キャプテン・シネマの奮闘記

映画についてを独断と偏見で語る超自己満足ブログです

第84回:映画『レミニセンス』感想と考察

今回は現在公開中の映画『レミニセンス』を語っていこうと思います。毎度のことながら、ややネタバレ注意です。

 

f:id:captaincinema:20210920211042j:image

↑このデザイン『インセプション』と『ブレードランナー』を足して2で割った雰囲気で良いっすね。あれっヒュー・ジャックマンって左利きなんだ。

 

イントロダクション

ダークナイト』や『インターステラー』で脚本を担当したクリストファー・ノーラン監督の弟ジョナサン・ノーランが製作に携わっている事が何だか大々的に宣伝されているSFサスペンス。記憶がテーマになっている事もあるからでしょうけど。

主人公(ヒュー・ジャックマン)は人の記憶を空間的な映像に再現をする記憶潜入エージェント。ある日、なくした家の鍵を探し出す為に記憶を探って欲しいと女性(レベッカ・ファーガソン)が依頼をしに来る。その女性に一目惚れした主人公。イイ感じに関係を築き上げていくも突如として彼女は姿を消す。一体何処へ行ったのか?行方を追ううちに彼女が街を牛耳る権力者たちの陰謀に関わっていることが判明してくる。

主演は筋肉モリモリで歌うまという何でも出来ちゃう俳優ヒュー・ジャックマン。『X-MEN』シリーズのウルヴァリンは勿論好きですが、『イーグル・ジャンプ』(2016年公開)の飲んだくれコーチも結構お気に入り。そう言えばクリストファー・ノーラン監督の『プレステージ』(2006年公開)にも出てました。

そしてヒロインを演じるレベッカ・ファーガソンとは『グレイテストショーマン』(2017年公開)での共演歴あり(あの時も歌手役でしたね)。この女優さんと言えば『ミッションインポッシブル』シリーズに登場する英国スパイのイルサ役が有名でしょう。とにかくカッコ良いので、2010年代を代表する女性キャラクターの一人と言っても過言ではありません。

 

その選択はあり?

本作の一番の見所は、やはりラストだと思います。

彼女が姿を消した真相に辿り着いた主人公。意外って程でもないその真相に深く絶望をし、ある方法を持って過去を生きる事を選択するのです。一応未来(というか現実)を選択する人も描かれており、どちらを選ぶのも間違いではない事を示唆しています。しかしどこか消極的というか未練がましい印象を受けました。私個人としてもあまり過去に浸って生きたくないんですよね。かと言って未来に期待し過ぎるのも違う気がしますし、結局大事なのは「今」だと思っていますから。

このメッセージ。水没した街の感じと少々違えど人の頭の中を探る設定が似ているせいで、どうしても見比べてしまう『インセプション』(2010年公開)とは真逆に感じました。『インセプション』は目の前にしている今この瞬間にこそ価値があるんだという事を述べた作品だと解釈しているので。

「意外って程でもない」とか「未練がましい」と何だかディスってるような言葉遣いをしてますが、作品としては充分面白かったですよ。個人的にメッセージが刺さらなかっただけなので、まぁ人を選ぶかなという感じです。

 

captaincinema.hatenablog.com

↑『インセプション』についてはこちら。

まとめ

以上が私の見解です。

本作を一言で現すなら典型的なファム・ファタールのスタイルにSF的な捻りを加えた作品です(ネオ・ノワールってやつだな)。よって「ノーラン作品」特有の難解なストーリーや奇抜な映像はありませんので、その潜入観を持って観てしまうと響くはずのメッセージも取りこぼしてしまうかもしれません。くれぐれも「ノーラン」という字ずらに惑わされない事をおすすめします。

あと恒例の武器について。中盤にぼちぼち派手な銃撃戦がありますが、その時のチャイニーズマフィアのドンが『男たちの挽歌』シリーズよろしく2丁拳銃をやってます。ここ最近の映画じゃあんまり観ないよね、2丁拳銃(今年だと『ガンズ・アキンボ』はあったけど)。使用拳銃もゴリゴリに装飾した金色のベレッタ(1997年公開『フェイス/オフ』でニコケイが使ってたM1911に似てるデザイン)。監督さん、メッセージ性やファム・ファタールのチョイスといいきっと懐古趣味ですね。

ということでこの辺でお開きです。ありがとうございました。

第83回:映画『アナザーラウンド』感想と考察

今回は現在公開中の『アナザーラウンド』を語っていこうと思います。毎度のことながら、ややネタバレ注意です。

 

 

f:id:captaincinema:20210920075717j:image

 

イントロダクション

今年の米国アカデミー賞で国際長編映画賞を受賞したデンマークの作品。「アナザーラウンド」というのは英語で「もう一杯」という意味があるそうです(原題は酒飲みを意味するデンマーク語の「Drnk」)。

主人公のしがない高校教師(マッツ・ミケルセン)とその同僚3人。「血中アルコール濃度を0.05%に保つと仕事やプライベートが上手くいく」というデンマークの哲学者だかが提唱したトンデモ説を実証すべく朝っぱらかたほろ酔いの状態を続ける。最初のうちは上手くいっていたものの、次第に酒量が増えていき…。

主演のマッツ・ミケルセンと言えば“デンマークの至宝”とも評されるイケオジ俳優。『007/カジノロワイヤル』(2006年公開)やドラマシリーズ『ハンニバル』が有名でしょうか。私的にはNetfilx作品の『ポーラ/狙われた暗殺者』(2019年公開)好きなんすよね。ひっそりと続編を待ち望んでいるのですがないかなぁ。

 
人生に乾杯!

イントロダクションのあらすじだけ見ると、単なる酒飲み映画のように聞こえるかもしれません。実際ほろ酔いのおっさん4人が全編に渡りじゃれついているわけだし人ってすぐ調子に乗りますから、物語の顛末は分かりきっていることろはあります。しかし決して飲酒を否定するようなニュアンスでは無く、お酒の楽しさと愚かさがバランス良く描かれています。

お酒が楽しさと愚かさの両面性を兼ね備えているように人生だって同じです。生きていれば楽しいことだけじゃなく辛いことや失敗を経験します。それに主人公たちが感じていた年を取るごとにマンネリ化する日常も致し方ない部分はあるでしょう。それでも人生は続いていきます。くよくよしても仕方ないんですよね。だから時には酒の力を使うも良し。お酒以外でも何か「心酔」出来るモノ、あるいは人と共に気楽にやっていくのが一番良いのかもしれません。

 

まとめ

以上が私の見解です。

全体的な雰囲気も非常に良くて酒が入ってないけどほろ酔い気分になれる作品でした。随所に挟まるドキュメントタッチの映像やゲラゲラではないクスッと笑わせてくる上品さがそう感じる理由だったかと思います。

また、作品を観ていると乗っけから高校生が飲酒をしているので気になって調べたところデンマークでは16歳からお酒の購入が出来るそう(度数16.5%以上は18歳から)。その為、高校生から普通にお酒は嗜んでいるようなのです。作中に登場する高校生はなんと3年生にして1日14〜15杯、調子が良けりゃ週に50杯ってマジかよw。恐るべしデンマーク、日本人と体質が違い過ぎます。なので我々は0.05%維持のマネはしない方が良さそうです。

ということでこの辺でお開きです。ありがとうございました。

 

余談

以前どこかで「酔う=時間の無駄」と書いた気がするので、私自身のお酒事情をちょっくら語っておきましょう。なぜ無駄だと思うかと言いますと、私酔うと眠くなるタイプなのです。酔うと饒舌になる人って多いと思うんですが、私は残念ながら真逆。眠くなるので口数の少なさに拍車が掛かるというわけです。つまり寝たくなのに眠くなるという自分の意思に反してしまう行為なので時間を無駄した気分になるのです。体質的にも強い方ではないので飲める人が少し羨ましい気持ちもあったりしますね。

なので個人的には本作を観ていても共感という感情は湧かなかったのですが、お酒の強い人やお酒で失敗した事がある人にとっては、思い当たる節もあって結構グサグサ来る内容な気がします。

 

※参考

オスカー受賞作『アナザーラウンド』で知る、デンマークの驚きの飲酒事情|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS

 

第82回:映画『シャン・チー/テン・リングスの伝説』感想と考察

今回は、現在公開中の『シャン・チー/テン・リングスの伝説』を語っていこうと思います。毎度のことながら、ややネタバレ注意です。

 

f:id:captaincinema:20210911232206j:image

 

イントロダクション

アベンジャーズ』を筆頭に展開されるマンモスシリーズ、MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)の第25品目。

サンフランシスコでホテルマンとして働く男ショーン(シム・リウ)。ある時バスでヤバそうな連中に絡まれた際、親友(オークワフィナ)の度肝をも抜く戦闘スキルを発揮する。実は本名シャン・チー。父親(トニー・レオン)が率いるテロ組織で武術を叩き込まれたものの戦うことを拒み逃げ出した過去を持っていた。伝説の腕輪“テン・リングス”を使った父の陰謀に巻き込まれる形となり、ヒーローとして戦う運命へと導かれていく。

“チャン・チー”じゃないんですよね、失礼した。これじゃ中国の女優さん チャン・ツィーになってしまうw。そんな私が勘違いをしていた主人公を演じるのがシム・リウ。この方お初にお目にかかりました。過去にどんな映画に出てたんだろうか。確かに戦いは拒絶しそうなめっちゃいい人そうな顔してます。

また、主人公のお父さん且つ本作の悪役の位置付けで登場するのが『インファナル・アフェア』(2003年公開)や『ハード・ボイルド新・男たちの挽歌』(1992公開)のトニー・レオン。個人的には『レッドクリフ』(2008年公開)の周瑜のイメージが強いです。丁度三国志にドハマりしていた時期に観た事もあって超カッコ良かった。本作の序盤の方では着物姿が拝めるんですが、思わず“おっ!周瑜!”って一人盛り上がってました。


正直舐めてた

はい、はっきりさせておきましょう。主人公の名前を間違えていた時点でお分かりの通り私、今作を舐めてました。昔やっていたマーベルのスマートフォンゲームの中でシャン・チーは全然使い物にならないキャラクターだった事があり、“カンフーが出来る程度のにいちゃん”ぐらいに思ってました。それがどうでしょう。蓋を開けてみれば、まさかのスケールのデカさに腰が抜ける勢いでした。

まず序盤はバスの中でのファイトシーンを始めとしたマーシャルアーツを駆使したアクション。クルクルと回るカメラワークで撮られた小気味の良いアクションになっています。特にバスファイトに関しては今年公開作品だと『Mr.ノーバディ』にもありましたが、これはトレンドなのかな。個人的にこうした腕や足の可動域が限定される空間での格闘戦ってツボなんですよ。トイレやエレベーター内とか逃げようがない感じがスリルに拍車をかけます。

そしてマーシャルアーツに留まらず、アメコミらしいバトルもちゃんとあります。副題にもあるテン・リングスという10個の腕輪(同じような物を使ってる人が2004年公開『カンフーハッスル』に出てきてたような)。あのリングがとにかく万能過ぎる。MCUのヒーローが使用する武器の中じゃソーが使用するストームブレイカーやムジョルニアに次ぐアイテムかもしれません。

まぁーここまでは想定内。そりゃ天下のマーベル様ですから、これぐらいは当然。しかしこれだけじゃなかった。軍団と軍団がぶつかる合戦シーンからのついには怪獣バトルまで登場。敵で出てくる通称“メガ”のデザインは良い感じでした。喉元が紫色になる描写はシンゴジを思い出させます。っていうかデカい怪獣同士の殴り合いはMCU史上初ではないでしょうか。

こんな感じでアクションのバラエティーが豊富なのでお腹一杯。お得感満載な映画でした。今頃しょぼいスキルだったあのゲームのシャン・チーには強力なアップデートが施された事でしょう。

 

まとめ

以上が私の見解です。

中盤は少々中だるみを感じたり、少し謎な部分(リングについての謎は追々明かされるとして、トニー・レオンミシェル・ヨーが演じていたキャラはどうして数千年も生きられるのか?)はありましたが、大満足な作品でした。私が初めて映画館で観たMCU作品に登場していたあの人の登場で懐かしさを感じましたし。

それとヒロイン(オークワフィナ)のポジションが親友から変化しなかったのはナイスでした。大抵あのポジションは恋人になってしまいますから。あのバディ関係には今後も期待しちょります。

ということでこの辺でお開きです。ありがとうございました。

第81回:もう我慢ならん!怒れるパンピームービー特集

今週のお題「爆発」

というお題を発見。「爆発」と言えば真っ先に思い浮かぶのが「怒り」でした。そこで今回は、怒りと映画を絡めた話をしていきたいと思います。毎度のことながら、ややネタバレ注意です。

 

 

「怒り」には定期的に発する場が必要

このご時世実態のないモヤモヤした「怒り」を抱えている人は多いのではないでしょうか。我慢続きの日常、相次ぐ胸糞悪いニュース、批判ばかりで提案の少ない社会、平等が幻で何でも「仕方ない」で片付けられがちな風潮…。一体何処に怒りの矛先を向けて良いのか分かりません。『うっせぇわ』のような歌が流行る所以(分かんないけど“うっせぇ!”って叫びたんだよw)も頷けます。何時からこんな時代になってしまったのでしょうね。

そんな「怒り」はどっかで定期的に発散させなければ、それこそ「爆発」をしてしまいます。爆発した怒りは人間を怪物に変える可能性だってあります。しかし、そう簡単にぶつける場所なんてありません。職場で発散すればパワハラになり兼ねないし家庭じゃ喧嘩の火種に。そもそも実態のない怒りを誰かにぶつけてスッキリするなんて独りよがりにも程があります。

そこで登場するのが「映画」です。映画の中には怒りを爆発させてしまった一般人を観ることが出来る作品があります。そんな人物たちに自分を重ね合わせて怒りを爆発させることも心の処方箋になると思うのです。

 

映画で描かれる一般人の「怒り」

そんな怒れるパンピームービーのエースだと思っているのが1976年公開のタクシードライバーカンヌ国際映画祭パルムドールを獲得している作品です。

f:id:captaincinema:20210908233556j:image

主人公のトラビス(ロバート・デ・ニーロ)は孤独な元海兵隊員。不眠症に悩まされていますが、それを逆手にとってタクシードライバーとして夜な夜な働いています。麻薬や暴力が渦巻く腐った街を雨が洗い流してくれと願い、得体の知れない不満や怒りは日記に書き殴る日々を送っています。

当時のベトナム帰還兵という社会問題がバックグラウンドにあるものの、鬱屈した日々を送る名も無き人という意味ではどこか現代的でもあります。だからこそ彼が起こす暴挙には賛同とまではいきませんが何だか筋が通っているようにも思えてきます。

その『タクシードライバー』の意志が伝播した作品が『ジョーカー』(2019年公開)でしょう。こちらはヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を獲得してます。アメコミ人気キャラということもあって日本でも結構話題になりましたよね。

f:id:captaincinema:20210908233624j:image

↑先日行きましたDC展で展示されていた『ジョーカー』の撮影用衣装。

主人公のアーサー(ホアキン・フェニックス)は、ピエロに扮する大道芸人。母親の介護と自身の抱える心的障害と付き合いながら、コメディアンとして成功することを夢見ています。しかし生きずらい世の中やコメディアンを目指す自分を冷笑する奴らに怒り心頭。次第に狂気に取り憑かれていきます。

作中の「狂っているのは自分なのか?それとも世の中なのか?」というセリフが登場する通り、社会と個人のどっちが変なのかが分かりずらいのは今の日本も同じじゃないでしょうか。

で、個人的に好きなのは1993年公開のフォーリング・ダウン

f:id:captaincinema:20210908233902j:image

主人公はただの会社員、通称D-フェンス(マイケル・ダグラス)。渋滞に嫌気がさし車をほったらかして家族に電話を掛ける為の小銭を崩そうとコンビニを訪れる。そこで物価の上がったコーラと融通が利かない店員に出くわし、怒り爆発。抑えの効かなくなった怒りは街を揺るがす事件へと発展していきます。

物価ねぇ~、あるあるじゃないですか。日本の場合は、値段は据え置きで以前より内容量が少なくなっていることが多いと思いますが。このような些細なイライラが主人公の前に立ちふさがり怒りのボルテージを高めていきます(ボルテージが上がるごとに手持ちのアイテムが強力になっていくのもポイント)。特に私が好きなのはハンバーガーショップのシーン。店頭のイメージ図やサンプルはめちゃくちゃ美味しいそうなのに、いざ運ばれてきた実物はしょぼい。写真盛りすぎだろ!最近は減ったような気がしますが、ファミレスとか行くと“あれ?思ってたより野菜のってないな…”みたいな事でガッカリすることはあります。些細なイライラも積もれば山となる。主人公が怒りの鉄槌を下していく様は、はっきり言って観ていて気持ちが良いです。

ちなみに今年公開の作品だと『アオラレ』『プロミシング・ヤング・ウーマン』でも怒りの暴走が描かれていました。『タクシードライバー』や『フォーリング・ダウン』とは年代が変わっていも人々は様々な問題・障壁に対して怒りの声を挙げ続けています。

 

captaincinema.hatenablog.com

 

captaincinema.hatenablog.com

 

まとめ

ここまで「怒り」をマイナスなニュアンスで語ってきましたが、時にポジティブなエネルギーにもなります。実際、怒りは嬉しい感情よりも人間のパワーを引き出すという実験結果もあるそうです。映画だと大傑作『マッド・マックス 怒りのデスロード』(2015年公開)やクズ過ぎるラガーマンに挑むサラリーマンを描いた『宮本から君へ』(2019年公開)なんか良い例でしょう。両作品とも主人公たちが怒っていたからあんな事が出来たんですよ。

結局はアンガーマネジメントという言葉もありますし、感情をキャラ化させた傑作ピクサー作品インサイドヘッド』(2015年公開)にもあったように上手に付き合うのが大事なんですね。さぁー怒れ!そして笑えー!

ということで段々意味わかんない事を書き出したのでこの辺でお開きです。ありがとうございました。

第80回:映画『ドント・ブリーズ2』と『孤狼の血LEVEL2』から感じた「続編」の在り方

今回は少し志向を変えて、現在公開中の『ドント・ブリーズ2』と『孤狼の血LEVEL2』の2本を観て感じたことを語っていこうと思います。毎度のことながらややネタバレ注意です。

 

 

イントロダクション&一寸コメント

まぁまずはいつもの感じで、イントロダクションと作品に対するコメントしていきましょう。

 

ドント・ブリーズ2

f:id:captaincinema:20210830192427j:image

 

盲目の独居老人の家に忍び込んだ空き巣たちがまさかの返り討ちを喰らう2016年公開の『ドント・ブリーズ』の続編。

盲目の老人(スティーブン・ラング)は、一人の少女を育てながら静かな暮らしを送っていた。そんな生活を乱すが如く少女を狙う謎のチンピラ集団が出現。老人とチンピラの少女を巡る火蓋が切って落とされる。

盲目の老人の屋敷に殴り込んで来たチンピラたちのリーダーは『マッドマックス』の悪役 トーカッターに似てると思ったのは私だけじゃないはず。キャラクターは全然違いますけどね。そして、チンピラたちを前に殺人マシンと化す盲目のマッチョジジイの姿はNetflixオリジナルドラマ『デアデビル』に登場するスティックを彷彿させます(分かる人には分かるはずw)。少女を巡る「真実」の二転三転具合もなかなかスリリングで満足な内容でした。

あと恒例の武器について。ステンレスモデルのベレッタやパイソン?なデカいリボルバーなど銃の活躍を差し置き、ハンマーのご活躍が冴え渡る作品でした。『ザ・レイドGOKUDO』(2014年公開)しかり『オールド・ボーイ』(2003年公開)しかり、やっぱり片方が釘抜きになってるタイプの方が殴ると切り裂くが共存をし暴力性アップしますね。

 

孤狼の血LEVE2

f:id:captaincinema:20210830192435j:image

 

警察と暴力団の攻防を描いた柚木裕子の小説を映画化した2018年公開『孤狼の血』の続編。原作シリーズにも『凶犬の眼』という続編がありますが、今回はシリーズを原案としたオリジナル脚本になります。確かに前作も小説とは少し異なるエンディングだった覚えがありますが、完全オリジナルというのは少し驚きでした。

亡きマル暴刑事 大上(役所広司)の意志を継いだ主人公の日岡(松坂桃李)。暴力団の抑え込む事に成功し、秩序のバランスが保たれてること3年が経過していた。しかしそこに現れたのが凶悪なヤクザ 上林(鈴木亮平)。上林の凶行を抑えるべく、日岡は再び奔走することになる。
ここ最近の邦画とは思えないギラギラした派手さをはらんだエンタメ作品ですが、本作の一番ポイントはとにかく頑張る役者陣でしょう。主人公の日岡は、エス(情報提供者)とそのお姉さんといったカタギの皆さんに会ってる時は割と前作の広大のぼっちゃんのままだったりします。しかしそれ以外、特にヤクザの前ではガラッと印象が変わります。それでも大上さんのような完全なる一匹狼には成り切れない絶妙な不安定さが感じられました。いや~松坂桃李ってこんな素晴らしい役者さんだったんですね。

対する鈴木亮平演じる上林は「極道」の皮を被ったシリアルキラー。狂気度と目力が終始フルスロットルなので、現在放送中のドラマで演じている救命士の皮を被ったスーパーヒーロー要素は何処にいってしまったのかという状態の恐ろしさでした。

ただ何だかんだ最も気合いが入っていたのは滝藤賢一演じる県警の本部長さんですかね。登場シーンは短いながらか凄まじいインパクトでした。

 

 「続編」という言葉に縛られない続編

それでは今回、2作品をまとめた理由を述べていきます。

どちらの作品も前作とは印象が違う、いやそれどころかジャンルが異なっているような気さえする作りとなっていました。

ドント・ブリーズ2』に関してはホラー色強めなサスペンスからサスペンスアクションに路線変更。息を殺さないと…みたいな展開も無くなっていたのでホラーを楽しむ感情は湧いてこず、寧ろ“どんなアクション見せてくれるんだ?”という思いで観てました。「娘」ワードも強いので家族的な感動導線もありましたし、13日の金曜日公開をプッシュするのは違くねぇ?w

孤狼の血LEVEL2』においては緻密な脚本のクライムサスペンスから、今回は割とシンプルなストーリーとなりアクション映画なスタイルに仕上がっていました。個人的には『凶犬の眼』の映像化を見てみたい気もしましたが(登場キャラの国光を鈴木亮平が演じるってのも面白そう)、“これはこれでまぁアリだね”と思いながら観てました。

両作ともにここまでの路線変更となってしまうと賛否両論、好き嫌いがかなり分かれてしまいそうですが、続編だからと言って同じ設定の繰り返しやスケールアップに収まる必要はないということでしょう。またジャンルにすら囚われない作風が作り手にとってのチャレンジであると同時に新たなファンが広がる可能性に繋がるのかもしれません。

 

まとめ

以上が私の見解です。

う~ん。2本同時に語っていくのは難しいですな。まぁ思ってたよりはまとまりが出た気がしていますが。

あっ思えば『マッドマックス2』もだわ。あれも主人公がメル・ギブソンと車をぶっ飛ばす事以外ほぼ全てが前作とは違っていましたね。案外珍しい話でもないのかと考えると何だか今まで書いたことがぼやけてきそうなので、この辺でお開きです。ありがとうございました。

 

↓以前続編映画について語った内容はこちら。

captaincinema.hatenablog.com

 

※追伸

そういえば2作品とも上映中にスマホ開いてる阿呆おったわい。じゃけぇスマホと一緒にやっちま…。おっと物騒。大丈夫、私はカタギですからそんなことしないですよぉーw。ただ思っている以上にスマホの光は悪目立ちをし、他人の迷惑になっている事を一度分からせてあげるべきでしょうけど。

 

第79回:映画『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』感想と考察

今回は、旧作映画を語っていきます。先日ふらっと立ち寄ったリサイクルショップである円盤との出会いを果しました。それが今回は扱う作品『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』です。以前レンタルDVD店でたまたま借りてみたところ、予想以上に面白くて感動した作品。ネットショップで買うか迷ってたんですが、現物を目の前にしてしまったら財布を開くしかないです。そもそもあまり有名じゃない作品なのか様々な店で見かける事が今までなかった代物です。ヒーロー映画って需要あるはずなのに。「もっと認知されてもいいだろ!」そんな思いを胸に語っていこうと思います。

 

f:id:captaincinema:20210819101221j:image

 

イントロダクション

日本では2017年に公開したイタリア産ダークヒーロー映画。

テロが相次ぐローマを舞台に、ひょんな事から並外れたパワーを手に入れたチンピラが正義のヒーローへと覚醒していく様が骨太に描かれます。

タイトルにある『鋼鉄ジーグ』は1975年に日本で放送されたアニメーションでイタリアでも1979年に放送され人気を博した作品です。監督のガブリエーレ・マイネッティがこのアニメをモチーフにして生み出したのが本作になります。その為、直接『鋼鉄ジーグ』が絡んでくるわけではありません。勿論実写化でもないので、そこはご注意を。

主人公を演じたクラウディオ・サンタマリア。この方、役作りとしてなんと20キロの増量に臨んだそうです。役作りでの体重増減はよく聞きますが20キロですよ。そんなに増やせるもんなんですね。

 

人生を見失った男の反撃

本作一見内容だけだとベタなヒーローものに聞こえますが、数多あるヒーロー映画とは一線を画した作品だと思います。

主人公はくすねた物や金で日銭を稼ぐ街のチンピラ。趣味はAV鑑賞とカップのヨーグルトを食べること。家族や友達は誰一人としておらず、精魂尽きた顔立ちのしょぼくれたおっさんです。

このおっさん、強靭なボディーと腕力を手にしたことに気付くとまず最初に行ったのがまさかのATM強盗(しかもATM機ごと盗むというワイルド過ぎる手法)。手にしたお金でAVとヨーグルトの買い溜めです…って単なるクズじゃんw。でもこれ、リアリティがあると私は思います。ほとんどのヒーロー映画では、特殊な能力を得たらそれを悪人を懲らしめる為に行使します。しかしどうでしょう。超人的な能力を得たらまずは自身の私利私欲に費やしてしまう気がするのは私だけではないはずです。

そんな彼は世話になっていた“オジキ”の娘の面倒を見ることになります。母親を失った悲しみで精神的な病を患ったらしいですが、母親を失った事以外にも様々な精神的苦痛を受けてきたことが窺い知れる人物。唯一生きがいとしているのが日本のアニメ『鋼鉄ジーグ』を観ることで、アニメに登場する主人公に重ねて彼を慕うようになります。彼女との交流を通して次第に「正義」や「愛」を知り、生きる気力を取り戻していきます。
そうなんです。これはヒーロー誕生の物語であると同時に、一人の男の見失った人生の再生、いや反撃なのです。アツいぜ!死んだ目をしていた主人公の瞳に魂が宿っていく様は最高にエネルギッシュです。

 

まとめ

以上が私の見解です。

ありきたりなヒーロー映画にちょっと満腹感を感じている人には、刺さるのではないかと思う作品です。私自身、こういうヒューマンドラマ要素の強いスーパーヒーロー映画を欲していただけに直球ストライクな作品でした。

またアクションシーンにおける殴られたり銃弾が着弾した時のエフェクトのかけ方が結構好み。アクション自体は地味ながら、臨場感のあるものになっています。

さらにオープニングクレジットでのタイトルの出方はマジ最高。このタイトルは日本がオリジナルに付けた邦題ではなく、れっきとした原題。お分かりですね。つまり外国作品なのにデカデカと日本語タイトルが画面に映し出されるということです。ここだけでも一見の価値あると思います。

ということでこの辺でお開きです。ありがとうございました。

第78回:映画『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』感想と考察

今回は、現在公開中の『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』を語っていこうと思います。毎度のことながら、ややネタバレ注意です。

 

 

f:id:captaincinema:20210815221200j:image

 

イントロダクション

DCコミックの映画シリーズDCEU(DCエクステンデッド・ユニバース)の最新作。DCEUはマーベルコミックのMCUとは少し異なり、他作品との結び付きはやや薄めで個々の作品が独立した作風となっているのが特徴です(『ジャスティス・リーグ』で色々あったからね)。そのため2016年に公開した『スーサイド・スクワッド』の正式的な続編ではなく、新たにリメイクの方針をとった形に近いのが本作の位置付けでしょう。

身体能力抜群なクレイジー女(ハーレイ・クイン)や娘に手を焼く凄腕スナイパー(ブラッドスポート)、平和の為なら暴力上等 過激マッチョ(ピースメイカー)、食欲旺盛なサメ君(キング・シャーク)といったブッ飛んだ悪党達が減刑を掛けて、独裁国家の陰謀壊滅に挑んでいく。

監督はジェームズ・ガンMCUシリーズでは『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズを手掛けている監督です。本作は過去のブラックジョーク発言により一時的にマーベルスタジオから解雇されたタイミングでオファーを受けた経緯が。あのニュース聞いた時はどうなることかと思いましたが、こうして新たな作品が生まれるきっかけになったので結果オーライですね。今後、二代ヒーローシリーズの橋渡しの存在となるか期待せずにはいられません。

キャストはマーゴット・ロビーイドリス・エルバを筆頭に、ジェームズ・ガンらしさ満載なメンツが揃っています。ガン監督作品の象徴といってもいいマイケル・ルーカー。傑作自警団映画『スーパー!』に出演していたレイン・ウィルソン。そして『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー/リミックス』(2017年公開)で見事MCUに参戦したシルベスター・スタローンが声出演。キャストだけで面白さは保証されたもんですな。

 

リメイクで大正解

まず本作、続編という形ではなく「リメイク」という方針をとったのは大正解だったと思います。新たなキャラと新たな物語によって自由度が増していましたからね。

上映スタートからとにかくテンポが良く、キャラクター紹介をちゃちゃっと済ませ、すぐ様『プライベートライアン』の冒頭を彷彿とさせる上陸作戦で阿鼻叫喚の地獄絵図が展開されます。ハーレイ・クインの紹介なんて「皆さんご存知の〜」で終了してるしw。あの界隈じゃ超有名人なのね。そんな銃弾と爆破の嵐を他所に別動隊の上陸を成功させているのは、チームの総指揮官アマンダさんの抜かりないところ。ここでオープニングクレジットと共に別動隊のキャラクター紹介シーンへと入っていきます。

ここまでの序盤の流れが非常にスマートでした。複数の時間軸の物語を展開させつつ登場キャラクターの渋滞緩和をしていく。DC作品の一見さんにも比較的優しい作りですし、センス抜群だったように感じました。

また前作とは違って、個々のキャラクターにちゃんと見せ場が用意されているのも魅力です。ミュージカル映画で言えばソロの歌唱シーン、歌舞伎で言えば見得を切る場面でしょうか。見せ場は時としてカッコ良く活躍するシーンではなく、盛大な死に様として用意されています。それも結構容赦なく。この振り切り方が気持ちいいです。

ちなみに私のお気に入りキャラはラットキャッチャー2。ネズミを自在に操る能力を持った女性キャラクター。基本お眠で吞気な顔した人なので“大丈夫かよ”って心配になるのですが、心優しい側面を持ち合わせたガッツあるキャラでした。また彼女のお父さん(タイカ・ワイティティ!)が泣かせるのよ~。今後の活躍に期待大です。


「ゴミ」な奴なんて居ない!

下品なジョークやスプラッター描写ととにかくやりたい放題な映画なのですが、見終わってみると不思議な事にあったかい感動がありました。

どいつもこいつもチンケな犯罪で捕まったしょーもない悪党ばかり。しかし彼らの頑張り、特に終盤の宇宙怪獣スターロ(こいつ、強烈だったな)との決戦を観ていると、誰かの役に立つことは誰もが出来るのだと思わせてくれます。これを私たちの世界に置き換えてみると、立派な経歴や誇れる能力を持ってない単なる凡人だって決してゴミではなく、誰にだってヒーローになれるチャンスがある気がしてきます。あんな悪人たちにだって出来たんですから。きっと必要なのはちょっとの勇気なんです。

そんな優しさ溢れるメッセージに落涙。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の時もそうでしたが、一見負け犬のように見えるキャラ(実際コミックでの知名度が低いキャラが多数を占めているらしいですが)にスポットライトを当てて泣き落としにかかってくる感じ、上手いよなぁ~。

 

まとめ

以上が私の見解です。

大作系のエンタメ映画はこういうのが観たいんですよ。笑って泣ける物語の中には国家や政治のパワーゲームというシリアスなテーマも内包しています。単なるエンタメに枠に収まる事のない快作です。

でも一つ衝撃だったのが、“ブーマー”ことキャプテン・ブーメランの扱い。前作からのメンバーの一人であり、ハーレイ・クイン単独の作品にもチラッと登場しているキャラクターなので、まさかあんな事になるとは…。場内で驚きの声が上がった印象もなかったですし、Twitterを見てもその事に触れるような内容は見当たらないので、あんまり人気ないのかなぁ?

ということでこの辺でお開きです。ありがとうございました。

 

f:id:captaincinema:20210815221341j:image

↑新宿に居たんですよ、宇宙怪獣スターロ。分裂したちっこいのが顔に張り付かなくて良かったわ〜。