キャプテン・シネマの奮闘記

映画についてを独断と偏見で語る超自己満足ブログです

第27回:人気の映画監督は「水」の表現が上手いんじゃないか説を提唱

私、あることに気付いちゃいました!

それは下の記事を書いてる時でした。

captaincinema.hatenablog.com

雨が印象的な映画を考えているうちに、“あれ?そういえば有名な映画監督って「雨」のみならず「水」を上手く使う人多いよなぁー”と。

ということで、私の仮説を3人の監督を例に自信満々ひけらかしていきます。(評論家や私よりもガチな人は、とっくのとうに気付いてるかも…)

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スティーブン・スピルバーグ

今回の説を思いついた具体的なきっかけはジュラシックパーク』(1993年公開)について書いている時でした。みんな大好きスピルバーグさん(ホントかよ)の代表作で『ジュラシックパーク』と並ぶパニック映画の代表作ジョーズ』(1975年公開)でも水がうまく使われています。

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観光地で有名なビーチに突如として現れた人喰い巨大サメと人々の戦いが描かれた作品。水中から襲われるという恐怖の演出が見事です。特に海水浴を楽しむ人々の海の中でバタバタさせる足を下から撮影した映像は印象深いです。サメそのもも姿を映さず、迫りくる恐怖を見ている人々に与えます。またあの時に流れる音楽も肝が冷えますな。

そして「雨」映画特集でもチラッと触れたプライベートライアン』(1998年公開)でも海が登場。それが戦争映画史に残るノルマンディー上陸作戦のシーンです。 

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このシーンは、輸送船から砂浜へと上陸するアメリカ兵たちの視点を中心に描かれます。砂浜には銃や大砲で装備したドイツ兵がうじゃうじゃと待機。アメリカ兵たちに銃弾と爆風を浴びせます。水中だとぼんやり聞こえる銃声や爆発音も、顔を出すとけたたましさが倍増。かすんで見える水底には、装備の重さのせいで溺れ死んだ者もいます。まさに地獄。初めて見た時は心臓が締め付けられるような気分になりました。

ジョーズ』と『プライベートライアン』、どちらも海での恐ろしさを臨場感たっぷりに味わうことが出来ます。この2本見ちゃったら海なんて怖くて入れないですよ。

 

ギデルモ・デル・トロ

メキシコ出身の日本の特撮が大好きな怪獣オタク監督。そんな怪獣愛が爆発していた作品『パシフィックリム』(2013年公開)でも「水」のシーンは沢山ありました。

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 世界各地に現れた巨大怪獣を倒すべく「イェーガー」と呼ばれる巨大ロボットを駆使戦う人類を描いています。雨の香港や海での戦闘シーンは、バカでかい怪獣とロボットのガチンコバトルの迫力は勿論、そのアクションによって生じる水しぶきは非常に美しく見えました。そういった意味で「水」が印象に残ってます。

こちらは、大ヒットを受けて2018年に続編が公開されました。しかし、続編の評判はイマイチでしたね。私は見ていないので何とも言えないのですが、見たという知り合いは「デル・トロが監督じゃなかったからなぁー」と嘆いていました。じゃデル・トロさんはこの期間何をしていかというと、こちらの作品を手掛けていました。それが「水」への探究がモロに現れていた、シェイプ・オブ・ウォーター』(2017年公開)です。米国アカデミー賞作品賞にも輝いた作品になります。

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喋れない女性と半魚人の恋を描いたラブストーリー。1954年公開の『大アマゾンの半魚人』をモチーフに作られたそうです。もうこのポスター、水中で抱き合う2人の姿は綺麗です。このシーン以外でもオープニングの海中の扉が開くシーンやバスの窓越しから見える雨の降る街など「水」にこだわった絵作りが徹底されています。

また、タイトルが作品の全てを物語っていると感じます。日本語に直訳すると「水の形」ですからね。水に形がないのと同じで愛にも形は存在しません。決まった形式がないのだから、どんな人(この場合は異形の怪物)を愛したっていいじゃん!というメッセージが込められた作品なのです。そんな多様性の側面を帯びた作品だったからこそ作品賞を獲得したのだと思います。

ちょっとうろ覚えで書いてるんでね、見直したくなってきた〜。

 

クリストファー・ノーラン

またもや登場。イギリス出身のオタク監督です。この方、難解な作風の為堅っ苦しい雰囲気満載ですが、きっと映画オタクです。

インターステラー』(2014年公開)は、スタンリー・キューブリック監督作品の『2001年宇宙の旅』(1968年公開)が好き過ぎて自己流を作っちゃいました感がします。それに007シリーズが大好きで、いつか監督したいなんてことも言ってました。(実現欲しいな)。そんな007への気持ちの表れを察する作品がインセプション』(2010年公開)

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他人の夢(作中では潜在意識と言ってます)の中に侵入し、その人しか知り得ない情報やアイディアを盗む企業スパイを描いたSFアクション。この映画については、近々詳しく語ろうと思いますが、水のシーンに一つ触れておきます。

侵入している夢の中から脱出するには、侵入していない人が軽い衝撃を与えなくてはいけません。これを「キック」と呼んでいますが、そのキックの一つとして水の張った浴槽へ落とす方法が登場します。

このシーンがめっちゃ格好良い。侵入者(レオナルド・ディカプリオ)が浴槽に落下していくシーンがスローで展開されます。そして水に落ちると、夢の中では鉄砲水が発生。夢から現実へと水に呑まれて戻るのです。

で、このキックの際に合図として流す曲があります。その曲は1956年に発売されたシャンソンで、タイトルは『水に流して』。なんかこういう箇所も粋ですよね。

では、水が関わるノーラン作品をもう一つ紹介しておきます。それがダンケルク』(2017年公開)になります。

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こちらは1940年に行われたダイナモ作戦と呼ばれるイギリス・フランス軍の撤退戦を描いた作品。ダンケルクの海岸に追い詰められたイギリス・フランス連合軍を民間船まで動員して救い出そうとする決死の救出劇が描かれています。こちらの作品も『ダークナイト』同様、『テネット』の公開記念で31日より再上映があるらしいですね。いやーノーランは日本でも人気ですな。純粋に嬉しいです。

「水」の観点から見ると、主人公たちが浜辺に放置された廃船に逃げ込むシーンは印象的です。逃げ込んだ廃船から外の様子を伺っていると、敵が発砲したと思われる流れ弾が船に命中。それによって空いた穴からみるみる海水が流れ込んできます。このままでは、船内が海水に満たされ溺れ死ぬことに。しかし外へ出れば敵に見つかるかもしれない恐怖が待っています。どちらを選ぶのか悩む猶予のない命の選択。密室的な要素と水を巧みに利用し、一般的な戦争映画でが味わうことの出来ないサスペンスフルな演出が光るシーンです。これは、サスペンスで頭角を現したノーランだからこそ撮れたシーンだったのかもしれません。

 

まとめ

以上、3人を例に取り上げましたが「水」以外にも一つ共通点がありました。それがオタクであることです。

他の監督では

パルプフィクション』や『ジャンゴ/繋がれざる者』のクエンティン・タランティーノ。(この方レンタルビデオ店でバイトから上り詰めてきてますからね)

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』や『スーパー!』のジェームズ・ガン

ホット・ファズ/俺たちスーパーポリスメン』や『ベイビー・ドライバー』のエドガー・ライト

 など理屈や芸術論を重視するようなエリートっていうよりは、映画オタクと呼ばれる類の監督が映画界を席捲しているように思えてなりません。

恐らくこうしたタイプの監督たちは「こんなシーンがあったら最高」とか「Aの映画とBの映画をミックスさせたような作品は面白くなる」といった観客目線に近い視点からアプローチすることが出来るのでしょう。オタク万歳!

ということで「水」から「オタク」へと話がシフトしちゃいましたが、この辺でお開きです。ありがとうございました。