い、ウォーボーイズと呼ばれる兵士たちには「名誉の死を遂げたら、英雄の館(ヴァルハラ)に魂が入れるんだ」と豪語しています。このやり方は、軍国主義体制だった頃の日本のようにも見えて恐ろしさを感じます。

そんな独裁的な権力を手にしながらも、健康で元気な男の子が欲しくて仕方がない側面も。だって、奥さんたちが逃げたのを軍隊総出で追いかけるんですから、恐ろしい執念深さです。股間の辺りにマグナムリボルバーを2丁(コルト アナコンダとルガー バケーロ)もぶら下げている格好からも、子作りへの本気度がうかがい知れるキャラクターです。

 

・ワイブスの皆さん

ワイブスとは、ジョー様の5人の奥さん。「奥さん」というよりも「子産み女」という表現のほうがあっています。子供を産むためだけの存在としか扱われておらず、自由に生きること求めています。ではさらっとメンバー紹介。

ワイブスのリーダーで、パツキン妊婦さん「スプレンデット

赤毛の副リーダー。透明ゴーグルが似合う個人的には一番の推しメン「ケイパブル

男勝りで、銃の弾込めを率先して行う黒人系美女「トースト

「か弱い女の子」な印象で、一番若手のアジアンテイスト系美女「フラジール

アニメキャラのようなルックスなのに意外と口の悪い不思議ちゃん「ダグ

選り取り見取り、国際色豊かな美女が揃ってます。この中から推しメンを探すのも本作の楽しみ方の一つだと思います。

 

その他

乳首に変なチェーンをぶら下げたデブ「人喰い男爵

弾丸の差し歯をしているサイコ野郎「武器将軍

体はゴリラだけど脳ミソは純粋な少年「リクタス」(めっちゃ好き)

血気盛んなBABA軍団「鉄馬の女

仲間を鼓舞する為に火を吹くギターを弾き続けるギター男「ドゥーフ・ウォリアー

 

など、どいつもこいつもクセが強いです。ハゲと白塗りの男ばかりの映画なのに、米国アカデミー賞で衣装デザイン賞とメイクアップ・ヘアスタイル賞を受賞したのは、キャラクターたちのクセの強い造形があったからでしょう。

 

余談

余談ですが、武器マニアの方たちとっても最高な作品ではないかと思います。

キャラクター紹介でも多少触れてますが他にも、ベレッタM9やMP5K、AKなどの王道。ルガーのトグル式のピストル、レバーアクションライフル、クロスボウといったロマン性の高い武器。更にはM79グレネードランチャーにフリントロック式の銃まで登場します。近接武器では鉈やチェーンソー、ピッケルが登場するカオスなラインナップ。

新旧問わずあらゆる武器が登場する環境は、世紀末の雰囲気を演出する一つのポイントになっているのです。

 

まとめ

以上余談も含め4つのポイントを語ってきました。これだけ聞くとただのイカれた映画じゃんと偏見を持たれる方もいるかもしれません。現に「なんであんな単純な作品が好きなの?」と言われたり、直接否定されないまでも“あれが一番好きってホントかよ”みたいな態度を取られた経験もあります。それは私の魅力の伝え方が下手だったこともあるでしょうから、良いですよ。そう思われたって。そうした人ほど、この作品の本質に気付けていなかったりするので。私は、今作の本質とはずばり希望だと思っています。

セリのフ少ない作品ながら、何度か登場する言葉でもあります。登場人物それぞれの希望をくみ取ることも出来ますが、私がこの作品を通して感じた「希望」は、どんなに絶望的な状況で、強大な力を前にしても一途な希望の為に戦う姿勢です。勝ち負けよりも、刃向かうことに意味がある。なぜなら、その時に発生するエネルギーこそが活路を見出すかもしれないからです。「窮鼠猫を嚙む」ということわざもありますが、パワーに押し潰されそうな、影日向で生きる弱者たちが強者に反撃する時ほどエネルギッシュなパワーありません。だからこそ私のようなくすぶった灰の塊みたいな心を持った人間が見ると、その灰の中に残る僅かな火の粉にガソリンをぶっ掛け、ボッと燃やしてくれるような気持ちを与えてくれるのです。なめんじゃねーぞ、俺たちを!

だんだん何言ってるか分からなくなってきました。ともかく、この作品を映画館で見られたことは歴史的瞬間に立ち会えたということ。この時代に生まれ、あの瞬間に映画館へ行って良かったと思わせてくれた初めての映画でした。このコロナの状況が落ち着けば、また爆音上映などでお目にかかる日がくることでしょう。上映がある限り何度でも行きますぞ!

では最後にジョー様とニュークスの可愛いフィギュアでお別れです。ありがとうございました。

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※参考資料

マッドマックス - MEDIAGUN DATABASE

マッドマックス 怒りのデス・ロード - Wikipedia

 

追伸:

5月30日に予定していた本作の地上波初放送は、なくなってしまったようですね。地上波だと色々弊害があるのかなー。こんなクソみたいな今だからこそ必要な作品だと確信してますし、ついに多くの人々の目に触れ、熱狂を共有出来る良い機会だと思っていたので、なくなったと知った時はブチギレました。そのブチギレた勢いで再び鑑賞したところ、何かどうでも良くなりました。「怒りのデス・ロード」で「怒りの浄化」ですよ。まったく、尊い作品です。