キャプテン・シネマの奮闘記

映画についてを独断と偏見で語る超自己満足ブログです

第98回:映画『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』感想と考察

今回は現在公開中の映画『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』を語っていこうと思います。毎度のことながらややネタバレ注意です。

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イントロダクション

Marvelコミックのヒーロー スパイダーマンの敵としても有名なヴェノムを主人公にした同名タイトル作品『ヴェノム』(2018年公開)の続編。

地球外寄生生命体のヴェノムと悪人以外を食べない事を条件に暮らしていた主人公のジャーナリスト エディ・ブロック(トム・ハーディ)。連続殺人の罪によって死刑執行が迫るクレタス・キャサディ(ウディ・ハレルソン)が起こした未解決事件を追う中、面会時に起きたあるハプニングによって、残虐な“赤い奴”と対決する事になる。

主演はちょいとジャーナリストの割にはイカつい気がするトム・ハーディが続投。はい、出ました。傑作『マッドマックス/怒りのデスロード』(2015年公開)で主役を務めた私の推し俳優の一人。アメコミキャラの括りで言えば『ダークナイトライジング』(2012年公開)でのベインも記憶に残る好演でした。

そしてもう一人推しな俳優が続投してます。それが主人公の元恋人役のミシェル・ウィリアムズ。『ブローバック・マウンテン』(2005年公開)や『マンチェスター・バイ・ザ・シー』(2016年公開)など良作に出まくってる方。『グレイティスト・ショーマン』(2017年公開)では歌声も披露してましたね。

 

前作はそこまでだったけど

推しな俳優が出演しているということは、前作はさぞかし気に入っているのだろうと思われそうですが、実はそうじゃなかった…。

「ヴェノム」と聞けばサム・ライミ版の3作目『スパイダーマン3』(2007年公開)のイメージが強く残っていたのもありますし、予告編のテイスト含め残虐でホラータッチな作品が観られると思っていました。しかし蓋を開けると凶暴なのか可愛らしいのかどっちつかずなバディもの。ルーベン・フライシャー監督らしさにも欠けるし“これじゃない”感が否めず納得出来なかったのです。謎にエンドクレジットが長かったしさ。

しかし今回は気持ちのギャップが払拭されている状態なので、すんなりと楽しめました。この作品のトーンが分かった状態で挑めるのが続編としての特権でしょう。

それにどっちつかずだったヴェノムのキャラも可愛い路線に振り切っており、ちょっと憎たらしい中学生な感じになっていたのも良かったです。悪口を言われてスネたり、へこんだエディを励まそうと料理したり。アメコミキャラの平凡?な日常が見られるのには珍しいさを感じました。

そんな山あり谷ありな同棲カップルの敵もカップル。こっちは可愛げのないカップルです。そのイカカップルの片割れで手当たり次第に暴れ回る“カーネイジ”を演じるウディ・ハレルソンはキャラとストーリー展開とが相まってどことなく『ナチュラル・ボーン・キラーズ』(1994年公開)でした。そして、もう片方の超音波的な破壊力ある叫び声を上げるキャラクターは『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒』(2020年公開)に登場していたキャラを彷彿とさせます。ナオミ・ハリスが演じている事には気付きませんでしたが、ちょいちょいマーベルとDCとでキャラ被りがあるよね。

 

まとめ

以上が私の見解です。

前作よりは良かったけれども、もう一声欲しいかったかな。特に敵であるクレタスさんには、「アメコミキャラ」としてだけではなく「シリアルキラー」としての見せ場はあった方が良かったかと。グザッ!ドバッ!的なねw。

ちなみに粋なスタン・リー出演もありましたね。実はディズニーよりソニーピクチャーズの方がリスペクト強い説。目ざとく気付かせもらいましたよ。

という事でこの辺でお開きです。ありがとうございました。

 

※追伸

私本作はTOHOシネマズで観に行ったんですが、TOHOシネマズに行くと必ず幕間に登場する山崎紘菜が卒業すると言っていたのでびっくり。

9年務めてたんですって。となると私が本格的に映画館に通い出したのが7~8年前ぐらいなのでガッツリ丸被り。いつも居るもんだから当たり前感覚としてたいして気にしていなかったのですが、いざ居なくなると聞くと寂しいものですね。たいへん長らくお世話になりました。

第97回:映画『モスル あるSWAT部隊の戦い』感想と考察

今回は現在公開中の映画『モスル あるSWAT部隊の戦い』を語っていこうと思います。毎度のことながら、ややネタバレ注意です。

 

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↑このポスター、主役はAK!って感がして結構好き。

 

イントロダクション

イラクに実在する警察部隊をベースにした戦争ドラマ。

舞台は長引く戦火によって荒れ果てたイラク第二の都市 モスル。主人公の新米警官はIS(イスラム過激派)の武装集団に襲われているところを、ISの戦闘員を討伐する事で名を馳せるSWAT部隊に救われる。その場で部隊に加わるはこびとなり、ある任務を遂行する為わずか数十人の隊員と共に戦場を駆け巡る。

製作には『アベンジャーズ』シリーズのアンソニー・ルッソジョー・ルッソが携わっています。『アベンジャーズ』以外で言えば、Netfilxの『タイラー・レイク/命の奪還』や今年公開の『21ブリッジ』の製作指揮を務めている兄弟。という事はガンアクションが見ものという事です。

 

終始響く銃声

本作、キツいゴア描写や鬱展開みたいなものがあるわけではなくともなかなかの地獄を味わうことになる作品です。多少の心構えは必要だったか。

冒頭から銃弾の嵐。主人公が同僚警察と共に武装集団に襲われ、物陰から拳銃で応戦する怒涛のシーンからスタート。その主人公のピンチを救ったSWAT隊員も容赦なきシーンを見せつけてくるので、一気に戦場へと誘われます。しかも主人公たちが戦闘を繰り広げているシーンではなくとも、何処からともなく聞こえてくる銃声。休めと言われたって気持ちが休まることのない極限状態です。

そんな中、爆弾や狙撃と矢継ぎ早に降りかかる攻撃に次々と命を落とす仲間たち。とにかく呆気なさ過ぎて悲しみに暮れるような雰囲気はありません。命が軽くなってしまっている恐怖を感じられるのは『プライベート・ライアン』(1998年公開)を観た時の感覚と似ていました。


銃器描写のあれこれ

さらに戦争ドラマということもあって銃器描写にも面白さがあります。

メインウェポンは基本敵も味方もみんなAKシリーズを使用。恐らくAK47かAKMS、AKS-47あたりかな。とにかくオンパレードなのでカラシニコフ大好きさんは必見です。隊長のAKだけ、フォアグリップにホロサイト、そして2連タイプの拡張マガジンというスペシャルにカスタムされているのもポイント。さすが隊長!格が違うぜ。

でもチームの中に一人だけFN-FALっぽい銃持ってる人が居たのが終始気になりました。7.62mmの同じ銃弾を使用する銃なので問題はないんでしょうけど、何でや?敵からの戦利品的な?

ちなみに登場シーンは少なめですがハンドガン類は基本グロック&ベレッタ。特にグロックはISの隊員の手にも握られていたので、いかに世界的に流通しているかという事が伺いしれます。この辺の話は『グロック:選ばれた武器』(2017年公開)ってドキュメンタリー映画でも言及されてたっけな。

っといつもの如くマニアックな話になっていますが、やはりルッソ兄弟。手抜かりのない銃器描写でした。

 

まとめ

以上が私の見解です。

本作において最もポイントになる「ある任務」については、もっと良い方法があるんじゃないかとかその為に自分の命は掛けられるのか等色々と個人的に考えるところはありましたが、この部分は脚色しないよねぇ。きっと実話なんでしょう。そう考えると漠然と“すげー”という気持ちが湧いてくる戦争映画でした。

ということでこの辺でお開きです。ありがとうございました。

 

※追伸

少し話は脱線して映画館のチケットについて。

私普段はインターネットでチケット予約をするのですが、本作を観に行った日は午前中に別の用事があり、観に行けるどうか分からなかったのでネットでの予約はせず窓口で購入するに至りました。

窓口で、しかもガラス越しの丸い部分を通して話すタイプで買うのはいつぶりだったでしょうか。あの昭和な感じ好きなんですよね。希望の座席を聞かれて、ベストなポジションを選んでもらうありがたさ。人件費やら色々あってチケット販売の機械化が進んでますが、無くなって欲しくはないですね。

第96回:2021年を映画関連ニュースで振り返る

一体秋はあったのかと思うほど簡単に肌寒くなりましたが、気付けば今年も残り1か月。今年も新型コロナウイルスが幅を利かせていました。オミクロン株なる変異種がまたもや出てきましたが、ファイザー派とモデルナ派で分かれるワクチンの来る3回目の接種や塩野義の飲み薬の登場なんかでそろそろくたばるでしょう。マスク生活ともおさらはじゃ。そんなコロナ禍は勿論ですが、ちょくちょくミサイル撃つ北朝鮮は不参加でタリバンの政権奪還やミャンマーの軍事クーデターという世界が平和ではない中での東京オリパラリンピックの開催も大きな話題となりました。大赤字の補填をどうするつもりなのかが気掛かり…。ともあれゴン攻めスケートボードでは10代のメダルラッシュがあったりといわゆるZ世代の躍進が印象的でした。そのオリンピックを開催させたという事だけしか特に目立った事をしなかった(5Gの絡みの携帯電話の値下げはどこへやら)ガースーこと菅義偉から岸田文雄内閣総理大臣が交代。果たして「分配なくして成長なし」は成功するんでしょうかねぇ。

その他、逃げ恥婚オオタニさんSDGsうっせぇわ圭&眞子の結婚平成の怪物引退で盛り上がった2021年。映画関係でも様々なニュースが飛び交いました。細かいニュース含めると膨大な情報量となるので、個人的にデカかったと思う話題を偏った独自見解まみれで振り返ってみようと思います。

 

captaincinema.hatenablog.com

↑2020年についてはこちら。


世間的には…

映画関連のニュースで世間的な盛り上がりを見せたのは、今年も言うまでもないでしょう。『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』『竜とそばかすの姫』を筆頭にアニメ映画の躍進続き、話題をかっさらった1年でした。今月には『呪術廻戦』の劇場版(主題歌はKingGnu!)も公開されるんですよね。またまた特大ヒットしそうな雰囲気なので、アニメ業界はホントに元気です。

一方実写映画の方は相変わらず厳しいようで特に洋画不振は著しく、大ヒットの基準となる興行収入が10億円を超えた洋画は少ない状況。『DUNE/砂の惑星』もMCUの3作品(うち1本は10億超えそう)も世界的にはヒットしていますが、日本ではそこまで注目されていないのが状況みたいです。

“売上なんてどうでもええわ!”な己を貫くスタンスといきたいところですが、そう簡単にはいきません。売上や人気は上映回数や上映されるスクリーン規模にある程度比例しますから、人気が無ければ座席数の少ないスクリーンの小さな劇場でしか上映してくれないし、上映回数が少なくなるスピードも早まります。これは、なるべく大きなスクリーンで且つ気に入った作品は複数回観たい人間からすると死活問題。どうしようもないなぁ~。

それと今年からってわけじゃなく前から思ってたんですが、最近の邦画実写はどうのこうのと揶揄する人が増えました。それする人ってだいたいアニメ好きの方たちの印象が個人的にありまして。あの~、一理あるとは思いますが何が楽しいの?好きで観てる人を傷つけてるの分かってるんでしょうかね。そもそも偉そうな事が言えるほどの作品を観てるかも謎ですが。


続くコロナ禍

はい、世間的というより今年の動向を総括する内容になりましたが、ここからは個人的にデカかったニュースです。

まずはやっぱりコロナ関連。再び休業要請に追い込まれたGWを中心とした約2ヶ月。4月下旬にお台場で予定されていた黒沢清監督作品『CURE/キュア』の爆音上映がキャンセルになったのはショックでしたよ。かなり前から予約してたのにさぁ…(泣)。

去年の春と同じことの繰り返しに深いため息が出る中、営業継続の選択を取り踏ん張ったのがミニシアター系の映画館でした。そもそも敷地面積の関係上、給付金の対象外だったのが大きな原因みたいですけど、この英断には“映画館は滅びないぞ!”という気合を感じました。抗議の動きはミニシアター系列のみならず大手も。日本の映画館が加盟する全興連や東宝・松竹・東映KADOKAWAの4社で作る日本映画製作者連盟も相次いで要請解除を求める声明を発表しました。大手と独立系が共闘して勝ち取ったのが要請解除だったというのは映画ファンとしては感慨深い出来事でした。

6月からは通常に戻り、ワクチン接種の浸透もあってか徐々に感染者が減ると戻ってきたのが洋画大作たち。7月から怪獣やアメコミキャラのスクリーンバックを皮切りに怒涛のラッシュが展開。特に9〜10月にかけてはエグかった(汗)。とは言っても上記の通り世間的には“洋画が戻ってきたね”な雰囲気ではなさそうですが、だいぶ元に戻ったことには一安心です。


動画配信の行く末

そんなコロナ禍が影響してか映画館と動画配信サービスの兼ね合いで色々と問題が噴出しました。洋画大作復帰の狼煙の一つであった『ブラック・ウィドウ』。この公開体制を巡って主演のスカーレット・ヨハンソンがディズニーに対して訴訟を起こしました。元々劇場公開のみの契約だったにもかかわらず、劇場とDisny+での同時公開によって受け取る興収の一部が減った事への補填を求める趣旨だったようです。どうやら和解はしたようですが、示談内容は明らかにされていません。

ディズニーに対しては同じように『クルエラ』で主演を務めたエマ・ストーンも訴訟を起こすのではないかとの噂も上がっていましたが、こちらは特に音沙汰なく続編の製作が決定しているので円満な状態なのでしょう。

その直後こうした動きを鑑みてか『シャン・チー』や『エターナルズ』に関しては劇場とでの同時公開の形態を取らずに劇場公開を先行させていました。見事に興収も上々のようなので、やっぱり映画は映画館が一番なんですよ!

ちなみにDisny+に関しては新サービスStareの展開がスタートしました。これ、なかなか良いですよ。『ダイ・ハード』と『ホーム・アローン』が配信されている時点で今年のクリスマスは盤石の態勢で挑めます。

動画配信サービスと映画館関連のいざこざはディズニーだけではなく、ワーナーブラザーズでも。去年『TENET/テネット』で沸かせたクリストファー・ノーラン監督がワーナーと手を切ったのも劇場と動画配信(HBO Max)の同時公開体制が原因でした。なんせロバート・オッペンハイマーを描く新作はユニバーサルスタジオで準備中しているらしいじゃないですか。長年の付き合いを解消するとは余程の事でしょう。まぁノーランって映画館での体験を大事にする超劇場至上主義だから。

こうしてみると、劇場と動画配信サービスの関係はまだ発展途上の段階だと言えます。見えてきた様々な問題をクリアにした上で、Win-Winな関係に落とし込めるかどうかが今後のポイントになってきそうです。


ファスト映画

映画館と動画配信が共存していくことは確実ですが、これだけは絶対に共存出来ないコンテンツが世に知られることになりました。それがファスト映画

ファスト映画とは、映画作品を許可なく10分程度に短く編集した動画のこと。この動画をYouTubeに投稿したとして著作権法違反容疑で男女3人が逮捕されました。私もこのニュースを聞いて初めてその存在を知りましたが、確かにYouTubeに映画紹介なのかネタバレ動画なのかよく分からないものが未だに多く投稿されている様子です。

再生回数はトータルで約4億を超え被害総額は1000億円に上るらしいので、ある程度需要があるという残念な状況です。とくに映画に対して情熱の無い人にとっちゃ10分程度で内容が分かって便利なのかもしれませんが(それで観た気になってる連中もムカつく)、新しい映画が作られる為には売上が必要です。だから人様の作ったものを勝手に編集して広告収入を稼いでいる生産性のない奴なんかに還元しちゃダメなんです。という訳でなるべく気になる映画は映画館で観るんだ!とくに気に入った作品は何回か観に行くんだよ!旧作ならその円盤買うなりレンタルや動画配信サービスを駆使しろ!

しかし私もこうしてブログを書きまくっている身としては、難しいと思う所もあります。あらかじめネタバレ注意を喚起するようにはしていますが、どこまでの範囲で書くべきか毎回悩みますし、ポスター画像であればアップしても問題なさそうですが本編の切り抜き画像をアップするのはちょっとグレーだと思うので(ネットには普通に出回ってるけどさ)なるべく控える心がけをしたり。今の時代、誰もが送り手になれる現代だからこそ著作権関連については一度学んでおいて損はない気がしています。


加熱する映画館での携帯電話マナー

ファスト映画と並ぶもう一つ映画の害虫として存在するのが、上映中に携帯電話を開く輩たち。この話題が度々ネットニュースで取り上げられている印象がありました。長時間集中出来ないとか何か連絡があったら不安とか、なんやかんやほざくなら映画館に来なければ良いだけの話なのに。

私も今年だけで4~5回は遭遇したので、以前と比べて増加しているのは肌身を持って感じている嫌悪です。特に大作系ホラー(『クワイエット・プレイス/破られた沈黙』と『ドント・ブリーズ2』観た時に居たな)で出くわす確率高し。そもそもホラー映画を観に行くと、携帯電話以外でのマナーを守れないアホとも出くわす事が多いのは一体何なんでしょう。怖がらせるシーン以外興味のない稚拙な奴が多いのか?

ともあれ最低限のルールを守ってもらわないと迷惑するのは他人。マジで映画館のルールを義務教育の一環として美術の時間にでも叩き込んであげてほしいものです。

 

京王線における傷害事件

映画館でのルールを守らない人を腹立く感じる一方、怒りを通り越して呆れと恐怖を感じさせる輩も出現しました。

10月31日の夜、東京都調布市を走行中の京王線の車内で男が刃物で乗客を切りつけ、さらにオイルをまいて火をつけ18人に怪我を負わせる事件が発生しました。その犯行時の格好はDCコミックに登場するキャラクター ジョーカー(2008年公開の『ダークナイト』でしょう)に扮しており、類似するシーンのある2019年公開『ジョーカー』が取り沙汰される事になりました。

映画と事件が関連してしまう事象は今に始まった話ではないですよね。1997年に起きた酒鬼薔薇事件の犯行声明には『マッド・マックス』に登場するトーカッターのセリフが引用されていたり、海外に目を向ければ同じようにジョーカーに影響された無差別殺傷事件がありましたし、『タクシー・ドライバー』の影響から大統領を暗殺しようとする国家をも揺るがす事件が起きたりしています。

つまり映画には人の行動や思想に影響を与えるだけのパワーを持っているわけですが、これらの痛ましい出来事は作品に悪いイメージが付いてしまう可能性のある行為です。本当にその作品が好きならそんな泥を塗る所業を働くはずはないので、きっとその作品を好む自分が大好きという一種のナルシシズだと思います。こうした人が居るから、ちょっとアブノーマルな作品が好きだって言いずらいんだよ。激しく軽蔑します。

また、手荷物検査を必須や一車両に必ず一人は警備員が乗車するなど電車やバスの公共交通機関の警備強化はやむ負えないと思います。どれもコストが大きな壁になりそうですが。

 

マッドマックス関連

嫌なニュースが連続し如何わしいワードが並んでしまいましたが、ここからは明るくいきましょう。先ほど『マッドマックス』について触れたので、今年の動向を振り返っておきます。

今月の『ラストナイト・イン・ソーホー』の公開が楽しみなアニャ・テイラー=ジョイが主演を務めるスピンオフ作品『フュリオサ』の撮影が6月からオーストラリアでスタートしたようです。さぁさぁついにです!監督のジョージ・ミラー側とワーナー側で色々揉めていたのも影響したのか、やっと動き出しました。しかし23年の公開予定から24年の5月に公開延期が決定。あちゃ~1年の延期か。さらに出演が決まっていたヤーヤ・アブドゥル=マーティン2世の降板も。今年だけで『キャンディマン』に『マトリックス』の新作出演と大活躍な方。『アクアマン』の続編とかもあるし忙しいのかな、残念です。

何がともあれファンとしては正座でその日を待つのみです。しかしそうなるとですよ。「怒りのデスロード」の続編と噂される「MadMax:Wasteland」はいつお披露目になるのかって話。そもそも製作されるかどうかの時点ですが信じてます。まだまだ先は長いなぁ。

その他「怒りのデスロード」の撮影で使用された車のオークション販売がオーストラリアで行われたという驚愕のニュースやトーカッターとイモ―タン・ジョーを演じたシリーズの柱であるヒュー・キース・バーンの追悼上映が立川シネマ・シティで行われたりと毎年話題が尽きない「マッドマックス」。マジ感謝。


怪獣祭り

24年公開とか製作されるか分からない作品という、まだ先話をしてもしょうがない感があるので今年の話に戻りますと、一つのムーブメントとして一部映画ファンのテンションを爆上げさせたのは「怪獣」ではないでしょうか。

まず今年の初め。ガメラ生誕55周年を記念した「平成ガメラ」シリーズ全3作品が4Kリマスターでスクリーンに復活。シリーズのラストである3作目『イリス覚醒』が1999年公開なので、なんと20年以上も前の作品になるわけですが、全くもって色褪せていないのが衝撃的でした。令和時代のガメラ、ガチで本気で観たいぞ。

そしてこちらは生誕67周年となるゴジラにも様々な動きがありました。7月に公開したハリウッド作品『ゴジラvsコング』を筆頭にアニメシリーズ『ゴジラS.P』の放送、さらに東京ドームシティで開催された展示会「大ゴジラ 特撮王国」に西武園ゆうえんちに新設されたアトラクション「ゴジラ・ザ・ライド」など話題がてんこ盛りの1年でした。私「ゴジラ・ザ・ライド」はまだ行けていないので、近いうちに行きたいですね。

ちなみに予告は去年?から出ていましたが、来たる『シン・ウルトラマン』の公開はいつになるのか?ウルトラマンの大ファンって訳じゃないですが、やっぱり気になるウルトラマンガイア世代です。

↓今年は怪獣関連の記事、書きまくりましたわ。

captaincinema.hatenablog.com

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濱口竜介監督の快進撃

そんな怪獣の如く世界の映画祭で暴れ回る日本人監督も忘れてはいけません。それが濱口竜介監督

今年のベルリン国際映画祭で3つの短編から成るオムニバス作品『偶然と想像』が審査委員大賞を受賞。さらに村上春樹の短編が原作で7月に公開をした『ドライブ・マイ・カー』は、カンヌ国際映画祭では長編コンペティション部門で日本の作品で初めて脚本賞を受賞。さらに、米国アカデミー賞の前哨戦の一つでもあるゴッサム・インディペンデント映画賞にて最優秀国際映画賞も受賞。来年の米国アカデミー賞国際長編映画賞部門にノミネートされるのはほぼ確実ではないでしょうか。

はっきり言ってヤバいです。去年のベネチア国際映画祭で共同脚本を手掛けた『スパイの妻』(黒沢清監督)の監督賞受賞を含めると、世界三大映画祭で何かしらの賞に絡むというポール・トーマス・アンダーソンばりの事をやってしまったのです。これさ、もっと世間は騒いでも良いでしょう。村上春樹ノーベル文学賞取れないニュースをやるんだったら(今年はなかったかな)、映画化した作品が世界を席巻していると。

『偶然と想像』に関しては今月公開ですね。演出法や演技について詳しい知識は無いですが、あの無感情さが作り出す独特な世界観は没入感があるので、映画館で観るのが楽しみです。私にとっては今年最後の映画館での邦画鑑賞になるかな?

 

最後に

その他、アレック・ボールドウェン主演映画の撮影現場で起きた誤射事故や雑誌『映画秘宝』の炎上沙汰も記憶に残っていますが、そろそろお開きにしましょう。

来年もきっと嬉しいニュースも残念なニュースもやってきます。いち映画オタクの端くれとして今後も追っかけていく所存です。それでは、ありがとうございました。

 

参考資料:

朝日新聞 2021年6月1日(火) 朝刊 24ページ目

朝日新聞 2021年6月30日(水) 朝刊 6ページ目

朝日新聞 2021年7月31日(日) beSunday 1ページ目

「名前」で客が呼べない外国映画 『DUNE/デューン』の不発が突きつけるもの|Real Sound|リアルサウンド 映画部

スカーレット・ヨハンソンvsディズニーのバトルが決着 : 映画ニュース - 映画.com

京王線 逮捕された24歳容疑者「人を殺し死刑になりたかった」 | 事件 | NHKニュース

「マッドマックス 怒りのデス・ロード」の前日譚「フュリオサ」公開延期(映画.com) - Yahoo!ニュース

『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の撮影で使用された車両がオークションに出品!

濱口竜介監督『ドライブ・マイ・カー』、米ゴッサム賞で最優秀国際映画賞「村上春樹さんに感謝」 | cinemacafe.net

第95回:慟哭と嗚咽のシンフォニー!好きな号泣映画ベスト10

はてなブログ10周年特別お題「好きな◯◯10選

はい、ということなので好きな映画オールタイムベスト10!…といきたいところですがこのテーマは切り札だなぁ…。何ていうか私にとっては覚悟が必要なテーマ。そう簡単に扱える気がしないので、このジョーカーを切るのはいつの日か。

ってつべこべと誰も理解出来ない事を言っている通りちょっと角度を変えます。アクションやホラーのようなジャンル別ベストもありだったのですが、それじゃ味気無い。という事で私が色々と観てきた中でバカみたい泣いた映画を10作品選出しようと思います。泣けた映画に関しては、その日気分でコロコロ変わるようなもんじゃないので割と出しやすいってのもありますので。

ちなみに私の号泣ポイントは弱冠変だったりするので、泣ける映画をお探しの方にはあまり参考にならない可能性があるのでご注意ください。それと毎度のことながら、ややネタバレ注意です。

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↑泣ける映画の定番?の『タイタニック』。残念ながらランキングには入ってないんですが。

 

10位

それでは早速始めていきます。第10位は…

メタルヘッド』 

2010年公開作品。ヘッシャー(ジョセフ・ゴードン=レヴィト)と名乗るロン毛で上裸の男が、事故で母を失った悲しみから立ち直れない少年とその父親の人生を過激に再生していくヒューマンドラマ。

泣きポイントは、キ〇タマの話に泣く!

最初から下ネタかよって感じですが、いや泣けるんですって。この話をヘッシャーさんが語る状況(これがまた不謹慎)は伏せておきますが、ざっくりした内容はこんな感じ。犬に片方のキン〇マを食われ絶望したというヘッシャーさん。でも待てよ?もう片方残ってるじゃないか!両方食われなくて良かった!という話。何だか慰めになってんだかよく分からないですが、こうした発想の展開って大切な人や物を失う日が必ずやって来る人生を生きる上では大事だと思います。まさかそれをキン〇マから学ぶなんて最高かよ。あまり知られていない作品かもしれませんが、これは個人的には超名作です。

 

9位

しょっぱなから斜め上な感じですが第9位は…

容疑者Xの献身

急に王道w。ドラマシリーズも人気を博した東野圭吾のミステリー小説を原作とした2008年公開作品。絞殺体が発見され、その捜査線上に挙がったのが数学教師の石神(堤真一)。彼はガリレオこと天才物理学者 湯川(福山雅治)の学生時代の友人である事が判明する。

泣きポイントは、石神さんの涙に泣く!

これまた諸々の詳細は伏せておきますが、まぁ事件に何らかの形で関与していた石神さん。ある計画の破綻によって凄まじい泣き崩れ方をします。大の大人のあそこまでの泣き崩れっぷりは、なかなかお目にかかれるようなものではないと思います。恐ろしい演技力。事の真実と相まって、つられて泣いてしまうのは不可避です。

そういえば『ガリレオ』シリーズの最新作が、来年の1月劇場公開するんでよね。いやー楽しみだ。

 

8位

第8位は…

『スイート17モンスターズ』

2016年公開作品。口は悪くて自己中心的。そのせいか恋人が居ないどころか友人もほとんど居ない日本で言えばいわゆる陰キャラな女子高生 ネイディーン(ヘイリー・スタインフェルド)の葛藤をコミカルに描いた青春映画。

泣きポイントは、主人公の気持ちの暴露に泣く!

ある事がトリガーとなって暴走するネイディーン。物語の中盤「自殺してやる!」と息巻いて、ちょっとやる気なさを感じる担任教師に溜め込んでいた思いを暴露します。多分ほとんどの人から観たら別に泣けるシーンじゃないと思うんです。でもね、一部の人にとっちゃあれは痛烈。“そうだよ、俺も似たような思いを抱えてたよ…”と心にぶっ刺さりまくって涙なしでは観られない状態になります。

 

7位

第7位は…

ダイ・ハード

1988年公開作品。テロリストに占拠された高層ビルを舞台に、間違えてクリスマスパーティーに呼ばれてしまった刑事 ジョン・マクレーン(ブルース・ウィリス)が孤高の戦いを繰り広げるアクション。アクション映画の最高峰であり、クリスマス映画の定番ですね。

泣きポイントは、最後の銃声に泣く!

この銃声を発するのがパウエル巡査部長。主人公のジョンを無線で支援する数少ない味方の一人。たまたま近くのコンビニで買い物をしていただけで、普段はあるトラウマの影響からデスクワークをしている人物です。どんな状況で発せされるかは観てのお楽しみ(まぁでも有名か)という事で、あの銃撃はトラウマ克服と同時に友情をも証明付けるものになります。もう何回観ても泣ける。あんなサプライズを最後の最後にもってくるとか天才ですよ。

 

6位

第6位は…

ジャージー・ボーイズ

2014年公開作品。1960年代に人気を誇ったアメリカのポップスグループ「ザ・フォー・シーズンズ」とそのボーカル フランキー・バリを描いた音楽映画。ちなみにクリント・イーストウッドが監督した作品の中では個人的に一番好きです。

泣きポイントは、「君の瞳に恋してる」の秘話に泣く!

「君の瞳に恋してる(Can't Take My Eyes Off Of You)」と言えば、日本でも様々なアーティストがカバーしているので聞いた事がある人は多いはず。原曲は「ザ・フォー・シーズンズ」のボーカル フランキー・バリがソロ活動の際に発表したものになります。この曲の歌詞を見てみると、恋人の事を思って綴られたのだろうと想像してしまいがちですが、実はそうじゃなかった。本当の思いが語られてから突入する歌唱シーンには感無量。愛し過ぎて落涙です。

 

5位

第5位は…

『インターステラ―』

日本でも人気のあるクリストファー・ノーラン監督の2014年公開作品。植物の生育が出来ず食糧難に陥っている近未来の地球を離れ、人類が居住可能な惑星を探すミッションに挑む調査隊を描いたSF作品。

泣きポイントは、ビデオレターに泣く!

物語の割と序盤。主人公たちはあるミッションの失敗によって時間をロスし、20年以上も地球の時間が進んでしまった状況に陥ります。相対性理論の関係上、地球の時間と調査対象である惑星には大きなタイムラグが存在するのが原因です。その為、地球に残して来た家族からの20年以上にわたる溜まりに溜まったビデオレターを一気に見るという苦行を行うことに。子供の成長を傍で見ることが出来ず、自分の年齢に近づいてしまった状況にむせび泣く主人公演じるマシュー・マコノヒーの姿にもらい泣き。そりゃ辛いわ。粗目の画質のビデオレターってのも涙腺を刺激します。

 

4位

惜しくもトップ3には入らなかった第4位は…

トイストーリー3』

良作を生み出し続けるピクサーが手掛けた2010年公開作品。カウボーイ人形のウッディやバズ・ライトイヤーらのおもちゃたちがてんやわんやの冒険を繰り広げるアニメ映画の3作目です。

泣きポイントは、オープニングから泣く!

おもちゃたちの持ち主であるアンディ。人間なので当然成長していくわけで、年齢を重ねていくとおもちゃで遊ぶことも次第に減っていきます。そして大学進学する年齢となり、おもちゃの整理することになるというのが物語の発端になっているのです。

気に入っていたはずの玩具との別れは誰もが通る道ですよね。当時は気にしていなかったけど、こうして思い返してみると何時から遊ばなくなったのか。私、物持ちの良い人間ってこともあるせいか冒頭からアホみたいにエモーショナルになって涙。ってか物持ちの良い人間になったのはきっとこのシリーズの影響だわ。

これ、共感出来ない人は居ないんじゃないかなと思います。冒頭から泣かせにかかってくる作り手はただの鬼畜でしょう。

 

3位

さぁここからはトップ3。堂々の銅メダルは…

『フォードvsフェラーリ

2019年公開作品。日本では去年公開した割と最近の作品。ル・マン24時間耐久レースで60年代当時の絶対王者フェラーリに挑んだフォード社の男たちを描いた胸アツドラマ。元レーサーのカーデザイナー、キャロル・シェルビーをマット・デイモン。レーサーのケン・マイルズをクリスチャン・ベールが演じています。

泣きポイントは、終盤約10分まさかの悔し泣く!

映画を観て悔し泣きをするなんて。“どんだけ感情移入してるんだ”と自分でも不思議なぐらいでしたが、それだけ2人の絆の描き込みが丁寧な作品だと思います。ラストの悔しさが滲み出る表情で涙を必死でこらえるマット・デイモンがより拍車をかけてくるので、初見時のエンドクレジット中はとにかくボロボロでスクリーンが霞んで仕方なかったのを覚えています。

 

2位

お次は銀メダル。第2位は…

『イン・トゥ・ザ・ワイルド

ノンフィクション小説『荒野へ』を原作とした2007年公開作品。恵まれた環境で育ち、全てを持っていることへの疑問から、ある日すべてを捨ててアラスカへの旅立った青年(エミール・ハーシュ)を描いたロードムービー

泣きポイントは、観終わって暫くして泣く!

鑑賞中でもなければ、鑑賞直後でもない珍しいタイプ。寧ろ観終わった直後は、しんみりするだけで全然平気だったんです。ただ作品について色々考えているうちにじんわりと涙が。初鑑賞当時は諸々私自身が思い悩んでいた時期でもあったからか、そこにクリーンヒットした感じになったのです。いや、ホントこうした人生揺るがすエネルギーを秘めた映画がこの世には存在するので舐められないです。

だいぶ抽象的な話になってますが、心の状態に関わらずきっと「人生」についてを今一度考えさせられ、何かしら心に刺さる名作だと思います。特に学生には観てもらいたいですね。

 

1位

栄えある金メダル第1位は…

『マッド・マックス 怒りのデスロード』

シリーズの4作目にあたる2015年公開作品。砂漠を改造車が駆け抜けるだけという超絶シンプルなバイオレンスアクションなのに泣けるという離れ技をやってのけた大傑作です。

泣きポイントは、とりあえず泣く!

物語の結末やあるキャラクターの自己犠牲のシーンなんてのは当然泣けるわけですが、それ以外の部分でも個人的でしょうけど涙が出てくるポイントが所々にあります。例えば火を吹くギターを持つ男 ドゥーフウォリアーの初登場シーンや序盤の砂嵐のシーンでなぜかポロポロと涙が。自分でもよく分からないです。ダイナミックな映像美によって感情が麻痺してしまうのでしょう。まさに劇薬。ハマったらアウトな作品です。

 

まとめ

以上、至極の10作品でした。

はい、長くなりましたのでこの辺でお開きです。久々にこんな長いの書いたなぁ。ありがとうございました。

 

第94回:映画『エターナルズ』感想と考察

今回は現在公開中の『エターナルズ』を語っていこうと思います。毎度のことながら、ややネタバレ注意です。

 

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イントロダクション

アベンジャーズ」シリーズをはじめとしたMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)の26本目となる最新作。今年の9月に公開した『シャン・チー/テン・リングスの秘密』同様新ヒーローが、しかも複数登場です。

遥か昔から人類を見守ってきた超人軍団 エターナルズ。役目を終えて7000年が経過した現在。再び宿敵ディヴィアンツが出現したことにより各地で身を潜めていたメンバーは集結をし、地球の脅威に立ち向かう。

監督はクロエ・ジャオ。今年公開の『ノマドランド』で米国アカデミー賞を獲得しています。『ザ・ライダー』(2017年公開)も含めエンタメ大作を撮るイメージが全くありませんでしたが、さてどんな化学反応が起きたか!?

キャストはリチャード・マッデン(2015年公開『シンデレラ』)やアンジェリーナ・ジョリー(『トゥーム・レイダー』シリーズ)といった豪華なメンツが揃う中、実質的な主人公はジェンマ・チャン。あれっ?この方2019年公開『キャプテン・マーベル』でスナイパーのキャラクターを演じてましたよね。同じシリーズで異なる役を演じているって『仁義なき戦い』シリーズみたいです。

そして筋肉俳優の新たなビックスター マ・ドンソクも出演しています。両腕がガントレットみたな状態で戦う姿は2016年公開『新感染/ファイナルエクスプレス』のガムテープでがんじがらめにした腕でゾンビに挑んだ姿を彷彿とさせます。

 

人類愛!

結論から言うと人類愛がほとばしってる感じのする作品でした。

エターナルズの皆さん。ディヴィアンツという人類を脅かすモンスターの排除と人類の進歩の手助けをする事がお上(名前忘れちゃいましたが、クソデカい奴)の命令であるため人間たちの争いには介入出来ないもどかしいポジション。だから今までのスーパーヒーローたちの戦いを含めた様々な戦争に登場していなかったという設定なのです。その一例として第2次世界大戦、広島の原爆投下のシーンが登場。短いながらも焦土と化した広島の風景を描いたハリウッド大作はかなり稀有かと思います。止められない人類の悲劇に傷つき、中には精神疾患を患うメンバーや勝手にコロニーを形成に社会から隔絶した生活を送るメンバーが居たりします。

それでも他人を愛したり、夢を追いかける事が出来る人間を見てきた彼らは、“それって素晴らしいじゃないか!”と危機に瀕した人類を見捨てたりはしません。しかも今回のお話しって、そもそも危機に瀕した事に人類はあんまり気付いておらず、水面下で動いてますからね。何て懐が深いんだ!全人類、今までの所業を反省しないといけませんなw。

またエターナルズの各々が縛られていたものから解放され、自我を持ってそれぞれの選択をしていく流れは『ノマドランド』や『ザ・ライダー』とも精通するかなと思いました。例え神みたいな存在の奴らにも人間臭い部分があるだと言っている感じも人類愛を表現しているようにも思えてきます。

 

まとめ

以上が私の見解です。

といってもここで書いたこと以外にも作品内には色々な要素が盛り込まれまくってます。そのせいで長尺になってるんだよ。やや散漫な気はしたので、もう少しテーマを絞ってスマートに欲しいとも感じました。

それとちょっとした驚きだったのが絡みのシーンがあったこと。MCUじゃ初じゃないですか。なんか新鮮さを感じましたけど、サラッとこなしちゃう辺りが監督の手腕といったところでしょう。

ということでこの辺でお開きです。ありがとうございました。

 

※追伸

別件としてぼやきを。

私が観た上映回、上映開始後に入ってくる客が多すぎました。しかも携帯光らせながらズカズカと。たぶん私の隣の隣に座ってた方かな。かなりの聞こえるレベルで舌打ちしてました。私も心の中で盛大に毒突いていたので気持ちは分かります。お陰で冒頭集中出来ませんでした。

推測にするに飲食物の売店が長蛇の列になっていたのでポップコーンを買うなりが遅刻の原因でしょうが、それなら買うのを諦めるといった臨機応変な対応をしてもらわないと迷惑するのは他の客です。まったく、上映開始時間は最低限守って欲しいものです。

第93回:映画『ハロウィン KILLS』感想と考察

衆院選京王線内での凶行が2大トップとなり、いまいち印象の薄かった2021年のハロウィン。しかし映画館でのハロウィンは終わっちゃいねぇ!ということで本日は現在公開中の『ハロウィン KILLS』を語っていこうと思います。毎度のことながら、ややネタバレ注意です。

 

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顔・圧!

 

イントロダクション

1978年に公開したスラッシャーホラーの元祖とも言える『ハロウィン』。その40年後を描いた2018年公開の同名タイトル作品の続編です。

主人公 ローリー(ジェイミー・リー・カーティス)と不死身の殺人鬼 ブギーマンことマイケル・マイヤーズの40年越しの決着が付いたはずだった。しかしブギーマンはそう簡単に死んでくれない。燃える家から脱出を果たしたマイケルは再び無差別殺人を繰り広げる。重症を負ったローリーに代わりその娘(ジュディ・グリア)と孫娘(アンディ・マティチャック)がリベンジマッチを決意する中、街には混乱と恐怖が大きく渦巻き始めていた。

前作に続き監督はデヴィッド・ゴードン・グリーン。この方2013年に起きたボストン・マラソン爆破テロを扱った『ボストン ストロング 〜ダメな僕だから英雄になれた〜』(2017年公開)の監督さんなんですね。うーん、観に行ったような。ボストン・マラソン爆破テロの映画だと個人的には同年公開『パトリオット・デイ』の方が印象に残ってるな。

 

好景気過ぎる

ホラー映画か…と二の足を踏んでるそこの貴方!本作はホラー映画じゃなくてバイオレンスアクションです。ゴアが苦手な方には向きませんけど、アクション好きなら観て損はないかと思います。

序盤からフルスロットル。燃える家屋をバックに斧やピッケルを手にしたレスキュー隊VSマイケル君で開幕です。当然の如くレスキュー隊員は冷たい骸と化していくわけですが、死体の山が築かれていくその様はもはや景気が良すぎるアクション映画です。

またマイケル君に挑んでいくのはレスキュー隊だけじゃありません。ホラー映画では珍しく、逃げるか殺されるかでしかなかった名も無き方々もバット(外国の人ってバットにキメ台詞ほるの好きなのかな)や銃(デザートイーグルのシーンは悪趣味で好き)を片手に反撃。モブキャラ舐めんじゃねえ精神は今年公開の『フリーガイ』と同じなのか?wといった感じなので恐怖を煽る演出よりも過激なアクション演出が目立つ印象でした。

って言うか性別・人種・年齢なんて見境なくぶっ殺し回るマイケル君ってある意味差別や偏見を持たない平等な価値観をお持ちなのかなぁ…皮肉な話ですね。

 

テーマは「暴力」

本作のもう一つのポイントが、暴力が暴力を生むという暴力の連鎖がテーマになっている点だと思いました。先程書いた通り殺人マシンに立ち向かう人が多く、隠れたり逃げようとする人が居ません。皆、暴力で対抗することに駆られて冷静な判断を下せる人物が登場しない状況。それが引き金となって起きる悲劇を含め殺気立ったエネルギーが画面を覆い付くています。

これって集団が誤った方向へ舵を切ってしまう構図そのもの。暴力による扇動は対テロ戦争へと突き進んだアメリカそのものを表しているかのようです。

まぁちょっと薄ぺらくも見えますが、さすが経済格差や人種差別をテーマにした『パージ』シリーズや2極化する世界を暴力で炙り出した2020年公開『ザ・ハント』を手掛けたブラムハウスプロダクションの作品。これを『ハロウィン』シリーズでやるとはね、大胆。

↓『ザ・ハント』についてはこちら

captaincinema.hatenablog.com

 

まとめ

以上が私の見解です。

ちなみにNetfilxで配信されている『ボクらを作ったハリウッド映画』というドキュメンタリーシリーズで、第一作である78年公開の舞台裏を知ることが出来ます。これを観ると時代を変える名作の誕生には、個々の才能や努力もさることながら数々の偶然も必要なんだと思えてきます。でも何だかんだ一番驚いたのが、主演のジェイミー・リー・カーティスのお母さんって『サイコ』(1960年公開)のジャネット・リーなんですね。それが主演に向かえる決めての一つだったとか。いや、知らんかったわ。

ということでこの辺でお開きです。ありがとうございました。

第92回:映画『最後の決闘裁判』感想と考察

今回は現在公開中の『最後の決闘裁判』を語っていこうと思います。毎度のことながら、ややネタバレ注意です。

 

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↑デザインかっこよすぎな。

イントロダクション

中世ヨーロッパで実際に行われていた裁判としての決闘。相手の命を奪った方の主張が認められるという今じゃトンデモない話ですが、その決闘裁判の最後とされる事例を描いた歴史ドラマ。

舞台は百年戦争下のフランス王国。騎士であるジャン・ド・カルージュ(マット・デイモン)の妻マルグリット(ジョディ・カマ―)が、夫の旧友ジャック・ル・グリ(アダム・ドライバー)に性的暴行されたと訴える。しかし目撃者がおらず、ル・グリは無実を主張する。真実の行方は生死によって判決が下される決闘裁判へと持ち込まれる事となる。

監督はリドリー・スコット。『エイリアン』(1979年公開)や『ブレードランナー』(1982年公開)といったSF作品の印象が強いですが、ローマ帝国コロッセオを描いた『グラディエーター』(2000年公開)や十字軍を描いた『キングダム・オブ・へプン』(2005年公開)など歴史ものもお得意の監督ですね。

主要キャストは、マット・デイモンアダム・ドライバー、ジョディ・カマ―の3人。

実質的には今年公開の『フリー・ガイ』にも出演していたジョディ・カマ―が主役といった感じでしょう。『フリー・ガイ』のあのラスト、良かったよなぁ~。

またマット・デイモンに関しては主君のピエール伯を演じているベン・アフレックと共に脚本にも携わっています。なるほど『グッドウィルハンティング 旅立ち』(1997年公開)のコンビという事か。

そしてアダム・ドライバーに関しては、次のリドリー・スコット作品『ハウス・オブ・グッチ』にも出演しています。ノア・バームパック作品の常連に続き、リドリー・スコット作品の常連にもなるのか?今後も大注目な役者さんです。

 

ちょっと待てよ

本作のテーマとして、理不尽な男性社会に一矢報いようと声をあげるMeeToo運動的文脈やリドリー・スコット作品では割とお馴染みの強い女性の登場(『エイリアン』もそうですし2017年公開の『ゲティ家の身代金』なんかもそうですよね)があるのは、観れば誰もが感じ取れるぐらいハッキリと描かれているので、ここではちょっと違った部分で感じたことを言及しようと思います。

本作の最たる見せ場と呼べるのは、やはりタイトルにもある決闘裁判の様子です。まず映画の冒頭。決闘に臨む二人の騎士と一人の女性の「戦闘服」に着替える準備シーンと共に決闘裁判を開始するあたっての文言が高らかに読み上げられます。そして馬に跨った騎士が正面からぶつかり合うぞ!という瞬間までを臨場感たっぷりに見せつけてきます。その後、裁判が開かれた経緯を3人の言い分の微妙なズレを巧みに描いた3幕構成を経て、肝心な決闘裁判シーンに戻ってくるといった仕組みになっています。

冒頭の部分で既に“何が始まるんだ?”というワクワクが感じられるので、いざ決闘シーンに入るとカタルシスが非常に大きいのです。所々に登場するバイオレンスな戦争シーンもアクセントになっているので、この見せ場に持っていくまでの流れには脱帽です。

でもちょっと待てよ?いくら構成が上手いからといって興奮している自分が居る事に疑問が生じたのです。

結局のところ名誉や権力に固執するプライド高い堅物男(カルージュ)VSちやほやされて調子に乗った強姦男(ル・グリ)の対決なので、どっちを応援するとかそうした気持ちはほとんどなく、正直どっちが死のうが決着さえが付けば良い状況。ただ、声を挙げた罪なき女性 マルグリットさんの命が掛かっているので、堅物男が勝たないと胸糞悪いって感じでした。

要するに「暴力」を高みの見物している自分に気付いたのです。これは決闘の様子をニヤニヤしながら見ていた国王や決闘場に群がっていた関係ない市民と同じレベル。まぁ映画だしそうなって当たり前かもしれないんですけど、こんな気持ちを感じたのは初めて。つくづく自分の心の中の醜さを実感させられました。

 

まとめ

以上が私の見解です。

重たく苦しい(個人的には特に陪審員?だかに質問攻めに合うマルグリットさんのシーンは最悪。デリカシーが無いってレベルじゃない気持ち悪さです)作品ではあるので「面白い」という言葉は似合いませんが、来年のアカデミー賞関連の賞レースに絡んでくるんじゃないかと思う力作。観る価値は大いにあります。

最後にちょっと話は変わりますが、本作を観に行った際の客層に若いカップルを見かけ、何だかそれには感心したところがありました。だって内容が内容ですからね。私だったら敬遠しちゃうなぁ。しかしこうしたセンシティブなテーマを共有し、語り合えるカップルはきっと上手くいくと思います。幸あれw!

ということでこの辺でお開きです。ありがとうございました。