キャプテン・シネマの奮闘記

映画についてを独断と偏見で語る超自己満足ブログです

第105回:映画『ハウス・オブ・グッチ』感想と考察

今回は現在公開中の映画『ハウス・オブ・グッチ』について語っていこうと思います。毎度のことながら、ややネタバレ注意です。

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イントロダクション

ファッションブランドに関して全くと言っていいほど無頓着なユニクロ野郎の私ですら知っているGUCCI(グッチ)の創業者一族の栄枯盛衰を描いたドラマ。

始まりはイタリアのミラノ。父親が経営する運送会社で経理を手伝う主人公のパトリツィア(レディー・ガガ)は、友人に招待されたパーティでGUCCI(グッチ)創業者の孫 マウリツィオ・グッチ(アダム・ドライバー)と知り合う。“これは玉の輿じゃ!”と積極的にアピールするパトリツィアに次第に惹かれていくマウリツィオ。親の反対を押しのけ結婚するも、一族の確執の渦中へと飲み込まれていく。

監督はリドリー・スコット。去年公開の『最後の決闘裁判』と合わせてコロナ禍で2本の映画を撮る活躍っぷりです。『ブレードランナー』(1982年公開)や『悪の法則』(2013年公開)などキレのある作品が目立ちますけど、面白さでいうなら『マッチスティック・メン』(2003年公開)を推していきたいのよ。

キャストは主役のレディー・ガガ(2018年公開『アリー/スター誕生』)を筆頭にアダム・ドライバー(2021年公開『最後の決闘裁判』)、ジャレッド・レト(2013年公開『ダラス・バイヤーズクラブ』)、アル・パチーノ(1983年公開『スカーフェイス』)など豪勢なメンバーが集結。ってかレディー・ガガって歌は歌えるし演技は出来るしの超マルチ。東日本大震災の際に早い段階からチャリティー活動をしてくれた時は演技が出来る人だとは思ってなかったな。


男性社会による崩壊

本作、テーマの路線としては『最後の決闘裁判』と同じ男性社会的な考えがもたらす悲劇だと感じました。まぁ『最後の~』の方は顕著に描かれていましたが、今作においては主張控えめにといったところでしょうか。

飽くなき名声とお金欲しさに争う血縁者同士の男性たち(ついでに顧問弁護士も参戦)。話し合って分かり合うという行動に及ぶことなく、争えば争うほど企業としての体力は衰えるばかり。そんな中に一人きりの女性ポジションであるのが主人公のパトリツィアさんです。既にこの構図そのものが男性社会を象徴しているかのようです。

しかし籠の鳥に収まらないのが野心家パトリツィアさん。序盤では玉の輿に飽き足らないのか旦那さんを焚き付けたりと悪女っぽく振舞っていましたが、ブランドの看板を守る為であったり旦那さんの為であったりするので「グッチ」の名に誇りを持って行動していた側面も感じました。(最後のセリフからもそう感じられますね)

それでも壁はぶ厚かった。結局他所者扱いをされて蚊帳の外状態。居場所を失った挙句に取ったある方法が、そんな男性社会的なグッチ体制にトドメを刺すことになります。うーん、なんとも皮肉的。芯の強い女性が登場する点においては『最後の~』のみならず、様々なリドリー・スコット作品での共通項かなとも感じました。

↓『最後の決闘裁判』についてはこちら

captaincinema.hatenablog.com

 

まとめ

以上が私の見解です。

「お家騒動もの」と聞いて複雑でごちゃごちゃしているかと思いきや、構図としては比較的シンプルで観やすかったです。随所に散りばめられたポップな曲もより観やすくさせていたかと思います。
それと当たり前ちゃ当たり前ですが俳優陣も良かったです。レディー・ガガアダム・ドライバーの馴れ初めシーンは役の年齢とのギャップを感じさせることはありません。またアル・パチーノジャレッド・レトのややオーバーな演技の掛け合い魅力的。確かに二人のスプンオフ作品があったら観たいかも。そして個人的に優勝はジェレミー・アイアンズ。病気で衰弱しているのに何でカッコ良いんだよ!サウイフモノニワタシハナリタイ。

ということでこの辺でお開きです。ありがとうございました。

第104回:映画『スパイダーマン2』感想と考察

今回は『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』の公開を記念して私が一番好きなスパイダーマン映画である2004年公開『スパイダーマン2』を語っていこうと思います。毎度のことながら、ややネタバレ注意です。

captaincinema.hatenablog.com

↑『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』についてはこちら。

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イントロダクション

今ではアメコミ映画の歴史的代表作とも言える2002年公開『スパイダーマン』の続編。

大学にアルバイトと普通の学生生活をする傍ら、スパイダーマンとしてのヒーロー活動に勤しむ主人公のピーター・パーカー(トビー・マグワイア)。憧れの教授であるDr.オクタビアス(アルフレッド・モリ―ナ)が4本の金属アームを使った核融合実験に失敗し、金属アームを司っていた人工知能が制御不能に。暴走する人工知能の影響を受けて凶暴な犯罪者と化した教授をどうにか救おうと奔走する事になる。

監督はこの「スパイダーマン」シリーズ他『死霊のはらわた』(1981年公開)や『スペル』(2009年公開)とホラー映画が多めなサム・ライミ。全米に先駆け5月に公開予定の『ドクター・ストレンジマルチバース・オブ・マッドネス』も手掛けており、久々のアメコミ映画への帰還に期待せざるを得ません。

主演はトビー・マグワイア。この方は、私「スパイダーマン」シリーズ以外だとボビー・フィッシャーを演じていた『完全なるチェックメイト』(2014年公開)ぐらいでしか観てない気がします。『華麗なるギャッツビー』(2013年公開)は観てないし。

また親友役で登場するのが最近めっきり見なくなったジェームズ・フランコ。まぁ性的虐待騒動で完全に干された感じですから当然ちゃ当然ですが。2018年公開のNetfilx作品『バスターのバラード』以来見かけてないですね。

 

スーパーヒーローにもスランプがある

アメコミ映画のみならずヒロイズム的作品の続編は、前作以上に強力な敵の出現であったり人間関係におけるターニングポイントを向かえる事で心身ともに追い込まれるというのが定番だと思いますが、今作はそうじゃなかった。主人公の前に立ちはだかった最たる敵のは、まさかのスランプでした。

スパイダーマンの能力の代名詞と言えば、手首の辺りから蜘蛛の糸を出して様々な用途で使用すること。それが何故か出来なくなる事を初めとした能力低下に見舞われるのです。初めて観た当初、いや今観てもなかなか珍しい設定です。原因はよく分からないまま、調子が良かったり悪かったりする中でヒーロー活動する姿をコミカルに見せてくれます。糸出なくなったせでコスチュームを着たままエレベーターでビルを降りるシーンは、きっての名場面だと思っています。

それにこうやってヒーローにすらスランプがあるなら、私たち普通の人間にスランプがあるのは当たり前。スランプのみならず、プライベートとの両立や恋などといった沢山の悩みを抱えている有り様を見ていると“親愛なる隣人”のフレーズが殊更に似合う気がしてきます。

 

NWHと比較する一般人の「民度

もう一点。NWH(ノー・ウェイ・ホーム)と比較すると興味深いのが一般人たちの描き方です。

中盤、ドクター・オクトパスの手によってブレーキの利かなくなった電車を止め力尽きるシーン。スパイダーマンの素顔を見るかたちとなったニューヨーカーの皆さんは、助けてくれた恩と“まだ子供じゃないか!”という同情から、誰もが暗黙の了解として正体を秘密にする事を誓い、気を失った彼をバケツリレーで運んでマスクをかけてあげるというシーンがあります。なんて優しいんでしょう。思えば前作でも、スパイダーマンがピンチの際に敵(グリーン・ゴブリン)に投擲を喰らわす好プレーを働く市民の皆さんが登場しており、本シリーズの一般人ってとにかくスパイダーマンに協力しようとする気持ちが強いのです。人情ってやつですね。

それと比べてですよ。ストーリーの事情が事情だからとはいえNWH(ノー・ウェイ・ホーム)での大衆は情が無さすぎます。素性が分かった途端に、写真や動画を撮りまくる人や家や学校に押しかけるマスコミ、ヤジを飛ばす人といった具合に民度の低さが描かれていました。しかしこれっていかにも現代的というか、ヘイト飛び交う情報過多な社会だからこその正しい視点だと思います。

皮肉な話、サム・ライミの手掛けたシリーズからほんの10年ちょっと経過しただけで、雲泥の差ともいえるほどに市民の捉え方に変化が生まれたわけです。自戒も込めてモラルや民度には気を付けなくてはいけないなと思わされます。

 

まとめ

以上が私の見解です。

回を重ねるごとに野暮ったくなってくる三角関係はあれど(まぁそれはそれで面白いんだけど)、ヒーローとしてのみならず一人の人間としても応援したくなるキャラクターとして活写されている本作のスパイダーマン。ここ最近のマーベル作品はどんどん一見さんや予備知識が少ない人への敷居が高めで、少々配慮に欠けていると思いますが、本作こそ万人におススメ出来るヒーロー映画の傑作だと思います。

ということでこの辺でお開きです。ありがとうございました。

 

第103回:映画『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』感想と考察

あぁ・・ついにこの日が来ました。今回は現在公開中の映画『スパイダーマン/ノー・ウェイ・ホーム』を語っていこうと思います。毎度のことながら、ややネタバ…いやこの映画に関しては事前情報は入れない事をおススメしますので、ご覧になる予定の方は「イントロダクション」だけ読んでお引き取りを!

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イントロダクション

日本でもアメコミヒーローの中じゃ一位、二位を争うぐらい人気はあろうスパイダーマン(Twitterや映画館の座席のはけ具合を見るとめちゃくちゃ人気よね、前売り券の特典貰えなかったし…)を主人公にしたMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)の第27作目。2017年に公開した『スパイダーマン:ホームカミング』から続く主演にトム・ホランドを要した3部作の最終章にもあたります。

前作『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2019年公開)での一件により、殺害容疑を掛けられ素性を暴かれてしまったスパイダーマンことピーター・パーカー(トム・ホランド)。世間に騒ぎ立てられ、周りの人の生活をも滅茶苦茶にしてしまった事をどうにか変えようと、共闘経験のあるドクター・ストレンジ(ベネディクト・カンバーバッチ)を尋ねる。そこで魔術の力を持って自身の正体がバレていない状態に戻そうとするも、予期せぬ敵を呼び寄せる事になってしまう。

トム・ホランドゼンデイヤマリサ・トメイを始めとしたシリーズメンバーに加え、既に予告でお披露目となっていたようにサム・ライミ監督版「スパイダーマン」シリーズに登場したドクター・オクトパス(アルフレッド・モリーナ)やグリーン・ゴブリン(ウィレム・デフォー)、マーク・ウェブ監督版「アメイジングスパイダーマン」シリーズのエレクトロ(ジェイミー・フォックス)など、過去のシリーズ作品から悪役たちが時空を超えて登場するため、結構なメンバーを贅沢に使ってます。流石ディズニーさんの潤沢な資金力って感じです。

監督はジョン・ワッツが続投。「スパイダーマン」シリーズの前に手掛けた『COP CAR/コップ・カー』(2015年公開)は割と好きだったので、また中小規模のクライム作品を撮って欲しいですね。

 

ぶっちゃけ観る前は

まず予告編を見た私の気持ちとして、果たして2時間前後にまとめる事が出来るにかという疑問と一抹の不安がありました。なんせ今まで全く繋がりのなかったサム・ライミ版(2002~2007年の3作品)とマーク・ウェブ版(2012&2014年の2作品)を絡めようとしてるわけで、それは暴挙に近いのではないかと思いました。

しかしやりやがった、やってのけたです。

やってのけた事によって、各シリーズに定着しているファンのモヤモヤした気持ちを背負って丸く収めたような作品になったと思います。こうして書いてるってことはそうです、モヤモヤしていた人間がこの私です。

私にとってのスパイダーマンサム・ライミ版。初めて観たアメコミヒーロー映画だったという事もあって思い出補正強しな作品。ライミ版以降の作品は別ものとして割り切って観ていても頭に過ぎるトビー・マグワイアの姿。そのため「スパイダーマン」というコンテンツに乗り切れない自分が居たのです。

そんな私にとって本作は登場キャラたちと同じ境遇で、ある種セカンドチャンスの場となりました。ドクター・オクトパスの描き方は最高だったし、グリーン・ゴブリンはやっぱりゴブリンという一筋縄ではいかない展開も良き。ラストの成しえなかった事を成し得ていく流れにも感激です。これからもライミ版信者である事に変わりありませんが、心の霧は晴れた気がします。

またマーク・ウェブ版の「アメイジング~」は、シリーズ自体が大人の事情で中途半端に終わってしまった事もあり、ファンとしてはMCUでの3代目を受け入れづらかった方もいるじゃないかと思います。そういった意味でもセカンドチャンスを与えられたというのは大きな意義があったと思うのです。(予告でも使われているMJ落下シーンの展開には思わずガッツポーズ)

スパイダーマン映画」という“大いなる力”を持ったコンテンツを扱うという事は、ファンからの期待とバッシングもひっくるめた“大いなる責任”が付きまとう。まさに「大いなる力には大いなる責任が伴う」を体現した作品になったと思います。

 

まとめ

以上が私の見解です。

かなりの興奮状態だったので少し冷めた状態となって気付いたのですが、あれっ『ファー・フロム・ホーム』からのミステリオさん関連の件はどうなったの?殺害容疑は晴れたのかよく分からんし、ミステリオ信者はまだ居るのかな?それにマルチバースどうのこうのの話も曖昧で何でもアリな感じ等うやむやになっている部分があり、少々粗のあるストーリーだと思いますけどまぁいいか。こんなお祭り映画なかなか無いですし、興奮のビックウェーブに乗って楽しんだもん勝ちです。

あと余談ですけが、日本版主題歌をジャニーズグループが担当したことがどうのこうのという話を目しましたが、恐らく日本語吹き替えを観ないと曲が流れる現場に立ち会えないのでブーブー文句を言う人たちは字幕を観ることで問題ないと思うんですけど。まぁそんなことより、これが一番言いたかった。アメコミヒーロー映画の日本版主題歌は全部King Gnuの「飛行艇」にすれば丸く収まると思うんですよw。バキバキの戦闘曲って感じですし、聞けば誰もが“命揺らす”と思うので。

ファンなら涎が垂れてしまう数々の会話シーンや個人的にはめちゃめちゃ待ち望んでいたあの人の登場などまだまだ語り足りないですが、そろそろとっ散らかってきたのでこの辺でお開きです。ありがとうございました。

第102回:映画『レイジング・ファイア』感想と考察

2022年1発目は現在公開中の映画『レイジング・ファイア』を語っていこうと思います。毎度のことながら、ややネタバレ注意です。

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↑入場者特典のポストカード。貰った瞬間は「ドニー・イェンじゃないの⁉︎」と思いましたが、観終わったら「こっちで正解」となりましたよ。

 

イントロダクション

警察官と元警察官の熾烈な攻防を描いた香港&中国産ポリスアクション。

主人公の警察官チョン(ドニー・イェン)は麻薬組織の掃討作戦中、謎の武装集団による襲撃で多くの警官仲間を失ってしまう。仇を討とうと奔走するなか、ある事件をきっかけに投獄されていた元同僚のンゴウ(ニコラス・ツェー)が捜査線に浮上する。

監督はベニー・チャン。去年の8月に急逝されてしまったようで、エンドクレジットでは追悼映像が流れていました。私この監督の作品今まで観たことなかったな。『インビジブル・ターゲット』(2007年公開)とか面白そう。

主演は『導火線 FLASH POINT』(2007年公開)や「イップ・マン」シリーズのドニー・イェン。ハリウッド作品だと『ローグ・ワン/スターウォーズ・ストーリー』(2016年公開)でストーム・トルーパーをボコボコにしていまたが、そう言えば『ジョン・ウィック』の新作にも出るんですよね。キアヌ・リーブスvsドニー・イェンはアツいな。


ニコラス・ツェーが格好良すぎ

まず観ていて思ったのがコレ。ンゴウを演じるニコラス・ツェーが格好良過ぎて新年早々眼福でした。

初登場の時点で長髪を振り乱した眼光鋭い表情にハートはロックオン!格闘、射撃の腕に加えナイフ捌きにバイクのドライビングスキルも超一流。欠点無いのかい。

終盤の手榴弾をも炸裂させて民間人も巻き込んだやりたい放題な銃撃戦では『ヒート』(1995年公開)を意識したであろうグラサンに黒のスーツの出で立ちで出撃。やべぇー!そして武器はカービンピストル(CAAのグロックカービン?)&ダブルマガジンのHK416っぽい銃を使用。カービンピストルをチョイスするってのが誠に良き。

そしてラストのタイマン格闘戦では二手バタフライナイフときた!カチャカチャと音を立てながら高速で白刃を閃かせます。いや厨二心への潤滑油サービスがエグいのよ。去年観ていたら間違いなくベストアクション賞でした。


正しい仕事をしよう

こんな感じの超ゴリゴリアクション映画ではあるんですけど、興味深いシーンがありました。それは行き過ぎた行動を取った事で、上層部にお咎めをくらった際のドニーさんの発言。

カネや権力に執着した仕事をするとどこかで皺寄せが発生する。誰かが不幸になるより、正しいと思うことを選択して誰かの為に仕事をしていこうぜ的なニュアンスのことを言ってました。

この事は全ての職業に精通していると思いますが、特に警察内部のグレーさを扱った作品という点で言えば、今の香港情勢がうっすらと感じられます。ただ同時にグレーさや腐敗の濃度がもっと濃かったら、よりドニーさんの発言に深みが出たのかなとも思いました。惜しいなぁ~。

 

まとめ

以上が私の見解です。

最後は少しウルっと来ます。お互い良き同士だったからこそ自らの拳で対峙しなければならない運命といったアツい気持ちが感じられるラストでした。

あっそれとニコラス・ツェー武装ばっかり触れて、ドニー・イェンの警察側に触れてなかったよ。警察官の皆さん、グロックじゃなくてSIGを使用してるんですよ。恐らくp250か320ってところでp226系統より新しいモデル。ちょっと珍しい気がしましたし、SIG好きは必見です。

ということでこの辺でお開きです。ありがとうございました。

第101回:2021年ベスト映画(後編)

それでは後半戦は、様々な「ベスト」から2021年の映画を振り返っていきます。あっ最初に言っておくとTVや配信サービスのドラマの話もするかもです。またややネタバレがあるかもしれないのでご注意を。

↓前編についてはこちら。

captaincinema.hatenablog.com

 

 

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↑今年の前売り券たち。やっと007の前売りが使えたわ~

 

う〜ん…な作品賞

それではまず初めに一石投じたくなった作品、いわゆるゴールデンラズベリー賞の開催です。あくまで個人的に納得出来なかったので悪しからず。それでは3作品のご紹介です。

 

『カポネ』

アメリカの禁酒法時代に名を馳せたギャング アル・カポネの晩年を描いた作品。

病気でボケ老人と化し尿漏れや脱糞をするトム・ハーディは鬼気迫る演技をしていますが、残念ながら頑張り損。ヴェノムの続編の方がよっぽど良い作品だったと思います。

そもそもギャングスターが病気で衰弱する姿を描く事で一体何を伝えたかった、何を楽しめば良いのかがいまいち掴めず心が動きませんでした。

また幻覚と現実が交錯するシーンが多々ありますが、その見せ方もあまり上手いとは思えませんでした。しっちゃかめっちゃかというか、まぁそれが見せたかったんでしょうけど『ラストナイト・イン・ソーホー』の方がメリハリがあってよっぽど良かったです。

監督はあの『ファンタスティク・フォー』(2015年公開)の方でしたか。あぁなるほど(察し)。

 

・『モンタナの目撃者』

いや悪くはないです。銃器描写のこだわりや相変わらずのジョン・バーンサルの渋さもありましたし、普通に楽しめるサスペンスアクションではあります。ただ私の期待値が高過ぎました。なにせ『ボーダーライン』(2015年公開)の脚本を手掛けたテイラー・シェリダン監督ですからね。今作はそのテイラー・シェリダンらしいキレのあるストーリーテリングを感じられず、いまいち気持ちがのりませんでした。

ラストの山岳レスキュー隊員vs暗殺者もなんだかなぁー。山火事をバックに取っ組み合うというのは単純だった印象。あんなにゴリゴリにカスタムされたグロックの活躍がほとんどないのも残念でした。

 

マトリックス レザレクションズ』

満を持して公開したキアヌ・リーブス主演の人気SFシリーズの4作目。

公開すると聞いた時点で“どうなのよ?”って気持ちがありましたが、その感情は鑑賞後もそのままでした。何でしょう「人類の救世主」みたいな壮大なお話からパーソナルな方向にシフトチェンジしている印象を受けたので、どう受け止めてば良いのか混乱したました。これ『トイストーリー4』(2019年公開)を観た時と似た感覚です。『トイストーリー4』の方はまだ狙いが分かったので良かったのですが、こちらは咀嚼出来なかったな。

もう一点言いたいのがアクションシーン。シリーズ内でシリーズに登場したシーンのオマージュをやるのはちょっと違う気がします。それは二番煎じではないですか。その割にはマトリックスらしい厨二心をくすぐられるシーンはなかったのでどうなのよ?

 

はい、禊の時間は終了です。辛辣な発言が飛び交いましたが安心して下さい。ここから褒めちぎりますので。まずは俳優賞です。

 

ベスト俳優賞

各国際映画祭では男女別を撤廃する動きがありますが、そんなの知らん!だって優柔不断な性格の人間が1人に絞れるわけがないので。男女別で主演&助演で4人の発表です。

主演男優賞

ゴジラ(『ゴジラvsコング』より)

人じゃねぇ!でもほら今の時代「多様性」ですから!ww

冗談はさておきトップ10に入れた理由の一つでもあるんですけど、とにかく今回のゴジラさんは表情が豊かだったことに感動しました。コングの方は動物のカテゴリーで言えば人間に近いのでまだ分かりますが(いやコングも良かったよ)。まさかあんな鼻をふんがふんがさせたり、ゴングとの別れ際では背中で語ったりと演技の幅が広いこと。っていうかゴジラさんはオスでよろしいのかな?

人で言うなら『すばらしき世界』の役所広司かお疲れ様の意味も込めて『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』のダニエル・クレイグでしょうか。あと『ライトハウス』のロバート&ウィレムコンビも良かったですね。

 

助演男優賞

仲野太賀(『すばらしき世界』・『あの頃。』他 より)

極論、今年のベスト俳優を選ぶとしたらこの方でしょう。映画では『すばらしき世界』(役所広司演じる三上さんの背中を流すシーンが印象的)や『あの頃。』(こちらは私配信で観ましたが映画館で行けば良かったな)の出演と大活躍の中、決定打となったのは『コントが始まる』でした。これTVドラマなんですけどねw。特に印象深いのは割と序盤。笑っていたと思ったらいつの間にか泣いているというシーンがあったのですが、一体どうすればそんな表情が出来るんだと驚きました。とにかく泣きの演技の幅広さは末恐ろしいレベル。今後は助演はもちろん主演の作品も増えていくことを願ってます。

そういえば『ONODA 一万夜を超えて』にも出てたんでしたっけ?見逃したー。

 

主演女優賞

ジョディ・カマー(『最後の決闘裁判』より)

まず、あんな苦しい役どころをよく演じ切ったなというのが一番の賞賛ポイントです。いくら演技いうたってあれは心がボロボロになるでしょ…。役者の精神力って並大抵なものではないと思わされました。

また『最後の決闘裁判』より前に公開となった『フリー・ガイ』も良かったですね。ラストは胸キュンだったもんね。

 

それでは助演女優賞…と行きたいところですがすみません。もう一人主演女優賞として名を挙げます。もうこれは気分の問題なのでやりたい放題です。

 

有村架純(『花束をみたいな恋をした』より)

以前から「有名どころの女優さん」ってイメージはありましたけど、こんなに表情豊かな上手い女優さんだという認識はありませんでした。それに『花束みたいな恋をした』に再び登場『コントが始まる』と「オタクの鑑」みたいな役どころが連続したこともあって私の中で好感度が上がりまくりました。

私は観ていませんが『るろうに剣心 最終章』が良かったというのも友人から聞いていますし、今年のエンタメ界を語る上では外す事が出来ない活躍ぶりだったと思います。

おかげさまで私『有村架純の撮休』なる本人出演の妄想ドラマを2周しました。あのドラマまたNetfilxで復活しないかなぁ~(また見る気でいる奴)。

 

続いてはベストアクション賞。アクション映画はいかに格好良いシーンがあるかが重要と考えている私が、今年観た作品でテンションの上がったアクションシーンの選出です。


ベストアクション賞

格闘部門

『Mr.ノーバディ』 バスファイト

冴えないおじさんが実はめちゃくちゃ強かったムービー。覚醒の瞬間となったバス内でねーちゃんにちょっかいを出すチンピラたちをボコすシーンは格闘部門のベストです。

そもそもバスの中という狭い空間で殴り合うという行為は、逃げ場がないかつ腕や足の可動域が限定されるため、いかにコンパクトな動きで相手を倒すかって話になってくるので、そこにスリルを感じて好きなんです。

今年はマーベルヒーロー映画『シャン・チー』にもバスファイトはありましたが、こちらはちゃんと痛々しさが伝わってくる点が良かったです。

※映画だけでなくドラマも含めれば、Netfilxの韓国産ノワールアクション『マイネーム:偽りと復讐』が非常に素晴らしいかったです。ハリウッドはガンファイトが得意なのは確実ですけど韓国作品はナイフファイトが得意と位置付けられると思っています。そのナイフファイトの凄まじさときたら圧巻。主人公(時々有村架純っぽく見えるのは俺だけじゃないはず)の倒された状態からでも攻撃を繰り出す超攻撃型な戦闘スタイルも最高でした。それにしてもみんな刺身包丁好きだね。日本のヤクザで言えばドスのポジションですね。

射撃部門

『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』階段での銃撃戦

終盤、階段の上から投げつけられた手榴弾の爆発と共に開幕す長回し銃撃戦。もう長回しの時点で優勝ですが、メインウェポンであるM4系のライフル(ダブルマガジンってのがナイスデザイン)からサイドアームであるSIGp226への切り替え方が無駄がなく流麗でした。

 

最後は今年印象に残った予告編を紹介。


ベスト予告編賞

『アオラレ』

映画館で観て思わず吹いてしまった予告。ラッセル・クロウの「煽ってんじゃねーよ!」に「お前が言うな」のナレーションに爆笑です。謎のターミネーターBGMとか絶対ふざけてるよね?w

しかし映画そのものは決してコメディではなく熊みたいなおっさんが追撃してくる怖い映画。本編自体も結構好みな作品だったこともあり受賞です。

 

まとめ

以上、今年の締めくくりとなる2021年映画の諸々ベストでした。

あぁ何とか年内に挙げられたわ。来年になっちゃうとね、歯切れ悪いっすから。去年と比べて投稿数も増やせましたし、アクセス数もありがたいことに2000を超えました。まぁこんな感じで自分のペースで来年も自由気ままに語りまくろうと思います。

ということでこの辺でお開きです。ありがとうございました。

第100回:2021年ベスト映画(前編)

ついにこの時がやって来ました。2021年の総決算、ベスト映画を決める季節です。そして記念すべき100回目の記事になります。今年私が映画館で鑑賞したのは全79作品。全タイトルがこちらになります。※赤字は邦画。

 

  • 新感染半島/ファイナルステージ
  • 聖なる犯罪者
  • ヤクザと家族 The Family
  • プラットフォーム
  • すばらしき世界
  • 燃ゆる女の肖像
  • 藁にもすがる獣たち
  • ガンズ・アキンボ
  • カポネ
  • ラーヤと龍の王国
  • ミナリ
  • ラスト・フル・メジャー
  • ノマドランド
  • まともじゃないのは君も一緒
  • JUNK HEAD
  • ザ・スイッチ
  • 21ブリッジ
  • パーム・スプリングス
  • 花束みたいな恋をした
  • 街の上で
  • クリシャ
  • ドリーム・ランド
  • ファーザー
  • アオラレ
  • ジェントルメン
  • Mr.ノーバディー
  • クワイエット・プレイス 破られた沈黙
  • Arc/アーク
  • ゴジラvsコング
  • ブラック・ウィドウ
  • ライト・ハウス
  • プロミシング・ヤング・ウーマン
  • ジャッリカットゥ 牛の怒り
  • イン・ザ・ハイツ
  • サイコ・ゴアマン
  • サマーフィルムにのって
  • ザ・スーサイド・スクワッド
  • フリーガイ
  • ドント・ブリーズ2
  • 孤狼の血LEVE2
  • オールド
  • ドライブ・マイ・カー
  • モンタナの目撃者
  • シャン・チー/テン・リングスの伝説
  • テーラー/人生の仕立て屋
  • アナザーラウンド
  • レミニセンス
  • 空白
  • 殺人鬼から逃げる夜
  • MINAMATA-ミナマタ
  • 007/ノー・タイム・トゥ・ダイ
  • 死霊館/悪魔のせいなら、無罪
  • サウンド・オブ・メタル〜聞こえるということ〜
  • DUNE/デューン 砂の惑星
  • キャンディマン
  • 最後の決闘裁判
  • ハロウィン KILLS
  • かそけきサンカヨウ
  • エターナルズ
  • ファイター/北からの挑戦者
  • マリグナント 狂暴な悪夢
  • モスル あるSWAT部隊の戦い
  • ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ
  • ダーク・アンド・ウィケッド
  • ラストナイト・イン・ソーホー
  • マトリックス レザレクションズ
  • ただ悪より救いたまえ
  • 偶然と想像


再上映作品

去年は57作品の鑑賞本数だったのでかなり増えてます。去年は諸々あったとはいえ、やべーな。どんどん悪化してます。

そんな私がこの中から、興奮と衝撃に苛まれた至高の10本を選出し傍若無人にランク付けをしていこうと思います。例によって再上映はランキングからは除外とし、あくまで新作のみを対象にします。いやしかし、こうして再上映作品を並べてみるとなかなか凄まじい火力を誇ってます。どんな作品の再上映を観に行っているかでその人の性格や嗜好が分かってきそうな気がしていますが、そもそもそんなに行く人居ないかぁ~w。

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↑今年手に入れたパンフレットたち

 

第10位

では早速発表です。第10位は...

 

 

ゴジラvsコング』

ゴジラキングコングという日米を代表する2大怪獣が地球をリングにガチンコで殴り合うプロレス映画。ゴジラ信者としては落選させるわけにはいかねぇんだよ!

という謎のプライドもあるわけですが、それよりも人間パートを極限までそぎ落とし、怪獣を主役に描いていた事により「そうそう、これが観たかったんだ!」な気持ちで満たしてくれる作品になっていたと思います。何かと怪獣の話題が多かった今年に相応しい一本。怪獣を中心に展開するスタイルがこれからの怪獣映画のスタンダードになることを陰ながら期待しています。

captaincinema.hatenablog.com

第9位

第9位は...

 

 

ノマドランド』

アメリカ各地を彷徨いながら短期の仕事を点々と行って食つなぐ「ノマド」を描いたロードムービー。今年の米国アカデミー賞を受賞した作品です。

ロードムービー大好き人間としては外せない一本、とは言っても典型的なロードムービーとは事情が少々異なるところが新鮮でした。自主的に路上へ出たのではなく、資本主義社会からはじかれるように半強制的な放浪生活となっているので。しかし登場するノマドの皆さん(実際に生活をされているご本人出演もあり)は決して悲観的ではなく、前を向いて生きている姿が力強く描かれます。こんなの見せられたら自分がちっぽけに感じてきますし、そんな自分もしっかり生きていこうという気持ちが奮い立ちますロードムービーって見終わった後、生きる希望を与えてくれる作品が結構多いんだよね。だから好きなのかも。

captaincinema.hatenablog.com

 

第8位

第8位は...

 

 

『偶然と想像』

「偶然」の出会いから生まれる人々の交流を描いた3本の短編で構成されたヒューマンドラマ。今年最後に観た作品が滑り込みのランクインです。

私、濱口竜介監督作品は今まで『ドライブ・マイ・カー』(2021年公開)と『寝ても覚めても』(2018年公開)しか観ていなかったので、そのイメージからは全く想像していなかったまさかのコメディ。場内に笑い声が響く事で生まれる一体感が心地良かったです。笑い以外にも切なさや驚き、ちょっとムラっとする感覚なども味わえたのでお腹いっぱい。例えるなら1本で様々な栄養が取れる野菜ジュースでしょうかね?w

また内容自体は「ザ・会話劇」で小説を楽しむ感覚に近かったです(これは先ほど挙げた2作品も同じですが)。特に3章目の「もう一度」は舞台が仙台でかつ渋谷やメールといった前2章とのさりげない関連性がちらついたので、私の好きな伊坂幸太郎作品の風味を個人的には感じられて非常に楽しい作品でした。

ただ一個言わせて欲しいのが公開館数の少なさ。都内だと渋谷でしかやっていないとなると、全国的にはほとんど公開している映画館は無いってことですよね。もうちょっと増えたら良いのに。

 

第7位

第7位は...

 

 

『ラストナイト・イン・ソーホー』

上京してきた現代の美大生と歌手を目指す60年代の女性が織りなすタイムリープサスペンス。

映像・音楽・ストーリー・役者と映画を面白くする要素が4点揃いの欲張りな作品。その中でも注目すべきは、やはり音楽だったと思います。劇中に登場する曲からちょっとした環境音に至るまでこだわり抜かれており抜群のテンポ感があったと思います。

それと意外にも走っているシーンが多かったのが個人的にポイント高し。ロンドンの街中や大学の図書館を駆け抜ける主人公。追いかけ/追いかけられるシーンってテンション上がっちゃうんですよね。

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第6位

第6位は...

 

 

『まともじゃないのは君も一緒』

数学以外の知識が色々欠けている塾講師と理論武装した女子高生のラブコメディ。

本作も『偶然と想像』と同様に会話劇がメイン。あくの強い二人が織りなす絶妙な掛け合いがクセになります。今年は『街の上で』やTVドラマ『大豆田とわ子の3人の夫たち』を観ても思いましたが、日本語の作品って「会話劇」が面白いことが結構大事だなと改めて思わされました。まぁ私がゴリゴリの文系日本人だからかもしれませんが。

また、めちゃくちゃ心にぶっ刺さった理由としては「普通」をテーマにしている点でした。中盤に登場する「普通は大変」というセリフはマジで名言。尺度が人によって変動する「普通」を頑張って突き詰めなくても良いんじゃないかと思わせ、肩の荷を降ろしてくれる作品でした。

ちなみに今年放送していた朝ドラ『おかえりモネ』で清原果耶にハマった人は必見。コメディエンヌとしてのポテンシャルの高さが光ってます。

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第5位

第5位は...

 

『ダーク・アンド・ウィケッド』

人里離れた農場の実家に戻ってきた姉弟を襲う“何か”を描いたホラー映画。

今年は『ハロウィン KILLS』や『マリグナント 狂暴な悪夢』といった面白いホラー映画が沢山ありましたが、本気で怖かったホラー映画はこちらです。

私自身一番怖さを感じるのは「分からない」という気持ちに晒されることです。動機や発端、そもそも襲ってくる“何か”の正体すら不明瞭な状況が描かれます。途中「悪魔」のワードが出てきますが実際にその姿を現すことはなく、主人公の姉弟たちを取り巻く人物の不気味な姿をもって登場するだけ。相当理不尽です。おまけに“何か”に対抗出来るパワーを持ったキャラクターも登場しないので、白旗振っても意味のない圧倒的救いようの無さには言葉を失いました。

介護や親を看取るという多くの人が経験するであろうテーマの生々しさや全体的に暗く乾燥しきった映像で恐ろしさが倍増。恐らくアリ・アスター監督作品が好きな人にはクリティカルヒットしそうな絶望的作品です。

 

第4位

第4位は...

 

『最後の決闘裁判』

百年戦争下のフランスで実際に行われた決闘裁判を描いた歴史ドラマ。

正直な話。歴史モノは個人的にあまり好みなタイプではありません。何となく上の空な気持ちになってしまうというか、劇的に気持ちが動く事がありません。しかし本作は普遍的なテーマ(これが普遍的じゃダメなんだけどさ)が描かれており、どんなに時代は変わっても人間は変わっちゃいないという痛烈なアイロニーが込められていました。パンチの効いた一本。80歳オーバーとは思えないバイタリティーを感じさせるリドリー・スコット監督、凄いぞ!来年公開の『ハウス・オブ・グッチ』が俄然楽しみになりました。

また3者の微妙な食い違いを巧みに描いた3幕構成のストーリーも上手かったですね。ベン・アフレックマット・デイモンが手掛けた脚本の映画はもっと観たいなぁー。

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第3位

さぁーここからはトップ3。見事3位に滑り込んだのは...

 

 

『サマーフィルムにのって』

時代劇オタクの女子高生が映画制作に奔走する青春映画。

まず映画への愛が溢れる作品であった事が決定打。“映画が好きだ!”な思いがガッツリ感じ取れると映画が好きな人間としては問答無用でテンション上がりますし、何だか有難さみたいなものも芽生えてきます。

そしてプライベートな話、学生の頃を思い出してノスタルジックになったのも大きな理由です。私も学生の頃に映画関係のサークルに所属していたので、その頃を思い出して変にエモくなっちゃって。まぁこれぞ私的ベストな理由ですわ。

登場キャラもそれぞれ個性的で魅力がありましたし、まさかのSFが絡んでくるストーリーも楽しめる青春映画の新たな代表作だと思います。

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第2位

惜しくも、しかし堂々の第2位の座に輝いたのは...

 

 

『ジャッリカットゥ 牛の怒り』

屠蓄場から逃げた水牛を追う村人たちを描いたエクストリームムービー。

とにかくヤバい映画。ヤバ過ぎて思考が追いつかないレベルです。一体どう撮ったのかが気になる凄まじい牛vs人の映像で畳み掛け、駆けずり回る私欲に満ちた顔のおっさん数百人(あっこれも走ってる映画だわ)によって地獄絵図が展開されます。ストーリーは単純なはずなのに約90分間ひたすら豪速球。こうして言葉で説明するよりも、実際に観てもらった方がそのぶっ飛んだエネルギーを感じるには早い気がする傑作。インド映画については詳しくはないですけど、掘ったら凄いのが出てきそうです。

それと、鑑賞後「なんなんすかこれ~」と子供ように破顔しながら劇場を後にするおじさん二人組の存在も忘れられないです。あの異様な興奮に包まれた劇場ってのは『マッド・マックス怒りのデスロード』を観に行くと感じる空気感と似ていました。たまらんの〜。

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第1位

それでは、数々の猛者たち退け2021年征した栄えある第1位は...

 

 

『プロミシング・ヤング・ウーマン』

人生の成功を約束されていたはずの一人の女性が復讐の鬼と化す今年最も衝撃を受けた作品。個人的にはぶっちゃけ圧勝だったかな。

7位の『ラストナイト・イン・ソーホー』にしても4位の『最後の決闘裁判』も同じテーマを扱っていました。しかしこの作品が特出して鋭いと感じたのがその糾弾する対象の広さでした。主人公が復讐のターゲットにするのはそのトリガーとなった出来事に直接関わった人間のみならず、それを黙認したり見て見ぬふりをする人々。そこに性別は関係ありません。だからこそ多くの人が他人事として観ていられず、“あれっ?自分は大丈夫かな…”と自身の過去を顧みてしまい肝の冷える体験をする事になると思います。いや~冷汗。久々に脳ミソを思い切り殴打されました。

一体どこに着地するのか読めずに振り回されるジャンルレスなストーリ―。毒々しさのあるテイストに冒頭の掴みのセンスも抜群。全く申し分のない大傑作でした。

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まとめ

以上、全精力を持って導き出した10作品のランキングでした。

弱冠下半期公開作品に偏ったような…。いやしかしですよ、今年は「面白かった」的な感想より鳩が豆鉄砲を食ったような衝撃的体験をさせられる作品が多くランクインした印象です。意図せず“MeeToo”なニュアンスの作品が多数あるのもその辺が影響してますかね。

その他『花束みたいな恋をした』『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』『すばらしき世界』『殺人鬼から逃げる夜』も素晴らしかったのですが、ランクインさせる事が出来ず超絶無念。去年も似たような事言ったっけか?だからランク自体が不毛な気がしてきたぞぉ~。

はい、なんだか元も子もない事を考え出したので一旦お開きです。後編では印象に残った俳優やアクションシーンを語り散らします。

それでは、ありがとうございました。

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第99回:映画『ラストナイト・イン・ソーホー』感想と考察

今回は現在公開中の映画『ラストナイト・イン・ソーホー』を語っていこうと思います。毎度のことながら、ややネタバレ注意です。

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イントロダクション

ショーン・オブ・ザ・デッド』(2004年公開)や『ベイビー・ドライバー』(2017年公開)を手掛けたエドガー・ライト監督によるホラー。いや、どちらかと言えばサスペンスかな。

ファッションデザイナー目指しデザイン学校に通うため田舎からロンドンへ“上京”して来た主人公のエロイーズ(トーマシン・マッケンジー)。寮生活に馴染めずアパートで一人暮らしを始めたある夜、1960年代のソーホーで歌手を目指す女性 サンディ(アニャ・テイラー=ジョイ)の夢を見る。サンディに魅了されるうちに次第に心と体がサンディとシンクロしていき、夢と現実の狭間が曖昧になってゆく。

前述の通り監督は、映画愛のみならず音楽愛やサブカル愛の塊みたいな「オタク」のトップランナー エドガー・ライト監督。つい最近観ました『スコット・ピルグリムVS.邪悪な元カレ軍団』(2010年公開)のあのバカバカしさには声を上げて笑ってしまった。

主役のエロイーズを演じるのはトーマシン・マッケンジー。『ジョジョ・ラビット』(2019年公開)でのアンネ・フランク的な役どころの女の子が最高に魅力的でしたよね。その他シャマラン監督作品『オールド』(2021年公開)やNetfilx作品『パワー・オブ・ザ・ドック』(2021年公開)にも出演しており飛ぶ鳥を落とす勢いです。この方のイントネーションというか喋り方は、ちょっと独特で聞き心地が良いんだよなぁ~。

そして、こちらも勢いの止まらないアニャ・テイラー=ジョイがもう一人と主役と呼べるサンディを演じています。Netfilxのドラマシリーズ『クイーンズ・ギャンビット』(2020年公開)や『ウィッチ』(2015年公開)での好演は勿論ですが、当ブログでは何度も言ってます「マッドマックス 怒りのデスロード」のスピンオフ作品での若かりしフュリオサ隊長がウルトラ楽しみな女優さんです。

というかこの2人の女優の共演ってだけで、鑑賞前から既にお釣りが発生している映画ファンは世界中にきっと居るはず。キャスティングに感謝!

 

総合芸術!

「総合芸術」という言葉は様々な分野が混在した芸術を指し、とりわけ映画はその代表例と言えますが、それを顕著に感じることが出来た作品でした。

まず音楽。洋楽には疎い私でも“どっかで聞いたことがあるぞ”な曲がちょくちょくあるラインナップは、きっと洋楽好きの方にはたまらないだろうと思います。しかもその音楽のかかるタイミングも去る事ながら、パトカーのサイレン音を始めとした街の喧騒音の入れ込み具合も上手い。「音」に切れ目がないテンポ感はさすがアクションと音楽を融合させた『ベイビー・ドライバー』の監督だけあります。

さらに様々な映画のオマージュが効いている映像。私自身は『サスペリア』とブライアン・デ・パルマっぽさを感じましたが、他にも沢山あるようですね。まだまだ修行が足りんのぉー。随所に登場する鏡の使い方も洒落てて良かったです。色んな場所に在り過ぎだろとも思いましたが。

そしてストーリーに関しては正直な話“またこの手のテーマか、観てて苦しいんよぉ…”と思いました。しかしホラーやサスペンス要素を含んでいたりダンスシーンが多めな事もあってミュージカルを観ている気分になったり。それに気鋭の女優二人の熱演を楽しめるアイドル映画的側面もあったりと様々なジャンルが織り混ざるジャンルレスな作品なので、決して飽きるという事はありませんでした。しかも今まで「ザ・男の子」なキャラを主役にしがちだったエドガー・ライト監督が「有害な男らしさ」を突き詰めるんだという驚きも込みで楽しめました。

つまりですよ、映画を面白くする要素が全てハイクオリティ。これこそ総合芸術という言葉の似合う作品だと思いましたし、映画の良さを再確認させられた気がしました。

 

まとめ

以上が私の見解です。

一ついちゃもん付けるなら、銀髪のおじさんをもっと掘り下げるとより面白くなった気がしました。ポジションとして興味深かっただけにあの扱いはちょっと雑じゃないか?

それとネオンのギラギラ感と夢や欲望が混同するカオスな空間という点では東京を舞台にした「ラストナイト・イン・トーキョー」としてリメイク作品いけるっしょ!東京じゃ範囲が広いから、歌舞伎町や六本木が良いかも。誰か作って~。

ということでこの辺でお開きです。ありがとうございました。