キャプテン・シネマの奮闘記

映画についてを独断と偏見で語る超自己満足ブログです

第220回:映画『ボーはおそれている』感想と考察

今回は現在公開中の映画『ボーはおそれている』を語っていこうと思います。毎度の事ながらややネタバレ注意です。

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イントロダクション

ホラー界の新鋭 アリ・アスター監督と怪演でお馴染みホアキン・フェニックスの劇薬タッグでおくるホラーコメディ。

些細な事に気を揉み不安になってしまう中年男のボー(ホアキン・フェニックス)は、母親の住む家への帰省をしようとしていた。しかし相次ぐトラブルに見舞われてんやわんやしている内に突如母が死んだとの連絡が入ってくる。呆然とするのも束の間、急ぎ葬儀に出席すべく奇妙な旅路が始まる。

監督はアリ・アスター。『ヘレデタリー/継承』(2018年公開)と『ミッドサマー』(2019年公開)に続く長編3作目になります。とりわけ日本では『ミッドサマー』が大人気ですよね。未だに理由がよく分からない。ルックが綺麗ってとこがお洒落映画好きには好評なのかな?そういえば昔「映画秘宝」の2020年代映画監督ベストの記事で、”西はアリ・アスター、東は三宅唱”って書いてましたが、今月がまさにそんな状態になってます。『夜明けのすべて』良かったもんなぁ、秘宝も先見性のある雑誌だったのにねぇ…。

主演はホアキン・フェニックスアスター監督の次回作への出演が既に決まっているようですが、まず今年は『ジョーカー』(2019年公開)の続編が公開ですね。続編ってまだどんなアプローチになるのか予想が付かないぞ。若かりしブルースはまた出てくるのかな?また去年公開の『ナポレオン』で大砲ボンボン撃っていたのも記憶に新しいです。

そしてドゥニ・メノーシェにびっくり。一昨年の東京国際映画祭で最高賞を受賞し、去年劇場公開をした『理想郷』の主演でしたが、なんだよあの役w。予測出来ない動きをする気味の悪い奴でした。ちょっと『悪なき殺人』(2019年公開)も観てみよ。

↓『ミッドサマー』についてはこちら。自分の過去の記事を読み直すのってちょっと気恥ずかしいなぁ。

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帰省したいだけなのに…

あの…本作はコメディでOKです?私はちょいちょい吹いちゃったんですけど、結構場内はしーん としてたのでボーちゃんと同じく不安になりました。私とひと席空けて隣に居たおっちゃんぐらいしか笑ってなかったもんな。

また本作、綺麗に4幕構成になっていて各々異なる不条理が楽しめる仕組みになっていたので、各パートごとに語っていこうと思います。つまり今回はややじゃなくガッツリネタバレになりそうです。これからもご覧になられる方はどうぞお引き取りを。

 

一幕目

まず最初に展開されるのがアポカリプスな世界。恐らくボーちゃんの妄想や薬による幻覚の影響だと思われますが、ここが一番面白かったです。奇人狂人で溢れかえるストリートには普通に死体も転がるカオスぶり、貧困と暴力が跋扈しています。そんなカオスワールドのアパートの一室に住むボーちゃんは、帰省するための準備をするも次から次へと不幸に見舞われ最後は全裸で街を駆ける有様。とくに自宅に見ず知らずの他人が勝手に侵入し、やりたい放題されるシーンは『マザー!』(2017年公開)を思い出します。あのプライバシーや人権が見事に潰される感じが嫌すぎますね。

ちなみにアポカリプスな都市で次々と不幸に見舞われる様はマーティン・スコセッシ監督の『アフター・アワーズ』(1985年公開)では終始続くらしいっすね。俄然観たくなったけど、配信サイトにないしレンタル店でも見覚えないんよなぁ。


二幕目

お次はドラッグ漬けの家族の狂気。わけあって外科医の住む自宅でお世話になるボーちゃん。一刻も早く母親の葬儀に向かわないといけないのに、この家族がまた酷いのなんの。何かを隠している不穏なご両親とドラッグ漬けの感じ悪い娘さん、そして先述ドゥニ・メノーシェ演じる怖い元軍人さんに振り回されます。この時点でアスター監督が前2作でも描いてきた「家族」の呪縛的なテーマが見え隠れしてきます。またここで『トゥルーマン・ショー』(1998年公開)的な伏線も見えてきます。


三幕目

狂った家族からの逃走中に気を失ったボーちゃん。森の中の演劇団女性に助けてもらい、そこで演劇を観る事になります。この演劇を通して家族の存在が足枷となっている事に気づく事になります。このパートは他と比べ落ち着いて観られますが、もちろん最後は酷いことになりますよ。

ちなみにこのパートで展開されるアニメーションは、日本では去年公開したチリ産不条理ホラーアニメ作品『オオカミの家』(2018年公開)の監督(クリストバル・レオン&ホアキン・コシーニャ)が手掛けているそう。ファンタジックでどこか不気味な作画はそれこそ『ミッドサマー』お好きな方には刺さるのかな?っていうか『オオカミの家』はアスター監督が絶賛してたみたいですけど、こうして一緒に仕事やってるあたり宣伝目的で言ったわけじゃなさそうね。


四幕目

ついにお家に到着したボーちゃん。そこで母親から植え付けられていたある性的な思い込みからの卒業を迎え(ここも爆笑してしまったよ)、ついに家族との対峙と訣別が描かれます。いや訣別ではないのか?家族という束縛は死んでも続くのです。とりわけ母親との関係は人生において超デカい。親ガチャならぬ、この世に生を授かった時点で逃れることが出来ない縛りというのをホラーで表現したいのだろうと感じました。こうやって書いてるとファミリー映画なんじゃないかと思えてきましたし、ボーちゃんはアスター監督自身の虚像なのかもしれません。

まとめ

以上が私の見解です。

アスター作品の中じゃ最もストレートで面白かったかも。まぁ私が一周回って幼稚なんでしょう。全裸でダッシュや取っ組み合いをしてるシーンを観ると反射的に笑ってしまいますし、終盤のデカチ○コも凄かった。ああいうのがケレンってやつですね。

という事でこの辺でお開きです。ありがとうございました。